すっきりした酒が醸造できる低グルテリン酒米新品種「みずほのか」(旧系統名「中国酒185号」)

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要約

水稲「みずほのか」は、温暖地西部において中生熟期の低グルテリン形質の酒米系統である。αアミラーゼ等を含む清酒もろみ用酵素処理を併用した醸造法によりアミノ酸度の低いすっきりした酒ができ、原料利用効率も高くなる。

  • キーワード:イネ、低グルテリン、酵素処理、酒米、醸造、アミノ酸度、原料利用効率
  • 担当:近中四農研・米品質研究近中四サブチーム・低コスト稲育種研究近中四サブチーム
  • 連絡先:電話084-923-4100、電子メール wenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

各種の廉価な酒類との競合もあり、日本酒の消費量は年々低下しており、清酒酒造メーカーの収益の確保が厳しい時代となっている。日本酒の生産費に米の価格が占める割合は高く、酒造メーカーとしては原料を節約しつつ、良質な酒を生産する技術の開発が必要とされている。雑味の少ない良質な酒の醸造には低タンパク質の米が適しているので、可消化性タンパク質割合の低い低グルテリン形質をもった多収の酒米品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 水稲「みずほのか」は低グルテリン米の「エルジーシー1」と酒造好適米の「兵庫北錦」の交配後代から育成された低グルテリン形質を持った酒造好適米である。
  • 育成地における普通期栽培での出穂期は「兵庫北錦」より7日遅く、「日本晴」と同等の“中生の中”に属する粳種である(表1)。
  • 整粒千粒重は26g程度の大粒で、心白の発現率が高く、「兵庫北錦」より多収である(表1、2)。
  • 酒の仕込みにおいて、αアミラーゼ等を含む清酒もろみ用酵素剤を添加することにより、通常の醸造法において低グルテリン米を用いることで発生する特異香を抑制することができる(データ省略)。
  • 酵素剤を添加した時の消化性試験では、糖度値が高く、よく溶解しているにもかかわらず、可消化性タンパク質割合が低い低グルテリン形質のためフォルモール窒素量は低く、アミノ酸度が低い酒が得られやすい(表2)。
  • 麹米と掛米に「みずほのか」を用いた清酒もろみ用酵素剤添加による大規模の醸造において、アミノ酸度が低く、すっきりした良質の純米酒が得られ、粕歩合が低く原料利用効率が高くなる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 適応地帯は関東以西の温暖地である。いもち病抵抗性は強くないのでいもち病防除は適正に行う。
  • 清酒醸造に低グルテリン米を用いることには、特許「酒類の製造方法」(特許登録3357478)が適用され、低グルテリン米に酵素剤を添加して清酒を醸造する手法には特許「清酒の製造方法」(特許登録3721422)が適用される。
  • 2007年度は滋賀県新旭町にて、3haの作付けが予定されている

具体的データ

表1 特性一覧表

表2 酒造特性一覧表

その他

  • 研究課題名:可消化性たんぱく質低減米等特別用途向き水稲育種素材の開発と品種育成
  • 課題ID:221-d
  • 予算区分:ブランドニッポン5系・加工プロ4系
  • 研究期間:1995~2006年度
  • 研究担当者:飯田修一、春原嘉弘、出田収、松下景、前田英郎、根本博、石井卓朗、吉田泰二、中川宣興、坂井真