施設共同利用型高品質カンキツ生産方式「団地型マルドリ方式」

要約

複数の生産者が水源、液肥混入システム等を共同利用する「団地型マルドリ方式」は、コストを削減できるうえ、技術的リーダーがかん水や液肥の利用方針を示すことによって参画者の技術習得が促進されるため、技術普及による産地ブランド化に活用できる。

  • キーワード:マルドリ方式、ウンシュウミカン、共同利用、低コスト、産地ブランド
  • 担当:果樹・茶・カンキツブランド化
  • 代表連絡先:電話 0877-62-0800
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・傾斜地園芸研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

高品質カンキツ栽培技術の1つであり、マルチの下に点滴チューブを敷設するマルドリ方式の導入には、初期投資や技術習得が懸念材料となっている。この対応策の1つは、施設を共同利用することである。香川県観音寺市K組合では、事業導入によって水源からの導水、点滴かん水施設や園内道が整備されたことを受け、大型の液肥混入器、液肥タンクを設置し、共同利用する「団地型マルドリ方式」を開発し、実践している。マルドリ方式の面的普及による産地ブランド化を図るため、この取り組みに基づき、本方式の特徴と管理・運用方法を整理し、他地域で取り組む際に応用可能な情報を提供する。

成果の内容・特徴

  • 「団地型マルドリ方式」は、複数の生産者が水源、液肥混入システム等を共同利用することによって、参画者がマルドリ方式に取り組めるようにする仕組みである。
  • 実施例では、12戸の生産者が参画し、約2.3ha、36筆の園地で大型の液肥混入器(最大流量:133.3L/分)、液肥タンク(3,000L)を共同利用する構造としている(図1)。団地化された園地に導入されたため、送水管が効率的に設置されている。また、水圧の関係から、園地を20程度のグループに分け、毎日、2日1巡、3日1巡のかん水ローテーションの設定によって、農業用水の効率的利用と栽培管理の適正化を図っている。
  • 液肥混入システム部分については、各園地36筆にそれぞれ小型の施設を設置する場合(A)に比べ、実施例(B)ではその52%のコストで済む(表1)。
  • 「団地型マルドリ方式」の管理・運営方法の要点は次の5点である。
    1)マルドリ方式の特徴を理解し、関連施設を操作、管理できるうえに、かん水と液肥を適切に制御することにより高品質果実を生産できる技術的リーダーが必要である。
    2)技術的リーダーがかん水ローテーションや液肥の利用期間(K組合は主力品種「石地」「青島温州」に準拠)を指示する。これにより、参画者の円滑な技術習得を促す。
    3)液肥利用に制約があるため、主力品種以外では補完的な作業(液肥の葉面散布など)を実施したり、個別の施設(図1の中晩柑用液肥混入器)を設置する必要がある。
    4)施設の利用と栽培管理のために、迅速に情報伝達できる連絡体制を整備する。
    5)共用施設の経費負担方法(K組合は面積で等分)と会計処理業務を確立(口座引き落としなど)する。
  • 参画者へのアンケート調査から、6割以上の園地における品質向上効果(図2)や、「共同意識が高まり、園地がきれいになっている」などの生産者間の関係補強効果が認められる。また、導入後4年で約2.3haのうち1/3が貸借によって担い手に集積している。

普及のための参考情報

  • 普及対象は、国内のカンキツ生産者。
  • 三重県、山口県、福岡県のカンキツ産地でおよそ50ha普及見込み。
  • マニュアルは近中四農研Webの「技術情報マニュアル」からダウンロードできる。関連技術情報は、マルドリ方式普及連絡会"http://marudori.ac.affrc.go.jp/"で随時公開予定。

具体的データ

図1 K組合の園地とマルドリ方式関連施設の設置状況

図2 K組合におけるカンキツ類の品質の変化に関する生産者の評価~共同利用施設導入前と比較して~

(齋藤仁藏)

その他

  • 中課題名:カンキツのブランド化支援のための栽培情報の高度利用生産技術と園地整備技術の開発
  • 中課題番号:142d0
  • 予算区分:交付金、大課題研究費
  • 研究期間:2008~2011年度
  • 研究担当者:齋藤仁藏、島崎昌彦、星典宏、根角博久、森永邦久、草塲新之助、平岡潔志
  • 発表論文等:齋藤ら(2011)農業経営研究、49(3):79-84