傾斜地果樹園に簡易に作業道を造成する作業道造成機

要約

作業道造成機は、掘削能力を高めた歩行型管理機と土壌の排土および整地を行う排土板から構成される。傾斜20°未満の果樹園において、幅約1.2mの作業道10mを10分で造成することができる。

  • キーワード:作業道、歩行型管理機、排土板、傾斜地果樹園
  • 担当:果樹・茶・カンキツブランド化
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・傾斜地園芸研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

傾斜地果樹園では、運搬作業などの軽労化を目的とし作業道の造成を行うが、従来、傾斜25°未満の果樹園では重機を用いた造成が行われていた。しかし、重機を用いた造成は、大規模な造成となるため、改植時などに行う必要があり、栽植済みで、かん水チューブなどが敷設された状態では、作業道の造成は困難であった。このため、栽植済みの果樹園でも利用可能な歩行型管理機をベースとし、クローラ運搬車が利用可能な幅1m超の作業道を造成可能な作業道造成機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した作業道造成機は、歩行型管理機を改造したもので、走行部は不整地、傾斜地での走破性の高いクローラ式とし、クローラ外幅680mm、ロータリー幅は800mmであり、整地を行うための幅800mmの排土板および200mmの排土板延長部で構成される(図1)。造成可能な道幅は約1.2mであり、適用可能な傾斜は20°未満である。
  • ロータリーは、なたづめで左右それぞれ12本の合計24本で、谷側に盛土を行うため、すべてのつめが谷側向きのアップカットロータリーの片排土仕様である。また、作業速度を0.8km/hから0.54km/hに低減し、ロータリーの回転数を420rpmから475rpmに上げることにより掘削能力の向上を図っている。
  • 排土板は、掘削時に生じる残耕部分の土を谷側に排土するとともに、谷側に盛土を行うため、進行方向に対し45°の向きで機体の先端部に取り付ける。この際、山側に200mmの延長部を取り付ける(図1)。
  • 作業道の造成は、造成を行う場所の雑草を除去したのち、12作業道造成機で同じ場所を2回掘削した後、機体前方に排土板を取り付け、2山側を1回整地しながら残耕を谷側に排土することにより盛土する。32回目は谷側に盛土された場所を整地し、4最後にクローラで谷側の盛土を鎮圧する(図2)。作業能率は、幅約1.2mの作業道10mを10分で造成することが可能である。なお、往復での作業は行えないため、作業を行う方向に応じて、ロータリーを交換するとともに、排土板の角度を変更する必要がある。
  • 作業道造成機は、重機(1.4tクラスのバックホー)を用いるより効率よく造成可能である(図3)。また、重機の利用が困難な栽植済みの果樹園で利用可能であり、未栽植時には、階段状に栽植場所を整備することができる(図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:果樹生産者、JA等営農支援機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:傾斜20°未満の果樹園、普及台数等についてメーカーと協議中。
  • その他:メーカーと市販価格、販売時期等を協議中。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:カンキツのブランド化支援のための栽培情報の高度利用生産技術と園地整備技術の開発
  • 中課題整理番号:142d0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:中元陽一、田中宏明
  • 発表論文等:田中ら「排土板及び排土装置」 特許第5845800号 (2015年12月4日)