平成13年度計画

 

I 業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置

 

1評価・点検の実施
1)外部専門家・有識者等を活用し、毎年度報告に先立ち、自ら点検を行う。
2)主要な研究については、研究の推進方策・計画及び進捗状況の点検を行うとともに、外部専門家・有識者等の意見を聞いて成果の評価を行い、その結果は研究資源の配分に反映させるとともに公表する。
3)評価項目、評価基準を定める等公正さを確保しつつ、研究職員の業績評価を行い、その結果は処遇、研究資源の配分に反映させる。
2研究資源の効率的利用
1)中期計画達成に有効な競争的資金には積極的に応募し、研究資源の充実を図る。
2)研究資源の効率的・重点的な配分を行う。
3)施設、機械等の有効利用及び共同利用に努める。
3研究支援の効率化及び充実・高度化
1)高度な知識及び技術を有する研究支援者の計画的な配置、職務に応じた任用や処遇のあり方を検討するとともに、これら職員の資質の向上に努める。また、現業業務に携わる職員については、一層の資質向上と併せて、管理的業務・専門的業務への重点的な配置を図る。
2)特許、品種登録等の知的所有権の取得・移転に係る支援態勢を強化する。
3)研究情報収集・提供業務の効率化、充実・強化を図る。
4)施設、機械等の保守管理については、業務の性格に応じて外部委託に努める。
4連携、協力の促進
(1)他の独立行政法人との連携、協力
1)他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人事交流を含めた連携、協力を積極的に行う。特に、発展途上地域における農業技術研究の協力・支援にあたっては、国際農林水産業研究センターとの連携を図る。
2)緊急に解決を要する重要な技術課題として「安全性に配慮した実用的な病害抵抗性組換えイネ系統の開発」、「トリプトファン含量の高い飼料用イ ネの開発」及び「臭化メチル全廃に対応するための果樹害虫制御技術の開発」の3課題を選定し、中央農業総合研究センター、作物研究所及び果樹研究所におい て研究を開始するため、他法人の協力を得る。

(2)産学官の連携、協力
1)国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究及び研究者の交流等を積極的に推進する。
2)研究を効率的に推進するため、行政との連携を図る。
3)科学技術協力に関する政府間協定等を活用し、先進国等との共同研究を推進する。
4)国の助成により公立機関等が実施する研究等への協力を行う。
5)毎年度定期的に、関係独立行政法人、行政部局、都道府県等の参加を求めて、専門別、地域別に研究推進のための会議を開催し、相互の連携・協力のあり方等について意見交換等を行う。

5管理事務業務の効率化
事務の簡素化と迅速化を図るために、LAN等を有効に利用するとともに、会計処理、発注業務の電子化を進め、事務処理に係わる新たなソフトウエア等の導入を行う。
6職員の資質向上
1)業務上必要な各種の研修に職員を積極的に参加させるほか、必要な研修を実施し、職員の資質向上に努める。また、業務上必要な資格取得を支援する。
2)各種制度を積極的に活用し、職員の在外研究の機会増加に努める。
3)博士号の取得を奨励し、適切な指導を行う。


 

II 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置

 

1試験及び研究並びに調査

A 農業技術開発の予測と評価手法の開発研究

(1)食料・農業・農村等の動向解析による農業技術開発方向の解明
1)農業技術開発の中長期的方向の解明のための調査分析
担当:総合企画調整部
研究計画:農業技術開発に関する諸情勢、ニーズ、動向の分析を行う。また、主要分野におけるこれまでの農業生産技術の開発過程を検証、分析することによって、農業技術開発の中長期的方向を明らかにする。

(2)農業技術が国民経済、社会生活に及ぼす多様な波及効果の評価手法の開発
1)農業技術の社会的・経済的評価のための適用手法に関する調査研究
担当:総合企画調整部
研究計画:農業技術が及ぼす多様な波及効果、消費者の技術の受容性などを評価するための社会的・経済的評価手法の適応可能性を検討するとともに、持続的農業技術の評価手法の開発に取り組む。

B 多様な専門分野を融合した総合的な研究
(1)安全性に配慮した実用的な病害抵抗性組換えイネ系統の開発
1)障害特許技術を回避した実用的な遺伝子導入技術の開発
担当:総合企画調整部(中央農業総合研究所北陸地域基盤研究部)
研究計画:アブラナ科野菜から単離した複数のディフェンシン遺伝子及び改変したディフェンシン遺伝子を酵母に導入してinvitro合成したタン パク質を用いていもち病菌や白葉枯病菌等に対する抗菌活性を評価して有効な遺伝子を選定するとともに、遺伝子が導入された組換えイネの病害抵抗性を検定す る。また、複数のイネ用MATベクターを構築し、遺伝子導入条件の検討と最適化を図る。

(2)トリプトファン含量の高い飼料用イネの開発
1)種子稔性とトリプトファン含量の高い形質転換体作出
担当:総合企画調整部(作物研究所稲研究部)
研究計画:種子と植物体のトリプトファン含量が高く、稔性の良い系統の固定を図り、安全性評価試験に着手する。

2)トリプトファン合成系遺伝子の飼料用イネ品種への導入と形質転換イネ作出
担当:総合企画調整部(作物研究所稲研究部)
研究計画:飼料用イネ品種にトリプトファン含量を高める遺伝子を導入し形質転換体を作出する。

(3)臭化メチル全廃に対応するための果樹害虫制御技術の開発
1)クリシギゾウムシ成虫の配偶行動の解析及び誘引生理活性物質の探索
担当:総合企画調整部(果樹研究所生産環境部)
研究計画:クリシギゾウムシ成虫防除の基礎データを得るために、配偶・集合行動を肉眼・レコーダー等により解析する。また、雌雄成虫特有の物質を探索するとともに、果実からの放出物を分析し、誘引成分を探索する。

2)クリシギゾウムシ被害軽減要因の探索
担当:総合企画調整部(果樹研究所生産環境部)
研究計画:クリ果実被害軽減のため、クリシギゾウムシに高い感染能のある天敵糸状菌を探索する。また、有用な抵抗性育種素材探索を目指して、地域、標高等の園地の立地条件の違いがクリ果実被害程度に及ぼす影響を明らかにする。

C 共通専門研究・中央地域農業研究
1)本州中部地域における土地利用高度化をめざした総合研究の推進

(1)大豆、麦、水稲の省力安定多収生産を基軸とした輪作営農体系の確立
1)大豆、麦、水稲の不耕起播種栽培を中心とする省力水田輪作体系の確立
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:大豆の発芽・苗立ちの安定化を図るための湿害対策として、圃場傾斜化等の排水技術や種子・土壌消毒法を開発する。また、雑草制御に有効な狭畦栽培法を確立し、これらを組み合わせて大豆の不耕起省力安定生産の技術化に取り組む。

(2)ニンジン、レタスの養分吸収特性に基づく適正施肥技術並びに太陽熱処理等耕種的病害虫防除による環境負荷軽減型露地野菜生産体系の確立
1)レタス-ニンジン体系における環境保全型生産技術の開発
担当:中央農業総合研究センター環境保全型農業研究官
研究計画:ニンジン作付前の太陽熱処理による線虫及び雑草抑止効果について、気象・地域等の適応条件を明らかにし、農薬使用量の削減技術とレタス-ニンジン体系における適正施肥技術を開発し、マニュアルを作成する。

2)環境保全型農業技術体系を導入した野菜作経営モデルの策定
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:ニンジン作における減化学肥料・減農薬技術体系を取り込んだ経営モデルを数理計画法を利用して策定し、当該技術の経営的評価を行う。

(3)新移植方式による水稲移植栽培の省力・軽労化技術の開発
1)苗マットの改良による省力・軽作業水稲移植栽培技術の開発
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:ロングマット水耕苗の地上部特性や苗マットの物性を改良し、欠株を減少させる。さらにマルチステージ苗については、苗のステージ別生育特性を調査する。

(4)関東東海地域における野菜産地の生産・出荷システムの再編戦略の開発
1)多品目野菜産地の製品戦略と生産体制の解明
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:量販店ニーズに対応して多品目の野菜を供給している産地の製品戦略(品揃、品質・規格、包装、ロット等)とこれを支える生産体制(農家構成、組織・指導体制、技術体系等)を先進地調査を通じて解明する。

(5)東海地域の施設トマト生産における施設内環境の快適化技術の開発と培養液窒素を系外に出さない環境負荷軽減型生産体系の確立
1)施設トマト生産における担い手確保条件の解明、環境負荷軽減型生産体系の経営指標の策定及び熱水土壌消毒技術の開発
担当:中央農業総合研究センター経営計画部、病害防除部
研究計画:施設トマト生産において担い手として重要な女性労働の役割を解明し、対象地域の農家に対して施肥量、排液量、労働・環境問題等について 調査を行い、快適・環境負荷軽減型生産システムの導入条件を整理する。また、熱水処理がトマトの生育に及ぼす影響、各種土壌における熱水の浸透様式を調査 する。

(6)稲麦二毛作限界地帯における飼料用イネの資源循環型生産技術の開発
1)関東飼206号の栽培特性および飼料適性の解明
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:「関東飼206号」の乾田および湛水直播適性や、直播条件における初期生育の密度反応を検討するとともに、堆肥利用を含め多肥を前提とした施肥反応を調査し、目標TDN収量1.1トン/10aに近づける栽培条件を解明する。また麦作跡の晩植適性の評価を行う。

(7)家畜ふん等各種有機質資材の特性を活用した堆肥利用技術の開発
1)各種堆肥の製造・利用システムの解析・評価
担当:中央農業総合研究センター関東東海総合研究部
研究計画:堆肥センター、酪農・養豚経営、食品産業等を調査して、各種堆肥の製造・利用システムを技術、経営面から評価する。

2)重粘土・多雪地帯における低投入型水田農業をめざした総合研究の推進

(1)大規模稲作における高品質化のための局所管理生産技術システムの確立
1)地上ベース水稲生育センシングの利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸総合研究部
研究計画:大区画圃場において、移植および直播水稲を対象に地上ベースで水稲群落の生育センシングを行い、葉面積指数、窒素保有量等の生育量の推定法を明らかにする。

(2)排水性改善技術等基盤技術を核とし、大麦・大豆・野菜等を導入した水田高度輪作技術システムの確立
1)暗きょシステムの改善による排水技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸総合研究部
研究計画:重粘土転換畑圃場において早期畑地化を図るため、通常暗きょと浅層暗きょを組み合わせ、排水性を短期間に改善する排水システムを開発する。

(3)大規模高品質稲作及び水田高度輪作に関する新技術システムの経営的評価と普及・定着条件の解明
1)排水性改善技術等を核とした水田高度輪作技術システムの経営的評価及び土地利用調整支援方策の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸総合研究部
研究計画:浅層暗きょ、重粘土耕耘装置等を核とする水田高度輪作技術システムを組み込んだ50ha規模の営農モデルを策定し、経営シミュレーショ ンにより作業性、収益性の視点から評価を行う。土地利用調整に関しては、麦・大豆等集団転作事例及び機械銀行等地域的生産システムの調査を行い、互助金制 度の運用実態を把握する。

3)農業技術の経営評価と経営体の経営管理のための研究の推進

(1)輪作体系等水田利用新技術の経営的評価と普及・定着条件の解明
1)転作作物の経営的評価のための経営分析モデルの構築
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:水田輪作営農による経営体の確立に向けて、麦、大豆、飼料作物等の転作物が有利に導入される経営的条件を明らかにするため、面積変化や価格変化を考慮したシミュレーション分析のための経営分析モデルの構築と、新技術の普及条件の解明に取り組む。

2)土地利用型経営の安定的継承条件の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:土地利用型の家族経営を対象に、後継者の参入前及び参入後における経営者の管理活動及び後継者の対応を実態調査により把握し、労働力や部門構成に応じた継承過程における経営対応の解明を行う。

(2)畜産及び園芸経営における新技術導入のための経営的費用効果の分析と手法の開発
1)耕畜連携による地域的堆肥生産・利用のための計画手法の策定
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:水田地帯にあって堆肥利用が盛んな地域の稲作農家を対象に、稲作農家における堆肥利用の経営経済的条件の分析が可能な線形計画モデルを作成し、稲作の堆肥価格負担限界額を計測する。

(3)農産物における消費者ニーズの把握手法及びマーケティング管理支援手法の開発
1)家計簿を利用した消費者の家庭内青果物消費パターンの抽出
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:消費者の家庭内における青果物の消費行動(購買動機、店舗選択、数量、価格、用途、保存期間、廃棄量など)を家計簿記帳によって把握する。このデータを用いて、多変量解析による分析を行い、青果物の家庭内消費パターンを抽出する。

(4)価格変動等のリスクを考慮した農業経営診断・計画手法の開発
1)収益変動リスク対応型経営計画評価手法の開発
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:価格変動や収量変動などの収益変動が生じた場合に、財務指標がどのような影響を受けるのかを定量的に評価できるアルゴリズムを試作する。

(5)多様な経営体育成のための地域営農システムの解明
1)多様な担い手間の有機的連携方策の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
研究計画:不安定兼業地帯及び安定兼業地帯における集落営農活動を対象に、主に組織化プロセスに関する調査を行い、両地域における担い手と集落営農の連携・協力関係の比較分析を行う。

2)農地利用集積を促進するための地域支援方策の解明
担当:中央農業総合研究センター経営計画部
年度計画:農地流動化先進地帯を対象に、担い手、調整主体、所有管理主体間の連携・協力関係についての調査を行い、借入地の団地化、借地者間の借地交換等、新たな調整課題に対する利用調整組織の機能と役割について明らかにする。

4)農業・農村の情報化と農業技術革新のための情報研究の推進

(1)農業、作物等に関する物理・化学的情報や事例・知識情報等の処理技術の開発
1)膨大・多様なデータの収集利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:気象データ、圃場データ、衛星データ等の収集・蓄積・解析手法の開発に取り組み、これら手法を応用した病害発生予察等のアプリケーションを作成する。

2)農業事例情報の収集利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:特定の対象を決めた農業事例ベースの開発に取り組むとともに、事例ベースの問題解決能力を解析・評価する。

(2)ソフトコンピューティング等による頑健で柔軟な農業情報解析手法の開発
1)曖昧で定性的な農業データ評価のための頑健で柔軟な情報解析手法の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:現場発生情報によって自己修正する柔軟な予測モデルの作成手法など、信頼性の高い判別・分類・予測手法の開発に取り組む。

(3)複雑な生物現象、物理現象、社会現象等のモデル化手法の開発
1)生物現象等のモデル化のための超分散型Webシステムの開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:生育モデル等リアリスティック・モデル開発に必要な生産現場の情報を自動収集する超分散型圃場モニタリングシステム及び計測用超小型Webサーバーのシステム設計手法の開発に取り組む。

(4)ネットワーク上に分散するコンピュータ資源の統合利用技術の開発
1)分散するモデル及びデータベースを連携させるための基盤技術の開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:気象情報仲介システムの開発に取り組み、機能拡張と安定性・セキュリティの向上を図る。また,気象情報以外のソフトウエアやデータベースを調査し,今後開発すべき仲介システムの種類や機能等を解明する。

(5)農業経営の改善や農業者の意思決定支援のための情報システムの開発
1)大規模土地利用型経営体の生産管理システムの開発
担当:中央農業総合研究センター農業情報研究部
研究計画:小規模分散多圃場の生産管理システムなど、農業者の生産管理作業を支援する情報システムの開発に取り組む。また、経営設計支援システムXLPを改良する。

5)持続的な耕地利用技術の高度化のための耕地環境研究の推進

(1)耕地の持続的利用技術の開発
1)新規導入作物の水田適応性と後作水稲の生育収量
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:新規転作作物のケナフについて、導入可能な転換畑の土壌水分条件を解明する。また、水田に導入した雑草抑制力の強いエンサイ、セスバニア等のカバークロップ跡地土壌の特性と後作水稲の生育・収量に及ぼす影響を解明する。

2)作物と土壌微生物との相互作用を活用した栽培管理技術の開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:作付前歴、有機物施用および不耕起栽培が畑作物へのアーバスキュラー菌根菌の感染、胞子密度および作物の生育・収量に及ぼす影響を解明する。また、根粒着生能が異なる大豆品種間におけるダイズ黒根腐病抵抗性の差異について要因を解明する。

(2)雑草の省力・安定管理技術の開発
1)イネ科水田多年生雑草の除草剤反応の差異の解明
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:キシュウスズメノヒエ、アシカキ、ギョウギシバ、チゴザサなどのイネ科多年生雑草について、水稲用の初期土壌処理剤および中期茎葉処理除草剤に対する反応の種間差を解明し、切断桿からの再生始期から6葉期までを対象とした種ごとの化学的防除手法を開発する。

2)麦作における強害イネ科雑草の生態解明および防除技術の確立
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:カラスムギの休眠・出芽特性の変異を把握するため、各地の麦圃場から系統を収集する。さらに代表的系統について、播種期移動、除草剤処 理、石灰窒素処理、夏作不耕起体系等への反応を解明し、総合的防除技術確立のための基礎情報を得る。また、ネズミムギ等他の問題草種についても生育特性の 解明に取り組む。

(3)生存戦略の解明に基づく環境保全型雑草管理技術の開発
1)水田用微生物除草剤の適用性評価技術の開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:ノビエを対象とした微生物除草剤候補剤(糸状菌Drechsleramonoceras)につき、除草効果に強く影響する処理時のノビ エの生育進度と必要水深の関係を、生態的特性を異にする多数のノビエ系統を用いて解明する。効果変動要因の解析をもとに、適用性確認試験での効果判定手法 を作成する。

2)畑作用土壌処理型除草剤の効果変動要因の解明および安定化技術の開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:残効期間が問題となる畑作用除草剤について、圃場試験で、薬剤消長と一年生夏雑草の生態的特性に及ぼす土壌水分の影響を年次変動も含めて解明する。さらに室内試験で、雑草の薬剤感受性および薬剤の土壌吸着性に及ぼす土壌水分の影響を解明する。

(4)気象・作物・土壌間相互作用の解明に基づく気象環境調和型作物管理技術の開発
1)小麦の気象反応の品種間差異の解明
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:日射・気温・土壌水分が調節できる簡易実験装置を使い、「あやひかり」や「農林61号」の栽培試験から登熟気象反応を解明するとともに、過去の奨励品種試験とアメダスデータとの解析と併せて、品種特性が発揮できる気象条件や好適栽培地帯を解明する。

(5)広域的な鳥害軽減手法の開発
1)ヒヨドリの渡来数予察システムの開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:ヒヨドリの食性調査から餌量を把握するのに適した樹種を選定し、簡便な調査手法を開発する。また、ヒヨドリ個体数の簡便な推定法も開発し、これらの方法による調査の協力者を募って全国的な調査に取り組む。

2)低毒性鳥類用忌避剤の早期開発
担当:中央農業総合研究センター耕地環境部
研究計画:殺虫剤等として登録されている農薬から鳥に対して忌避効果を有する薬剤を室内実験で検出できたので、さらに鳥用忌避剤としての使用方法を圃場試験によって確立する。

6)持続的・環境保全型農業生産の基盤としての土壌肥料研究の推進

(1)根域土壌の物質動態の解析による窒素等の挙動予測及び制御手法の開発
1)土壌の窒素動態に基づく小麦の窒素吸収制御モデルの開発
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:小麦の窒素吸収・収量・子実タンパク含量等をモデルで予測する手法を開発するため、耕うん処理による地力発現など、土壌の窒素動態に基づいて小麦の生育過程を解明する。

(2)土壌生産力への影響要因の解明及び土壌機能評価手法と土壌診断管理システムのフレームの検討
1)土壌の肥沃度変動要因の解明と機能評価手法の検討
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:全国の公立試験研究機関が実施した土壌養分管理・作物収量試験結果をデータベース化するとともに、これを用いて土壌タイプや土壌管理の化学的要因が土壌の作物生産力に与える影響を解明する。

(3)植物成分の機能・代謝過程の解析及び作物の栄養診断技術の開発
1)アントシアニン等機能性物質の代謝解析と栄養診断技術の開発
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:作物中の機能性物質(アントシアニン等)の代謝における品種・栽培特性を明らかにし、高品質作物生産を図るため、13CO2供与-IRMS技法を用いた作物中のアントシアニンの代謝解析法を開発する。

(4)有機質資材の有効成分評価法及び有機質資材投入の影響解析手法の開発
1)有機質資材の品質評価法の開発並びに資材の特性に応じた類型化
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:家畜ふん堆肥、生ゴミコンポスト、下水汚泥堆肥等各種有機質資材を収集し、微少熱量計、幼植物試験、培養試験等を用いて、これら有機質資材の腐熟度、肥効特性、分解特性等を評価する手法の開発に取り組む。

(5)窒素等養分循環に関与する土壌微生物代謝の定量的把握並びに微生物-植物相互作用の解明
1)有機質資材等施用下での土壌微生物の代謝作用が窒素収支に及ぼす影響の解明
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:様々な特性の有機物施用に起因する窒素環境負荷を予測するため、重窒素を用いた土壌微生物バイオマス生成と有機物特性の関連の定量的解明並びに有機物施用が脱窒に及ぼす影響の解明に取り組む。

(6)畑地における養水分動態のモニタリング並びに施設栽培排水等の資源循環型水質浄化技術の開発
1)有機質資材等施用下での硝酸性窒素等の溶脱量のモニタリング
担当:中央農業総合研究センター土壌肥料部
研究計画:土壌モノリス採取装置を用い、黒ボク土など構造の異なる数種類の土壌を不撹乱で採取し、有機質資材の特性や気象条件が硝酸性窒素等の溶脱パターンに与える影響を解明する。

7)環境と調和した持続的農業生産のための病害研究の推進

(1)イネいもち病、コムギ赤かび病等の発生予察技術の高度化と減農薬防除技術の開発
1)無病化種子、機能水消毒を核とした主要病害の総合防除技術の確立
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:水稲種子に機能水を処理し、種子伝染性病原菌(いもち病菌、ばか苗病菌、もみ枯細菌病菌、苗立枯細菌病菌)の消毒効果を最も高くする温度・浸漬時間等の条件を解明する。

(2)ウイルス等病原体と宿主植物との相互間作用の分子生物学的解析による発病機構の解明
1)ウイルス遺伝子導入作物に感染したウイルスのトランスカプシデーションとその影響の解析
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:イネ萎縮ウイルスのタンパク質遺伝子を導入した組換え体イネに、本ウイルスの数種系統を各々感染させ、複製されたウイルス粒子に、組換え体由来の導入ウイルスタンパク質が含まれるか否かを免疫電顕法及びウエスタンブロッティング法等によって解明する。

(3)土壌病原菌の感染・定着機構の解明に基づく土壌伝染性病害抑制技術の開発
1)フザリウム菌の不活化機構・感染機構の解明
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:土壌消毒後、ホウレンソウ萎凋病菌等の再汚染防止のため、非病原性フザリウム菌処理等による病原菌密度抑制機構を解明する。

(4)新発生病原菌及び系統の診断・同定技術の開発
1)リンドウの弱毒ウイルスの検出および定量技術の改良
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:多犯性のソラマメウイルトウイルスのCP領域の塩基配列を解析し、本ウイルスの強毒株、弱毒株等各系統を遺伝子増幅法によって識別する技術を開発する。

(5)臭化メチル代替防除を目指した土壌伝染性病害の総合防除技術の開発
1)トウガラシマイルドモットルウイルスの圃場診断技術の開発
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:ウイルス汚染土壌内に残存するウイルス濃度及び土壌中に埋めた罹病ピーマン組織中のウイルス濃度を経時的にELISA及び生物検定法等で測定し、土壌中におけるウイルス活性持続期間を解明する。

(6)病原体と媒介生物間相互作用の解析による媒介機構の解明
1)ファイトプラズマの媒介昆虫特異性の解析
担当:中央農業総合研究センター病害防除部
研究計画:タマネギ萎黄病ファイトプラズマの昆虫媒介能力を喪失した変異株と媒介力を有する普通株とを遺伝子レベルで比較し、両者の差異を解明する。

8)環境と調和した持続的農業生産のための虫害防除研究の推進

(1)耐虫性品種の持続的活用を柱とする省力的IPM理論と先導的技術の開発
1)バイオタイプ発達速度に及ぼす害虫の生態的特性の影響評価
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:抵抗性形質が1遺伝子座の一対の遺伝子に支配されているケースについてバイオタイプの発達を予測する汎用モデルを開発する。このモデル を解析してバイオタイプ発達速度に及ぼす害虫の行動・生活史・繁殖特性の影響を評価し、バイオタイプが発達しやすい害虫群を解明する。

(2)害虫の発生動態と加害機構の解明に基づく発生予察技術の高度化
1)アブラムシ予察技術の高度化とウイルス保毒率調査の効率化
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:アブラムシ誘殺効率の向上のため、従来型黄色水盤トラップの色彩・構造等の改善に取り組む。また、黄色水盤の誘殺液に添加するウイルス保存性の薬品を検討し、誘殺後長時間経過したアブラムシからもウイルスを検出できる技術の開発に取り組む。

(3)天敵の潜在的害虫制御能力の解析と評価法の開発
1)NPV感染力増強物質の特性解明と評価
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:ヨトウムシ類の天敵病原ウイルスである核多角体ウイルスと顆粒病ウイルスの相互作用による感染力増強効果を生物検定によって明らかにする。また、感染力増強物質の比較検討のため、ウイルス由来の感染力増強物質遺伝子の昆虫培養細胞での発現に取り組む。

(4)ダイズシストセンチュウ等の動態に及ぼす耕種的・生物的諸因子の影響解析
1)関東地域におけるダイズシストセンチュウ個体群の寄生性の解明
担当:中央農業総合研究センター虫害防除部
研究計画:採集したダイズシストセンチュウの個体群を国際判別品種に基づきレース判別する。また、抵抗性品種の効率的利用を図るため、各個体群の線虫抵抗性ダイズ品種並びに他のマメ類に対する寄生性を解明する。

9)IPM技術の確立

(1)施設トマトの病害虫防除技術の体系化と実証
1)熱水、生物的防除資材及び植穴燻蒸処理の組合せ効果
担当:中央農業総合研究センター病害防除部、虫害防除部
研究計画:熱水土壌処理、パスツーリア菌、弱毒ウイルス、VA菌根菌、植穴燻蒸処理等について、それらの組合せによる有害生物(線虫・萎凋病・病原ウイルス)の防除効果を3研究室共同ハウスで実証し、効率的防除技術の体系化に取り組む。

10)低コスト・省力化及び環境保全のための機械・施設に関わる作業技術研究の推進

(1)水稲・麦・大豆等の不耕起を中心にした低コスト・省力機械化作業技術の開発
1)麦・大豆の不耕起省力機械化作業技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:輪作田の作土物理性改善については、過湿部位の小明渠パスの配置法や作業法等を解明する。不耕起施肥播種の高精度・安定化については、麦・大豆を対象に施肥・播種機構の高精度化及び初期生育安定化作業法を開発する。

(2)センシング技術の高度化による精密・軽労作業技術の開発
1)精密農業のためのセンシング・適正制御技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:センシングの高度化による作業の適正制御については、水稲・麦の生育に応じた可変施肥法及び野菜の良苗選別法の開発に取り組む。自動協 調化については、12年度までに開発したGPS等利用による田植・管理作業法及び重量野菜の収穫・運搬作業法の高精度化に取り組む。

2)施設利用における高効率・軽労作業技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:育苗代替資材等を用いた水稲種子のすじ状精密播種プラントを開発し、これを用いた苗箱数の低減化に取り組む。

(3)高品質プレ・ポストハーベスト作業技術の開発
1)穀物の低コスト・高品質収穫乾燥調製技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:水稲では、良食味品種を対象に収穫時期の籾水分ムラ特性を解析し、ムラ解消乾燥法の構築に取り組む。大豆では、初期水分20%以上の高水分粒を供試し、平成12年度に改良した循環式乾燥機の機械的損傷低減効果を検証する。

(4)バイオエネルギー資源等の省力生産・利用及び省エネルギー作業技術の開発
1)資源作物等の省力生産・利用技術の開発
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:なたねについて超低コスト機械化栽培法及び高収率搾油法に取り組む。ケナフについて平成12年度に改良した収穫機の作業性能の確認及び皮剥ぎ機の製作により、中型機による収穫調製機械化作業法を設計する。

(5)農作業快適化条件の解明及び作業システムの評価手法の開発
1)快適性指標等に基づく作業システム評価モデルの構築
担当:中央農業総合研究センター作業技術研究部
研究計画:作業動作の人間工学的計測及びトラクタ操作シミュレータの活用により快適作業要因を解明する。また、水田輪作作業体系を対象に、軽労・ 快適性、収益性、環境保全等に関わる実証データを収集し、それらの指標から機械化作業システムを総合的に技術評価するモデルの構築に取り組む。

11)重粘土・多雪地帯における水田高度利用研究の推進

(1)重粘土、夏期高温多湿地帯における水稲・転換畑作物の生育特性の解明と栽培法の改善
1)大規模栽培並びに飼料利用のための水稲の生育特性の解明と耐湿性大豆育種素材の選抜
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:大規模栽培下での水稲出穂の変動特性を解明するとともに、その予測法を開発する。飼料イネについてはホールクロップ利用上有利な登熟期 の茎葉炭水化物再蓄積量が多い品種・系統を選出する。大豆については、湿潤な重粘土転換畑で耐湿性育種素材の選抜を行うとともに生育前期の湿潤条件が大豆 の生育に及ぼす影響を解析する。

(2)品種抵抗性を活用した環境保全型病害防除システム構築のためのいもち病等抑制技術の開発
1)コシヒカリマルチラインによるいもち病発病抑制効果の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:異なる混植比率のコシヒカリマルチラインのいもち病発病抑制効果を調査するとともに、自然条件下におけるいもち病菌の病原性変異菌出現率を調べてスーパーレース出現の可能性を探る。

(3)水稲害虫の発生機構の解明及び耐虫性を利用した管理技術の開発
1)アカヒゲホソミドリカスミカメの基礎的生態と生活史の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:野外で越冬卵由来の成虫の出現時期、休眠卵産下雌の出現時期を調査する。天敵卵寄生蜂の寄生率をおとり法により調査する。また、雑草地、牧草地、水田で定期的にすくい取り調査を行い、年間を通じての個体数変動を把握する。

(4)重粘土水田の土壌生産機能の解明及び環境保全型土壌・施肥管理技術等の開発
1)米品質に係わる土壌中微量要素の吸収予測・制御技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:直播や移植水稲の玄米中微量要素の分析手法を検討するとともに、微量要素の変動を出穂期、収穫期で調査し、その吸収予測手法及び制御技術を開発する。

(5)重粘土壌の物理特性の解明による、汎用農地の排水性、砕土性等を制御する技術の開発
1)重粘土水田における亀裂形成制御法の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:重粘土汎用水田の排水性改善のために亀裂ネットワークを営農的に制御する手法を開発する。そため水稲移植法および最適な圃場の乾燥時期・期間などの効果を圃場試験で明らかにし、その排水性改善効果を暗渠からの排水量などから評価する。

(6)重粘土圃場における水田機械作業の安定・軽労化技術の開発
1)水田機械作業の安定・自動化技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:すべり率、沈下量等、車両走行性の決定因子を精密計測する手法を開発する。また、水稲の生育・収量を検出し、肥培管理に活かす自動化技術を開発する。

(7)地域気象資源等の評価及び利用・制御技術の開発
1)気象資源等の評価手法高度化と特性の解明
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:水稲群落を対象として観測を継続し、そのデータを用いて群落の日射反射率及び透過率の評価方法を確立して群落の熱収支推定への利用を検討する。

(8)有用大麦育種素材の選定及び重粘土・多雪地帯に適する雲形病抵抗性大麦等の品種育成
1)高品質な雲形病抵抗性大麦の品種育成
担当:中央農業総合研究センター北陸水田利用部
研究計画:大麦の品種育成のため、平成10年度以前交配の系統、系統群から、系統選抜、個体選抜を続行する。栽培法については「北陸皮35」及び「同36号」の越冬後施肥反応を調査する。併せて、大麦搗精麦色相改善のために、大麦胚乳色の測定方法を開発する。

12)良食味・高品質米の高能率・低コスト生産のための基盤研究の推進

(1)寒冷地南部向き良食味・直播適性・水田高度利用型水稲品種の育成
1)寒冷地南部向き晩植適性を備えた良食味品種・新形質米品種の育成
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:交配、雑種集団養成、個体選抜、系統選抜、生産力検定試験、特性検定試験を行い、晩植適性及び新しい玄米特性をもつ個体、系統を選抜す る。特に巨大胚系統北陸糯167号、極大粒、超多収系統北陸168号及びリポキシゲナーゼ欠失系統北陸PL2の特性解明を重点的に行う。

(2)米の品質構成要因と関与遺伝子の機能及び水稲のでんぷん生合成等の物質生産機能の解析
1)貯蔵タンパク質の改変による米粒特性の解析
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:貯蔵タンパク質組成に関する変異イネ系統として作出したプロラミン減少系統の世代を促進するとともに、登熟期の貯蔵タンパク質の貯蔵様 式を追跡する。また、その系統より得られた米の諸特性を調査、元品種と比較して、貯蔵タンパク質が米粒特性にどのように寄与しているかを解析する。

2)水稲のでんぷん蓄積及び胚乳細胞数決定機構の解析
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:でんぷん蓄積に関与する遺伝子の作用を明らかにするため、でんぷん合成の基質である糖類の代謝・輸送に関わる遺伝子の発現特性を解析す る。また、これらの遺伝子がでんぷん蓄積の場である胚乳細胞の数の決定に及ぼす影響を調べ、これが米粒特性に及ぼす影響を解析する。

(3)実用的な遺伝子組換え技術の開発及び病害抵抗性等の実用的な導入遺伝子の単離
1)遺伝子可視化技術開発による導入遺伝子の遺伝様式の解析
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:遺伝子組換え体における導入遺伝子安定化技術として、イネに導入されたマーカー遺伝子並びに目的遺伝子についてFISH法により可視的 に遺伝子の接合型を判定し、後代選抜の促進を図る。そのための複数のDNAクローンを同時に用いたFISH法の技術開発並びに画像解析法を組み合わせたイ ネ染色体地図の構築を進める。

(4)実用形質の遺伝的発現機構の解析及び効率的な育種選抜技術の開発
1)分子マーカー等を利用した水稲の実用形質の効率的な育種選抜技術の開発
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:いもち病抵抗性遺伝子Pi-b、Pi-ta、Pi-z、Pi-kに関して、遺伝子に近接するSSRマーカーを確立する。ツマグロヨコバイにおいては、既に作成されている抵抗性遺伝子Grh2、Grh4の近接CAPSマーカーを用いて実際に育種選抜を行う。

(5)遺伝子組換え系統の形質発現評価及び安全性評価
1)遺伝子組換え系統の環境に対する安全性評価
担当:中央農業総合研究センター北陸地域基盤研究部
研究計画:農業生物資源研究所で育成されたエンバク・チオニン遺伝子を導入してイネ苗立枯病等の細菌病抵抗性を付与したイネ系統とイネ・キチナー ゼ遺伝子を導入してイネいもち病抵抗性を付与したイネ系統を模擬的環境(隔離圃場)下で栽培し、組換えイネの病害抵抗性の評価、特性調査及び生態系への影 響評価を行う。

D 北海道農業研究
1)北海道地域における大規模専業経営の発展方式並びに大規模水田作・畑作・酪農生産システムの確立

(1)平成22年度までの寒地農業構造の動向予測と生産技術の展開方向の解明
1)大規模農業の主要指標動向と技術の展開方向の解明
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:「2000年農業センサス(北海道)」や大規模農業経営への面接調査結果の分析により、大規模水田地帯における農家数や農地面積等の主要指標動向及び畑・草地地帯におけるふん尿処理技術の展開方向を解析する。

(2)寒地大規模専業経営における開発技術の経営的評価と土地利用型経営の展開条件の解明
1)大規模水田輪作経営における新技術導入の経営的評価
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:価格条件、気象・土地基盤条件などの変動要因を組み込んだ水田輪作経営モデルを策定し、根雪前播種小麦栽培等の新技術の導入条件を解析する。

(3)寒地大規模専業地帯における新生産システムの普及・定着条件と地域農業支援システムの形成条件の解明
1)畑作における新生産システムの定着条件の解明
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:収穫作業の組織化、調製作業の外部委託化など、地域支援方策によるキャベツの機械化収穫体系の定着条件について解析する。

(4)寒地の大規模水田作における水稲・麦・大豆等の安定輪作技術の開発
1)大豆の初期生育促進技術の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:早生大豆新品種の活用と表層砕土部分耕を導入して、水稲移植と作業が競合しない6月上旬播種大豆における初期生育促進条件を解明する。

(5)基幹畑作に直播キャベツを導入した新作付体系の確立
1)直播キャベツの高収量化技術の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:直播キャベツの作型に適した品種を用いて、個体別窒素施用等により、キャベツの玉揃いを改善し、規格内収量を向上させる栽培法を解明する。

(6)アルファルファを導入した畑地型酪農営農システムの確立
1)フォレージマットメーカを軸とした収穫・調製技術体系の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:牧草を摩砕するフォレージマットメーカを利用して、水分の安定した高品質な単播アルファルファの低水分サイレージを収穫・調製するための作業技術体系を開発する。

2)大規模生産基盤技術の開発

(1)大規模水田の排水技術及びコージェネレーションシステムを利用した寒地生産施設内の環境制御に関する基盤技術の開発
1)疎水材充填暗渠の機能解析
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:浅い溝を掘って非腐食かつ非沈下性の透水性素材を充填した疎水材充填渠を作り、素材や充填法の違いが機械踏圧後の透水性に及ぼす影響を解明する。

(2)大規模圃場における稲・麦・大豆等の安定輪作のための汎用機械作業技術の開発
1)マルチシーディング技術の開発
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:表層砕土・部分耕ロータリと稲・麦・大豆等に汎用的な高精度播種機を組み合わせて、耕耘・施肥・播種を迅速・高精度、効率的に作業可能なマルチシーダを試作する。

(3)大規模圃場の効率的利用管理のための生産技術情報の収集・利用手法の開発
1)作物生産情報による圃場・栽培管理システムの作成
担当:北海道農業研究センター総合研究部
研究計画:大豆を対象として生産情報を収集・解析し、気象条件変化に関連づけた生育予測モデルのプロトタイプを作成する。また、収集した作物生産情報を検索・表示する圃場・栽培管理支援システムのインターフェースを作成する。

3)寒地に適応した優良作物品種・系統の育成

(1)水稲の直播用・高付加価値型新品種及び高度障害耐性系統の開発
1)直播適性良食味品種の育成
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:早生低アミロース系統「北海288号」、早生良食味系統「北海291号」の低温苗立ち性、直播栽培での収量性、品質・食味特性等を調査し、直播適応性を評価するとともに、実需者から直播栽培米の品質評価を受ける。

(2)寒地向け畑作物の高品質優良品種・系統の育成
1)パン用硬質秋播小麦「北海257号」の適応性評価
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:種苗登録出願中のパン用秋播小麦系統「北海257号」の現地適応性試験を実施し、収量性等の栽培特性や蛋白質含量等の品質特性を評価して普及条件を解明する。

(3)寒地向け園芸作物の省力・高付加価値な系統・育種素材の開発
1)春播赤たまねぎ系統の適応性評価
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:貯蔵性の優れる春播赤たまねぎの系統「月交22号」の貯蔵性と機能性成分量を評価する。また、系統適応性検定試験を行い、道内主要産地における生育・収量・品質・貯蔵性等を評価する。

(4)寒地向け飼料作物の耐寒性優良品種・系統の育成
1)ロシア遺伝資源を活用したオーチャードグラス極早生系統の開発
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:ロシアの遺伝資源から選抜した優良栄養系の多交配後代について、収量性・越冬性・飼料成分などの検定を行い、親栄養系の選抜を行う。

4)大規模畑作の持続的生産技術の開発

(1)輪作畑への休閑・緑肥や精密農業技術等の導入効果の解明
1)作物群落における葉色測定手法の開発
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:RGB画像を用いた大豆・菜豆群落の葉色測定手法の自動化を図る。また、光条件と測定葉色との関係を解明する。

(2)畑輪作における生態機能を活用した土壌微生物・雑草の制御技術の開発
1)輪作畑土壌における土壌微生物の群集構造および線虫密度の定量的評価
担当:畑作研究部
研究計画:輪作畑土壌の細菌群集の多様性を評価する手法の簡便化を図る。また、各種雑草の発生量と線虫密度との関係をポット試験で解明する。

(3)てん菜・大豆等の品質形成生理の解明
1)ばれいしょ塊茎貯蔵中の品質変動の解明
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:ばれいしょの糖代謝について、貯蔵条件による変動やその品種間差異を解明し、品質変動に関わる酵素群の活性や、酵素量変化、活性調節機構を解析する。

(4)硬質秋播小麦等の利用技術及び品質評価・貯蔵技術の開発
1)変性粉の特性評価と新用途の開発
担当:北海道農業研究センター畑作研究部
研究計画:ホロシリコムギに比べ変性粉特性が格段に優れる「北海257号」を中心に、加熱変性過程での小麦粉成分の関与特性を解析し、各種食品用途別に変性粉の適性を評価する。

5)草地・自給飼料を活用した酪農技術の開発

(1)高泌乳牛の遺伝特性・繁殖機能の解明と利用技術の開発
1)飼養環境条件下で固有に発現する乳量遺伝子による種雄牛育種価推定法の開発
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:種雄牛がもつ乳量遺伝子を、飼養環境毎に異なって発現するものと、どの環境下でも同じく発現するものにわけ、それぞれの遺伝子の発現量(育種価)を推定する数式を開発する。それを我が国と米国の乳量データに当てはめ、両国間の乳量遺伝子発現量の差異を解析する。

(2)高泌乳牛の栄養管理技術と自給飼料の安定調整・利用技術の開発
1)自給粗飼料のエネルギー含量の定量と周産期における栄養素の動態解明
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:自家調製した各種自給粗飼料を、高泌乳牛に給与してエネルギー含量を定量し、粗飼料の違いによるエネルギー要求量を解明する。また、乳 牛の分娩前後における各栄養素の吸収率、飼料の消化管通過速度、血液成分等を測定し、乳牛の周産期における栄養素の動態を解明する。

(3)牛群の合理的管理技術と寒地向き家畜ふん尿処理技術の開発
1)フリーストール牛舎における乳牛の肢蹄障害と生産に及ぼす影響の解明
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:乳牛の肢蹄障害の発生と経過及び体重・乳量を調査し、肢蹄障害の進行過程と生産性に及ぼす影響を解明する。また、飼養環境等の改善による肢蹄障害予防効果を評価する。

(4)高品質自給飼料の持続的な生産・利用技術の開発
1)放牧牛の食草速度の解明と栄養摂取量制御技術の開発
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:食草時間測定センサーを装着した搾乳牛を種々の草現存量の牧草地に放牧し、食草速度と草現存量の関係を解明する。また、リードカナリーグラス待期草地の草現存量・栄養価・牛による採食量を測定し、肉用繁殖牛用の放牧草地としての適性を評価する。

2)採草地の年1回刈り利用技術の開発
担当:北海道農業研究センター畜産草地部
研究計画:チモシー晩生品種とマメ科ガレガの混播草地を用い、年1回遅刈り省力管理区の乾物収量及び繊維の消化性、タンパク質などの飼料成分収量を年2回刈り対照区と比較し、年1回刈り技術を評価する。

6)寒地生態系を活用した生産環境の管理技術の開発

(1)寒地作物病害の特性解明と制御技術の開発
1)ウイルス抵抗性組換え体トマトにおけるサテライトRNAの変異性の解明
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:キュウリモザイクウイルス弱毒サテライトRNAを導入した抵抗性トマト(No.4-7系統)について、ゲノム内のサテライトRNA遺伝 子領域及び増殖したサテライトRNAに由来するmRNAの塩基配列を解析し、遺伝子変異とサテライトRNA強毒化との関連性を解明する。

(2)寒地作物害虫の発生生態の解明と制御技術の開発
1)土着天敵によるアブラムシ類防除を導入したバレイショ害虫の総合防除技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:ワタアブラムシにリサージェンスを引き起こす殺虫剤(アセフェート水和剤)の散布回数、アブラムシ・捕食性天敵の発生消長及びイモの収量・品質を解析し、殺虫剤使用回数削減の効果を解明する。

2)抵抗性品種を利用した線虫の総合防除技術の確立
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:ジャガイモシストセンチュウ総合防除技術として、抵抗性品種の利用については、線虫密度の異なる現地圃場を用いて、各品種の線虫密度低減能力と収量特性を解析する。また、抵抗性品種の屑イモを種イモとして緑肥的に栽培し、密度低減効果を評価する。

(3)寒地における土壌生態系の構造・機能の解明と環境負荷の評価・低減化手法の開発
1)土砂流入の増加が湿原の土壌環境および植生に及ぼす影響の解明と評価
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:釧路湿原で土砂流入が多い久著呂川流域と少ないチルワツナイ川流域において、空中写真や衛星データを参考に土壌環境と植生の関係を調査 し、土砂流入増加による植生への影響を解明する。特に土壌環境については、水位・水質を計測するとともに、土壌深度ごとに有機物含量や粒径組成などの土壌 理化学性を分析する。

2)有機物資材を利用したダイズのカドミウム吸収抑制技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:土壌型の異なるカドミウム汚染土壌の特性と形態別カドミウム含量の関係を解析するとともに、土壌管理法を変えて栽培したダイズの葉位別子実中のカドミウム含量及び葉、茎等の部位別カドミウム含量を測定し、カドミウムのダイズ体内における移行特性を解明する。

(4)寒地における土壌の養分供給能及び作物の養分吸収特性の解明と土壌・栄養診断技術の開発
1)復元田における直播水稲の低タンパク米生産技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:復元田で、水稲の直播用良食味有望系統「北海288号」などを用いて表層砕土部分耕による直播栽培を行い、土壌から供給される窒素の量やパターン、水稲生育特性、タンパク質含量などを、移植や乾田直播栽培におけるデータと比較・解析する。

2)小麦のタンパク質含量制御技術の開発
担当:北海道農業研究センター生産環境部
研究計画:パン用秋播小麦の新品種候補「北海257号」について、起生期、幼穂形成期、止葉期等の窒素施用量を変えて圃場試験を行い、養分吸収特 性および窒素施肥反応を明らかにする。さらに、作物体の栄養状態と葉色、硝酸態窒素濃度等を比較し、栄養診断指標の策定に取り組む。

(5)寒地の耕地気象要素の評価と気象要素に対する作物反応の解明
1)耕地の気象環境の長期・広域動態評価手法の開発と気象要素に対する作物反応の解明
担当:生産環境部
研究計画:耕地気象要素の評価については、一般気象データから地温・土壌凍結深・熱収支などの季節変化を広域的に評価できる手法開発の基礎とし て、様々な地表面条件における熱と水の交換係数のパラメーター化に取り組む。作物反応の解明については、大豆の葉面積の拡大に及ぼす土壌水分の影響を解析 する。

7)作物の耐冷性・耐寒性・耐雪性機構の解明と利用技術の開発

(1)作物の耐冷性機構の解明と耐冷性関与遺伝子群の単離
1)熱ショック転写因子利用によるストレス耐性イネの作出
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イネで初めて単離した6種類の熱ショック転写因子の部分塩基配列を基に、転写因子の完全長cDNAを単離する。また、熱や乾燥などのストレスにより熱ショック転写因子が誘導されるか否かを、ノーザン解析により転写レベルで解明する。

(2)作物の耐寒性・耐雪性機構の解明と分子育種のための基盤技術の開発
1)糖代謝系酵素遺伝子導入による高度耐寒性オオムギの開発
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:コムギの低温馴化過程で誘導される糖代謝系酵素遺伝子の機能と低温により誘導されるキチナーゼ遺伝子のプロモーター活性を解析する。また、糖代謝系酵素遺伝子を導入した形質転換オオムギの耐寒性を評価する。

2)植物ミトコンドリアへの遺伝子産物ターゲッティング技術の開発
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:ナタネ核ゲノムにコードされるミトコンドリアタンパク質遺伝子の発現特性および、リボゾームL11タンパク質遺伝子のミトコンドリアへ のターゲッティングに関与する領域を解析する。また、脱共役タンパク質遺伝子内部のターゲッティングシグナル活性領域を特定する。

8)寒地向け優良品種育成のための基盤技術の開発

(1)寒地向け作物の遺伝資源の評価と育種素材の開発
1)高度耐冷性イネの育種素材化
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:野生イネを遺伝資源として選抜した系統や雑種集団の耐冷性評価を行い、育種素材化を図る。また、ジーンバンクから配付を受けた新たな遺伝資源の耐冷性評価を行う。

2)bm遺伝子を利用した高消化性とうもろこし系統の開発
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:bm遺伝子を導入した自殖系統について、選抜と自殖による固定化を進める。また、bm遺伝子導入自殖系統のF1組合せについて、茎葉の 乾物消化性、乾物収量、耐病性などを調査する。さらに、育成中のwx遺伝子導入自殖系統について、子実の酵素分解率を通常系統と比較する。

(2)分子マーカーを利用した効率的育種技術の開発
1)イネ穂ばらみ期耐冷性遺伝子の単離
担当:北海道農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:既知の塩基配列を基にDNAマーカーを作成し、耐冷性程度が異なる染色体置換系統間でDNAマーカーの遺伝子型と耐冷性の関係を詳細に解析する。また、耐冷性遺伝子を含む染色体領域(約100kb)の精密地図を作成する。

2)アカクローバ遺伝地図の精密化と耐雪性関連形質の解析
担当:北海道農業研究センター作物開発部
研究計画:アカクローバcDNA由来のRFLPマーカーとアルファルファのRFLPマーカー、CAPSマーカーなどを用いて、アカクローバ遺伝地 図のマーカー数を既存の52から150に増やす。また、解析集団について耐雪性関連形質の評価を圃場で調査し、QTL解析を行う。

E 東北農業研究
1)東北地域の立地特性に基づく農業振興方策の策定並びに先進的な営農システム及び生産・流通システムの確立

(1)農業の担い手と米等主要作目の消費の動向及び地域資源を活用した活性化方策の解明
1)平成22年度までの農業の担い手及び米等の主要作目の動向解析
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:米の価格形成要因について、従来は考慮されることの少なかった消費者ニーズを取り入れた分析を行う。東京都下住民3,000人をランダ ムに抽出して郵送によるアンケート調査を行い、品質と価格に対する消費意識構造や、銘柄米イメージと価格との関係等を明らかにする。

2)地域振興型公企業を核とした活性化メカニズムと効果の評価
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:東北中山間地域において農業および関連事業を行っている公企業を対象としたアンケート調査および事例調査の実施・分析に基づき、地域振興型公企業の事業展開過程および展開条件、事業効果、公企業を核とした地域農業振興等のあり方の解明を行う。

(2)営農システムの展開方向の解明と先進技術導入の評価・分析
1)高収益水田利用システムの成立条件の解明
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:北東北の個別経営を対象として現地実証されてきた高収益水田利用システムにおいて、一つの核となる立毛間播種技術を、日本海側あるいは大規模法人組織に適応範囲を拡大して、開発された新技術を含め経営的評価を行う。

(3)複粒化種子直播体系を活用した水田輪作営農システムの確立
1)複粒化種子の造粒・播種技術の開発
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:複粒化種子の造粒能率は、切断造粒部の連続作業化などの改良により作業能率を約2倍の30a/h程度まで向上させるとともに、播種機の条数を6から8への増加や作業速度の向上を図ることにより、播種作業能率を35a/h程度と約30%増加させる。

(4)寒冷地大規模草地・林地を基盤とした日本短角種等の低コスト牛肉生産・流通システムの確立
1)周年出荷のための2シーズン放牧・肥育技術と牛肉品質の評価
担当:東北農業研究センター総合研究部・畜産草地部
研究計画:日本短角種の周年出荷を行うために貯蔵粗飼料多給による肥育試験を継続して行い、2シーズン放牧及び粗飼料多給による肥育技術のマニュアルをまとめるとともに肥育した牛肉の理化学性を測定して、肥育技術と品質特性の関係を解明する。

(5)生物利用等による寒冷地環境保全型野菜栽培技術の開発
1)生物機能等の利用によるアブラナ科野菜の寒冷地環境保全型栽培技術の確立
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:産地ごとのドーズレスポンスカーブを作成して土壌診断を行い、アブラナ科野菜根こぶ病発病を予測するとともに、防除に有効な耕種的手法や対抗性植物及び各種資材等の組み合わせがアブラナ科野菜根こぶ病発病に及ぼす影響を解析し、発病抑止効果を実証する。

(6)非破壊センシングを活用した品質本位リンゴの省力生産・流通システムの確立
1)非破壊品質評価情報の高度利用による高品質・均質化技術の確立
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:「ふじ」の蜜入り、でんぷんについて非破壊品質評価情報と実測値などを調査・収集し、それらの関係解析に着手する。さらに、リンゴの樹相診断情報や果実の非破壊品質評価情報などを調査・収集し、果実品質との関係を単年度データから解析する。

(7)寒冷気象を活用した新規導入作物の生産・流通一貫システムの開発
1)マーケティング・サイエンス手法による消費者の購買行動の解明
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:マーケティング・サイエンスの手法を用いて、消費者の農産物購買行動モデルを作成し、価格や栽培方法、安全性、品質等の購買行動の決定要素を分析するとともに、中山間地域における新規導入作物のマーケティングへの適用法を解明する。

2)寒冷地における水田基幹作物の省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)水稲の革新的育種法の開発及びいもち病抵抗性品種の育成
1)新形質米・飼料用品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:新形質米は赤米糯や景観用を目標、飼料用イネは識別性のある極大粒型でTDN収量で1.0トン/10aを目標に、既存材料の選抜を行い、交配を行う。有望系統には新奥羽番号を付ける。低アミロース米の「奥羽354号」については命名登録及び品種登録を行う。

(2)初期生育性及び登熟機能の解明による高品質米等安定生産技術の開発
1)湛水直播水稲の低温出芽・苗立ち性の変動要因の解明
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:単離胚の培養系において、培地に添加する糖および窒素養分の量が本葉や根の生育に及ぼす影響を、10から15品種程度について比較す る。また、品種間および栽培条件の異なる種子の間で、胚の糖含量とタンパク質含量を測定し、苗立ち性との関連解明に取り組む。高温度・湿度飽和条件での種 子予措処理が低温苗立ち性に及ぼす影響とその品種間差を解明する。

(3)低温出芽・苗立性を備えた直播用水稲品種の育成
1)直播用品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:直播に必要な早熟性と転び型倒伏抵抗性を持ち、良食味で、いもち耐病性と耐冷性を備えた寒冷地北部向き直播適性品種を目標に、既存材料の選抜を行い、交配を行う。有望系統には新奥羽番号を付ける。また、内外稲の低温初期伸張性について遺伝解析を行う。

(4)寒冷地向け高製めん・製パン適性、良粉色、早生・安定多収の小麦品種の育成
1)高製めん・高製パン適性、良粉色、早生・多収の小麦新系統の選抜
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生・多収で耐病性・障害抵抗性が強い、良色相で高品質のめん・パン用系統を選抜する。めん用小麦の粉色変動要因の解明及び色相早期選抜法をの開発に取り組む。めん用新品種の「ネバリゴシ」は、県農試に栽培試験を委託して、高品質・安定栽培法の確立に取り組む。

(5)寒冷地向け高精麦白度、早生・安定多収の大麦品種の育成
1)高精麦白度、早生・安定多収の大麦系統の選抜
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生・多収で、耐病性・障害抵抗性の強い、高精麦・炊飯白度の系統を選抜する。高精麦白度・加熱後色相の優れた系統の早期選抜法の開発に取り組む。有望系統の「東北皮34号」について、宮城県古川農試に栽培試験を委託して、高品質・安定栽培法の確立に取り組む。

(6)重要病害虫に対する複合抵抗性を具備した大豆の優良新品種の育成
1)ダイズモザイクウイルス等病虫害抵抗性等大豆優良品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:ダイズモザイクウイルス抵抗性、ダイズシストセンチュウ抵抗性を併せ持ち、安定多収で高品質の系統を選抜する。有望系統には東北番号を付ける。

(7)水田環境における雑草の生態解明と制御・管理技術の開発
1)積雪寒冷地におけるノビエの動態解明と要防除水準の策定
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:タイヌビエの防除法及び防除水準の異なる条件で水稲を栽培して、発生数と土壌中種子密度との関係を解析する。発生時期の異なるタイヌビエの生育量と種子生産特性を調査して、本雑草が水稲の生育・収量に及ぼす雑草害の程度を解明する。

(8)水田病害虫の発生生態に基づく省資材型総合管理技術の開発
1)水田病害虫・天敵相の発生生態、薬剤反応性の解明と被害の回避技術の確立
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:重要種アカヒゲホソミドリカスミガメを対象にその増殖を水田畦畔・農道の無除草区と除草区とで比較する。また、両区での草種とその生育状態(開花の有無、種子の有無等)を調べるとともに飼育・選択試験を行い、本害虫の増殖に対する除草の影響を明らかにする。

(9)いもち病抵抗性機作の解明に基づく防除技術の開発
1)イネいもち病圃場抵抗性の評価法、遺伝解析、遺伝子の単離と機能解明
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:「農林29号」と「中部32号」の交配F6、F7系統を用いて、いもち病圃場抵抗性遺伝子のマッピングを行う。本遺伝子近傍の高密度連 鎖地図を作成するため、コシヒカリ/Kasalath染色体断片置換系統と「中部32号」のF2集団のDNAマーカー連鎖地図を作成する。2同質遺伝子系 統―1菌系の組み合わせで作動するマルチライン用シミュレーションモデルを開発する。

(10)水田土壌環境の制御による効率的管理技術の開発
1)溶出速度がpHに依存する新肥効調節型肥料の開発
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:作物根の酸性化作用により、根圏土壌で溶出が促進されるような肥料の開発研究の第一段階として、溶出速度がpHに依存する肥効調節型肥料の製造方法を確立する。また、このような肥料開発のための基礎的知見を得るために、施用した肥料近傍の土壌環境を計測する。

(11)省力水田営農のための高精度機械化生産技術の開発
1)減農薬のためのハイブリッド除草技術の開発
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:条間機械除草を行う除草爪部分、除草剤散布を行う液剤噴霧部分、及び各々のユニットを支持するフレームの試作を行う。また、ハイブリッド除草機を水稲列上に位置決めするためのリンク機構のデザイン、それに合わせた走行台車の改造を行う。

(12)高度機械化作業を軸とした輪作営農技術体系の開発
1)汎用型大豆・麦立毛間播種技術の開発
担当:東北農業研究センター総合研究部
研究計画:水田輪換畑における大豆・麦立毛間播種技術について、農機メーカーとの共同研究開発を進め、大豆・麦、各々の播種装置の汎用性および簡易播種条間設定機構を有した実用機を開発する。作業能率は0.30ha/h(2人作業)以上を目指す。

3)寒冷地における畑作物の生態系調和型持続的生産技術の開発

(1)不耕起、緑肥、有機物等を活用した生態系調和型持続的畑作物生産方式の開発
1)自然循環機能を活用した畑作物作付体系の開発
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:リビングマルチ(生物マルチ)の利用等の耕種的手法により雑草を抑制して野菜、畑作物を栽培する作付方式の研究に取り組む。

(2)畑作物等の成分特性等の向上のための栽培管理技術の開発
1)野菜、地域植物資源に含まれる有用成分の解析と蓄積要因の解明
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:東北地方の主要な山菜であるウド、コシアブラ等に含まれているポリフェノール系の抗酸化成分を解明する。また、光条件等の栽培環境条件が畑野菜等のビタミン類、ポリフェノール等の抗酸化成分含量に及ぼす影響を解明する。

(3)生物種間相互作用を利用した畑土壌病害虫制御技術の開発
1)生態系調和型畑作における土壌病害の防除技術の開発並びに線虫群集の特性解明
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:畑地における不耕起栽培および有機質肥料の施用が土壌線虫に与える影響を明らかにするため、耕起の有無と肥料の種類を組み合わせた圃場において、主な植物寄生性線虫の密度や線虫群集の多様度等の季節変動の研究に取り組む。

(4)土壌動物・微生物相を利活用した畑土壌管理技術の開発
1)土壌動物の生物相制御・物質循環機能の評価と活用技術の開発
担当:東北農業研究センター畑地利用部
研究計画:アブラナ科野菜の苗立ち枯れ症を抑制するトビムシについて、飼育条件下での増殖率・増殖量の変動要因を解明する。さらに、トビムシをハクサイ、ブロッコリーなどのセル成型苗に導入し、圃場での生育への影響を解明する。

4)寒冷地における野菜花きの安定・省力生産技術の開発

(1)寒冷地向け夏秋どり野菜有望系統の選抜に関する研究
1)エバーベリー・サマーベリーを上回る四季成り性イチゴ有望系統の選抜
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:果実の大きさ・食味等が既存の四季成り性品種「エバーベリー・サマーベリー」を上回る有望系統選抜に向けた生産力検定試験と「盛岡29~31号」の特性検定・系統適応性検定試験を実施する。

2)培養変異を利用した元品種を上回る腐敗病抵抗性レタス系統の育成
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:培養変異を誘発した後代から選抜育成した「盛岡1~3号」の特性検定試験と系統適応性検定試験を実施して、腐敗病抵抗性および実用形質の評価を行う。

(2)寒冷地向け野菜、花きの生理生態特性の解析及び栽培技術、作業技術の改良・開発に関する研究
1)イチゴの花芽分化に及ぼす日長と温度の影響の解明
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:人工気象室等を用いて、数段階の温度条件を設定し、イチゴ「北の輝」、「女峰」、「さちのか」など数品種の苗を短日処理した場合の花芽分化の高温側温度限界を明らかにする。

2)レタス・キャベツ等露地野菜生産における省力作業技術の開発
担当:東北農業研究センター野菜花き部
研究計画:野菜・花きに関する作業技術研究の開発体制を整えるとともに、レタス・キャベツ等露地野菜生産における省力作業技術の開発方策を策定す る。具体的研究においては、播種・育苗・移植作業の省力・高能率化をめざした帯状連続苗による播種・育苗・移植作業技術の開発に着手する。

5)寒冷地における高品質畜産物の自然循環型生産技術の開発

(1)冷涼気候適応型牧草・飼料作物の生産機能強化技術の開発
1)牧草・飼料作物の寒冷地における持続型高位生産技術の開発
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:ヒルガオをはじめとする強害雑草の耕種的防除技術の策定、リビングマルチ栽培における飼料用トウモロコシの生育反応の解明、主要寒地型牧草の硝酸態窒素蓄積能の解明及び有望草種フェストロリウムの生育・生産特性の解明に取り組む。

(2)牧草優良品種の育成及び次世代型育種法の開発
1)寒冷地域に適応する牧草優良品種の育成
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:フェストロリウム等牧草の優良品種育成のため、育種素材となる優良遺伝資源を収集・評価する。更に、系統育成のため、ライグラス類及び フェスク類の交配を開始し、倍数性等の評価を行う。また、環境適応性に優れた品種育成のための育種法を開発するため、他草種等で利用している手法等を適用 し、基礎的試験に取り組む。

(3)自給貯蔵飼料の栄養成分・消化性並びに品質安定性向上のための調製技術・品質評価法の開発
1)新飼料資源のサイレージ調製・貯蔵特性の解明と家畜における栄養価・消化性の評価
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:自給粗飼料源として有望なフェストロリウム等牧草の品種や飼料イネ等のサイレージ発酵・貯蔵特性比較並びにサイロ開封後の好気的変敗抑 制乳酸菌の検索を行う。また、飼料成分・消化性・栄養価に及ぼす刈取り時期の影響並びにサイレージ調製・貯蔵時の発熱等により生成されるメイラード反応成 分を解明する。

(4)草林地複合植生地帯における家畜放牧機能強化技術の開発
1)寒冷地放牧草地の動態解明及び新牧草種の評価
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:家畜の放牧圧が草地や森林伐採跡地等の植生の動態に及ぼす影響を解明するとともに、繁殖牛に適する牧草種の評価とその植生管理法を開発する。

(5)耕草林地利用による放牧等の粗飼料利用性に優れた家畜の育種繁殖技術の開発
1)家畜卵胞内卵子の有効利用システムの開発
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:ウシの発育途上卵母細胞の培養系について、平成12年度に確立した系を利用し、卵母細胞をさらに発育させる培養条件の検討を継続する。併せて、遺伝子の発現解析、胚発生試験等を行い、卵母細胞の正常性を調査する。

(6)自給飼料を高度に活用した家畜の飼養管理技術の開発
1)飼料用イネを活用した肉用牛生産技術の開発
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:稲発酵粗飼料の飼料特性を解明するために、飼料成分と消化率の関係について検討を行う。また肥育牛への給与特性の解明と効率的な給与法の確立にむけて、給与した場合の採食量、増体、血液性状、肉質への影響を調査する。

2)牛における微量生理活性物質が乳肉生産および内分泌機能に及ぼす影響
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:TNF、成長ホルモン放出因子などの内因性微量生理活性物質の成長および泌乳制御ホルモンなどへの作用機序を解明し、これら物質の泌 乳・増体等の家畜生産性に及ぼす影響を明らかにする。家畜への投与試験により産乳性と乳成分に及ぼす影響、ならびに、栄養水準との関係を調査する。

(7)地域資源を高度に活用した畜産物の品質制御技術の開発
1)牛肉の硬さ及び風味を制御する因子の解明
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:牛肉の熟成に関係するタンパク分解酵素の遺伝的構造を決定する。具体的にはウシにおいて遺伝子配列が未知の酵素は、ヒトあるいはブタ等 の既知の遺伝子配列を参考にcDNAの塩基配列を決定する。また、cDNA配列が既知の遺伝子はゲノム構造を決定する。さらに、cDNA配列やゲノム構造 が決定されている遺伝子については遺伝子多型を探索する。

(8)放牧地を含む畜産環境の総合的管理技術の開発
1)飛来性家畜害虫の加害様式の解明
担当:東北農業研究センター畜産草地部
研究計画:アブ、ハエ等の飛来性害虫が家畜に与える被害を軽減するため、害虫が家畜に与えるストレスと飛来量との関連等を解明する。特に、害虫の加害行動に対する牛の反応を、牛の年齢や気象要因の複合作用等との関連で調査する。

6)地域産業創出につながる新形質農産物の開発及び加工・利用技術

(1)小麦の寒冷地向け高品質、早生・安定多収のもち性等高付加価値品種の育成
1)高製粉性、良粉色、早生・安定多収のもち性小麦品種の育成
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生・多収で栽培特性が優れた、高製粉性、良粉色で、低ポリフェノールのもち性系統を選抜する。また、有望系統の中から1系統について地方番号を付け、各県の奨励品種決定調査材料として配付する。

2)新形質小麦系統のブレンドによる製パン適性の安定化技術
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:もち性、低アミロース、高蛋白等の新形質小麦品種・系統とパン用品種・系統のブレンドによる、製パン適性の高位安定化技術の開発に取り組む。

(2)大豆の低アレルゲン等高付加価値品種の育成
1)大豆の低アレルゲン等品種の育成
担当:東北農業研究センター水田利用部
研究計画:人体に対してアレルギーを引き起こす物質の一部を欠失させた低アレルゲン品種(東北124号)を育成する。また、農業特性を改良した低アレルゲン系統の選抜を進める。

(3)なたね、はとむぎ等資源作物の新品種育成
1)良質・多収ななたね、はとむぎ、そば等資源作物の新品種育成
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生で無エルシン酸のなたね「東北91号」、「東北92号」、早生で多収のはとむぎ「東北3号」について、生産力検定試験を実施し、収量・品質・耐病性等を検定する。また、県農試において収量性・成熟期等を明らかにし、各系統の地域適応性検定に取り組む。

(4)地域畑作物の先端手法による品質評価・向上技術の開発
1)種々の小麦品種のVP1遺伝子の解析
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:「ミナミノコムギ」、「山陰1号」、「東山18号」等の、イントロンを含めたVP1遺伝子のゲノム構造を解析する。また、「ミナミノコムギ」と「山陰1号」の交配後代における、アブシジン酸感受性を明かにし、その遺伝機構の解明に取り組む。

(5)生物工学的手法等を活用した畑作物機能改良技術の開発
1)細胞及び遺伝子操作手法を用いた畑作物の機能改良及び利用技術の開発
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:ソバの優良個体の試験管内増殖および半数体作出のための基本技術の開発に取り組む。また、コムギの加工品質に関与する有用遺伝子の発現を同定するためのシステムの開発に取り組む。

(6)雑穀類の機能性及び加工適性の解明
1)雑穀類の免疫機能に及ぼす影響の解明
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:ソバ、ハトムギ、ヒエ等の雑穀類抽出物及び食物繊維が、抗変異原性、抗ガン性、及びその他の免疫機能に及ぼす影響を、培養細胞等により 評価する。さらに、これまでにポリフェノール含量などから選定した有用品種を供試し、小動物を使用した機能性評価試験に取り組む。

(7)地域農産物の特性評価及び品質保持・利用技術の開発
1)東北地域農産物の新機能性検索と用途開発
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:色素米、山菜類等の生理機能性を広く検索し、強い生理機能を持つ作物についてその成分を単離精製するとともに、成分の化学構造を解明する。さらに、成分の体内動態についての解析試験を開始する。

2)食物アレルギー発症機構の解明
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:マウス-ヒトハイブリドーマ法を用い、食物アレルゲン特異的抗体分泌細胞を樹立するとともに、分泌される抗体を用いた食物アレルゲンのアレルゲン構造解析を行う。

(8)麦類、大豆及び資源作物遺伝資源の特性調査と再増殖
1)小麦・大麦・大豆及びナタネ遺伝資源の特性調査・再増殖
担当:東北農業研究センター作物機能開発部
研究計画:農業生物資源研究所より委託された小麦、大麦、大豆及びナタネの遺伝資源の特性調査と再増殖を行う。

7)やませ等変動気象の特性解析と作物等に及ぼす気象影響の解明

(1)やませ地帯の気象変動機構の解析及び気象-作物生育反応の解明
1)やませ等によりもたらされる冷涼気象特性の解明
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:斜面方位など地形因子の違いによってもたらされる、やませ吹走下での地域的な気象特性を解明する。

(2)作物の冷害等温度ストレス発生機構及び環境適応機構の解明
1)作物の冷温障害発生機構の解明
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:作物の生殖器官を中心に冷温ストレス反応を細胞生理学、生化学および分子生物学的に解析することにより発生メカニズムを解明し、耐冷性向上に向けた分子的基礎を明らかにする。

8)やませ等変動気象下における農作物の高位・安定生産管理技術の開発

(1)情報技術の活用による水稲冷害早期警戒システムの高度化
1)冷害に伴ういもち病発生予測技術の高度化と水稲冷害早期警戒システムの高度化
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:気象、水稲生育等の各種デ-タを解析対象にして、広域的かつ実用レベルの高精度を有するいもち病発生予測技術を開発すると共に、低温被 害予測モデルの開発ならびにいもち病の発生予測情報の高度化を進め、水稲冷害早期警戒システムをより総合的かつ実用的なものに改良する。

(2)環境制御技術及び作物の環境適応機能利用による環境低負荷型生産管理技術の開発
1)土壌環境の好適化と根圏環境の制御による高品位作物生産技術の開発
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:機能性成分の増加等、作物を高品質化する土壌環境制御技術を開発する。また、土壌環境センシング技術の開発を図る。

(3)病害虫を中心とする農業生態系構成生物の動態解明と管理技術の開発
1)東北における発生予察、抵抗性品種を核としたいもち病等病害の総合防除技術の確立
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イネ葉いもちを対象に、シミュレ-ションモデルを利用した農薬散布要否意思決定支援ソフトを開発する。

2)アブラナ科植物における耐虫性の探索と機構解明
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:ワックスレスタイプのアブラナ科野菜がもつ害虫類の密度抑制効果と、その機構を解明する。

(4)中・長期的気象変動に対する農作物生産力の変動予測及び生産技術体系の評価
1)CO2濃度及び温度上昇に対する作物の適応機能の解明と環境適応型生産技術体系の評価
担当:東北農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:近い将来に予測される高濃度CO2環境下で作物生産力を効率よく高めるために、温度・施肥量・品種等との関係を考慮して高濃度CO2に 作物が順化・適応する過程を定量的に解明する。この結果を踏まえて、今後の気象変動に適応しかつ持続的な生産を実現するための技術体系シナリオを構築す る。

F 近畿中国四国農業研究
1)近畿・中国・四国地域の農業の動向予測と農業振興方策の策定並びに地域資源を活用した中山間地域営農システムの開発

(1)地域農業情報の処理法及び有効利用システムの開発
1)GIS統合による生産計画支援・供給推定モデルの開発
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:露地野菜の生育予測モデルと各種データベースを仲介するデータブローカシステムの具体的な仕様を作成する。出力結果をGISで表示する際の位置座標の付加法の開発に取り組む。

(2)地域農業の動向予測
1)近畿・中国・四国地域における農家の規模別構造動態分析
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:近畿・中国・四国を対象として経営耕地規模別・世帯主年齢別に農家の構造動態を解明する。その上で規模縮小農家と規模拡大農家について、それぞれの属性(世帯主年齢、農業労働力保有状況、経営組織等)を把握する。

(3)都市近接性中山間地域における開発技術の評価及び高収益営農方式の解明
1)環境保全型生産方式による水田複合営農方式の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:再生紙マルチ水稲直播栽培の経済性を明らかにする。シュンギク栽培等における再生紙マルチ利用技術の経営改善効果を明らかにする。再生紙マルチを導入した水田複合営農のモデルを策定する。

(4)園芸作における新技術の経営経済的評価と先進的営農方式の解明
1)園芸作経営の生産構造の解明とカンキツ作新技術の経営評価
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:中山間地域におけるカンキツ作及び近畿中国四国地域における野菜作の生産構造の特質を統計データ等を用いて明らかにする。また、チェックリスト法や数理計画法によってカンキツ高品質生産技術(周年マルチ点滴かん水同時施肥法)の経営経済的評価を実施する。

(5)地域資源を活用した農業の活性化条件の解明
1)都市近接性中山間地域における多面的交流を核とした活性化メカニズムの解明と効果の評価
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:広島県芦田川流域を事例対象地区として、観光農園や産地直売所等における都市農村交流の実態を把握する。これらの交流を核とした農村活性化に関係する要因を摘出し、活性化指標及び要因間の関係について解明する。

(6)中山間小規模産地に適した生産・地域流通システムの確立
1)中山間小規模産地における環境保全型農産物の販売方策の策定
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:再生紙マルチ栽培軟弱野菜の産地内、周辺産地への普及の可能性を検討し、市場側の要請に対応した産地規模や産地間連携方策を提示する。 また、再生紙マルチ栽培品目について、直売所における販売可能性を検討するとともに、直売所の管理運営、収益性に及ぼす影響を明らかにする。

(7)高品質化のための土壌管理技術を導入した中山間カンキツ園の軽作業システムの確立
1)中山間カンキツ作における軽労型高品質果実生産技術の確立
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:周年マルチ下点滴潅水同時施肥法における、施肥管理法や適正な土壌改良資材を明らかにし、品種や栽培場所に関わらず利用できる技術に発 展させる。さらに、根群域の活性化を促し樹勢強化を図る技術開発や、カンキツ果実高品質化の指標となる水分ストレスを判断する技術開発のための、基礎的 データを収集する。

(8)傾斜地域資源を活用した集約的野菜・花き生産システムの確立
1)環境保全的省エネ型栽培システムの開発
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:平張型傾斜ハウスにおける野菜・花きの周年生産技術及び湧水を利用した低コスト育苗技術を実証する。平張型傾斜ハウスの光及び根部温度 環境を調節することにより、高温による育苗期の生育阻害を回避し、休耕した棚田を利用した夏秋レタスのトンネル栽培及び花苗の秋期生産技術の導入試験を行 う。

2)遊休・放棄農地の管理・保全技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究課題:遊休・放棄化した棚田の強勢雑草を多頭数の山羊放牧により抑制し、山村の景観の低下を防ぎ、安定した低草高状態を維持しながら果樹栽培 及び小家畜を放飼する技術を実証する。放牧による山羊の周年管理技術及び放牧地の土壌保全のための植生管理技術をマニュアル化する。

(9)中山間地域における害虫総合防除等による高品位野菜生産技術システムの確立
1)軟弱野菜栽培における再生紙マルチ利用技術の確立
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:軟弱野菜を対象に、夏季高温期の生育環境を改善し生育の安定化を図るため、地温上昇抑制効果のある再生紙マルチの利用技術を開発する。また、その利用マニュアルを提示する。

2)多品目野菜生産における害虫総合防除技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:防虫ネットによる軟弱野菜の虫害軽減効果と各種ネット資材の生育環境に及ぼす影響を解析する。その結果を踏まえ、好適な生育環境下での減・無農薬野菜生産技術のプロトタイプを提示する。

(10)中国中山間地域における遊休農林地活用型肉用牛営農システムの確立
1)放牧利用における遊休農林地の保全的管理・利用技術の確立
担当:近畿中国四国農業研究センター総合研究部
研究計画:棚田放牧地における法面の崩壊を防止するために、崩壊防止効果の高いシバの導入技術の開発を進める。また、遊休農用地の植生を放牧に適したシバ型草地及び短草型牧草地に移行させるための草地造成法の開発を進める。

2)傾斜地農業地域における地域資源の利用、及び農地管理・安定生産技術の開発

(1)傾斜地域の土・水機能の特性解明及び地域特性に適合した小規模整備管理技術の開発
1)傾斜地圃場が持つ機能性の特性の把握
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:傾斜地不整形圃場における屈曲角や進入路の作業性に及ぼす影響についての試験を行う。傾斜地域圃場からの降雨排水の特性を山地や傾斜草地からの流出特性との比較から検討するための観測を継続する。

(2)傾斜地域における土地利用、地形解析及び農地の防災機能向上技術の開発
1)中山間地域における地盤情報の調査・解析手法の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:傾斜地域農村における生産要素の変化と土地利用変動の関係についてとりまとめ、集落レベルの空間デ-タを地理情報システム(GIS)上 のデ-タとして作成する手法をとりまとめる。傾斜地農地の地震被災時の被害予測技術を開発し、画像解析による流量計測手法を適用して分水工等の構造物で生 ずる流れの解析手法を解明する。

(3)傾斜地域における土・水・生物資源の機能解明による省力・低負荷型管理技術の開発
1)資源循環・低投入型農業技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:ヘアリーベッチすき込みによる、水稲の無農薬、無化学肥料栽培法の確立のため、すき込みから田植えまでの期間と、水稲の窒素吸収、食味 値の関係を調査し、最適すき込み時期を明らかにする。四万十川流域の窒素による汚染防止のため、河川水質および流域の営農実態を調査し、窒素収支を明らか にして負荷の低減策を提案する。

(4)傾斜地における局地気象発生条件の解明
1)傾斜地域に発生する斜面上昇風の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:早明浦ダムの北面と南面で斜面上昇風の観測を行い、南面と北面における斜面上昇風の違い(発生時間、強度、発生頻度他)について明らか にする。また、斜面方位によって発生する差がどのような気象条件が寄与しているかについて、斜面に入射する日射量やダム湖水面の温度や斜面の温度との関係 で解明に取り組む。

(5)傾斜地域における軽労化作業技術開発のための要素的作業技術の開発
1)傾斜地域での高付加価値生産に対応した環境保全型作業技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター傾斜地基盤部
研究計画:全層破砕処理における土壌破壊メカニズム解明のため、個別要素法を応用した土の力学モデルを構築し、数値シミュレーションによって効果的なシャンク配置の理論的解明に取り組むほか、破砕機の改良を行う。

3)高付加価値化、軽労化等に対応した作物の開発及び高品質・安定生産技術の開発

(1)高付加価値化、軽労化等に対応した作物開発のための分子マーカー及び遺伝子組換え体の開発
1)マメ類虫害抵抗性、小麦生地物性に関わる遺伝子の解析
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:豆類虫害抵抗性としては、虫害抵抗性マメ類から抵抗性物質を単離し、その構造と機能を解析する。また、インゲンマメ類に含まれる殺虫性 蛋白質αーアミラーゼインヒビター遺伝子を導入した作物を作出し、虫害抵抗性を検定する。小麦生地物性としては、日本小麦の生地物性に関わる蛋白質及び遺 伝子を探索する。

(2)高付加価値化、軽労化等に対応した水稲品種の開発
1)稲発酵粗飼料用等水稲品種の育成
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:飼料用稲品種の育成としては、平成12年度品種登録出願を行った「中国146号」と「中国147号」について収量性や諸特性を場内の肥料試験と現地実証試験によって検定し、実用品種化を図る。また、より飼料適性の優れた水稲系統の選抜を進める。

(3)温暖地西部向け高品質・早生小麦品種の育成
1)色相を改善した温暖地西部向け早生小麦品種の育成
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:温暖地西部向け小麦品種の育成としては、めんの色相と小麦の各種成分の関係を解析し、効率的な育種技術の検討を行うとともに、平成10 年度以前に交配した雑種集団・系統の中から色相の改善された早生系統の選抜を続行する。また、「中国146号」について品種登録出願を行うとともに、奨励 品種化に向けて種子増殖を行う。

(4)高品質多収裸麦品種の育成
1)裸麦の早生耐倒伏良質多収品種の育成
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:強稈性、多収、高精麦適性を重視した50~70組合せの交配を実施する。系統育種法および集団育種法により選抜、育成を進める。生産力 検定予備予備試験に約150系統、同予備試験に約110系統、生産力検定試験に約30系統を供試する。四国裸98号の品種化を目指し、圃場および精麦品質 関係のデータを蓄積する。

(5)温暖地向け高品質・多収・機械化適性大豆系統の開発
1)温暖地向け豆腐用高蛋白質・多収・機械化適性大豆系統の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:温暖地向け大豆系統の開発としては、交配母本の選定のため既存の品種・系統の栽培特性・品質特性を調査するともに、豆腐用の高蛋白質・多収・機械化適性系統の開発を目標とする交配を行う。また、平成12年度以前に交配した雑種集団・系統の選抜試験を実施する。

(6)水稲・大豆の生理生態特性の解明及び高品質低コスト安定栽培法の開発
1)疎植栽培水稲の生育特性及び窒素の転流分配機構の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:疎植栽培水稲の生育特性の解明としては、施肥・栽培管理法が生育ステージごとの葉面積、窒素吸収量に与える影響を解明する。また、生育 特性と収量、品質、食味との関連について解析する。窒素の転流分配機構の解明としては、安定同位体元素15Nを用いて追肥窒素の動態を調査するともに、玄 米における窒素の蓄積について解析する。

(7)高付加価値化、軽労化等に対応した機械作業技術の開発
1)大豆栽培管理作業の省力化技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:省力化技術の開発としては、播種作業適期が短い麦後の大豆作において、条間75cmの簡易な不耕起施肥播種機を改良し、条間25cmの 密植栽培に対応させる。また、新に開発する播種溝底部への亀裂作製用耕耘爪を用いて、湿害による出芽障害の軽減効果の評価を行う。

(8)地域ニーズに対応した主要穀類の高品質・高付加価値化技術の開発
1)地域向け米・小麦の高品質成分の解析
担当:近畿中国四国農業研究センター作物開発部
研究計画:品質構成成分特性の解明としては、米飯の粘りに係わる粘性多糖の付着力測定並びに呈味性に係わる糖蛋白類の化学分析を実施する。また、小麦の穀実の加工適性に関与するデンプン粒表層の脂質結合性蛋白質の単離・精製を行い、次年度以降の特性解析に備える。

4)傾斜地農業地域における果樹、野菜、花きの高品質安定生産技術の開発

(1)傾斜地果樹園に適応する高品質・安定生産技術の開発
1)台木の違いによる樹勢制御と品質との関連性
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:カンキツ台木(カラタチ系統、シトレンジ台)の耐塩性や耐乾性の解明に取り組む。樹体のストレス診断の手法に起電力測定法を試み、その実用性を検討する。また、初期生育の促進法として、リン酸の効果を解明する。

(2)地域特産野菜、花き等の高品質・安定生産技術の開発
1)レタスビッグベイン病抵抗性素材の検索と品種抵抗性利用技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:地域特産野菜である冬レタスについて、既存品種ならびに野菜茶試保有遺伝資源、さらに海外からの導入品種のビッグベイン病抵抗性を検定 し、有望品種を選定する。検定法として、圃場での病徴観察以外に、血清学的診断を適用する。野茶研が行う品種育成のための早期選抜法として,幼苗検定法の 開発に取り組む。

(3)病原ウイルスの特性及び発病・流行機構の解明
1)レタス病原ウイルスの諸性質の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:レタスビッグベインウイルスの塩基配列を決定し、遺伝子構造を明らかにするとともに、遺伝子診断に必要な適切なプライマー領域を決定す る。また、昨年度作製したモノクローナル抗体を用いてELISA等、簡易な血清学的診断法を確立する。レタスビッグベイン病に関わる新たなウイルスについ ては、抗血清を作製する。

(4)果樹、野菜等の環境に配慮した持続的生産技術の開発
1)傾斜地域の農地管理法策定のための予備検討
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:傾斜地農業における植物栄養、土壌管理に関わる作物生育阻害要因の抽出を行う。土壌の物理・化学性分析、植物体中の養分分析、土壌水中 のイオン組成の分析、有機性資源の分解生成物の分析、有機性資源の無機化特性を解明するための再現性のある実験条件の確立、代表的な類型土壌の確保等、試 験研究環境を整備し、予備試験を行う。

5)地域産業振興につながる新形質農作物及び利用技術の開発

(1)新形質農作物の開発
1)ヤーコンの高品質・多収系統の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:ヤーコンの高品質・多収系統は高フラクトオリゴ糖含量を第一の育種目標として、高含量の系統及び分解が遅い系統の検索を強化する。有望 系統SY206、SY212、SY217については系統適応性検定試験に加え、早掘り性・最適栽植密度の検定を行い、品種登録に向け特性評価を行う。

(2)地域農作物の機能性解明及び利用技術の開発
1)特産作物由来ペプチドの抗菌効果
担当:近畿中国四国農業研究センター特産作物部
研究計画:特産作物からペプチドを抽出・精製し、大腸菌やサルモネラ菌等の食中毒原因菌、および加熱殺菌済の果汁を腐敗させる耐酸耐熱性細菌に対する抗菌効果を明らかにする。また、それら抗菌ペプチドの作用を増強する物質を既存の食品添加物から検索する。

6)都市近接性中山間地域における野菜の安定生産技術及び高品質化技術の開発

(1)高付加価値野菜の安定生産技術の開発
1)高機能性野菜生産のための栽培技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:アブラナ科野菜を対象に、収穫部位の異なる異種間の接ぎ木処理が地上部、地下部の機能性成分含量に及ぼす影響を調査する。

(2)高齢化に対応した野菜の養液栽培技術等の開発・改良
1)フロートマット水耕における葉菜類の周年栽培と消費液量
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:フロートマット水耕装置を用いた栽培について、ホウレンソウ以外の各種葉菜類を栽培する場合の養液の条件を明らかにし、栽培マニュアルを完成する。

2)フィールド養液栽培装置の培地物理化学特性と作物の生育
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:各種培地資材と作物生育との関係について解析し、フィールド養液栽培における培地資材の物理及び化学特性を把握する。

(3)塩類集積が野菜の代謝に及ぼす影響の解明、微生物を利用した塩類集積土壌の診断技術の開発
1)軟弱野菜類の土壌、栄養環境による抗酸化活性成分の消長と変動要因の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター野菜部
研究計画:ホウレンソウを用いて抗酸化活性と生育に及ぼす塩類ストレスや肥料成分の影響を解明し、高い抗酸化活性と生育が得られる栽培条件を求める。

7)野草地等の地域資源を活用した優良肉用牛の低コスト生産技術の開発

(1)肉用牛の遺伝的能力の評価法及び繁殖機能制御技術の開発
1)ウシ妊娠子宮内膜において発現するMx遺伝子の構造・発現・機能に関する研究
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:ウシMx1B遺伝子のプロモーター領域以外の配列、特に5'翻訳領域における遺伝的変異の有無を探索する。また、妊娠日齢の異なる子宮内膜組織からRNAを抽出し、RT-PCR法で妊娠子宮におけるMx遺伝子の発現様式を明らかにする。

(2)シバ等の地域資源の飼料特性の解明及び食品工業副産物の有効利用技術の開発
1)トウフ粕、ビール粕等食品工業副産物の人工消化法による消化特性の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:肉用牛におけるトウフ粕、ビール粕の主要食品工業副産物の消化特性を、人工消化法により解明する。また、トウフ粕の消化特性に基づく可給限界量の解明や各種酸による保存性向上試験、及び脂肪含量の高い生米ヌカの飼料化のためのルーメン内分解性試験を行う。

(3)肉用牛の育成・肥育における遺伝的能力・飼料成分等の影響の解明及び肥育技術の開発
1)和牛における脂肪蓄積遺伝子の筋肉内発現による脂肪交雑判定技術の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:黒毛和種を主とした和牛のロース部分をバイオプシーの技術を用いて取り出し、発現している脂肪蓄積遺伝子をRT-PCRを用いて定量し、脂肪蓄積遺伝子の発現量と肥育月齢との関係を明らかにする。

(4)シバ型草地等の植生構造及び野生ヒエ類の自然下種繁殖特性の解明
1)前作イタリアンライグラスの管理条件が後作イヌビエの種子生産量と乾物生産量に与える影響の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター畜産草地部
研究計画:耕作放棄水田に導入した「イタリアンライグラス-イヌビエ」グラス生産体系において、イタリアンライグラスの早晩性と施肥条件がイヌビエの落下種子量と翌年の乾物生産量に与える影響を明らかにする。

8)都市近接性中山間地域における持続的農業確立のための生産環境管理技術の開発

(1)生物資源の利用と病害の発生特性に基づく省農薬・環境保全型病害防除技術の開発
1)イネ苗に発生する種子伝染性病害を抑制する拮抗微生物の拮抗機能の解明と利用技術の確立
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:拮抗細菌CAB-02によるイネもみ枯細菌病、苗立枯細菌病の発病抑制現象の解明については、CAB-02を処理したときの、イネ苗上における緑色蛍光タンパク質を発現する病原菌の動態解明を進める。

(2)天敵等による害虫防除法の開発と難防除害虫の省農薬・環境保全型防除技術の開発
1)トマトハモグリバエの防除に関する研究
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:難防除害虫の発生生態の解明については、トマトハモグリバエの発育日数、産卵数等の基本的な生活史パラメーターの解明に着手する。また、本種と近縁種についてDNA配列を調べ、簡易同定法の開発に取り組む。

(3)イノシシ等野生動物の行動及び生態の解明と被害防除に関する技術開発
1)イノシシにおける感覚・運動能力及び異種動物との生物学的関係の解明とその応用
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イノシシの運動能力を行動学的手法を用いて調査するとともに、運動能力がどのような障害物等によって抑制されるのかを明らかにする。ま た、視力、聴覚等の感覚を二者択一の同時弁別法等を用いて測定する。さらに、イヌ、牛、山羊との生物学的順位を調べ、この関係に則した対策技術の開発に取 り組む。

(4)有機資源の利用に基づいた環境保全型土壌管理技術の開発
1)温暖地西部における土壌管理に基づいた小麦子実蛋白質含量の制御
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:有機資源の評価・利用技術の開発については、小麦子実蛋白質の各画分への安定同位体15Nの取り込まれを解析することにより、小麦の子実蛋白質含量に及ぼす作付け体系(裸地、ダイズ、稲)、土壌型、緩効性肥料の影響の解明を進める。

(5)複雑地形下の気候資源の評価と利用に関する研究
1)リモ-トセンシング技術と地形因子解析法を融合する気温分布測定法の開発
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:気候資源の評価技術の開発については、地表被覆が複雑で、かつ地形が複雑な地域の熱画像と気温分布を測定して、リモ-トセンシングと地形因子解析法を融合する手法の開発を進める。

(6)植生を利用した畦畔等の生物学的雑草管理技術の開発
1)畦畔における被覆植物と雑草との競合関係の解明
担当:近畿中国四国農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:植生による畦畔雑草の制御機構の解明については、各種被覆植物の傾斜地における葉群の垂直分布、地被能力を調査し、被覆植物の草型の違いが農地斜面における雑草類との光の競合関係に及ぼす影響の解明に取り組む。

G 九州沖縄農業研究
1)九州・沖縄地域の立地特性に基づく農業振興方策及び水田・畑作・畜産における省力・環境保全型・持続的地域農業システムの確立、並びに沖縄など南西諸島農業における持続的農業システムの確立

(1)担い手等の地域農業構造の解析と平成22年までの農業動向の予測
1)畑作地域における担い手等の農業構造の動向解析
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:甘しょ、露地野菜作を基幹とする暖地畑作地域における担い手や労働力の農業従事状況、畑地利用等の農業生産実態の特質を把握するための調査を開始する。併せて関係機関への聞き取り等によって開発技術の導入可能性を把握する。

(2)水稲ショットガン直播等の開発技術の経営的評価と営農モデルの策定及び開発技術定着のための地域的支援方策の解明
1)開発技術の経営的評価と営農モデルの策定
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:経営的評価については、革新性の高い経営者が水稲直播等の新技術を導入する場合の技術評価の特徴を解明する。営農モデル策定に関しては、麦類等の価格変動を考慮し組み込んだ稲麦大豆作経営モデルを試作する。

(3)複合経営等における労働力等経営内外資源を有効利用した経営モデルに基づく経営展開方式の解明
1)複合経営等における経営間結合の可能性の検討と最適規模拡大計画モデルの策定
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:工芸作物(タバコ)や野菜(ゴボウ)を組み込んだ水田作複合経営モデルを策定する。最適規模拡大計画モデルの策定について、繁殖牛経営における投資効率や飼料生産労働を考慮した規模拡大計画モデルを試作する。

(4)地場農産物直売所等による地域農業の組織化と行政等による支援システムの解明、及び堆肥等の流通構造の解明と農業情報処理手法の開発
1)雇用労働力需給調整組織の活用方策の解明
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:農業雇用労働力需要の大きい農家の経営実態及び求職者側の属性、雇用条件に対する意向等を調査把握し、JA等の雇用労働力需給調整組織が地域の農業雇用を促進するための条件と方策を明らかにする。

(5)水田高度輪作体系における暖地適応型水稲直播栽培技術を核とする省力・省資材・安定生産技術システムの確立
1)水稲代かき同時土中点播機の麦・大豆播種への汎用利用技術の開発と適応性の検証
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:開発した水稲の代かき同時土中点播機をベースに、直播機の多機能化を図るとともに、大豆・麦播種の汎用利用に向けて試作・改良行い、体系化試験においてその適応性の検証を行う。

(6)暖地畑作地帯における持続的農業を目指した省力・安定生産システムの確立
1)栽培手法の共通化・汎用化技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:甘しょ、露地野菜に共通した汎用トンネル様式を開発するため、開発トンネル敷設・撤去機の基本仕様を明らかにする。

(7)アンモニア回収型高品質堆肥化技術、成分調整成型堆肥の生産・利用技術、及び地域バイオマスのエネルギー化等利用技術の開発
1)成分調整堆肥の生産・利用技術を基幹とした耕畜連携営農システムの開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:牛ふん堆肥をベースに豚ぷん堆肥や鶏ふん堆肥、油粕等を混合した成分調整堆肥による大豆の無・減化学肥料栽培技術を開発する。ロー ラー・ディスクダイ式成型機における堆肥、堆肥と油粕等の混合物などの材料別の成型性能を明らかにする。また、家畜ふん堆肥等、バイオマスからのエネル ギー回収のための予備乾燥等、前処理技術の開発に取り組む。

(8)沖縄地域における高収益複合営農の確立のための、ばれいしょ及び新規野菜・花きの導入及び安定栽培技術の開発
1)亜熱帯環境条件下での野菜・花きの生育反応の解明
担当:九州沖縄農業研究センター総合研究部
研究計画:イチゴの促成作型を対象にして亜熱帯高温条件下での生育、収量特性を解明するとともに根系形成に及ぼす影響の解明に取り組む。ユーチャリス等花き類の花芽分化に対する温度等の影響を解明する。

2)暖地水田作地帯における基幹作物の生産性向上技術の開発

(1)水稲の晩播適性の高い直播用良食味品種、暖地向け新規形質品種及び複合抵抗性良食味品種の育成
1)暖地向きの晩生・極良食味水稲品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:暖地の稲・麦二毛作体系に適合する晩生系統として開発した極良食味・良質・安定多収の「西海230号」について、食味・品質・収量性の年次変動、耐病害虫抵抗性の評価、実用形質の固定度等を重点的に調査し、命名登録・普及に向けての加速化を図る。

(2)暖地向け稲発酵粗飼料用イネ品種の育成及び栽培・利用技術の開発
1)高密度田植機を用いた飼料イネの密植多肥・多回刈り栽培技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:千鳥植え田植機等による高密度移植と堆肥及び化成肥料の多量施用との組み合わせにより、飼料イネの多収多回刈り栽培技術を開発する。

(3)暖地向け高品質・早生小麦品種の育成と作期前進化栽培技術の開発
1)高品質・早生小麦品種の育成と秋播型小麦品種の早播き栽培における品質・収量の安定化技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:「農林61号」より4~5日早熟で、めんの色が優れたやや低アミロースの高製めん性系統の地域適応性を評価する。また、早播き栽培にお ける秋播型早生小麦の製粉・製めん適性の評価、生育反応を明らかにし、地域対応の高品質・安定多収のための最適播種時期・播種量及び雑草・施肥管理技術を 開発し、その技術マニュアルを策定する。

(4)高精麦特性を備えた焼酎醸造用及び食糧用の二条大麦品種の育成
1)食用高品質二条大麦系統の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:レトルト食品等の新規用途向けに、加熱後の褐変が少ない低ポリフェノールの高精麦白度二条大麦系統を開発する。

(5)温暖地・暖地向け高品質大豆品種の育成
1)「だいず九州131号」の北部九州における栽培適性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:早生・高品質大豆品種「九州131号」を命名登録し、北部九州における最適な栽培条件を明らかにすることによって、当該地域での普及に取り組む。

(6)耐倒伏性を強化した温暖地・暖地向けハトムギ及びソバ品種の育成
1)耐倒伏性を強化した中生ハトムギ品種の有望系統の育成
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:暖地・温暖地に適する中生(岡山在来より早生)で耐倒伏性を強化(岡山在来より短稈)した有望系統を育成し、地方配布系統として各生産地に配布する。

(7)高温・多湿条件下における水稲・麦類の物質生産機能の解明及び生育制御モデルの開発
1)暖地水田作における水稲及び小麦の生育診断指標の解明
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:水稲については、点播直播における施肥時期や施肥量の違いが草姿に及ぼす影響を節位別器官長を指標として明らかにする。小麦については、非破壊的な植被診断技術を開発する。

(8)稲・麦・大豆を基幹とする水田輪作体系における窒素動態を主にした地力変動等の解明と環境負荷軽減型の土壌・施肥管理技術の開発
1)水田の輪換利用及び有機物連用に伴う地力変動の解明
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:水田の稲-麦-大豆の輪換利用に伴う各作物跡地の窒素肥沃度をインキュベーション法等で評価する。また各種有機物連用に伴う窒素肥沃度を評価する。

(9)暖地汎用化水田における雑草の生理・生態の解明及び低投入型雑草制御技術の開発
1)暖地水田輪作体系における水稲湛水直播栽培の効率的雑草制御技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:水稲の代かき同時湛水直播栽培における播種後の落水管理に対応した除草体系の開発を、稲・麦・大豆の水田輪作体系を対象に行う。

(10)暖地水田輪作における基幹作業の省力・軽作業・高精度化技術の開発
1)高水分小麦のハイブリッド乾燥システムの開発
担当:九州沖縄農業研究センター水田作研究部
研究計画:小麦収穫時の降雨による品質低下の回避技術として、高水分小麦を対象に除湿条件と熱風乾燥条件を組み合わせた乾燥法を開発する。

3)暖地畑作地帯及び南西諸島における持続的作物生産技術の開発

(1)青果用、加工用、でん粉原料用など利用目的に応じた高品質甘しょ品種の育成と新用途向けや省力栽培向け新タイプの品種開発
1)青果用優良甘しょ品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:青果用優良甘しょ品種の育成としては、有望系統「九州130号、九州133号」の品種登録をめざした特性調査を続行する。併せて、我が国の甘しょ育種に必要な交配種子の作出、平成12年度以前交配の系統群から選抜を続行する。

(2)暖地畑作物の収量・品質に関わる栽培環境条件、作物の持つ生物機能及び作付けによる土壌養分動態の解明による持続的生産管理技術の開発
1)直播甘しょにおける安定多収阻害要因の解明と甘しょ体内における窒素固定細菌の分離
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:直播甘しょの安定多収阻害要因の解明については、種イモの植付け前処理の影響を明らかにし、親イモ肥大を抑制する条件を提示する。甘 しょ体内における窒素固定の分離については、甘しょ植物体内に内生する窒素固定細菌を分離、同定し、窒素固定に関わる細菌数の推移を明らかにする。

(3)甘しょ直播栽培の機械化等暖地畑作物栽培における軽労化作業システム技術の開発及び農産物の一次処理加工条件等の解明
1)甘しょの直播機械化による省力生産技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:これまでに試作開発された直播甘しょ栽培用の個別機械化技術を組み合わせた作業体系を検証し、多労な育苗・挿苗作業を省ける直播甘しょ栽培を、現行の畦栽培体系に適応できる機械化作業方式を作成する。

(4)甘しょ等暖地畑作物の機能性の探索・同定、特性解明及び未利用部分や加工廃棄物の利用可能性の評価
1)甘しょ、さとうきび及びその副産物の健康機能の検索と特性評価
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:さとうきび及び甘しょ副産物(澱粉粕、茎葉)の成分及び機能性などの特性を明らかにし、その利用可能性を示す。サトウキビについては、機能性を活かしたジュース化などの新用途を開発する。

(5)収穫適期の異なる高糖性さとうきび品種等の育成
1)機械収穫適性の高い高糖性・多収さとうきび有望系統の評価
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:機械収穫に適し、収穫適期の異なる、良質・安定・多収品種の育成を進める。早期高糖性系統KTn94-88及び普通期収穫用株出し多収性系統、KR91-138、KF92-93等の生育調査を実施する。

4)暖地における物質循環型・高品質畜産物生産技術の開発

(1)暖地向け飼料用とうもろこしの、耐倒伏性・耐病性・消化性等に優れた熟期別多収系統及び品種の開発
1)暖地向き高品質・耐倒伏性とうもろこし品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:ホールクロップの栄養価が高い春播き用熟期別優良品種シリーズ育成のため、近赤外線分析等効率的な栄養価評価法を導入しつつ、熟期別に 有望系統の選抜を進める。また、オールシーズン向き品種の育成を図るため、晩播・夏播き栽培の主要病害である南方さび病について抵抗性自殖系統の育成を進 めつつ、抵抗性遺伝様式を解明する。

(2)ロールベール向きソルガム類優良自殖系統の開発及び「はえいぶき」に代わるえん麦品種の育成
1)ロールベール向き暖地型牧草の選定とソルガム類優良自殖系統の育成
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:スーダングラスとソルガムの遺伝資源の中から、初期生育性、高消化性、耐病性に優れた系統間で交雑し遺伝子の組み替えを図る。また、機械化適性を持つギニアグラスの有望系統を絞り込む。

(3)不耕起播種等による夏作、冬作飼料作物の周年省力栽培技術及びロールベールサイレージの品質改善技術の開発
1)作溝型不耕起播種機によるロールベール向けギニアグラスの簡易播種技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:ロールベール向けに育種された小粒種子のギニアグラスを、作溝型播種機で播種する技術を開発し、一貫省力栽培法の開発に取り組む。

(4)利用期間が長いトールフェスク優良品種の育成及び寒地型・暖地型牧草等を組み合わせた肉用牛周年放牧技術の開発
1)夏季放牧用草地としての低投入持続型シバ草地の利用技術の確立
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:無施肥・放牧条件下で利用してきたシバ草地を用いて、供試牛(肥育素牛および繁殖牛)、放牧方法(定置放牧および輪換放牧)および放牧 頭数を変えた時のシバ草地の一次生産量、牧養力および植生の推移を調査することで、低投入で持続的なシバ草地の利用管理技術を確立する。

(5)家畜の暑熱適応性、エネルギーの蓄積、ミネラルの分配等の調節機構の解明と生殖細胞、胚等の分子レベルでの評価法の開発
1)肥育豚の筋肉における脱共役蛋白質の遺伝子発現に暑熱環境が及ぼす影響の解明
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:肥育後期の豚を暑熱環境下で飼育し、胸最長筋や菱形筋など食肉となる筋肉における脱共役蛋白質の遺伝子発現量を、熱的中性圏で飼育した 同様の豚のものと比較し、暑熱環境の影響解明に取り組む。また、これらの遺伝子発現量と、飼料要求率などの飼養成績との間に関連がみられるか解明する。

(6)若齢期肉用牛の飼養管理が生理機能に及ぼす影響の解明
1)肥育開始の早期化が増体およびIGF系に及ぼす影響の解明
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:肥育期間短縮を目指して若齢時から肥育を開始した肉用牛の成長と成長肥育に伴う内分泌系の変化との関連を明らかにする。特に出生から性成熟期にかけて上昇する血中のインスリン様成長因子(IGF)-1レベルの変動パターンと増体との関係を中心に取り組む。

(7)窒素排出量低減のための肥育豚へのアミノ酸給与技術の精密化及び牛からのメタン発生量抑制等のための飼料給与技術の開発
1)脂肪酸カルシウムの給与による肥育牛からのメタン発生の抑制技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:肥育牛からのメタン発生量抑制技術を開発するため、褐毛和種去勢牛を用い濃厚飼料飽食の肥育期間中におけるメタン発生量の推移を明らか にするとともに、アマニ油脂肪酸カルシウムの給与がメタン発生に及ぼす影響とその持続性および生産物に対する影響を明らかにする。

5)暖地等における野菜花きの高品質・省力・安定生産技術の開発

(1)イチゴの促成・四季成り等作型適応性、省力果房型適性、各種病害抵抗性等の中間母本等の開発並びにスイカの立体栽培適性素材の検索
1)イチゴの施設栽培適応性品種の育成
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:省力型果房形態を有する「久留米56号」及び「同57号」について地域適応性を検定するとともに、実用系統の育成を進める。ビタミンCについて遺伝解析するとともに、高ビタミンC含量系統を絞り込む。また、選抜系統について炭そ病抵抗性を検定する。

(2)イチゴ等施設栽培品目の光合成・花成等についての生理生態反応の解明と培養液等の栽培環境制御法並びに省力化栽培技術の開発
1)高設栽培におけるイチゴ省力花房型適性品種の養分吸収、生育、収量特性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き究部
研究計画:高設栽培条件下でイチゴ省力花房型適性品種(久留米57号)の生育、収量並びに吸肥特性を解明し、最適な培養液管理技術の開発を進める。

2)パプリカの養水分吸収特性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:点滴かん水施肥下のパプリカの養水分分布特性並びに養水分吸収特性を解明し、環境保全型肥培管理技術の開発に着手する。

(3)キク等主要花きの暖地気象環境等に対する環境応答機構の解明に基づく育種素材の検索、系統の開発と省力化等生産技術の開発
1)無側枝性キクの生理・生態の解明に基づく安定生産技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:無側枝性キクの無側枝性発現に関与する温度の影響を影響温度、期間、作用時期について解明する。無側枝性主要品種「岩の白扇」について奇形花や、葉焼けの発現に関与する温度や日射量等の作用機作を明らかにする。

(4)主要野菜・花きについての主要病虫害の発生・発病機構の解明及び天敵や有用微生物等の利用による生物防除を基幹とした病虫害制御技術の開発
1)レタス根腐病の発生抑制技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:土壌消毒と有用微生物を組み合わせたレタス根腐病の防除技術の開発に取り組む。同時にフザリウム病菌の生態を解明するため、高い分離能を有する選択培地を開発する。

2)各種天敵類を核としたアブラムシ等害虫の総合防除技術の確立
担当:九州沖縄農業研究センター野菜花き研究部
研究計画:ククメリスカブリダニのハダニ抑制力を評価する。また、平成12年度に新たにメロンで発生が認められた侵入害虫のトマトハモグリバエに 対する天敵類の有効性を評価し、利用方法開発に取り組む。さらに、メロンの病害防除のための慣行の殺菌剤の天敵類に対する影響を解明し、天敵類と殺菌剤の 最適利用条件を明らかにする。

6)高温多雨条件における自然循環増進技術の開発

(1)暖地における環境保全的養分管理技術及び地力消耗型土壌の管理技術の開発
1)九州・沖縄の農耕地土壌環境における硬化等の土壌特性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:乾燥に伴い著しく硬化する沖縄本島中部のマージ土壌の理化学性、粘土鉱物組成を分析し、硬化に関与する要因を明らかにする。

2)甘しょの養分要求性に基づく環境負荷低減型カリウム施肥法の開発
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:新用途向けに開発された色素用品種ジェイレッドの養分吸収特性を明らかにするとともに、栄養特性に基づいた適正なカリウム施肥法を開発する。

(2)暖地農業地帯での温室効果ガスの発生に関わる脱窒菌あるいは環境負荷物質の代謝に関わる農業化学物質分解菌等の微生物の特性解明
1)メタン等温室効果ガスの発生に関わる微生物の動態及び機能の解明
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:揮散を含む窒素収支が明らかにされている南九州の家畜スラリー還元畑土壌における脱窒菌群及び脱窒活性の時期的・土壌層位別動態を明らかにするとともに、メタン生成古細菌の細胞壁分解に関与する遺伝子の大腸菌への導入・発現を試みる。

2)難分解性有機塩素系化合物の嫌気性細菌による分解能の把握手法及び生態解明手法の確立
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:クロルベンゼンやPCB等の難分解性有機塩素系化合物の還元的脱クロル化には複数の菌群が関与している。これまでに開発してきたシステ ムを基に、混合微生物系の解明に適応可能なプログラムの開発を試みる。さらに、嫌気的分解能の把握手法確立により、分離困難な嫌気性菌群を推定する手法の 確立を進める。

(3)暖地での気象資源特性の解明並びに水稲・葉菜類等の気象災害評価方法の開発
1)水田の熱収支特性と盆地における局地気象特性の解明
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:水田(水稲・イグサ)の群落微気象を把握するため、熱収支法により連続観測を実施し、葉面積指数と蒸発散量との関係並びに熱収支項を定量化するとともに、盆地内外における気温・風速等の分布を定量化するための移動観測手法を開発する。

(4)暖地における農地及び周辺地域の水循環の解明並びに農村流域における環境負荷物質の動態の解明
1)農村流域の水資源量を把握するための観測手法の確立
担当:九州沖縄農業研究センター環境資源研究部
研究計画:農地の土壌水分量について、TDR土壌水分計を用いて異なる営農条件下の土壌に対する簡易で的確な観測手法を確立する。また、流域レベ ルの貯留量について、貯水池に堆積する土砂の観測手法を確立するため、深浅測量と既存の施設管理データの活用の可能性を明らかにする。

7)地域産業創出につながる新形質農畜産物の開発と加工利用技術の開発

(1)作物の環境ストレス耐性・加工適性等関連遺伝子の解析及び利用技術の開発
1)酸性土壌耐性作物の遺伝子機能及び構造の解明
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:マイクロアレー分析により稲の酸性ストレス応答遺伝子群を解析する。また、大麦の根の形質を指標として酸性土壌ストレス応答を調査するとともにcDNAライブラリーを作成して酸性土壌で特異的に発現する遺伝子群を明らかにする。

(2)水稲、麦類、大豆、甘しょ、さとうきび、ソバ、飼料作物等の遺伝資源収集、有用形質の評価及び育種素材化
1)甘しょ遺伝資源を活用した有用遺伝子の解析と高色素等育種素材の開発
担当:九州沖縄農業研究センター畑作研究部
研究計画:アントシアニン系遺伝資源を収集し評価分類する。高色素育種素材の開発としては、平成13年度にアントシアニン高色素系統間の交雑を行い、選抜母集団を作出して新規の選抜を開始する。また、既存のアントシアニン色素系統品種の安定性の差異を調査する。

2)不良環境に適応性が高く、新たな利用に適した多収性さとうきび育種素材の開発
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:不良環境条件下で株出し多収性を発現し、食品原料、飼料等新たな利用に適したさとうきび品種の育種素材を開発するため、'97GA系統等、種属間交雑系統の生産力、萌芽性、不良気象条件への適応性、飼料適性を評価する。

(3)作物中のアントシアニン等の健康機能性成分の分析手法、評価手法の開発及び食品としての用途開発研究
1)和食素材に含まれるアントシアニンの体内吸収による生活習慣病予防効果
担当:九州沖縄農業研究センター作物機能開発部
研究計画:黒大豆・紫黒米・紫カンショに含まれるアントシアニンの体内吸収、血中内での抗酸化機能を解明する。

(4)畜産物の機能性成分等に及ぼす飼養条件の影響の解明
1)豚への硬化油および桐油の給与が体脂肪中CLA含量に及ぼす影響
担当:九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部
研究計画:反芻家畜に特有な機能性脂肪酸である共役リノール酸を、単胃動物である豚の体内に蓄積させるため、マーガリンなどに利用される硬化油を 給与し、豚の体内での共役リノール酸の合成および体内蓄積に及ぼす影響を明らかにする。また、共役結合を有するリノレン酸含有の桐油を給与した場合の影響 について解明する。

8)暖地多発型の難防除病害虫の環境保全型制御技術の開発

(1)病原菌等の遺伝的特性の解明に基づく主要病原菌レース、ウイルス、ネコブセンチュウ等の同定、診断、防除技術の開発
1)水稲及びメロンに発生する主要病原菌の追跡技術及び抵抗性利用技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:イネいもち病菌菌株の簡易同定用DNAマーカーを探索し、イネいもち病菌の伝染経路を追跡できる技術を開発する。また4種のメロンつる割病菌レースの発生動向を追跡し、市販メロン品種の実用的な抵抗性を明らかにする。

2)ネコブセンチュウ類のレース解析と九州沖縄地域における地理的分布の解明
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:DNA解析技術の効率化を図り、九州、沖縄のネコブセンチュウ類の同定及びその分布域を明らかにする。また、サツマイモネコブセンチュウ類について、甘しょ抵抗性検定用標準線虫レースを選定し、九州におけるレース分布地図を作製する。

(2)熱水土壌消毒、機能水、品種抵抗性等の活用による病害虫の減農薬防除技術の開発
1)臭化メチル代替技術としての熱水土壌消毒法の開発
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:臭化メチル代替技術としての熱水土壌消毒法を確立するため、農業現場で土壌消毒効果を実証し、また、土壌消毒後の土壌の物理性、生物性の変化を明らかにする。

(3)弱毒ウイルス、形質転換体の作出、利用や害虫の生態的特性、天敵、フェロモン等に基づく生物防除技術の開発と有効性の評価
1)サツマイモ帯状粗皮病の弱毒ウイルスの遺伝的解析と有効性の評価
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:九州地域のカンショの品質劣化原因の一つである帯状粗皮病の生物防除に有効な弱毒ウイルス(大分県で探索)の全塩基配列を解析し、有効性を評価する。

(4)イネウンカ類等のモンスーン移動性水稲害虫と侵入害虫スクミリンゴガイの増殖機構の解明に基づく総合管理技術の開発
1)イネウンカ類の天敵カタグロミドリカスミカメの利用技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:水田内のトビイロウンカ個体群動態に及ぼす海外飛来性天敵カタグロミドリカスミカメの天敵としての有効性を解析し、利用技術の開発を目指す。

2)湛水直播水田におけるスクミリンゴガイの被害回避技術の開発
担当:九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部
研究計画:スクミリンゴガイの密度低減に及ぼす転作の効果及び落水や薬剤等による水稲播種後の貝の活動抑制効果など湛水直播における被害回避効果を明らかにする。

9)沖縄県北部地域の農業の振興に資する研究の推進

(1)沖縄北部地域の農産物における品質・機能性成分の評価と利用技術の開発
1)沖縄北部地域における高抗酸化活性を有する農産物の検索
担当:九州沖縄農業研究センター沖縄農業研究官
研究計画:沖縄北部地域で生産される農産物(青果物,未利用産物等)の中から,ポリフェノール等機能性成分が豊富で,抗酸化活性の高い品目を検索する.

H 作物研究
1)水稲等の先導的品種育成、遺伝・育種研究及び栽培生理・品質制御技術の開発

(1)水田高度利用のための優良水稲品種の育成
1)水田高度利用のための晩播適性・飼料適性水稲品種の育成
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:既存の育成系統・品種を晩植条件で選抜または母本として選定し、良食味・新形質米の晩植適性系統・集団の選抜を行う。また、高乾物生産性でTDN収量が高く、耐倒伏性等の栽培特性に優れた稲発酵粗飼料用系統を選抜する。

(2)需要拡大のための新形質水稲品種の開発
1)米品質の高位安定化機構の解明と新形質イネ育種素材の開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:登熟温度非応答性系統候補の澱粉特性や澱粉分解酵素の餅の硬化性に及ぼす影響、機能性成分の質的・量的な差異等の解明に取り組み、新形質イネ育種素材の開発を進める。

(3)省力・低コスト生産のための水稲直播栽培適性品種の開発
1)直播栽培向き品種の育成
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:複合病害虫抵抗性を備えた直播適性品種や高度耐倒伏性を備えた品種の育成並びに出芽性極良の育種素材の開発を進める。また、耐倒伏性や直播での多収性に関わる形質についてDNAマーカーを選定するための遺伝子分析に着手する。

(4)省力・低コスト稲作における高位安定生産及び高品質・良食味栽培技術の確立
1)水稲の物質生産及び蓄積機構の解明と高品質安定生産技術の開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:水稲の生理機能や代謝成分を解析することにより、多収及び高品質・良食味米生産に関わる要因の解明に取り組む。また、品質及び食味を制御するQTLを解析する。

(5)環境保全型農業推進のための複合病虫害抵抗性水稲品種の開発
1)複合病虫害抵抗性水稲の開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:少なくとも2つ以上の病害虫に抵抗性を備えた品種やDNAマーカーを利用した同質遺伝子系統等の育成を進めるとともに、紋枯病等の病害虫抵抗性の付与を目的とした遺伝子組換え体の作出を試みる。

(6)育種素材作出のための遺伝子組換え技術の利用法開発と組換え体の評価
1)イネ遺伝子の形質転換体作出による機能解析と利用法開発
担当:作物研究所稲研究部
研究計画:遺伝子組換え技術を利用してトリプトファン合成系遺伝子等の機能を解明するとともに、改変型遺伝子等を作製して作物育種への利用法の開発に取り組む。

2)豆類、甘しょ、資源作物の先導的品種育成、遺伝・育種研究及び安定多収栽培・品質制御技術の開発

(1)豆類の先導的品種育成と利用技術の開発並びに多収栽培技術の確立
1)高品質多収大豆品種の育成
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:成分組成の改変等の高付加価値化を図った高品質多収大豆品種の育成に着手する。

2)大豆の窒素代謝等の生理・生態的特性の解析に基づく画期的多収技術の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:根粒の固定窒素で窒素必要量を満たせる初めての大豆である根粒超着生系統を用いて、イネ等と同様に生育量確保が子実収量増大に繋がるという画期的な多収栽培技術の開発を進める。

3)大豆発芽期間における湿害抵抗性生理機構の解明
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:大豆発芽期間における低酸素ストレス及び冠水抵抗性の生理的機構の解明を始めるとともに抵抗性品種・系統の選抜を行う。

(2)良食味、高機能性等優良甘しょ品種の開発
1)高品質青果用等かんしょ品種の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:機能性と食味を両立させた良食味紫かんしょ品種や迅速調理が可能な低糊化温度でんぷん品種を開発するとともに、地域の特産物である蒸切干し加工に適する品種特性の解明に着手する。

(3)新規形質資源作物の育成と育種素材の探索及び栽培技術の開発
1)新規形質資源作物品種の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:ゴマやアマランサス等における、子実成分の変異体を探索し、新規用途開発にむけた育種素材の開発を進める。

(4)大豆、甘しょ、ごま等の品質制御技術の開発及び栄養機能性の評価
1)豆腐加工適性の評価法の開発と変動要因の解明
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:国産大豆の豆腐加工適性の評価法を開発し、品種、地域別などで異なる豆腐加工適性の変動要因解明に着手する。

2)畑作物における機能性成分等の簡易・迅速成分測定法の開発
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:大豆、甘しょ、ゴマ、アマランサス等の畑作物における品質成分や抗酸化能などの機能性成分の簡易・迅速な評価技術開発に着手する。

(5)DNAマーカー等の遺伝子解析技術を利用した豆類、甘しょの新育種法の開発
1)大豆、甘しょ等における新育種技術の開発と利用
担当:作物研究所畑作物研究部
研究計画:大豆の黒根腐病抵抗性のマッピング、大豆の形質転換のための培養条件と遺伝子導入条件の解明、かんしょの立枯病抵抗性選抜マーカーの開発等、遺伝子解析や遺伝子組換え技術を活用した新たな育種法の開発に着手する。

3)麦類の先導的品種育成、遺伝・育種研究及び栽培生理・品質制御技術の開発

(1)早生、高品質、安定多収めん用小麦品種の育成とたん白質含量制御技術の開発
1)食感等の品質を改善した安定多収小麦の育成と選抜技術の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:めんの食感に優れ、製粉性や色相の改善された系統の選抜を行う。また、穂発芽耐性の飛躍的な向上をめざし分子生理学的研究に着手する。

2)小麦品種における高品質化栽培技術の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:あやひかり等の小麦新品種を播種量と施肥量を変えて栽培し、葉色、収量、小麦のたん白質含量、粉の色相などを解明し、あやひかりの栽培技術マニュアルを作成する。

(2)縞萎縮病抵抗性等を備えた食用及び麦茶用大麦品種の育成
1)縞萎縮病抵抗性、食用及び麦茶用大麦の育成と選抜技術の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:精麦及び麦茶品質の優れた大麦の育成のための交配、選抜、評価を行う。また、赤かび病及び縞萎縮病抵抗性の評価及び選抜技術の開発に取り組む。

(3)品質形成機構の解明と新規用途向け麦類系統の開発
1)蛋白質・澱粉組成の改変による新規形質小麦系統の育成
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:多用途向け品種を開発し、もち性や高β-グルカン等の新規胚乳形質を有する麦類系統の開発に取り組む。

2)小麦の製粉特性・粉色支配要因の解明と加工適性評価手法の開発
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:種子に含有する化学成分と製粉歩留との関連性を明らかにし、澱粉分子の構築に関与する酵素の蛋白化学的特性解明に取り組む。

(4)小麦の多収・高品質栽培技術の確立と生理機能の解明
1)高品質安定生産技術のための麦類の生理生態的諸特性の解明
担当:作物研究所麦類研究部
研究計画:大麦の開穎に関わる準同質遺伝子系統を用いて、閉花受粉性の遺伝と受粉制御の研究に取り組む。小麦の閉花受粉性に関する研究に着手する。

I 果樹研究
1)省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)省力・低コスト樹形を備えた育種素材及び新たなわい性台木素材等の作出並びに樹体生育関連遺伝子の単離・評価
1)交雑によるリンゴのカラムナータイプ育種素材の効率的開発
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:海外から導入したカラムナータイプ品種・系統等と、果実品質の優れた栽培品種との交雑を行い、交雑種子を獲得する。前年までに獲得した交雑種子の実生集団を養成し、カラムナータイプ個体の幼苗選抜を行う。また、亜熱帯地域における実生の生育量を調査する。

(2)省力樹形品種及び新わい性台木利用樹における樹体管理技術の開発
1)リンコ ゙JM台木等わい性台木による主要品種の生育制御の特性評価
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:リンゴJM台木の挿し木発根性を評価する。

2)カキのわい性台木による主要品種の生育制御の特性評価
担当:ブドウ・カキ研究部
研究計画:カキのわい性台木に接木した樹体の植物ホルモンの動態解析に着手する。

(3)結実管理等の省力・低コスト適性形質を備えた優良個体の育成及び育種素材の作出
1)ナシ黒星病抵抗性等の遺伝解析
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:ナシ黒星病抵抗性遺伝子が同一遺伝子座にあるかを検定する試験に使用する交雑種子を黒星病抵抗性品種のチュウゴクナシ及び「巾着」を用いて作出する。また、既に一部獲得している交雑種子を播種、養成して、同一遺伝子座にあるかを解析するための接種検定を行う。

2)ウメの自家和合性等の品種育成のための交雑実生の獲得
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:ウメにおいて、品質優良な品種・系統と自家和合性品種との交雑を行い、交雑実生を獲得する。

(4)園地別隔年交互結実技術等による結実管理作業の省力化
1)カンキツの園地別隔年交互結実技術の開発
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:ウンシュウミカンの品種・着果負荷が休眠の深さ、萌芽率、花芽分化率に及ぼす影響や台木根におけるアクアポリン遺伝子の発現と水透過性及び台木生育との関係の調査に着手する。

(5)高品質果実安定生産のための物質生産特性の解明
1)わい性台リンゴ樹等における炭水化物代謝、蒸散等の解析・評価
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:JM台木利用の「さんさ」、「王林」、「ふじ」等の糖、でんぷん代謝酵素活性、生育特性等の調査に着手する。

(6)果樹の自発休眠覚醒機構等に関する生態反応の解明
1)ナシ、モモ等における自発休眠覚醒の機構解明及びモデル開発
担当:果樹研究所生理機能部
研究計画:自発休眠導入と低温、短日等の環境因子との関係解明に着手する。

2)消費者ニーズに対応した品質・機能性・貯蔵性の向上技術の開発

(1)果実形質に関連する遺伝子の単離・解析
1)リンゴ、モモ等の着色等果実形質関連遺伝子の発現解析
担当:果樹研究所生理機能部、ブドウ・カキ研究部
研究計画:リンゴ果皮におけるフラバノン3-水酸化酵素、ジヒドロフラボノール4-還元酵素、アントシアニジン合成酵素遺伝子の発現を解析すると ともに、ブドウの着色を制御する転写因子遺伝子を単離し、その機能を解析する。また、モモ果実におけるエクスパンシン遺伝子の発現量を品種間で比較すると ともに、新たな軟化関連遺伝子の単離に着手する。

2)カンキツの果実形質関連遺伝子の発現解析
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:カンキツの交雑系統、ウンシュウミカンの突然変異系統等を材料として、果実形質に関連する遺伝子の単離手法の開発に着手する。

(2)果実の非破壊品質評価技術の高度化
1)リンゴ及びカンキツにおける果実品質の高精度非破壊評価技術の開発
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:携帯型非破壊品質評価装置による、「ふじ」樹冠における果実糖度分布の調査・解析に着手する。

(3)モモ等果実の生体機能の解析による鮮度保持技術の開発
1)落葉果樹果実の品質構成要素の解析及び代謝経路の制御法の検討
担当:果樹研究所生理機能部
研究計画:ラムノガラクツロナンの側鎖構造を解析するとともに、キシログルカンの低分子化に関与するグルカナーゼの精製を行う。

(4)消費者ニーズに対応した食べ易さ、機能性等を付与した高品質品種の育成及び育種素材の作出と果樹品種等に関する情報の効率的提供手法の開発
1)成熟期の異なる食味の優れるカンキツ系統口之津24~32号、興津50~54号の地域適応性の検討
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:第8回系統適応性・特性検定試験に供試されている口之津9系統及び興津5系統の内、3年間果実品質等が検討され、中生として有望とされている「口之津32号」について、果実特性、樹体特性を重点的に検討する。

2)品質等の優れるカキ品種育成のための交雑実生の養成と選抜
担当:果樹研究所ブドウ・カキ研究部
研究計画:平成10年度以前に交配し、高接ぎした交雑実生群から、多汁で軟らかい肉質を持ち、裂果等の障害抵抗性、栽培性等の優れる個体を選抜す る。また、平成11年度交配の交雑実生を高接ぎ・養成し、平成12年度交配の交雑種子の実生を育成する。新たに交配を行い、種子を獲得する。

3)果樹関係情報の効率的提供手法の開発
担当:果樹研究所企画調整部
研究計画:生産者・消費者ニーズに対応して、インターネットを活用した果樹に関する生産、加工、消費に係る技術情報及び、育成された果樹品種等に関する情報の効率的提供システムを構築する。

(5)果樹における効率的遺伝子導入技術の開発と導入遺伝子の発現解析
1)病害抵抗性遺伝子等を導入したブドウ等の形質転換体における導入遺伝子の影響評価
担当:果樹研究所遺伝育種部、カンキツ研究部、生産環境部
研究計画:アグロバクテリウム法によりブドウのエンブリオジェニックカルス及び不定胚にリゾチーム遺伝子等を導入し、形質転換した不定胚を選抜す る。また、温州萎縮ウイルスの遺伝子を導入したベクターを構築し、カラタチへ導入するとともに、ポリメラーゼ遺伝子を導入したカラタチのウイルス抵抗性評 価に着手する。

(6)果実等の機能性成分の分析及び関連遺伝子の単離と遺伝子導入による新素材の開発
1)カンキツ摂取量推定のためのバイオマーカーの開発
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:血中カロテノイド・フラボノイドの含量・組成からカンキツ類の種類別に摂取量を推定する方法を開発する。

2)カンキツのイソプレノイド代謝遺伝子の単離・解析
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:カンキツのアロマ成分などを変更した新しい育種素材の作出に有効な、モノテルペン合成酵素遺伝子の単離・解析、及び、その形質転換体の作出に着手する。

(7)モモ、カンキツ等の遺伝子地図の高密度化及び果実等由来cDNAのカタログ化
1)バラ科果樹等における高密度遺伝子地図作成のための各種分子マーカーの開発
担当:果樹研究所遺伝育種部
研究計画:モモ果実由来cDNAに含まれる反復配列情報を得る。さらに、これらの配列情報に基づきプライマーを設計して、多くの品種・系統で解析・評価することにより、共優性SSRマーカーを開発する。

3)環境負荷低減技術の開発

(1)果樹病原体の同定と発生動態の解明
1)カンキツ病原菌における伝染能力の解明
担当:果樹研究所カンキツ研究部
研究計画:カンキツかいよう病菌に対する有望新品種の感受性を明らかにする。本菌の伝染能力発現機構を解明するため、病原性に関わる遺伝子を探索し、病原性との関連を調べる。

(2)果樹病害の拮抗微生物等を利用した防除技術の開発
1)ブドウ灰色かび病菌に対する拮抗菌の選抜及び白紋羽病菌に対するバチルス菌の効率的施用条件の解明
担当:果樹研究所生産環境部、ブドウ・カキ研究部
研究計画:灰色かび病菌に対する拮抗菌を選抜するとともに、白紋羽病菌に対する拮抗菌について、強い拮抗性を発揮させるための増殖資材を探索し、資材中での増殖条件等を明らかにする。

2)菌糸融合による紫紋羽病菌へのdsRNA導入条件の検討
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:紫紋羽病菌について、対峙培養によりdsRNAを抽出、検出し、dsRNAの生物的導入の有無を調べ、導入のための条件を検討する。

(3)果樹における発病機構の解明
1)ナシ黒星病抵抗性と病原菌レースの相関解析
担当:果樹研究所生産環境部
研究計画:ニホンナシ黒星病菌のレース分析法を検討し、セイヨウナシ、チュウゴクナシ及びニホンナシ「巾着」等、黒星病抵抗性系統に対する既知3レースの病原性を解析する。

(4)果樹害虫等の分類・同定技術の開発及び発生条件の解明
1)チャノキイロアザミウマのマイクロサテライト解析
担当:果樹研究所ブドウ・カキ研究部
研究計画:ブドウ等より採取したチャノキイロアザミウマについて新たなマイクロサテライト領域を探索し、多型性を調査する。

(5)主要害虫に対する生物防除資材の探索と利用技術の開発
1)吸汁性害虫に有効な生物防除資材の探索と特性解明
担当:果樹研究所生産環境部、カンキツ研究部
研究計画:チャバネアオカメムシの主要天敵であるチャバネクロタマゴバチ等の生理生態的特性及びカメムシ類に対する死亡要因としての有効性を解明する。また、カイガラムシ類の寄生性天敵の生理生態的特性及び生物的防除資材としての有効性を解明する。

(6)フェロモン等の昆虫に由来する防除素材の作用解明と利用技術の開発
1)性フェロモン剤利用時における害虫被害の実態評価
担当:果樹研究所リンゴ研究部
研究計画:交信攪乱剤を導入した省農薬栽培での果実品質の評価を行う。ナミハダニやハマキガによる被害果の非破壊選果の再現性を確認する。果実品質の総合評価において果面に発生する「さび」の面積測定値を補正することの要否を検討する。

(7)クリ果実害虫に対する臭化メチルくん蒸代替防除技術の開発
1)クリシギゾウムシに有効な天敵糸状菌等の探索・選抜
担当:果樹研究所生産環境部
研究計画:土壌より天敵糸状菌を単離・培養し、クリシギゾウムシに対する病原性を比較検討する。死亡幼虫から糸状菌類を分離してその生態特性を調べる。

(8)施肥等に起因する環境負荷の評価及び果樹根の養分吸収機能の評価
1)果樹園等における重金属等の動態解析
担当:果樹研究所生理機能部
研究計画:果樹園に蓄積した銅等重金属の土壌型及び層位別の実態調査や果樹園からの亜酸化窒素の発生量に及ぼす地表面管理の影響の解析に着手する。

J 花き研究
1)新規性に富み付加価値の高い花きの開発

(1)新規花き育種技術及び育種素材の開発
1)アグロバクテリウム法によるキクの形質転換系の開発
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:アグロバクテリウムの系統や接種条件あるいは選抜用抗生物質の濃度による形質転換効率の差を調査する。また、形質転換効率の品種間差について調査する。さらに、プロモーターによる導入遺伝子発現の差について調査する。

(2)低コスト・高品質化のための花き育種素材・パイロット品種の開発・育成
1)種間交雑等によるキク等の育種素材の開発・育成
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:シオギクとキク栽培種との種間交雑後代を育成し、多収性等の有用特性を有する系統の一次選抜等を行う。また、カーネーション萎凋細菌病抵抗性中間母本と罹病性栽培種との交雑系統を材料に、抵抗性に関連したRAPDマーカーの検索を行う。

(3)花きの生育・開花生理の解明
1)植物ホルモン関連遺伝子の単離と発現解析
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:ストック及びトレニアから、ジベレリンの生合成酵素をコードする遺伝子のクローニングを行う。クローニングを行った遺伝子について、Northern法を用いて、植物の生育に伴う発現や組織特異的発現について解析する。

(4)花きの品質生理の解明
1)白色系カラーの黄色化に関与する色素の解明
担当:花き研究所生理遺伝部
研究計画:黄色化した白色系カラーの仏炎包に存在する黄色色素を精製・単離し、質量分析やNMRにより構造を明らかにする。また、低温等の栽培条件や品種の違いと色素内生量の関係、花器官の発育に伴う色素含量の変化等を調べ、黄色花の発生要因を解明する。

2)高品質で安定な生産及び流通利用技術の開発

(1)花きの環境保全的省力・高品質生産技術の開発
1)系外排出を抑制したバラ等の養液栽培技術の開発
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:窒素、リン酸等多量要素の養分吸収経過を把握するための実験装置を組み立てて吸収経過を調べるとともに、過去に実施された養分吸収データの解析とデータベース化を行う。

(2)花き病害の発生生態の解明と総合的制御技術の開発
1)カーネーション萎凋病等花き類の土壌伝染性病害の発生生態の解明
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:カーネーション主要品種の萎凋病に対する抵抗性を接種試験により調べ、品種間差異を明らかにする。また、病原菌の分布や存在量等本菌の定量的取扱を可能とするための栄養要求性突然変異株を作出し、生態解明の足がかりとする。

(3)花きの日持ち性機構の解明と品質保持技術の開発
1)切り花花きの品質に及ぼす新規品質保持剤の影響
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:チオ硫酸銀錯塩(STS)に代替可能なエチレン阻害剤を見出すため、新規阻害剤として有望視されている1-メチルシクロプロペン(1- MCP)がスイートピー等のエチレン感受性切り花の品質保持に及ぼす影響を調査する。さらにその品質保持効果を向上させるため、1-MCPとスクロースの 組合せ効果についても試験する。

(4)花きの持つ多面的効用の解明と利用技術の開発
1)花きの心理的効用の解析及び有用形質についての選抜
担当:花き研究所生産利用部
研究計画:実物と映像の違い、被験者と提示花きとの距離など、花きの持つ心理的効用を解析しようとする際の提示実験における視覚刺激量とその反応 を一定または亢進させるための最適の提示法について検討する。育成中の低性ハマナス系統の中から地被能力及び着花性の高い系統を選抜する。

K 野菜茶業研究
1)葉根菜の省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)葉根菜の省力・機械化適性育種素材及び不良環境適応性育種素材の開発
1)キャベツ及びネギの省力・機械化適性の解析並びにハクサイ晩抽性系統の評価
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:キャベツ品種の多様な国内外品種・系統を機械化一貫体系に基づいて栽培し、機械化栽培に適した形質を整理する。初期生育速度が異なるネ ギS2系統間でBC1集団を育成し、DNAマーカーによる連鎖地図を作製する。極晩抽性ハクサイについては、中間母本候補系統の特性検定と系統適応性検定 を行う。

(2)葉根菜の生育斉一化・生産安定化技術の開発
1)キャベツ等におけるセル成型苗の高品質化技術の開発及び生態反応の解明と生育段階予測法の開発
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:キャベツセル成型苗の炭水化物代謝特性や底面給水方式の他品目苗への適応性を検討するとともに、生育斉一化要因の解析を行う。また、 キャベツの主要数品種について、3~4の作期移動試験を行い、結球開始期・収穫適期における葉令を調査するとともに、調査基準を確定する。

2)果菜の省力・低コスト・安定生産技術の開発

(1)果菜の省力・低コスト・安定生産性育種素材の開発
1)単為結果性ナス、多雌花性スイカ等の省力適性系統の選抜試験
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:ナスの単為結果性及びトマトの短節間性育種では、選抜系統を用いた交雑分離初期世代から諸形質の優れた個体を選抜する。また、スイカの 多雌花性育種では、戻し交雑F2世代から、メロンの短側枝性育種では、LB-1を用いた交雑F3世代から、各形質の安定した個体を選抜する。

(2)果菜における栽培管理の改善とその工程の機械化・装置化、資機材等利用及び環境・生育制御技術の開発
1)トマト等の新栽培法の評価、新資材利用下の生育解析及び施設内熱水分環境の解析
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:トマト一段栽培やスイカ立体栽培における最適栽植密度を受光態勢や果実品質の面から評価する。ナス等の自動収穫のため、収穫部位認識手 法等要素技術の開発を行う。発光ダイオード補光が形態形成に及ぼす影響の解析に取り組むとともに、作物が繁茂した施設内での熱水分環境の解析を行う。

3)茶の高品質化・省力・低コスト化生産技術の確立

(1)茶の省力・軽作業化生産技術の開発
1)茶園における施肥・防除作業の省力・軽作業化技術の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:茶樹や茶園環境の状態をセンシングする技術等要素技術の開発としては、圃場内の土壌特性分布及び茶芽の品質分布を調査する。施肥作業の 高能率・高精度化としては、試作した広幅噴頭及び有機配合肥料用の繰り出し装置の作業特性を調査して改良を行う。防除作業の省力化は、試作した小型自走式 ブームスプレーヤの改良を行う。

(2)製茶工程の自動化・低コスト化及び高度情報化技術の開発
1)低コスト・無人化を目指した製茶工程統轄制御システム等の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:製茶工程統轄制御システムのインターネット対応を確立する。また、熟練者並みの高品質製茶が可能なエキスパート製茶システムへと発展さ せるため、システムの中核部分を人工知能の手法を用いて開発するとともに、製茶データベースを整備・解析して制御ルールの構築に取り組む。

(3)摘採期の分散化に対応する茶育種素材と品種の育成
1)早生・高品質品種の育成及び有望な素材の選抜
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:早生で新香味特性を有する「金谷21号」を対象とし特性を活かした製造方法の検討を行う。また、品質特性が高く病害虫抵抗性の早・中・ 晩生系統育成のための育種素材の検討を行うとともに、交配・個体選抜・栄養系比較試験を行う。さらに、結果率向上及び収量性を決定する発育及び環境要因に ついて検討する。

4)葉根菜生産における環境負荷低減技術の開発

(1)葉根菜の病害虫抵抗性育種素材の開発
1)ハクサイ根こぶ病抵抗性の遺伝解析並びにネギさび病抵抗性素材及びレタスビッグベイン病抵抗性素材の開発
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:ハクサイ連鎖地図の詳細化と根こぶ病抵抗性のQTL解析を行う。シャロット染色体添加ネギ系統の後代について、さび病抵抗性をもつ正二倍体を選抜する。レタス及びその近縁種遺伝資源のビッグベイン病抵抗性を評価し、育種素材を選定する。

(2)葉根菜の病害発生機構の解明
1)レタス根腐病菌の系統またはレースの分類
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:日本各地の根腐病発生地域から病原菌を収集するとともに、病原性差異を明確に判別できる品種の選定及び検定条件の設定を行う。また、年間を通じて安定的に抵抗性の素材選抜が可能な検定方法について検討する。

(3)葉根菜害虫の生理生態特性の解明と害虫管理技術の開発
1)ハルザキヤマガラシのコナガ抵抗性機構の解明及び昆虫の変態抑制に関与する遺伝子の探索と機能解明
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:コナガ等に対する耐虫性品種・生理活性物質の開発としては、コナガに高度の抵抗性を示すハルザキヤマガラシ葉に含まれる摂食阻害物質を 単離し、その化学構造を明らかにする。また、昆虫ホルモンの生合成に関与すると考えられるアラタ体・前胸腺特異的遺伝子のクローニングに取り組む。

(4)野菜畑における養分動態等の解明と環境負荷低減技術の開発
1)野菜畑における環境負荷発生ポテンシャルの解明と低減技術の開発
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部
研究計画:葉根菜産地の畑における窒素収支等を指標に環境負荷発生ポテンシャルの解明を進め、キャベツを基幹とする栽培体系を対象に、家畜ふん堆 肥の局所施用等が作物の根系分布、窒素収支、硝酸性窒素による環境負荷等に及ぼす影響調査並びに投入資材・廃棄物・環境負荷物質等の量的把握に基づく LCA評価法の開発を進める。

5)果菜生産における環境負荷低減技術の開発

(1)果菜の病害虫抵抗性素材の開発
1)ピーマンPMMV等ナス科野菜、つる割病等ウリ科野菜の病害抵抗性素材の検索及び系統選抜試験
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:ナス及びピーマン育成系統の台木適応性を検定する。ピーマンPMMV抵抗性育種では、抵抗性選抜系統を用いた1代雑種の特性を評価する とともに、F2世代で台木用の選抜を行う。また、メロンつる割病抵抗性素材の検索を行うとともに、トマト青枯病抵抗性個体、メロンつる枯病抵抗性個体の選 抜を行う。

(2)果菜病害の発生生態、発病機構の解明とその制御技術の開発
1)スイカ果実汚斑細菌病の検出・定量及び制御技術の開発及びトマト青枯病等の太陽熱土壌消毒技術の検討
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:スイカ果実汚斑細菌病については細菌検出法を検討し、効果的な種子殺菌法を検討する。また、トマトの少量土壌培地栽培下での青枯病等に 対する太陽熱土壌消毒法を検討する。キュウリ栽培等への電解水の利用のため、ノズルの選定、防除効果を上げるための散布法や散布量を検討する。

(3)果菜害虫の生理生態の解明と総合的管理技術の開発
1)紫外線カットフィルムと寄生蜂の複合利用を核としたコナジラミ等害虫の総合防除技術の確立
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:近紫外線カットフィルムで被覆したビニルハウスと一般農ビで被覆したビニルハウスにおいてコナジラミ類の寄生性天敵のサバクツヤコバチ の分散行動を比較する。また、近紫外線除去フィルムと一般農ビで張り分けた装置を作り、近紫外線除去が各種天敵及び害虫の行動に及ぼす影響の種間差を解明 する。

(4)果菜栽培における土壌・栄養生理特性の解明と制御による環境負荷低減・省資源型生産技術の開発
1)養液栽培、養液土耕栽培における培地及び養分管理技術の検討
担当:野菜茶業研究所果菜研究部
研究計画:トマトが正常に生育する養液のMg濃度限界の解明を行う。閉鎖型ロックウール栽培における培養液組成の変動を調査する。コーンスティー プリカー(CSL)を利用した養液土耕栽培におけるCSL添加条件を検討する。生分解性プラスチック培地の特性評価を行う。トマトのハウス栽培における LCA評価を行う。施肥窒素のガス化率を評価し、その削減を図る。

6)茶の環境保全型生産システムの確立のための研究

(1)少肥適性及び病害虫抵抗性育種素材の開発
1)少肥適性及び病害虫抵抗性育種素材の検索
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:窒素レベルの違いによる茶新芽の成分含量、木部溢泌液中のアミノ酸含量等の品種・系統間差異を検討するとともに、アンモニア吸収同化関 連酵素遺伝子のチャへの導入を試みる。また、炭疸病抵抗性評価技術を改善するとともに、クワシロカイガラムシ抵抗性遺伝子座を検出し強連鎖するDNAマー カーを開発する。

(2)環境保全型茶病害虫管理システムの開発
1)茶病害虫に対する効率的防除技術の開発
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:茶園における炭疸病等の初期生態とハマキガ類の発生生態、種分化機構を解明する。炭疸病等に対する整剪枝、ハマキガ類に対する非化学合 成農薬、カンザワハダニに対するケナガカブリダニを基幹とした病害虫管理体系の実証試験を行う。またクワシロカイガラムシの越冬生態を解明し、防除適期の 予測法を確立する。

(3)茶園からの施肥成分の系外流出防止技術の開発
1)茶園生態系における施肥窒素の動態把握と環境負荷発生の現状評価
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:ライシメーター茶園における窒素施用量別の窒素収支を明らかにする。茶園土壌の硝酸態窒素除去能をカラム試験で解析する。静岡県中部の 緑茶生産技術と環境負荷物質の発生実態についてLCA手法を適用して調査する。また茶栽培における環境負荷発生の現状を評価し、環境負荷削減技術を提案す る。

7)消費者ニーズに対応した野菜の高品質生産・流通技術の開発

(1)野菜の高品質・流通加工適性育種素材の開発
1)キュウリ高硬度系統の選抜及びニンジン高カロテン育種素材の検索
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部、果菜研究部、機能解析部
研究計画:キュウリの果実硬度と生食適性や漬物適性との関係を明らかにするとともに、F4、F5世代の選抜を行う。新たに導入したニンジン遺伝資源のカロチノイド含量を測定する。

(2)野菜栽培における安全性確保技術の確立
1)ダイオキシン、カドミウム等の土壌、野菜における動態の解明
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部、果菜研究部、機能解析部
研究計画:ダイオキシンの土壌から作物体への移行の可能性を調べるとともに、エンドスルファン及びマラチオンの残留に及ぼす葉面ワックス、結球現 象の影響を評価する。カドミウム汚染土壌で栽培した野菜可食部中濃度及び根域制限処理のカドミウム吸収に及ぼす影響を調査する。また、フタル酸エステル類 の作物体への移行などについて調査を進める。

8)嗜好の多様化、消費者ニーズに対応した茶の需要の拡大のための研究

(1)アッサム種等を利用した新用途向き品種の育成
1)低カフェイン及び高アントシアニン特性をもった育種素材の検索と素材化
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:農業生物資源研究所放射線育種場γフィールドで低カフェイン芽条変異体のスクリーニングを行うとともに同フィールドから選抜した低カ フェイン候補個体についてHPLC分析により成分分析を開始する。また、高アントシアニンチャとして選抜した紅花チャ後代についてアントシアニン成分の解 析を行う。

(2)茶葉の加工適性の解明による製茶技術の改善と茶飲料の品質向上技術の開発
1)茶葉の加工適性の解明による製茶技術の改善
担当:野菜茶業研究所茶業研究部
研究計画:茶の品種による製茶特性、香気成分組成の違い及び製茶中に生ずる欠点の原因となる成分について検討する。また、ギャバロン茶の品質向上のために、15N標識グルタミンを用いて、嫌気及び好気条件下におけるグルタミンの代謝経路を明らかにする。

9)生産技術開発を支える基礎的研究

(1)新規な遺伝変異作出のための新たな育種技術の開発
1)アブラナ科並びにナス科野菜の形質転換効率の改善及びニラのアポミクシス性に関する分離集団の育成
担当:野菜茶業研究所葉根菜研究部、果菜研究部、機能解析部
研究計画:アブラナ科野菜の形質転換系を改良し、ストレス耐性コマツナを作出する。トウガラシの形質転換率を明らかにする。ヒト型糖鎖転移酵素遺伝子を導入した形質転換トマトを得る。ニラ二倍体F1世代の100個体について、単為発生率を検定する。

(2)野菜・茶の生育制御技術の開発
1)野菜の生育転換機構の解明並びに種子処理技術の開発及び茶のカテキン合成系の解析
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:キャベツの花成における生理活性物質の解析、ユリ科野菜の鱗茎形成の生理機構解明、及びイチゴ果実の肥大に関わる遺伝子発現の解析を行 う。レタスなどの種子に対する放射線ホルミシスを検討するとともにダイコンなどの種子殺菌法を開発する。茶のカテキン合成に対する光の影響を解析する。

(3)野菜における環境ストレス耐性の解明と制御技術の開発
1)高温ストレスに起因するスイカ種子の発芽障害回避法の開発及び高温ストレス応答タンパク質の解析
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:スイカ種子の含水率と耐熱性との関係等について検討を加え、種子を乾熱処理した際に発生する発芽障害を回避する方法を開発する。キュウリ等において高温ストレスに応答して発現するタンパク質の代謝を35S-メチオニン等を用いて解析する実験系を確立する。

(4)野菜における有用形質の特性・ゲノム構造の解明と利用技術の開発
1)アブラナ科野菜等における連鎖地図の作製
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:アブラナ科野菜等において、マイクロサテライトマーカーを設計・開発するとともに、アラビドプシス由来のRFLPプローブを検索・取得 する。これらのマーカー及びプローブを用いて連鎖地図を作製する。同時に、アブラナ科野菜等の分離集団を用い、根こぶ病抵抗性等の有用形質に関してQTL 解析を行う。

10)流通・利用技術を支える基礎的研究

(1)野菜の高品質流通技術の開発
1)トマト、レタス等における野菜の成熟・老化・切断傷害等に関連する遺伝子の単離と解析
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:成熟段階を異にしたトマト果実のcDNAを調製する。レタス等葉菜類の老化・切断傷害cDNAを調製する。野菜の成熟・老化・切断傷害 に関連する遺伝子に対応するPCRプライマーを設計し、PCR法等によってそれらの遺伝子の一部をクローニングする。さらに、クローニングされた遺伝子の 塩基配列を解析する。

(2)野菜の品質特性の解明と品質評価法及び機能性等高度利用技術の開発
1)野菜の食感構成要素及び機能性の解明と評価
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:キュウリの「歯切れ」を物理化学的手法により解析し、キュウリ食感の解明に取り組む。また、フェノール性成分等について腸管吸収及び活性窒素種による細胞傷害抑制作用等の解明を進める。

(3)茶の抗アレルギー物質等機能性成分の評価・利用技術の開発
1)ヒト免疫担当細胞による抗アレルギー物質等機能性成分評価法の開発と機能性成分有効利用法の検討
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:ヒトヘルパーT細胞株等を細胞融合法、限界希釈法などにより樹立し、得られたヒト免疫担当細胞株の細胞機能をフローサイトメータ、 ELISA等で解析する。また、茶飲料の製造条件による抗アレルギー性の差異について検討する。さらに、機能性成分の有効利用を図るため、茶抽出液の粉末 化技術について検討する。

(4)茶の品質評価技術の開発
1)分析手法及び評価技術の開発
担当:野菜茶業研究所機能解析部
研究計画:品質との関連が明らかにされていないシュウ酸、多糖類や繊維等について簡易分析法を開発する。生葉及び製茶葉からDNAを抽出し、効率 的にマーカーとして利用できる手法を開発する。茶アルミニウムの存在形態別分離・同定法を確立する。茶含有製品の主要成分含有量を測定すると同時に、抗酸 化性等の機能性を評価する。

(5)野菜・茶生産における情報科学利用技術の開発
1)作物生産システムのプロトタイプの開発
担当:野菜茶業研究所企画調整部、機能解析部
研究計画:これまでに収集した野菜等の技術相談問答に関する事例ベースを用いたソーシャル情報推薦技術による情報配信先選択方式の開発、並びに軽作業化を前提とした技術相談問答集作成ツールの見直しを行う。また、生理モデルを用いたチャ植物体情報の実時間推定を行う。

L 畜産草地研究
1)優良家畜増殖技術の高度化

(1)家畜生産性向上のための育種技術の開発
1)近交退化現象の解析とクローン技術の育種的利用法の検討
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:豚の個体レベルにおける近交退化現象を解明するために、近縁子豚と遠縁子豚の発育特性および生理的特性を解析する。また、肉牛の育種効 率を向上させるために,クローン技術を用いた検定方法を開発し、年あたりの遺伝的改良量,および改良量あたりのコストをベースとした最適な育種システムに ついて理論的に検討する。

(2)家畜生産性向上のための育種素材の開発
1)牛クーロン個体の分子遺伝学的特性の解明
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:クローン牛の育種的利用を考えていくためには、その遺伝的特性について詳細に検討しておくことが重要である。そこで、核移植胚における ドナー細胞由来のミトコンドリアDNA(mtDNA)の伝達様式やクローン産子における外来mtDNA型の違い、損傷の有無などについて解明する。

2)ポリネーターとしての優良形質の探索と優良種の特定
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:ミツバチ類(Apinae)と同様、高次真社会性昆虫類に属するハリナシミツバチ類(Meliponinae)は熱帯・亜熱帯地域にお いて養蜂種として長年飼養されている。このグループをわが国における施設栽培の有力かつ安全なポリネーターの提供種としての新たな育種素材に取り上げ、作 物授粉能力の評価および高能力種を明らかにする。

(3)家畜胚生産技術の高度化
1)ウシの核移植におけるレシピエント卵子の超低温保存法の確立
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:ガラス化保存の際の段階的なガラス化液添加によるストレスの低減が、ガラス化保存後のウシ卵子の生存性に及ぼす影響を検討する。また、血清添加成熟培地へのリノール酸アルブミンの添加が、ガラス化保存後のウシ卵子の生存性に及ぼす影響を検討する。

(4)受胎機構の解明と制御技術の開発
1)体細胞核移植による大量クローン牛作出技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:ドナー細胞としての体細胞の種々の培養条件と細胞周期同期化培養法等を検討する。さらに、除核卵子への細胞融合および再構築卵子活性化の時期が初期胚発生に及ぼす影響を調べ、体細胞核移植由来胚盤胞の高率かつ安定的な作出技術の開発を進める。

2)ウシの妊娠認識に関わるシグナル物質の作用機構の解明およびその産生細胞の効率的利用法の開発
担当:畜産草地研究所家畜育種繁殖部
研究計画:妊娠シグナル物質であるインターフェロンτあるいはその産生源の初期胚由来細胞を体外培養系により作出する。また、初期胚が産生するサイトカイン等のシグナル物質や、そのレセプターの発現を検出するとともに、クローニングを試みる。

2)家畜栄養管理技術の精密化

(1)家畜の生理機能及び栄養素の配分調節機構の解明
1)高泌乳牛におけるソマトトロピン軸及びインスリン抵抗性等の特性解明◎
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:305日乳量が約12,000kgの高泌乳牛をドナーとしたクローン乳牛を用いて、泌乳の高位安定期(分娩後約3か月)におけるソマト トロピン、インスリン、ソマトトロピン:インスリン比、インスリン様成長因子などの血中動態及びインスリン抵抗性等の特性をユーグリセミック・インスリ ン・クランプ法、アイソトープ・ダイリューション法等を用いて明らかにする。

2)肥育牛における飼料エネルギーの利用と脂肪蓄積の機構解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:品種、飼料給与量、ビタミンAが肥育牛の脂肪蓄積に与える影響を検討するために、ホルスタイン種去勢牛と飼料給与量及びビタミンA給与 量の異なる黒毛和種去勢牛の各肥育段階において重水注入法により脂肪含量(体構成)を推定する。また、肥育終了後解体して実際の脂肪量との比較を行う。

3)ウシレプチン遺伝子の栄養による発現調節機構の解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:すでに得られているウシレプチン遺伝子をプローブとし、RNaseProtectionAssay法などを用いた組織中のmRNAの微 量検出系と組織中レプチンタンパクの発現レベルの測定系を確立する。また、組換えレプチンの中程度量の発現・精製を行い、ウシ特異的なレプチン抗体作製の 準備を行う。

(2)飼料の利用効率改善のための栄養素の動態及び消化管微生物機能の解明
1)乳房および門脈系臓器における器官レベルでの栄養素出納手法の開発
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:メン羊を用い、肝門部門脈血流量測定および採血技術を確立し、11週間を目標としてこの実験系を安定に維持することを試みる。これによ り門脈系臓器の酸素消費量を測定し、消化管性の熱量増加効果を検討する。また、ザーネン種ヤギを用い、乳腺血流量の測定・採血技術を構築するための実験手 術を試みる。

2)ルーメン微生物の生態系制御のための特定因子の遺伝子等の探索
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:ルーメン微生物生態系の能力向上を目的として、ルーメン微生物生態系制御のための特定因子の検索を実施するとともに、ルーメン細菌のエ ネルギー代謝に係わる影響因子を検討する。また、ルーメン微生物への作用も考えられる乳酸菌由来抗菌物質の作用機構および作用機序の解明を行う。

(3)栄養素の生体調節機能解明に基づく健全な家畜・家きんの栄養管理技術の開発
1)反すう家畜の免疫・繁殖機能等における栄養素の作用機構の解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:胎児胎盤から調製した繊維芽細胞の培養系にセレンを添加すると、分娩時に想定されるホルモン刺激によりMMPの活性化を伴う細胞の迅速 な剥離が起こる。この系を胎盤剥離の解析モデルとして用い、活性化の観察されたMMP種の同定と活性化に影響を与える因子の検索を行う。

2)反すう家畜の健全性・生産性に影響する飼料・栄養素の機能特性の解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:酵素分析法におけるセルラーゼの種類、処理法、アミラーゼの影響、蛋白分解酵素などの検討を化学的に行う。また、OCC、Oa,Ob各画分、およびNDFなどの飼料の種類による化学的性質の違いを明らかにする。

3)子豚の脂肪組織の発達に及ぼす哺乳時の栄養素経口投与の影響
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:哺乳中の子豚にγ-リノレン酸を豊富に含む油脂を哺乳期前半の2週間、毎日、経口投与して、その後、腎周囲と背の部位における脂肪組織 の発達を細胞の数と容積の面から検討する。また、脂肪細胞の分化活性を脂肪組織中の酵素(グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)活性の面から検討す る。

4)鶏におけるカロテノイドの抗酸化性効果
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:ヒナの飼料にカロテノイド(リコペン、ルテイン、クリプトキサンチン、βカロテン等)を添加し、血液と筋肉の抗酸化容量を測定して、他の外因性抗酸化性物質(α-トコフェロール等)と比較した場合のカロテノイドの特徴を明らかにする。

(4)飼料特性の評価と産乳・産肉特性に基づく乳・肉生産制御技術の開発
1)飼料構成と運動負荷による肉質制御技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:飼料構成が消化管に及ぼす影響について、放牧育成牛と舎飼育成牛の下部消化管の組織構造及び粘膜上皮活性より検討する。これら育成牛から採取した消化管内容物を分析し、消化管成長及び機能に関わる物理的、化学的性状を明らかにする。

3)省力・低コスト家畜管理技術の高度化

(1)家畜管理機器の高機能化・高精度化による管理技術の精密化
1)無窓採卵鶏舎における空気衛生環境を提供する換気構造と制御技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:無窓鶏舎における粉塵・細菌の動態を解明するとともに、これらの舎内空間での浮遊を抑制する換気システムを検討するため模型実験装置を用いた気流分布調査を行い、入気構造と排気口位置の適正化について検討を進める。

(2)放牧草地の高度利用管理による放牧家畜の精密栄養管理技術の開発
1)高栄養・持続的生産を可能とする新型草地の開発
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:被覆資材の発芽・定着に及ぼす影響を調査する。特に牧草、シバ種子の発芽時の種子根の形態的な伸長に及ぼす影響、発芽初期の実生個体の根張りの強さに及ぼす影響、土壌表面での種子の物理的安定性に及ぼす効果等について明らかにする。

2)放牧家畜の栄養収支の解明による栄養補給技術の開発
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:ススキ、シバ、ササ等主要野草のアルカン濃度を季節別に測定し、草種毎のアルカン組成の特徴を明らかにする。また、野草地の植物とそこに放牧された牛の糞中アルカン組成の関連を解析し、草種別の採食割合を推定する。

(3)放牧家畜の生体情報を活用した省力的群管理技術の高度化と損耗防止技術の開発
1)放牧地における簡易捕獲・管理施設による生体情報収集技術と個体管理の精密化
担当:畜産草地研究所放牧管理部
研究計画:放牧牛の個体番号、体重及び背線高を省力的に測定できるシステムを開発する。そのシステムを活用して育成牛の発育を経時的に測定し、 データを蓄積する。背線高と体重から発育が把握できることを確認するとともに、個体及び牛群の発育を診断するソフトウェアを開発する。

4)多様なニーズに対応した高品質畜産物の安定生産技術の開発

(1)畜産物の品質評価手法及び品質制御技術の開発
1)内分泌かく乱物質が豚および家禽に及ぼす影響の実態解明
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:豚及び鶏の給与飼料、卵、血液および体組織(脂肪、筋肉、肝臓)を経時的に採取して、各試料中のダイオキシン類の濃度を測定して、成長に伴う変化を解明する。

2)畜産物の味と鮮度の解析手法の開発
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:味と鮮度の解析手法に関して、味覚センサーで分析する際の最適な牛肉抽出溶液の調製法を検討するとともに、センサー出力値とうま味関連 成分との相関を調べる。また、食肉の冷蔵保存中における変色や退色を表す色彩値とメトミオグロビン形成割合を近赤外分光法により分析する手法を検討する。

3)食肉の品質に影響する因子とその制御機構の解明
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:食肉の主要構造たんぱく質であるミオシン重鎖のmRNAを牛肉より抽出し、それをもとにして塩基配列の決定を行う。ウシ骨格筋に存在す る速筋型アイソフォームMyHC-2a,-2x及び遅筋型アイソフォームMyHC-slowの全アミノ酸配列をコードしている領域を決定し、それより推定 されるアミノ酸配列を比較する。

(2)高品質畜産物生産技術開発のための基礎的研究
1)畜産微生物有用形質の発現制御機構の解明
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:培養細胞を用いて細胞性免疫等を賦活するサイトカイン産生を誘導する乳酸菌株の探索・取得を進めるほか、複数の乳酸菌株による相乗・相 殺効果について検討する。免疫賦活能に優れた乳酸菌株は、活性画分を調べるとともに、他のプロバイオティック乳酸菌との比較を行う。また、invivoの 動物への投与試験も開始する。

(3)家畜生体高分子機能の解明とその利用に関する基礎的研究
1)畜産物成分の生体応答調節機能の解明
担当:畜産草地研究所品質開発部
研究計画:マウス実験系において、牛乳β-ラクトグロブリンの各種部分ペプチドの経口免疫寛容誘導活性を細胞の表面抗原解析等により比較し、構造 と活性との関係を調べる。また、線維芽細胞の運動性を促進するウシ初乳成分を、ゲル収縮アッセイを用いて探索すると同時に、ラクトフェリンのゲル収縮促進 の分子機構について解析する。

5)育種技術の高度化による高品質飼料作物品種の育成

(1)飼料作物・芝草等の遺伝資源の収集・評価と利用技術の開発
1)主要飼料作物等の遺伝資源の収集・評価と遺伝的変異の解明
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:海外探索等によりソルガム等150点、シバ属等50点を収集、導入する。ギニアグラス等150点の特性評価を行うとともに、バイオマス利用等の新用途適性を解明する。

(2)飼料作物のバイオテクノロジー利用技術の開発
1)DNAマーカーによるアポミクシス、耐病性、耐湿性等の連鎖解析
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:イタリアンライグラスの冠サビ病抵抗性関与遺伝子をクローニングするために、感染によって発現量が増加するDNAクローンを選抜する。 また、ギニアグラスのアポミクシス関与遺伝子のクローニングのために、アポミクシス胚発生時期に特異的に発現するDNAクローンを選抜する。

(3)種属間雑種による新型牧草の作出等による牧草等の優良品種・中間母本の育成
1)ストレス耐性、耐病性に優れた牧草優良品種・中間母本の育成
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:平成5年に越夏性を主体に選抜を開始したオーチャードグラスの早生、中生各1集団について、選抜2世代目での生産力予備検定を行い、越夏性の選抜効果を確認するとともに、第4世代目の調査、選抜を行い、地方番号系統とする。

(4)長大型飼料作物の育種技術の開発と優良F1親系統・品種の育成
1)茎葉高消化性トウモロコシF1親系統の育成
担当:畜産草地研究所飼料作物開発部
研究計画:茎葉TDN含量及び茎葉繊維消化性で選抜したS4~S6の未固定系統と既存高消化性親自殖系統との間のF1系統について消化性を検定し、高消化性F1系統を選抜する。また、継続してS4~S6系統の消化性を検定、選抜するとともに、新たにF1組合せを作成する。

6)省力・低コスト飼料生産・利用技術の高度化

(1)飼料作物の物質生産機能及び環境適応性等の解明と高位安定栽培技術の開発
1)飼料用トウモロコシ栽培における湿害及び外来雑草害の生産阻害要因の解明と栽培技術の安定化
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:トウモロコシの耐湿性の品種間差を明らかするために、連続的に土壌水分条件を変化させて水分に対する生育反応を調べる新しい検定法を用いて、生育初期の過湿条件に強い品種を選定する。

2)飼料イネの採食量及び栄養価に基づく泌乳牛への給与メニューの開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:飼料イネの特性解明による乳牛用メニューの開発について、前年までに蓄積した乳牛による飼料イネの自由採食量と栄養価のデータに基づいて飼料メニューを試作し、そのメニューに基づいて長期飼養試験を実施する。

(2)飼料作物の栄養生理特性の解明と肥培管理技術の開発
1)飼料作物における硝酸性窒素、微量要素等の適正蓄積条件の解明
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:ソルガム類の硝酸性窒素濃度に対する品種の違いや土壌肥沃度、栽植密度等の影響について検討する。また、汁液分析によるトウモロコシの硝酸性窒素濃度の簡易推定法をもとにソルガム類への適用拡大を検討する。

(3)生物機能や生物間相互作用の活用及び環境管理等による飼料作物の病害虫制御技術の開発
1)飼料作物に発生する新病害等の病原収集と発生実態の解明
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:トウモロコシ北方斑点病菌のレース間交配により得られるF1集団について、AFLP解析を進め、本菌ゲノムの分子連鎖地図を作成する。飼料作物の病原ウイルスの収集と抗血清の作製を進め、血清学的診断法の改良を図る。

2)ハリガネムシ等の飼料作物害虫と天敵微生物等との生物間相互作用の解明
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:ムギダニの発生消長とムギダニに寄生するNeozygitessp.の発生消長を調べ、Neozygitessp.のムギダニの発生数に及ぼす影響を調査する。また、Neozygitessp.の形態的特徴について調査する。

(4)飼料生産における軽労・高能率・精密機械化作業技術の開発
1)水田や分散圃場に対応した飼料作物の収穫機械化作業技術の開発
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:後ろ向き着座のリバース走行トラクタに3条用の直装型フォレージハーベスタとボンネットワゴンを取り付けて、トウモロコシの収穫作業を行い、操作性、作業能率、転換畑等への適応性について検討する。

2)トウモロコシロールベール収穫調製技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:生研機構等他機関と連携してトウモロコシ等長大作物の細断型ロールベール調製・貯蔵・利用体系の開発を促進し、ロールベールのハンドリングと解体について、利用規模に応じた手作業解体からロールベールグラブによる一行程解体までの手法を提示する。

(5)飼料作物等の省力的高品質調製・貯蔵・流通技術の開発
1)プロバイオティックサイレージ微生物を利用したサイレージ調製技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:食品産業廃棄物である茶系飲料残渣について、家畜飼料としての価値を調べ、流通が容易なドラム缶サイロを用いた高品質サイレージ調製貯蔵技術を開発する。また、家畜を用いた消化試験を実施し、腸内菌叢に及ぼす影響を調べる。

7)飼料生産基盤拡大のための土地利用技術の開発

(1)草地生態系の資源評価と資源利用計画法の確立
1)自然立地条件に基づく草地資源の評価手法の開発
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:公共牧場の多面的評価に必要な基礎的デ-タセットを作成する。これを用いて、全国レベルの採草利用適性、放牧利用適性等の個別評価手法を開発する。また、個別評価を踏まえた総合的評価手法の開発に着手する。

(2)山地傾斜草地や中山間地域に適した草種の特性解明及び環境保全的草地管理技術、家畜管理技術の確立
1)山地傾斜草地に適した草種の利用特性及び山地傾斜草地の立地特性の解明
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:傾斜放牧草地において、地形条件と草地植生及び土壌養分との関係を解明する。植生については草種構成と生産量、土壌養分については窒素、リン、カリウムの分布特性を明らかにする。

2)傾斜草地放牧が放牧牛の筋肉発達や繁殖に及ぼす影響の解明
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:肥育素牛を傾斜地放牧で飼養した場合と舎飼いした場合の筋肉組織に及ぼす影響を比較する。また、放牧による運動負荷の効果が肥育時にも継続するかどうか明らかにする。

(3)耕作放棄地等遊休地、林地等における資源賦存量の把握及び草資源導入等畜産的活用技術の開発
1)飼料生産可能な遊休地等における資源賦存量の把握
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:中部地方以西の地域において、明治後期及び昭和後期の土地利用図を作成する。わが国の野草地の変化の動向と立地条件の関係を解析し、山林原野における飼料生産可能な土地資源の立地条件を明らかにする。

(4)山地傾斜地及び中山間地域における耕作放棄地、林地等を活用した放牧技術の確立
1)転作田、耕作放棄地等における牧草の季節生産性、牧養力の解明
担当:畜産草地研究所山地畜産研究部
研究計画:山地傾斜地や中山間地域の転作田や野菜畑を牧草地に転換した放牧地に繁殖牛を放牧し、牧草の現存量を継続的に調査することにより、牧草の季節生産性と牧養力を明らかにする。

2)牧草等の生理生態特性がもたらす環境保全機能等の解明と評価
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:飼料木と牧草の混生した中山間地域の草地に育成牛を放牧し、電牧を用いた桑の採食コントロールによる季節生産性の平準化を図るとともに、家畜の増体を調査する。

8)環境保全型畜産の展開に寄与する技術開発

(1)家畜排せつ物処理・利用技術の高度化・低コスト化
1)吸引通気式堆肥発酵におけるアンモニア等環境負荷成分捕集技術の実証
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:約20m3の堆肥化反応槽を用いて、吸引通気によりアンモニア等の環境負荷物質が発酵過程に堆肥表面から揮散しないことを実証する。反 応槽からの排気に含まれる環境負荷物質が硫酸溶液、または堆肥を用いて捕集可能であることを実証する。吸引通気に伴う堆肥からのドレイン発生量、ドレイン の発生原因について検証する。

2)豚尿汚水中のMAP結晶生成条件の解明
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:豚尿汚水中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)結晶体として分離できれば、リンの除去と同時に回収が可能になる。豚尿汚水におけるMAP結晶の生成条件を明らかにし、効率的な分離法を検討する。

(2)家畜飼養の精密化による環境負荷物質排せつ量の低減技術の開発
1)家畜からの窒素、リン、重金属等の排泄量低減を目的とした栄養管理技術
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:フィターゼの作用とは異なる新規な技術開発を目的として、飼料中に油脂を添加し、この飼料を豚に給与してリンや亜鉛等重金属の排泄量に及ぼす影響を重点的に検討する。

2)反すう家畜におけるメタン発生量推定の精密化
担当:畜産草地研究所家畜生理栄養部
研究計画:肉用雌牛からのメタン発生量について精度の高い推定式を提案する。併せて、育成牛における脂肪質飼料の給与のメタン産生抑制効果を明らかにし、脂肪質飼料添加によるメタン産生抑制技術を開発する。

(3)家畜排せつ物の環境負荷評価技術の開発
1)家畜排せつ物の処理、利用プロセスにおけるモニタリング技術の開発
担当:畜産草地研究所畜産環境部
研究計画:家畜排せつ物の堆肥化過程における、アンモニア、亜酸化窒素等の発生量の連続測定法を開発し、処理条件と経時的発生パターンとの関係を解明する。

9)自然循環機能を利用した持続的草地畜産のための草地生態系の解明

(1)草地生態系の構造と機能の解明
1)草地生態系におけるVA菌根菌等の役割解明と有効利用法の開発
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:根に共生するVA菌根菌から植物への養分供給効果を評価する手法を開発し、この手法を利用して火山灰泥流地帯等の荒廃土壌のパイオニア植物におけるVA菌根菌の共生状況を調査する。また、植生回復過程における菌根菌等共生微生物の役割を解明する。

(2)草地生態系における物質・エネルギーの動態解明と環境負荷低減化技術の開発
1)草地土壌における栄養塩類・微量金属等の形態変化・収支の解明
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:全国から収集した家畜ふん尿処理物、飼料畑土壌、飼料作物の微量重金属濃度を測定し、畜種別ふん尿処理物の微量重金属濃度特性を明らかにする。これらの値とEC諸国の値を比較検討する。

(3)草地生態系の環境保全機能等の解明と評価手法の開発
1)草地の持つ生物多様性の評価手法の開発
担当:畜産草地研究所飼料生産管理部
研究計画:那須地域の放牧地における昆虫や植生等の調査デ-タおよび地理情報等を用いて、生物多様性保全のための牧場管理や立地条件を明らかにする。

10)資源循環を基本とする自給飼料生産・家畜管理システムの高度化

(1)資源循環を基本とする自給飼料の生産・調製・利用システム及び牛群管理システムの体系的評価と開発
1)資源循環を基本とする自給飼料の生産性向上及び高品質サイレージ調製・利用技術の開発
担当:畜産草地研究所家畜生産管理部
研究計画:土地利用型酪農経営において、自給飼料をベースとしたTMR給与における採食量向上のため、イタリアンライグラスのロールベールサイレージを用いた二段発酵によるTMR調製が泌乳牛の採食性に及ぼす影響を明らかにする。

(2)資源循環型生産管理体系の経営評価
1)放牧や胚移植技術を導入した大家畜生産における個別技術と経営評価
担当:畜産草地研究所草地生態部
研究計画:家畜市場、農協、農家から胚移植利用に関するデ-タを収集し、胚移植普及の動向及びその背景にある社会経済的要因を明らかにするとともに、胚移植の普及が乳肉経営と生産に与える影響を明らかにする。

M 動物衛生研究
1)疫学研究の強化による家畜疾病防除の高度化

(1)疫学手法を用いた疾病の生態学的特性の解明
1)クリプトスポリジウム症の感染動態の解明
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:クリプトスポリジウム原虫消毒法の実用化に向けて実際の畜糞堆肥中でクリプトスポリジウムの感染性の変化を経時的に調べ、堆肥化による無毒化の可能性をさぐり、家畜排泄物中の本原虫の適切な処理法を明らかにする。

2)牛の住血原虫病の発病要因の解明とそれを利用した防除技術の開発
担当:動物衛生研究所疫学研究部(七戸研究施設)
研究計画:小型ピロプラズマ病の発生予察や総合的な防除法の開発を目的に、北東北中山間地牧野における牛品種ごとの本病発生率の実態を調査し、品 種による本病の感染率や発病率の違いを明確にする。また、本病の発生動向とダニの生息状況を調査し、本病発生と媒介ダニの発生状況との関係を明らかにす る。

(2)疾病の疫学的調査手法及び疫学情報の利用法の高度化
1)動物衛生に関するファクトデータベースの構築
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:これまでに収集した各種疾病の主要病変、特に病理像について、画像データをデジタル化し、ファクトデータベースを構築する。各研究者が保有している、スライドや写真等を順次デジタル化するにあたり、著作権問題等も併せて検討する。

(3)疾病の危険度評価と経済疫学手法の応用
1)口蹄疫のリスクマネージメント手法の開発
担当:動物衛生研究所疫学研究部
研究計画:平成12年3月に92年ぶりに発生した口蹄疫の防疫対応として実施したサーベイランスをコンピュータによる確率モデルを作成して評価する。

2)感染病の診断及び防除技術の高度化

(1)病原体感染増殖機構及び感染動物体内における動態の解明
1)寄生虫の抗原分子の性状解明
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:豚回虫の虫体表面クチクラ蛋白の分子クローニングを実施するとともに、抗原の局在部位の探索と組換え蛋白質の免疫試験により、感染防御関連抗原の同定を試みる。

2)サルモネラ症の新しい診断技術の開発
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:サルモネラ菌の抗原成分の中で特異性、感度ともに優れる物質を特定し、ELISAを確立するとともに、実験感染豚及び野外感染症例を対象に、抗体の推移、診断精度を検定することにより、同法の野外診断への実用性を評価する。

3)プリオン病の病態解析と診断法の開発
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:プリオン病の生前診断法確立のために、スクレイピー感染マウスおよび羊の中枢神経系、末梢組織さらには血液中の異常プリオン蛋白質の有無を解析し、ウエスタンブロッティング、ELISA、キャピラリー電気泳動による異常プリオン蛋白質の検出感度を比較検討する。

4)ネオスポラによる牛異常産の診断法の開発
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:ネオスポラ症診断の高度化のため、本病の免疫組織化学的検査の最適条件について検討し、さらに牛流産胎児における分布を明確にする。この成果を応用しネオスポラ症例の迅速な摘発を行うことにより、ネオスポラ症の蔓延防止が可能となる。

(2)病原微生物の分子生物学的特性の解明
1)病原細菌の薬剤耐性機構の新しいモニタリング手法の確立
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:病原細菌の薬剤耐性機構解明のため、豚のレンサ球菌のニューキノロン剤耐性化と関連する遺伝子変異部位を特定し、将来変異の可能性のある遺伝子配列を迅速に検出できる新しいモニタリング手法の確立に取り組む。

2)動物ウイルスのゲノム解析と診断、予防への応用
担当:動物衛生研究所感染病研究部
研究計画:鳥類ウイルス及び豚ウイルスについて、ゲノムの遺伝子解析を行い、ウイルスの分類、遺伝子の構造と機能解明、国内流行株の遺伝学的および血清学的関係の解析およびPCRによる診断法への応用を行う。

(3)地域に特有な重要疾病の予防・診断技術の高度化
1)酪農環境由来サルモネラ等の分子疫学的検討
担当:動物衛生研究所北海道支所
研究計画:サルモネラの遺伝子型別方法であるPFGE法とFAFLP法との比較を実施するとともに、両者を含めたデータベースの作成を検討する。FAFLP法で得られた遺伝子型に特異的なマーカーについて、塩基配列解析等を実施し、分子疫学的な有用性を検討する。

2)下痢症ウイルスの特性と発病要因の解明
担当:動物衛生研究所疫学研究部(七戸研究施設)
研究計画:牛や豚の下痢症に関与するウイルスの発病要因を解明することを目的に、わが国で初めて検出された牛カリシ様ウイルスの新生子牛に対する 病原性を明らかにする。また、ウイルスのカプシド蛋白遺伝子の塩基配列を決定し、同遺伝子を標的としたウイルス検出法を検討する。

3)アルボウイルス感染症の分子疫学的解析による流行動態の解明
担当:動物衛生研究所九州支所
研究計画:系統樹解析および塩基配列の相同性を比較するのに適した牛の異常産関連アルボウイルス遺伝子領域を検討し、遺伝子を増幅するためのプラ イマーを設計する。また、増幅された遺伝子断片を制限酵素切断片長多型解析法等により解析することにより、アルボウイルスの流行動態を明らかとし、発生予 察を含めた効果的な予防法の実施に活用する。

3)国際重要伝染病の侵入とまん延防止技術の開発

(1)国際重要伝染病病原体の特性解明
1)口蹄疫ウイルス及び豚コレラウイルスの病原性関連遺伝子の解析
担当:動物衛生研究所海外病研究部
研究計画:口蹄疫ウイルス日本分離株の遺伝子を数カ所の領域に分けてクローニングし、全塩基配列を決定する。また、豚コレラウイルスの主要ウイルス蛋白であるE2蛋白の構造解析を行う。このことにより、口蹄疫や豚コレラの感染防御技術の高度化ための基礎的知見が得られる。

(2)国際重要伝染病防除技術の高度化
1)口蹄疫ウイルス感染動物の病態解明と抗体迅速検出法の開発
担当:動物衛生研究所海外病研究部
研究計画:牛・豚を用いた口蹄疫ウイルス接種試験を行い、免疫応答やウイルス排泄、体内動態を調べる。また、モノクローナル抗体を作製し、抗原解析を行ったり、抗体検出法について検討し、診断法の高度化を図る。

4)感染免疫機構の解明に基づく次世代ワクチン等の開発

(1)病原微生物感染に対する免疫機構の解明
1)細菌由来の免疫機能調節有用物質の生産技術の開発と粘膜免疫系の機能発現調節機構の解明
担当:動物衛生研究所免疫研究部
研究計画:大腸菌易熱性毒素の3塩基(トリプシン作用部位)欠損変異体の組換え体の効率的細胞外分泌生産のため、最適な発現用プラスミドの構築と プロモーターの選択を試みるとともに、大量生産技術と精製技術の確立を試みる。有用変異毒素の生産系確立はワクチンへの利用だけでなく、家畜の粘膜免疫系 の機能発現調節機構の解明にも役立つ。

(2)次世代型生物学的製剤開発の基盤技術の開発
1)牛、豚のサイトカインの生産技術の確立と感染防御機能の発現調節への応用
担当:動物衛生研究所免疫研究部
研究計画:豚のIL-1、IL-4、IL-6、IL-12などサイトカインを組換え大腸菌、組換えバチルス・ブレビス菌、組換えバキュロウイルス 感染カイコなどを用いて効率的に生産させ、精製度の高い標品の調製を試みる。発現物質の生物活性を細胞レベルで検定し、有望なものについては動物への投与 試験を行い、生体防御能の改善効果を評価する。

(3)動物用生物学的製剤の標準化及び品質管理等の高度化
1)家畜法定伝染病の診断法等の改良
担当:動物衛生研究所生物学的製剤センター
研究計画:製剤の標準化及び品質管理等の高度化のため家畜法定伝染病の診断法等の改良に取り組む。具体的には、診断精度の向上や省力化のために組換え感染防御抗原を用いたELISA法等の改良やワクチン開発の基礎的研究を行う。

5)生産病の発病機構の解明と防除技術の開発

(1)代謝機能障害等の発病機構の解明と防除技術の開発
1)子牛下痢における貪食白血球機能及び血液代謝成分の動態解明
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:新生子牛に毒素原性大腸菌を経口投与し、下痢の発症状況と貪食白血球機能及び血液代謝成分の変動及びこれらの相互関連性を調べる。各成分の動態及び相互関連性を明らかにすることにより、子牛下痢の早期診断手法開発に大きく貢献できる。

(2)繁殖障害の発病機構の解明と防除技術の開発
1)有害物質等による生殖細胞発育阻害要因の解明
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:有害物質や生理活性物質が牛及び豚における無発情や排卵障害、早期胚死滅などの繁殖障害に及ぼす影響を調べ、その発生機序を明らかにする。また、直腸検査が困難な豚においても利用できる卵巣診断法を開発し、治療及び予後判定につなげる。

(3)泌乳障害の発病機構の解明と防除技術の開発
1)乳汁化学発光法による乳房炎の早期摘発に基づく黄色ブドウ球菌性乳房炎の治療技術の開発
担当:動物衛生研究所生産病研究部
研究計画:サイトカインによる乳房炎の治療法開発のため、感染早期の黄色ブドウ球菌性乳房炎の罹患乳房にrBoGM-CSF等のサイトカインを 種々濃度を変えて投与し、乳汁黄色ブドウ球菌数の消失状況或いは乳汁体細胞数の減少度合いなどからサイトカインの最も有効な投与濃度を調べる。

6)飼料・畜産物の安全性確保技術の高度化

(1)腸管出血性大腸菌O157等の人獣共通感染病の防除技術の開発
1)動物体内および環境中の腸管出血性大腸菌の動態解明
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:腸管出血性大腸菌投与試験牛の消化管や飼養環境における大腸菌分離株のプラスミド型、遺伝子型およびベロ毒素遺伝子塩基配列等の分子遺伝学的性状を検討し、投与大腸菌の遺伝子変遷等の動態について解析することにより、本菌の分子疫学的動態を明らかにする。

(2)汚染有害物質の体内動態と毒性発現機構の解明
1)飼料汚染有害物質が家畜の生体機能に及ぼす影響の解明
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:内分泌かく乱物質やマイコトキシン等の飼料汚染有害物質が家畜の形態及び生理機能に及ぼす影響について、家畜の初代培養細胞に有害物質 を感作させ、産生酵素等の変化によって解析する。これにより、今まで不明であった、ダイオキシン類やマイコトキシン等の家畜に対する有害作用が明らかとな り、その防除法や評価法等安全性を確保するための技術開発に活用できる。

(3)汚染有害物質の検出と安全性評価手法の高度化
1)植物由来有害物質の高精度分析法の開発
担当:動物衛生研究所安全性研究部
研究計画:庭木や雑草等の植物由来有毒物質について、抽出・精製法の検討や、高速液体クロマトグラフ等による機器分析法の検討を行い、簡便かつ高 精度分析法を開発することにより、家畜中毒の確定診断法が可能となる。また、本研究の成果は、家畜中毒診断マニュアルを作成するための基礎資料となる。

N 遺伝資源の収集、評価及び保存
独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業に協力し、サブバンクとして適切に対応する。
O 公立試験研究機関等との研究協力
(1)指定試験事業及び国の助成により公立機関等が実施する研究等への人的支援等の協力を行う。

(2)依頼研究員制度を拡充し、公立機関等との研究員の交流を促進する。

(3)共同研究を拡充し、公立機関等との研究協力を促進する。

2 専門研究分野を活かした社会貢献

(1)分析、鑑定
行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、高度な専門的知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な分析、鑑定を実施する。
特に、動物衛生に関しては、診断の困難な疾病、診断に特殊な試薬や技術を要する疾病、新しい疾病、国際重要伝染病が疑われる疾病等について、重点的に病性鑑定を行う。

(2)講習、研修等の開催
1)果樹研究所、野菜茶業研究所及び九州沖縄農業研究センターにおいて、農業者を養成する養成研修を実施する。

2)行政・普及部局、若手農業者等を対象とした講習会、講演会等を積極的に開催するとともに、国や団体等が主催する講習会等に積極的に協力する。

3)他の独立行政法人、大学、国公立機関、民間等の研修生を積極的に受け入れ、人材育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図る。また、海外からの研修生を積極的に受け入れる。

4)外部に対する技術相談窓口を設置し対応する。

(3)行政、国際機関、学会等への協力
1)わが国を代表する農業技術に関わる研究機関として、行政、国際機関、学会等の委員会・会議等に職員を派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力・交流に協力する。また、行政等の要請に応じて、技術情報を適切に提供する。

2)国際獣疫事務局(OIE)の要請に応じ、重要動物疾病に係るリファレンス・ラボラトリーとして、OIEの事業に協力する。

(4)家畜及び家きん専用の血清類及び薬品の製造及び配布
民間では供給困難な家畜及び家きん専用の血清類及び薬品について、行政と連携しつつ、適正な品目及び量等を調査し、家畜防疫及び動物検疫を実施する国公立機関等への安定供給に努める。

3 成果の公表、普及の促進

(1)成果の利活用の促進
1)研究成果の中で生産現場等に利活用できる(普及に移しうる)成果を評価の上、50件以上を選定し、行政・普及部局等と連携しつつ、生産現場への普及を図る。

2)行政、生産者等が利用可能な各種のマニュアル、データベース等を作成するとともに、農林水産省研究ネットワーク等を活用して、成果の普及、利活用の促進に努める。

(2)成果の公表と広報
1)研究成果は国内外の学会、シンポジウム等で発表するとともに、1,100報以上の論文を学術雑誌、機関誌等に公表する。

2)研究成果については、その内容をインターネットや「つくばリサーチギャラリー」の展示等を通じて公開に努めるとともに、重要な成果に関しては、適宜マスコミに情報を提供する。また、パブリックアクセプタンスの確保に努める。

(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
1)知的所有権の取得に努め、60件以上の国内特許等を出願する。また、必要に応じて、特許等の外国出願を行う。

2)育種研究成果に基づき、種苗法に基づく品種登録を行うとともに、農林水産省の命名登録制度を活用し、30件以上の新品種及び中間母本の登録申請を行う。また、必要に応じて、外国出願を行う。

3)補償金の充実等により、知的所有権取得のインセンティブを与える。

4)取得した知的所有権に係る情報提供はインターネットを通じて行うとともに、研究成果移転促進事業等を活用し、知的所有権の利活用を促進する。


 

III 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

 

1 予算

(単位:百万円)
区 分 金 額
収入
運営費交付金
施設整備費補助金
受託収入
諸収入
試験場製品等売払収入
その他の収入



38,005
1,308
4,368
173
164
9

43,854
支出
業務経費
施設整備費
受託経費
試験研究費
管理諸費
一般管理費
研究管理費
管理諸費
人件費



5,828
1,308
4,368
3,931
437
6,579
1,016
5,563
25,771

43,854
[注記]
1.4月1日確定額に基づいて作成した。
2.受託収入は、農林水産省の委託プロジェクト費を計上した。

2 収支計画

(単位:百万円)
区 分 金 額
費用の部
経常費用
人件費
業務経費
受託経費
一般管理費
減価償却費
財務費用
臨時損失

収益の部
経常収益
運営費交付金収益
諸収入
受託収入
資産見返負債戻入
資産見返物品受贈額戻入
臨時利益

純利益
目的積立金取崩額
総利益
42,729
42,729
25,771
4,455
3,949
6,493
2,061
0
0

42,729
42,729
36,546
173
3,949
164
1,897
0

0
0
0
[注記]
1.4月1日確定額に基づいて作成した。

3 資金計画

(単位:百万円)
区 分 金 額
資金支出
業務活動による支出
投資活動による支出
財務活動による支出
翌年度への繰越

資金収入
業務活動による収入
運営費交付金による収入
受託収入
その他の収入
投資活動による収入
施設整備費補助金による収入
その他の収入
財務活動による収入
43,854
40,668
3,186
0
0

43,854
42,546
38,005
4,368
173
1,308
1,308
0
0
[注記]
1.資金計画は予算ベースで作成した。
2.「受託収入」は、農林水産省及び他省庁分の委託プロジェクト費を計上した。
3.「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を記載した。
4.業務活動による支出については、「業務経費」、「受託経費」、「一般管理費」及び「人件費」の総額を計上することとなるが、平成14年4月以 降の支出となる未払費用を控除した額を計上した。また、有形固定資産の取得による支出は、「投資活動による支出」において計上することから、有形固定資産 の購入費についても控除した。
5.投資活動による支出については、「施設整備費」及び業務経費及び受託経費で購入する「機械費」及び管理諸費で購入する「資産物品」を計上した。


 

IV その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項

 

1 施設及び設備に関する計画

(単位:百万円)
施設・設備の内容 予定額 財 源
農業技術研究機構
本部棟新築

(花き研究所)
一般温室新築

(畜産草地研究所)
隔離豚舎死体処理室・焼却炉改修

(動物衛生研究所)
解剖・焼却棟焼却炉改修

779


217


140


171

施設整備費補助金


施設整備費補助金


施設整備費補助金


施設整備費補助金
合 計
1,307

2 人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)

1)人員計画

(1)方針
独立行政法人移行時に総務部門の職員数を削減し、研究企画部門及び情報管理部門へ重点配置する。

(2)人員に係る指標
常勤職員数については、独立行政法人移行時は2,839名とし、年度末は2,820名とする。

2)人材の確保
1)職員の新規採用については、国家公務員採用試験の活用及び選考採用により行う。研究職員については任期付任用の拡大を図る。また、中期目標達成に必要な人材を確保するため、ポストドクター等の派遣制度を活用する。

2)広く人材を求めるため、研究を行う職については公募の導入を図る。