直売所における切り花の需給ミスマッチを改善するための技術開発目標

要約

直売所で販売される切り花の需給ミスマッチの改善には、3日以内の範囲で開花の促進と遅延を可能とする技術が必要である。この技術に加え、直売所が需給状況の伝達等を実施すると、出荷者・直売所・来店者の三者それぞれにメリットが期待できる。

  • キーワード:直売所、切り花、需給ミスマッチ、開花調節
  • 担当:経営管理システム・ビジネスモデル
  • 代表連絡先:電話 084-923-4100
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・営農・環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農産物直売所(以下、直売所)では切り花販売が好調である。しかし、需要が休日へ集中する傾向があるなかで切り花の生育・収穫を休日に集中させることは困難なため、残品や欠品が発生する需給ミスマッチ問題が表面化している。この問題を改善するため、簡易な開花室による直売所出荷向け切り花の開花調節技術の実現が期待されており、開発が進められている。そこで、この技術の到達目標として問題の改善に必要な開花調節日数の範囲と、残品や欠品の解消程度を明らかにする。また、開花調節技術を導入した場合の直売所における切り花販売の改善方向を事前検討する。

成果の内容・特徴

  • 残品や欠品の発生程度を、各曜日が収穫ピークとなった場合の収穫量と、直売所の複数年の需要量を組み合わせ、数理計画法により試算すると、1)開花が調節されない場合、平均で約4割の過剰(残品)と不足(欠品)が生じる可能性がある。これに対して、2)簡易な開花室を1つ設置して開花調節技術を導入すれば、過剰と不足の程度を概ね半数以下に削減でき、3)開花室を2つ設置すれば、過剰と不足を概ね解消できる(表)。
  • 開花を調節する場合、開花室が1つ・2つのいずれでも、「調節日数」に-3から+3が多い。このことから、技術開発目標としては3日以内の範囲で開花の促進と遅延を可能とすることが必要である。4日以上の調節の必要性は低い(表)。
  • 開花調節技術を導入した場合の直売所における切り花販売の改善方向として、次の2点が考えられる。1)需給ミスマッチは直売所で販売する時に表面化するので、直売所スタッフが需給に関する情報を出荷者に伝達し、調整する仕組みが必要である。2)直売所が需要を予測する技術を導入して、予測に基づいた出荷目標を立てるとより効果的である(図)。
  • この改善方向により、出荷者・直売所・来店者の三者に次のメリットが期待できる。1)出荷者:過剰な生産と残品発生の抑制による切り花生産費の削減、欠品発生の抑制による切り花販売額の増加。2)直売所:欠品発生の抑制による切り花販売額と手数料収入の増加、残品発生の抑制による売場管理コストの削減。3)来店者:欠品発生の抑制による購入機会損失の減少、残品発生の抑制による平均的な陳列期間の短縮がもたらす日持ちの良い商品の購入(図)。

成果の活用面・留意点

  • 直売所切り花の需給ミスマッチを改善するための技術開発の方向性・目標水準を示す。
  • 開花調節および需要予測技術は実用技術開発事業(課題番号22072)で開発中である。
  • 開花調節技術に係るコストは、出荷者にもたらすメリット(切り花の生産費削減と販売額増加)を上回らないようにする必要がある。

具体的データ

表 様々なケースにおいて開花調節技術に求められる調節日数と過剰・不足発生程度の試算結果
図 現状と開花調節技術を導入した場合の改善方向

(吉田晋一)

その他

  • 中課題名:地域農業を革新する6次産業化ビジネスモデルの構築
  • 中課題番号:114b0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:吉田晋一、平岡美紀(奈良農総セ)、角川由加(奈良農総セ)、仲照史(奈良農総セ)、豊原憲子(大阪環農水総研)
  • 発表論文等:吉田ら(2012)農業経営研究、50(1):142-147