ヤギは牛の好まない草地雑草スイバを好食する

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要約

放棄された農耕地や草地等に多頻度に出現するスイバを、放牧牛が採食する頻度は著しく低いが、放牧されたヤギは特異的に選択採食する。

  • キーワード:ヤギ、牛、スイバ、放牧、嗜好性、雑草
  • 担当:近中四農研・粗飼料多給型高品質牛肉研究チーム
  • 代表連絡先:0854-82-0144
  • 区分:近中四農業・畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

放棄農林草地の保全と畜産的活用を目的に、牛の放牧が盛んに行われ、大きな成果が得られている。その際の解決すべき課題として、牛の不食草本の繁茂と、それに起因する経年的な牧養力の低下や景観の悪化等が挙げられる。スイバ(Rumex acetosa L.)は放棄農林地や低利用草地に多頻度に出現し、特に春先の繁茂が旺盛なため、春の草地更新の障害や収量低下を招く草地の有害雑草の一つである。そこで、スイバに対する牛とヤギの採食特性を放牧条件下で比較し、牛の不嗜好性植物の繁茂抑圧に対するヤギ等の異畜種の放牧の有効性を検証する。

成果の内容・特徴

  • 春の放牧試験開始直後、ヤギは多様な草種の中からスイバを特異的に選択して採食する。逆に、牛はスイバを選択的に忌避し、採食を全く行わない。ヤギのスイバに対する採食頻度は他草種の採食頻度の合計より0.1%水準で有意に高く、逆に牛のそれは0.1%水準で有意に低い(表1)。
  • 放牧試験期間終了後、被食痕を有するスイバの全個体数に占める割合は、ヤギ放牧区95%、牛放牧区8%で、ヤギ区の方が著しく高い。ヤギ放牧区と牛放牧区間において、被食痕の有無別スイバ個体数に0.1%水準で有意差が認められる(図1)。
  • 放棄農林地植生を構成する多様な草種の中から、放牧されたヤギはスイバに対して著しく高い嗜好性を示すが、放牧牛は逆に顕著な不嗜好性を示す。

成果の活用面・留意点

  • 牛が放牧される放棄、あるいは低利用農林草地の植生管理、特に牛の不食植物の管理のための基礎資料となる。
  • 放牧試験地は牛とヤギで異なっていたが、その植生類似度は高く、どちらも優占草種はヨモギ、ヒメムカシヨモギ、クサイ等の放棄農林地植生を代表する典型的植物種で占められている。
  • 供試家畜は、黒毛和種去勢牛とシバヤギ系小型雑種雌ヤギである。

具体的データ

表1.春放牧開始直後におけるスイバと他草種合計の採食頻度

図1 春の放牧終了後における各畜種の採食痕の有無別スイバ個体数

その他

  • 研究課題名:中山間地域の遊休農林地等における放牧を活用した黒毛和種経産牛への粗飼料多給による高付加価値牛肉の生産技術
  • 課題ID:212-d.3
  • 予算区分:基盤
  • 研究機関:2006年度
  • 研究担当者:福田栄紀(東北農研)
  • 発表論文等:福田栄紀 (2008) 日草誌 54 (1) : 40-44