複雑な地形・土地利用地域に適用可能な広域蒸発散量分布の推定手法

要約

本推定方法は、複雑な地形および多様な土地利用の地域を対象に、日々の広域蒸発散量の分布を推定するものである。本方法は入力項目は少ないが、農耕地の水収支の評価などに活用することができる。

  • 担当:四国農業試験場・作物開発部・気象資源研究室
    農業環境技術研究所・環境資源部・気象管理科・気候資源研究室
  • 連絡先:0877-62-0800 0298-38-8206
  • 部会名:生産環境(農業気象)
  • 専門:農業気象
  • 対象:-
  • 分類:研究

背景・ねらい

農耕地の水収支や水資源の有効利用を考える際の基礎的情報として、蒸発散量の広域分布は欠かせない要素である。従来各種モデルを適用する際に、多くの仮定を必要とした地形および土地利用形態が複雑な地域を対象に、季節による土地利用の変化などに応じた蒸発散量の広域分布を推定することができる。

成果の内容・特徴

  • 日積算蒸発散量の計算にはペンマン(Penman)式を修正した式を用いる(表1)。蒸発のエネルギー源となる放射の項について、従来の研究を整理した結果や圃場観測結果を利用し地被のアルベドおよび正味放射量と地中熱流量の関係を、メッシュ化した土地被覆状態毎に決定する。日射量の推定は、周辺地形による直達日射の遮蔽効果を10分毎に評価し、メッシュ毎の日積算日射量を求めるもので、すでに四国農試が開発したモデルを基礎とした。
  • 土地利用分布を決める基礎となる土地被覆は、5月上旬に撮影したランドサット/TMデータの画像情報と国土数値情報とを対比させ夏期の状態を決定する。7種にカテゴリー区分した土地被覆状態から土地利用分布を決める(図1-上)。土地利用の季節変化は、例えば夏期の土地利用分布のなかで水田に相当するメッシュを畑地のカテゴリーに変更するなどの方法で求める。
  • 推定手順の概略を図2に示す。日時、地形の影響が無い代表地点における日射量、気温、湿度を入力要素とし、地形および土地利用分布を条件として蒸発散量を推定する。この手順を、地形が複雑で、夏期に水田、冬期に畑地といった土地利用の季節変化が明瞭な香川県の讃岐平野西部に適用した。250mメッシュを用いて夏期の蒸発散量分布を推定した事例を図1-下に示す。

成果の活用面・留意点

  • 中山間地域や島嶼部を対象にした蒸発散量分布の推定に適している。推定対象領域内に気象観測点がある場合には、これを利用することにより推定精度が向上する。

具体的データ

表1 推定の基本式と手法の特徴

図1 右上 讃岐平野西部の夏期の土地利用分布 右下夏期の蒸発散量分布の例

図2 推定手順のブロック図

その他

  • 研究課題名:傾斜地に発生する気象災害の形態と地域性・周期性の解明
  • 予算区分:経常,重点基礎
  • 研究期間:H7~10
  • 研究担当者:林 陽生,近藤昭彦,斉藤元也,菅谷 博
  • 発表論文等:Spatial distribution of actual evapotranspiration rate over an area with complex land use and terrain, Proc. The Second Int. Conf. on Climate and Water, Finland, 1998