広報活動報告詳細

2012年度 第6回農研機構産学官連携交流セミナー報告

情報公開日:2013年3月28日 (木曜日)

開催チラシ[PDF:574.6KB]

開催日時・会場

日時:2013年3月12日(火曜日)

会場:日本教育会館(東京千代田区) 707号会議室

食品の新しい品質評価方法

農研機構主催の2012年度第6回農研機構産学官連携交流セミナーは、「食品の新しい品質評価方法」をテーマに開催いたしました。農研機構では、食と健康の科学的解析、食料の安全性確保と革新的な流通・加工技術の開発等の幅広い研究を行っています。今回のセミナーでは、これらの研究の中から、食品の品質を新しい視点で評価する技術や、モデル動物や遺伝子情報を活用した安全性や機能性の評価技術など、食品の品質や安全性の向上と、消費者や実需者に対してより正確な食品機能の情報を提供することを目指した技術についてご紹介いたしました。当日は、食品関係、流通・小売り関係、機械メーカー、研究機関、新聞、出版関連などから33名のご参加をいただきました。

食品関係、流通・小売り関係、機械メーカー、研究機関、新聞、出版関連などから 33名のご参加をいただきました。

内容

蛍光指紋による食品の判別・定量・可視化技術の開発

光の指紋による食品の鑑別・定量食品総合研究所 食品工学研究領域 計測情報工学ユニット長 杉山純一が「蛍光指紋による食品の判別・定量・可視化技術の開発」と題して、蛍光指紋を利用した食品表示偽装の判別や、かび毒、生菌数やパン生地中のグルテンとデンプン分布の可視化技術について紹介しました。概要は以下の通りです。

蛍光指紋は、試料にさまざまな波長の光刺激(励起光)を順次与え、それらに対する応答(蛍光スペクトル群)を集め、その情報を基に計測を行う新しい光計測法です。非破壊・非接触で、化学的な前処理が不要であり、短時間で測定ができる、検出感度が高い、様々な対象が可能な測定方法です。この技術を利用して、生体由来の物質の検知・判別・定量、さらにそれらのイメージングへの展開を図っています。
蛍光指紋と製品の良否判定などの目的を組合せることで、推定モデルを作成することが可能です。これまでに、マンゴーの産地判別、市販そばのそば粉配合割合の推定、小麦かび毒の汚染度の推定について、モデルを作成しました。さらに、蛍光指紋のイメージングへの展開として、パン生地におけるグルテンとデンプン分布の可視化や、食肉の生菌数の可視化などに取り組んでいます。

甘味受容体の構造特性を利用した、甘味物質のブレンド効果の評価

甘味受容体を用いた甘味料ブレンド評価食品総合研究所 食品機能研究領域 食認知科学ユニット長 日下部裕子が「甘味受容体の構造特性を利用した、甘味物質のブレンド効果の評価」と題して、甘味受容体の構造と呈味性の関係を利用した甘味物質のブレンド効果の評価技術について紹介しました。概要は以下の通りです。

現在までに様々な甘味料が開発されていますが、その食品への利用については、嗜好性の高いショ糖の呈味性に近づけ、かつ低コストを目的として複数の甘味料のブレンド法が試行錯誤されています。ブレンド法の開発と評価は、主に官能検査による経験を基に行われているのが現状です。

その一方で、2001年に甘味受容体が同定され、甘味受容体には甘味物質と結合する部位が複数存在することが示されてきました。そこで、甘味物質、甘味受容体構造と呈味性の関係に注目し、甘味料のブレンド評価への応用を目的とした甘みの強さを決める要因の解明に取り組んでいます。その結果、異なる領域に結合する甘味物質をブレンドすると、甘みが増強されることがわかりました。この知見から、受容体構造と味物質の関係からブレンドによる甘味強度を予測することが可能であり、これにより、効率的な甘味に増強方法の予測や、官能検査への優先順位付けができると考えています。

アレルギーの重症度をはかる-アレルギーモデル動物の血管透過性亢進を使用した高感度迅速定量法-

食品の抗アレルギー機能を判定する動物モデル食品総合研究所 食品機能研究領域 機能性成分解析ユニット長 石川(高野)祐子が「アレルギーの重症度をはかる-アレルギーモデル動物の血管透過性亢進を利用した高感度迅速定量法-」と題して、長ヒトのアレルギー感作・発症機構を模したアレルギーモデルマウスを利用したアレルギー重症度の定量技術について紹介しました。概要は以下の通りです。

我が国におけるアレルギー疾患の患者数は年々増加しており、その対策は急務です。とりわけ、抗アレルギー活性物質の効率的かつ精確なスクリーニング手法としてのアレルギー疾患モデル動物の開発は非常に重要です。確立したアレルギーモデルマウスは、ヒトのアレルギー感作・発症機序を模したモデルです。抗原を2週間食べさせるだけで、アレルギー体質に誘導でき、蛍光色素を用いて症状の重症度を直接定量します。また、このモデルマウスを用いると、症状の重症度を高感度に定量するだけでなく、抗原感作からアレルギー発症までの様々なポイントにおいて抗アレルギー活性を評価できるので、農産物・食品の抗アレルギー機能(アレルギー体質にならない、アレルギーの発症を抑える、アレルギーを悪化させるリスクの有無など)の判定に利用できます。さらに、マウスとヒトの生理的差異を踏まえて活用すれば従前のモデルよりも有益な知見が得られるばかりでなく、逆にヒトのアレルギー発症の謎に迫れる可能性があります。

DNAチップを活用した食品の機能性と安全性の評価

DNAチップは様々な機能性を評価できる食品総合研究所 食品機能研究領域 機能性評価技術ユニット長 小堀真珠子が「DNAチップを活用した食品の機能性と安全性の評価」と題して、食品成分の生活習慣病予防や安全性に関わる作用を効率的に評価・解明することができるDNAチップ(網羅的DNAマイクロアレイ、カスタムチップ)の活用技術について紹介しました。概要は以下の通りです。

網羅的DNAマイクロアレイは、モデル動物の組織において、食品成分に応答するすべての遺伝子発現を網羅的に解析することができるため、機能性・安全性を総合的に判断できます。適切な評価系を用いることにより、様々な機能性評価、作用機構の解明に利用できます。これまでに、網羅的DNAマイクロアレイを用いて、ケルセチンの糖尿病軽減機構、フロリジンのマウス血糖値低下作用、β-クリプトキサンチンの食餌性脂肪肝炎抑制効果などの評価を実施しています。

カスタムチップは、アレルギーや炎症反応に関連して変動する約200の遺伝子を搭載したDNAチップで、細胞、組織の遺伝子発現を測定して、食品成分のアレルギー、炎症抑制機能等を評価することができます。適切な遺伝子を選抜することにより、高感度に目的別の評価を行うことができます。これまでに、ニガウリの炎症抑制効果の評価、アレルギーの悪性化に関与するヒトマスト細胞の活性化とその抑制効果の評価、再構成ヒト表皮モデルを用いた皮膚刺激性の評価、時計遺伝子・代謝に関わるDNAチップの作成と評価などを実施しています。

 

セミナー終了後には、研究成果を紹介したパネル、実物展示や映像をご覧頂きながら、参加者の皆さまと個別に質疑応答・意見交換を行いました。参加者の皆様と研究者との貴重な交流ができ、有意義なコミュニケーションタイムとなりました。

個別に質疑応答・意見交換しています。

農研機構では、今後とも皆様との連携強化を目指し、様々なテーマでセミナーを開催して参ります。

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