温州みかんの3列植え密植園における縮伐及び間伐の効果

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要約

3列植え密植園(2×3m植え)に対し、中1列の樹を縮伐すると1年目は減収するものの、2年自はかえって増収する。間伐した場合も同様で、1年目の減収は3割減と大きいが、2年目には樹冠拡大が優り3割以上の増収かある。果実品質のうち縮伐樹及び間伐で残った樹の糖度は増加する。

  • 担当:四国農業試験場・作物開発部・果樹栽培研究室
  • 連絡先:0877-62-0800
  • 部会名:果樹
  • 専門:栽培
  • 対象:果樹類
  • 分類:指導

背景・ねらい

昭和30~40年代のミカンブームで増殖された園のなかには密植園か多い。この様な園では作業機械が入らないため、省力化のみならず薬散等において、健康安全上からも重大な問題となっている。これらの園の改善方法として、縮伐や間伐があり、とくに間伐は園内への機械導入か図られ、飛躍的な能率向上につながるのであるが、現場では収量減につながるとの恐れがあり、遅々として普及しない状況にある。そこで、縮伐や間伐か決してトータル的には収量減にならないことを証明し、かつ品質向上効果が著しいことを示し、園内作業道造成気運を盛り上げていく必要がある。

成果の内容・特徴

  • 3列植え密植園(興津早生・高接ぎ約20年、傾斜度約15度)に対し、中1列の樹を弱い縮伐(隣りあった木の枝葉か重ならない程度 樹容積の6%を剪定)や強い縮伐(樹間を楽に通れる程度 同33%)をかけた場合、3樹の合計収量は1年目は従来の密植管理より1割程度減少するが、2年目には増加に転じ、2年間の平均では殆ど差がなくなる(表1)。
  • 中1列の樹を間伐した場合の1年目の収量は2本で7割程度と大きく減少するが、2年目にはかえって増収する。全樹平均の樹冠拡大は最も優る(表1)。
  • 果実品質はもともと中1列の樹で着色が劣り糖度が低くクエン酸か高い傾向にあるが、縮伐によって改善される。間伐で残った樹の果実品質も糖度か高く着果部位(方位)間の差か小さくなる(表2)。
  • 中1列の樹の微気象のうち照度や地温は縮伐により増加しており、これらが果実品質の向上に関係したものと思われる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 傾斜度に関係なく全ての3列植え密植園に適用可能と思われる。
  • 縮伐にとどめるか、間伐し、作業機械を導入するかについては、個々の農家の経営実体にあわせる必要がある。
  • 少なくとも密植園は直ちに解消し、根元まで日照か届く様な樹叢にしなくては高品質果生産は望めない。

具体的データ

表1.縮伐や間伐の収量への影響

 

表2.縮伐や間伐の果実への影響

 

表3.縮伐や間伐の微気象に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:傾斜地大規模カンキツ作における快適省力・高品質生産システムの確立
    (園内作業道設置に伴う樹形改造技術の適用)
  • 予算区分:実用化促進(地域総合)
  • 研究期間:平成9年度(平成~9年)
  • 研究担当者:内田 誠・瀧下文孝・清水徳朗
  • 発表論文等:なし