黒毛和種母牛の乳ムチン遺伝子型は哺乳子牛の初期発育に影響する

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要約

黒毛和種母牛の乳ムチン遺伝子の縦列反復配列型間で子牛の発育性を比較すると、VNTR9/14型とVNTR14/14型はVNTR9/9型より生後20日齢での日増体率及び日増体量が高い。

  • キーワード:肉用牛、黒毛和種、乳タンパク質、ムチン、MUC1、VNTR
  • 担当:近中四農研・粗飼料多給型高品質牛肉研究チーム
  • 連絡先:電話0854-82-0144
  • 区分:近畿中国四国農業・畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

哺乳期における子牛の疾病による損耗は、その後の発育に大きく影響を及ぼす。乳タンパク質の一種であるムチン(乳ムチン)は、感 染防御、微生物増殖抑制等の機能を担う糖タンパク質であり、その遺伝子(MUC1)は翻訳領域に縦列反復配列(VNTR:1反復単位は20アミノ酸)構造 を持つ。このVNTR領域は乳ムチンの機能発現に必須の糖鎖が結合する主たる領域である。
  そこで、MUC1-VNTR型による乳ムチン機能の差異を評価するために、哺乳期における子牛の発育性を指標として、異なるMUC1-VNTR型を持つ母牛の産子間で比較を行う。

成果の内容・特徴

  • 生後20日齢でのDG(%/day)では、初産子を含めるとVNTR9/9(1.31±0.33)とVNTR9 /14(1.61±0.57)間で、また、初産時において哺乳能力に母牛間差がある場合を仮定して、初産子を除いて解析するとVNTR9 /9(1.25±0.29)とVNTR9/14(1.55±0.49)及びVNTR14/14(1.55±0.38)間で有意差が認められる(表1)。
  • 生後20日齢でのDG(kg/day)では、初産子を含めるとVNTR9/9(0.51±0.05)とVNTR9 /14(0.62±0.08)間で、また、初産子を除くとVNTR9/9(0.50±0.05)とVNTR14/14(0.61±0.04)間で有意差が 認められる。
  • 生後30、40、50、60日齢においては、VNTR型間で有意な差は認められない(図1)。また、産子の雄雌間において検討したところ有意差は認められない。

成果の活用面・留意点

  • 供試牛は大田研究拠点で生産された牛群である。母牛(n=46)を3群(VNTR9/9、VNTR9/14、VNTR14/14:数字は反復数)に分け、それぞれの産子(n=165、生年:1998~2007年)(表2)で日増体率(DG(%/day))及び日増体量(DG(kg/day))を比較したものである。実測体重(n=863)より、生後20、30、40、50、60日齢での推定体重を算出している。
  • 乳ムチンの機能的特性とMUC1-VNTR領域の変異との関連性を解析する上での基礎的知見として活用できる。
  • 乳ムチンの機能評価をより詳細に行うには、他のMUC1-VNTR型についての同定と解析が必要である。

具体的データ

表1 生後20日齢でのDG(%/day)におけるMUC1-VNTR型間の比較

 

図1 MUC1-VNTR型間におけるDG(%/day)の推移

 

表2 供試した母牛数と出生年次別の子牛頭数及び実測体重計測数

その他

  • 研究課題名:中山間地域の遊休農林地等における放牧を活用した黒毛和種経産牛への粗飼料多給による高付加価値牛肉の生産技術
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2007年度
  • 研究担当者:山本直幸、大島一修、小島孝敏