ナミテントウ成虫の飛翔不能化による露地での定着率の向上

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要約

遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウは、飛翔能力を持つナミテントウよりも露地栽培圃場内に長く定着し、ワタアブラムシの増殖を抑制する。

  • キーワード:ナミテントウ、飛翔不能化、露地
  • 担当:近中四農研・特命チーム員(総合的害虫管理研究チーム)
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

アブラムシは野菜、花き、および果樹における難防除害虫である。施設栽培においては、アブラムシを対象とする天敵昆虫の生物農薬がこれまでに複数登録され利用が拡大している。一方露地栽培では、登録されている天敵昆虫の生物農薬はなく、そのため天敵放飼によるアブラムシ防除は行われていない。その主な原因として、開放系である露地では放飼した天敵昆虫が分散して圃場から離れやすいことが挙げられる。アブラムシの捕食性天敵であるナミテントウもまた、飛翔分散能力が高いために定着率が低いという問題が指摘されている。そこで飛翔能力を欠くナミテントウ系統の、ナスの露地栽培条件下でのアブラムシ防除手段としての効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ナスの露地栽培条件下で、飛翔能力を欠くナミテントウ成虫は飛翔能力を持つナミテントウ成虫よりも長く圃場内に留まる(図1)。
  • 飛翔能力を欠くナミテントウ成虫を株あたり2頭の密度で放飼した露地(飛翔能力無区)では、飛翔能力を持つナミテントウ成虫を同じ密度で放飼した露地(飛翔能力有区)よりもワタアブラムシの増殖が抑制される(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 飛翔能力を欠くナミテントウは2010年2月現在、農薬取締法に基づく登録がされていないので、試験研究以外には使用できない。
  • 飛翔能力を欠くナミテントウは、他の野菜・花卉類の露地および施設栽培でも活用できる。
  • 飛翔能力を欠くナミテントウは、ワタアブラムシだけでなく他のアブラムシ類に対しても有効である。
  • 飛翔能力を欠くナミテントウは、露地栽培圃場周辺の土着天敵の発生数が少ない時期において特に有用である。
  • 栽培作物の収益とアブラムシ防除のコストを考慮した上で、飛翔能力を欠くナミテントウの利用方法を検討する必要がある。
  • 飛翔能力を欠くナミテントウの生存率や繁殖能力の低下を防ぐための、品質維持管理手法を開発する必要がある。

具体的データ

図1 露地ナスにおける,放飼後のナミテントウ成虫の定着率の推移とワタアブラムシ数の変化

その他

  • 研究課題名:土着天敵等を活用した虫害抑制技術の開発
  • 中課題整理番号:214f
  • 予算区分:基盤、実用技術、科研費
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:世古智一、三浦一芸、山下賢一(兵庫農総セ)
  • 発表論文等:Seko et al. (2008)Biol. Control 47(2):194-198