コムギのグルテニン/グリアジン比の品種間差と出穂後追肥による低下

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要約

コムギのグルテン構成タンパク質であるグルテニンとグリアジンの割合は、麺用品種と比較してパン用品種でグルテニンの割合が高い。出穂後追肥によるタンパク質含有率上昇によりグルテニンの割合が減少する。

  • キーワード:コムギ、グルテン構成タンパク質、タンパク質組成
  • 担当:近中四農研・地域基盤研究部・土壌水質研究室
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メールhidek@affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌・土木・気象)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

出穂後の速効性窒素の追肥により子実窒素含有率(コムギ子実タンパク質含有率)は向上する。しかし、それに伴うタンパク質 組成変化の品種間差については明らかとなっていない。グルテンを構成するタンパク質とその組成は加工適性に影響を与えることが知られている。そこで、出穂 後追肥によりタンパク質含有率を変えたコムギにおいて子実タンパク質含有率の増加がグルテン構成タンパク質であるグルテニンとグリアジンの比に及ぼす影響 について解明する。

成果の内容・特徴

  • コムギタンパク質の分画は、超音波処理により全タンパク質を抽出した後、エタノールに可溶と不溶により分画し、不溶画分をグルテニンとする。エタノール可溶画分をさらに中性塩溶液に可溶と不溶により分画し、不溶画分をグリアジンとする(図1)。この手法により、分子量分布にそった分画が可能である。
  • 表1に示した供試品種はすべて11月上旬に播種したもので、標準的な収量である。また、出穂後追肥によってタンパク質含有率が増加している。
  • パン用品種である「ハルユタカ」、「春のあけぼの」、「北見春63号」、「ゆきちから」のグルテニン/グリアジン比は、子実 タンパク質含有率が変化しても麺用品種である「ふくさやか」、「シラサギコムギ」より高い。「ナンブコムギ」は麺用品種であるが2つのグループの中間の値 を示し、パン用品種である「ニシノカオリ」のグルテニン/グリアジン比はタンパク質含有率が9~12%では麺用品種と同程度である(図2)。
  • 全試料でのタンパク質含有率とグルテニン/グリアジン比の関係は、y = -0.0324x + 1.72、決定係数R2= 0.196(1%レベルで有意)となることから、窒素追肥により子実タンパク質含有率が高くなるに従い、グルテニン/グリアジン比が低下する。

成果の活用面・留意点

  • パン用品種の育種では、SDS-セディメンテーション値などでタンパク質の特性を評価しているが、本成果情報によりタンパク質組成の品種間差の新たな情報として活用できる。
  • 図1に示したタンパク質分画法では、アセトン沈殿などの影響によって窒素の回収率は約90%程度である。

具体的データ

図1 子実タンパク質分画法概略図

 

表1 供試試料

 

図2 子実タンパク質含有率上昇によるグルテニン/グリアジン比の変化

 

その他

  • 研究課題名:温暖地西部における土壌管理に基づいた小麦子実蛋白質含量の制御
  • 課題ID:06-08-04-*-12-03
  • 予算区分:ブラニチ1系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:木村秀也、山内稔