アブラムシ防除のためのバンカー植物としてソルガムを用いる場合に適する代替餌

要約

高温環境下におけるアブラムシ防除のためのバンカー法において、耐暑性の高いソルガムをバンカー植物として利用する場合、代替餌は15~30°C程度の温度域で内的自然増加率が高い種である必要があり、ヒエノアブラムシが有力である。

  • キーワード:バンカー法、バンカー植物、代替餌、ソルガム、アブラムシ防除
  • 担当:近中四農研・環境保全型野菜研究チーム
  • 代表連絡先:電話 0773-42-0109
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

施設野菜栽培で問題となるアブラムシ類に対して、バンカー植物としてムギ類、代替餌としてムギクビレアブラムシ、天敵としてコレマンアブラバチを利用するバンカー法が普及している。しかし、施設内が高温になる季節にはムギ類が十分に生育せず、効果を発揮しない恐れがある。また、春から秋にかけての温暖な季節には二次寄生蜂類が発生して効果が低下するため、コレマンアブラバチに代わる天敵としてショクガタマバエの利用が有望視されている。そこで、バンカー植物の候補として耐暑性の高いソルガム(ソルゴー、一般種、タキイ種苗(株))、代替餌の候補としてショクガタマバエの寄主範囲に含まれている4種のアブラムシ類:トウモロコシアブラムシ、ヒエノアブラムシ、ムギクビレアブラムシ、ムギミドリアブラムシ(以下、それぞれトウモロコシ、ヒエノ、ムギクビレ、ムギミドリと略)を用い、ソルガム上でのこれらのアブラムシ類の増殖特性を比較し、高温環境下でも効率的に増殖する代替餌を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 15°Cではアブラムシ類の生存率に有意な差が見られ(表1)、ムギミドリの生存率が他の3種に比べて有意に高いが(データ省略)、20、25、30°Cではアブラムシ種間の生存率に有意な差は見られない。
  • 15~30°Cの温度環境ではヒエノの生涯産仔数が他のアブラムシ類に比べて有意に多い(図1)。
  • 15~30°Cの温度環境ではヒエノの内的自然増加率が他のアブラムシに比べて有意に高い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • ソルガムの播種には日平均気温が16°C以上となる時期が適しているため、ソルガムとヒエノアブラムシを組み合わせたバンカー法は、果菜類の半促成栽培など、比較的作期が長く、栽培期間中に高温期を経過する作型に適しているが、無加温で夜温が低温となる時期には適さない。
  • 促成栽培や無加温の夏秋栽培において16°Cを下回る低温環境となる時期には、バンカー植物としてムギ類、代替餌としてムギクビレ、天敵としてコレマンアブラバチを組み合わせたバンカー法が適している。
  • ソルガムとヒエノアブラムシを組み合わせたバンカー法の実用化にあたっては、本成果をもとに、実際の栽培環境下においてソルガムを株として栽培し、アブラムシ類の増殖を確認する必要がある。
  • ショクガタマバエをバンカー法に利用する際は、用いようとする代替餌アブラムシを餌とした場合のショクガタマバエの発育および増殖特性、産卵選好性などをあらかじめ確認する必要がある。

 具体的データ

表1 温度条件の違いがソルガムで飼育した4種の アブラムシの生存率に及ぼす影響;アブラムシの 種の違いを主効果とした生存時間分析の結果

図1 温度条件の違いがソルガムで飼育 した4種のアブラムシの生涯産仔数に 及ぼす影響

表2 温度条件の違いがソルガムを餌とした4種のアブラ ムシの内的自然増加率に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:中山間・傾斜地における環境調和型野菜花き生産技術の開発
  • 中課題整理番号:214u
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2008~2010 年度
  • 研究担当者:安部順一朗、熊倉裕史