飼料イネ品種「クサノホシ」に由来する漏生イネの出芽率は秋耕で低下する

要約

「クサノホシ」を黄熟期に収穫して種子を圃場に散播すると、冬季や春季のみ耕起するよりも秋耕で漏生イネの出芽率は低下する。年内の有効積算気温100°C日(下限温度10°C)以上確保できる秋季に土中に埋没させた種子は発芽・枯死して発芽率が低下する。

  • キーワード:飼料イネ、クサノホシ、漏生イネ、秋耕、種子、越冬
  • 担当:近中四農研・稲収量性研究近中四サブチーム(兼:中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム)
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料イネの機械収穫では、相当量の種子が収穫ロスとして圃場に残留する。残留した種子に由来するイネ(漏生イネ)の発生は、一般食用品種を栽培する際に玄米混入の問題を招く恐れがある。しかし、飼料イネ種子の越冬能力に関する知見は乏しく、漏生イネの防除方法は確立されていない。そこで、暖地・温暖地において広く普及している「クサノホシ」を用い、土壌表面および土中で越冬させた種子の発芽能力や種子を土中に埋没させる時期が越冬後の発芽能力に及ぼす影響などを明らかにし、漏生イネの防除技術に資する。

成果の内容・特徴

  • 黄熟期に収穫した飼料イネ品種「クサノホシ」の種子を圃場に散播し、10月中旬に1回、耕耘機で耕起した水田における漏生イネの出芽率(出芽個体数/秋季に散播した種子数)は、春季のみ耕起した場合と比較して4分の1以下に低下する(図1)。しかし、12月上旬に耕起しても漏生イネの出芽率は低下しない。
  • 越冬後の発芽率は、種子を土壌表面で越冬させるよりも、10月中旬~11月上旬に深度15cmの土中に種子を手作業で埋設することにより、20分の1から2分の1に低下する(図2)。しかし、11月中旬以降に埋設しても越冬後の発芽率は低下しない。
  • 土中に埋設して越冬させた種子には発芽痕が確認でき、発芽痕のある種子の割合が高いほど越冬後の発芽率は低い傾向にある(図3)。したがって、秋季の発芽可能な期間に種子を土中に埋没させると吸水・発芽し、冬季の低温で枯死すると考えられる。発芽痕のある種子の割合は、年内の有効積算気温が100°C日(下限温度10°C)まで高まるが、それ以降の増加は認められない(図3)。
  • 恒常的に乾燥した土壌(pF3.0以上)中で越冬させた種子は、発芽率が63~93%であるが、種子を土中に埋設し、10月中旬に湛水することによって越冬後の発芽率は0~5%に低下する(図4)。
  • 以上より、「クサノホシ」の種子に由来する漏生イネの出芽率は、年内に100°C日(下限温度10°C)以上の有効積算気温が得られる時期に耕起することによって低下させることができる。出芽率を低下させる効果は湛水処理の併用でより高まる。

成果の活用面・留意点

  • 飼料イネ品種「クサノホシ」を栽培した圃場において、漏生イネの防除法の一つとして活用できる。
  • 近中四農研の水田圃場(広島県福山市、標高2m、細粒灰色低地土)における調査結果であり、耕起回数や砕土率等の影響は土壌の排水性を含め別途検討が必要である。
  • 中国地域で10月10日の耕起を想定する場合、過去5年間のアメダスデータによると、年内の有効積算気温100°C日(下限温度10°C)を得られるのは標高300m未満である。
  • 「クサノホシ」以外の飼料イネ品種で種子の休眠性が強い場合は、秋季に種子を土中に埋没させても越冬後の発芽率の低下程度は小さいので留意する。

具体的データ

図1 耕起時期が漏生イネの出芽に及ぼす影響

図2 種子を土中に埋設する時期が越冬後の発芽率に及ぼす影響

図3 種子を土中に埋設してからの年内の有効積算気温と越冬後の発芽率および発芽痕のある種子の割合との関係

図4 種子の埋設時期・湛水時期が越冬後の発芽率に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
  • 中課題整理番号:212b.4
  • 予算区分:委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:大平陽一、佐々木良治