広報活動報告詳細

2012年度 第4回農研機構産学官連携交流セミナー報告

情報公開日:2013年1月10日 (木曜日)

開催チラシ[PDF:270.3KB]

開催日時・会場

日時:2012年12月11日(火曜日)

会場:日本教育会館(東京千代田区)707号会議室

高品質な花きを安定的かつ効率的に生産するための最新技術

農研機構主催の2012年度第4回農研機構産学官連携交流セミナーは、「高品質な花きを安定的かつ効率的に生産するための最新技術」をテーマに開催いたしました。農研機構では、新しい形質をもつ花きの創出、安定的な花き栽培技術や省力化・省エネルギー化を目指した花き生産システム、鮮度保持技術の開発等を始めとする様々な研究開発に取り組んでおります。今回のセミナーでは、特に生産性と品質を同時に向上させることが重要であることから、農研機構の花き関連の研究成果のうち、高品質な花きを安定的かつ効率的に行うための技術についてご紹介いたしました。当日は、生産団体、流通関係、普及機関、研究機関、農業資材メーカー、新聞、出版関連などから36名のご参加をいただきました。

生産団体、流通関係、普及機関、研究機関、農業資材メーカー、新聞、出版関連などから36名のご参加をいただきました。

内容

トルコギキョウを低コストで冬季に計画的に出荷する技術

花き研究所 花き研究領域 上席研究員 福田直子が「トルコギキョウを低コストで冬季に計画的に出荷する技術」と題して、大苗定植、昼夜の温度管理、長日処理等の技術要素を組み合わせて1~3月のトルコギキョウの計画的な出荷を低コストで実現する技術について紹介しました。概要は以下の通りです。

トルコギキョウを低コストで冬季に確実に生産する技術これまで加温コストが高く、また、計画的な生産が困難であった、トルコギキョウの1~3月の出荷を実現するために、まず、冬季栽培で起こりやすいブラスチング(胚珠が分化せず、蕾の生長が止まる現象)について、その原因となる要因を解析しました。その結果、ブラスチングは雄ずい・雌ずいの分化途中で生長が停止することで起こることがわかりました。また、光の強さと二酸化炭素濃度を組み合わせた実験から、光合成産物である植物の糖含量が少ないとブラスチングが発生することが明らかになりました。

これらのことから、ブラスチングが起こらないようにするためには、光合成同化量を増やし、かつ同化産物の消費を減らすことが重要であると考え、栽培管理の個別技術を検討し、(1)光合成特性を考慮した低コストで開花促進効果の高い温度管理技術(高昼温・低夜温)、(2)大苗定植による在圃期間の短縮技術(本葉3大苗定植)、(3)低夜温条件における長日処理による発蕾促進技術(白熱電球利用)、(4)生育量の確保と安定開花を両立する施肥技術(減肥+生育初期重点施肥)を整理し、発蕾期からの温度管理で収穫期を調節することで冬季の計画的な出荷が可能になることを実証しました。関東以西のトルコギキョウ生産者に利用いただきたい技術です。

EOD反応を活用したスプレーギク等の省エネルギー型効率的生産技術

花き研究所 花き研究領域 主任研究員 住友克彦が「EOD反応を活用したスプレーギク等の省エネルギー型効率的生産技術」と題して、スプレーギク等の新たな生育調節技術として、日没の時間帯(end of day)から数時間における温度や光刺激に対する植物の応答反応を活用した生育調節技術について紹介しました。概要は以下の通りです。

EOD反応を活用した花き生産技術日没の時間帯(end of day)から数時間における温度、光刺激による植物の応答をEOD反応と呼び、この時間帯での温度管理に着目した変夜温管理(EOD-Heating)ならびに同じ時間帯の遠赤色光照射(EOD-FR)処理による新たな生育調節技術を開発しました。

スプレーギクでは、日没後に1時間遠赤色光を照射すると、伸長促進効果がみられます。この現象を利用すると、切り花長確保のための長日期間を短縮しても短日処理後のEOD-FR 処理(FR を日没後3時間)により、同等の切り花品質を確保でき、栽培期間を7~ 10 日間短縮できます。また、日没後に3時間加温を行うEOD-Heating処理でも、生育が改善され、蕾が大きく成長し、スプレーギクの開花を促進させることができます。EOD-FRとEOD-Heatingを併用した事例では、EOD-FR処理により伸長を促進するので、栽培期間を短縮しても慣行と同等の切り花を得ることができ、また、EOD-Heating処理で燃料を削減できました。結果として、燃料消費を30%以上削減しながら、慣行と同程度の切り花が得られました。トルコギキョウ栽培でも、EOD-FR処理(FR を日没後3時間)により、開花が促進され、冬季の栽培期間を短縮することができます。

EOD-FRとEOD-Heating 処理は、1作の期間を短縮できることで、加温コストが減り,また年間を通じた施設の利用効率が増加し、生産の効率化を可能にします。実用にあたっては、地域の気象条件と品種間差を考慮する必要があります。

小ギク収穫機の開発と一斉収穫による省力化

近畿中国四国農業研究センター 傾斜地園芸研究領域 主任研究員 田中宏明が「小ギク収穫機の開発と一斉収穫による省力化」と題して、小ギクの収穫作業を省力化するために開発された歩行型の小ギク収穫機について説明しました。概要は以下の通りです。

小ギク収穫機の開発と一斉収穫による省力化小ギク生産において、収穫調整作業は全労働時間の46%を占めます。収穫作業は、収穫適期に達した切り花を圃場内で探し出し、一本ずつ鎌で刈り取る選択収穫方式が大部分であり、収穫作業に要する時間が規模拡大の制限要因となり、担い手農家の規模は約2ha程度が限界となっています。このような手作業によっていた小ギクの収穫作業を省力化するため、慣行の栽植様式に対応した歩行型の収穫機を開発しました。

開発した収穫機は、慣行の栽植様式に対応し、畝を跨いで走行し、一定の刈り高さで切断した切り花を後方へ送り、収容部に集める構造になっています。収容部には慣行で使用している収穫布を装着することができます。切り花に損傷を与えることなく刈取りでき、収容時の茎の揃いもよいです。また、フラワーネットを回収できる装置を装備しているので、軟弱な切り花の収穫も可能です。収穫期と搬出台車との組合せにより、収穫作業時間を38%~65%削減できます。

さらに、一斉収穫したキクの開花程度を選別できる選別機、つぼみ収穫した切り花を室内で開花させる開花処理技術を導入することで、収穫作業時間の削減だけでなく、収穫期間の短縮、商品化率の向上が可能となることを実証しました。

スギ樹皮を材料とした鉢物花き栽培培地

東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 主任研究員 稲本勝彦が「スギ樹皮を材料とした鉢物花き栽培培地」と題して、シクラメンなど鉢物花きの生育が良好となるスギ樹皮を材料とした栽培培地について説明しました。概要は以下の通りです。

スギ樹皮を材料とした鉢物花き栽培培地製材業において大量に産出されるスギの樹皮を原料とした鉢花やコンテナ栽培の用土培地を開発しました。

堆積処理や膨潤化処理、およびその両処理を行ったスギ樹皮培地は、パンジーのポット苗栽培において、地上部生育、根郡形成を促進させることを見いだし、生育促進効果と製造コストのバランスから、5ヶ月間の堆積処理のみを行ったスギ樹皮培地が資材として適当であると考えました。そこで、5ヶ月堆積処理を行ったスギ樹皮培地を用いて、パンジーの生育への影響を調査したところ、スギ樹皮培地をマグァンプK施肥で栽培した場合にみられた葉のネクロシスを徴候とする生育障害は、硫酸鉄溶液への浸漬処理、園芸培土等の混合により軽減されることがわかりました。また、この処理により葉色が濃くなることもわかりました。シクラメン栽培でも、硫酸鉄処理は生育を促進します。さらに、撥水が原因と思われるシクラメン、リンドウ鉢花栽培における生育不良・生育ムラは、界面活性剤の混合により回避でき、生育も促進されることを確かめました。

以上のように、スギ樹皮には花き栽培培地としての適性があり、堆積、界面活性剤添加、硫酸鉄溶液浸漬等の処理により、良好な特性を付与することができることを明らかにしました。スギ樹皮培地は、地域供給資材として、ピートモス等の輸入資材の代替となる可能性があると考えています。

セミナー終了後には、研究成果を紹介したパネル、実物展示や導入現場の映像をご覧頂きながら、参加者の皆さまと個別に質疑応答・意見交換を行いました。参加者の皆様と研究者との貴重な交流ができ、有意義なコミュニケーションタイムとなりました。

コミュニケーションタイム

農研機構では、今後とも皆様との連携強化を目指し、様々なテーマでセミナーを開催して参ります。

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