F(ab')2フラグメントを用いたTAS-ELISA法によるメロン黄化えそウイルスの検出

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

コーティング抗体にF(ab')2フラグメント、2次抗体にIgG、3次抗体に酵素標識プロテインAを使用したTAS(三重抗体)-ELISA法は、DAS-ELISA法より高感度で、メロン黄化えそウイルスを媒介するミナミキイロアザミウマの保毒虫検定に有効である。

  • キーワード:F(ab')2フラグメント、TAS-ELISA法、メロン黄化えそウイルス、保毒虫検定
  • 担当:近中四農研・レタスビッグベイン研究チーム、愛媛農試・生産環境室
  • 連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

キュウリ黄化えそ病の病原ウイルスであるメロン黄化えそウイルス(MYSV)はミナミキイロアザミウマによって媒介される。本病 の適切な防除を行うには、キュウリ栽培期間中の本病の発生消長に加えて、媒介虫での保毒虫率の動向を把握することが重要である。現在、保毒虫率の検定は、 遺伝子診断法で行われているため、多試料の検定は煩雑となっている。一方、多試料検定が容易であるDAS-ELISA法では、十分な反応が得られず、判定 が難しい。そこで、ウサギで作製したIgGからF(ab')2フラグメントを作製し、IgGとF(ab')2フラグメントを用いて高感度なTAS-ELISA法を確立し、現地で発生する媒介虫の保毒状況を把握できる多試料検定法を開発する。

成果の内容・特徴

  • TAS-ELISA法は、通常、ウサギとマウスで作製した抗体等、2種類の抗体を必要とするが、F(ab')2フラグメントを使用することでDAS-ELISA法と同様に1種類の抗体での検定が可能である。
  • F(ab')2フラグメントの力価はFcフラグメント除去前のIgGとほぼ同じである。
  • TAS-ELISA法による検定はDAS-ELISA法と同様に2日間で終了する(図1)。
  • TAS-ELISA法はDAS-ELISA法と比較して、感度が約16倍高くなる。TAS-ELISA法による罹病葉磨砕液での検出希釈限界は、25,600倍である(図2)。
  • TAS-ELISA法と遺伝子診断法(RT-PCR)とで保毒虫検定結果を比較すると、ほぼ同等の結果が得られる(表1)。一方、DAS-ELISA法では、ミナミキイロアザミウマ体内のMYSV濃度が低い場合には検出できない。

成果の活用面・留意点

  • F(ab')2フラグメントは、IgGをペプシン処理することで容易に得られる。MYSV-IgGは日本植物防疫協会から、F(ab')2フラグメント作製及び精製キットはPIERCE社から、コンジュゲートのアルカリフォスファターゼ標識プロテインAはSIGMA社から販売されている。
  • 試料調製液、抗体の希釈液として用いるPBSTに5%(v/v)ブロッキングワン(ナカライテスク株式会社)を添加することで非特異反応を十分に抑えることができる。
  • F(ab')2フラグメントを用いたTAS-ELISA法はMYSVの保毒虫検定に限らず、低濃度のウイルス検出に有効な検定法である。

具体的データ

図1 F(ab')2フラグメントを用いたTASELISA法の手順 図2 TAS-ELISA法とDAS-ELISA法によるキュウリ葉からのMYSV検出感度の比較。

表1 ELISA法およびRT-PCRによる媒介虫からのMYSV検出

 

その他

  • 研究課題名:病害虫抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 課題ID:211-j
  • 予算区分:基盤研究費、委託プロ(高度化事業)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:石川浩一、楠元智子(愛媛農試)