人力敷設機を用いた再生紙マルチ直播シート栽培技術

要約

水稲乾籾を不織布に封入・貼付した再生紙マルチ直播シートを人力敷設機で敷設する湛水直播栽培法。代かき後落水し適度な土壌表面硬度になった田面に、直播シートを敷設することで、安定した出芽、苗立ちが確保でき、一年生雑草の発生が抑制され、約470kg/10aの収量が得られる。また、敷設時の作業能率は7~9a/hで、作業負担の軽減が図られる。

  • キーワード:水稲、再生紙マルチ直播シート、人力敷設機、湛水直播栽培、一年生雑草
  • 担当:近中四農研・作物開発部・栽培生理研究室、機械作業研究室
  • 連絡先:084-923-4100
  • 区分:作物・稲、共通基盤・作業技術、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

再生紙マルチを利用した水稲機械移植栽培は除草効果が高いため除草剤散布の必要が無く、実用化され普及している。移植栽培を直播栽培に応用した方法が中国農業試験場で開発され、雑草防除における有効性が認められており、省力化が期待されるが、再生紙マルチ直播シート(以下、直播シート)の適切な敷設方法は確立されていない。そこで、直播シートの敷設条件を明らかにし、低コストで製作可能な簡易敷設機を開発するとともに、中山間地域に設置した現地試験圃場において、出芽、苗立ち、施肥方法、水管理、生育特性及び収量について検討を行い、直播シートを用いた直播栽培の適応性について確認する。

成果の内容・特徴

  • 直播シートは長さ50m、幅1.6m、質量11kgで5条用である(表1)。敷設機は、一般的な部品で構成されるソリ型の簡易なもので、人力でロープを介してけん引しながら直播シートを田面に敷設する(図1)。材料費は約2万円である。
  • 敷設作業速度は、0.2~0.4m/sで、作業能率は1名の直播シート交換用補助作業者付きの2名作業で約7~9a/hである(表2)。土壌表面硬度が適範囲で敷設作業を行うことにより、作業者の心拍数増加率は低く抑えられ、水稲の苗立ち率の低下も小さい(表2)。
  • 本直播栽培法は土壌表面播種のため耐倒伏性が小さいので移植栽培に比べ減肥する。コシヒカリを用いた栽培においては基肥として肥効調節型肥料を用いて窒素、りん酸,加里をそれぞれ4~5kg/10a施用し、水稲の生育に応じて、追肥として化成肥料を用いて窒素、加里をそれぞれ0.5kg/10aを1、2回分施する。
  • 直播シートの田面への密着を強めるため、自然落水し飽水状態の田面に敷設するが、その時の最適土壌表面硬度は土壌表面硬度計の圃場平均値で30~35mm程度(1mゴルフボール貫入深で32~38mm程度)である。
  • 直播シートは敷設後約60日間田面を覆い、一年生雑草の発生は抑制される。
  • 岡山県加茂川町(標高150m、面積16.7a)において1999年から3年間実施した結果、収穫時に倒伏が見られたがコンバイン収穫作業に支障はなく、平均収量は約470kg/10a、品質は1等米であり、減収、品質低下は認められない(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 再生紙マルチ水稲直播栽培技術マニュアルを作成し普及を図る。
  • 直播シートは市販されている。2002年実施希望者は22カ所からあり、総計約200aの栽培が見込まれている。
  • 田面の高低差が大きいと、敷設時に凹部の泥水が既設の直播シート上に被り雑草抑制効果や水稲の苗立ちが劣ったり、凸部が過乾燥となり直播シートの田面密着性が劣ることがあるので、代かきを丁寧にし田面の均平に努める必要がある。
  • 鳥害の危険性の高い水田や多年生雑草多発水田は避ける。

具体的データ

表1 直播シート及び人力敷設機の主要諸元

 

図1.人力による直播シートの敷設作業

 

表2 敷設作業試験結果例

 

表3 施肥量、収量及び収量構成要素

 

その他

  • 研究課題名:再生紙マルチ水稲直播栽培技術の開発と導入、再生紙マルチ直播作業機の開発
  • 予算区分:中山間水田複合生産、交付金
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:中川宣興、高梨純一、亀井雅浩、大平陽一、前岡邦彦、石田茂樹、土屋史紀、竹田博之、森田敏、
                      白土宏之、山内稔、吉田智一
  • 発表論文等:1)中川(1999)平成11年度農林水産業近畿中国地域研究成果発表会発表要旨:52-59
                      2)亀井・土屋(2001)機械化農業 2001年3月号:8-11