広報活動報告詳細

2013年度 第1回農研機構産学官連携交流セミナー報告

情報公開日:2013年6月27日 (木曜日)

開催チラシ[PDF:458.0KB]

開催日時・会場

日時:2013年5月21日(火曜日) 13時30分~16時30分

会場:日本教育会館(東京千代田区) 707号会議室

 

輸出を視野に入れた農産物の流通・鮮度保持技術

今回のセミナーでは、現在、政府が検討している「攻めの農林水産業」の展開に即したテーマとして、農研機構の最近の研究成果の中から、国産農産物の輸出拡大を視野に入れ、広域流通に対応でき、販路拡大につながる流通・鮮度保持技術をご紹介いたしました。当日は、流通・小売り関係、食品メーカー、農業資材メーカー、県等の公立試験場所、大学、行政、新聞・出版関係などから66名のご参加をいただきました。

 セミナーの様子1
 セミナーの様子2 セミナーの様子3
セミナーの様子

 

講演内容

振動・衝撃によるイチゴ・オウトウの損傷を大幅に軽減できる包装技術

食品総合研究所 食品工学研究領域 研究員 北澤裕明

近隣アジア諸国において日本産のイチゴの人気が高まる一方で、輸出の過程の振動・衝撃で生じる果実の損傷・鮮度低下が問題となっています。また国内流通でも包装設計を誤ると損傷が発生することがあります。

そこで、イチゴの輸出拡大と国内流通安定化を図るために、果実をホールトレーに乗せ、伸縮性フィルムを展張したプラスチック外装箱でこれを挟んで果実を固定する新たな包装形態を提案しました。この形態では輸送中の振動や衝撃によって果実が飛び跳ねたり回転したりする、いわゆる「玉オドリ」を抑えることができ、従来の包装と比較し果実の損傷を大幅に軽減できます。イチゴ用に開発した容器は既に実用化され、輸出を含めた長距離輸送における果実損傷の防止に貢献している他、これを封筒に入れて農家から直接発送するといった新たな流通スタイルの構築にも貢献しています。

また、従来の包装形態では長距離輸送における荷傷みが懸念されているオウトウでも、イチゴの包装技術を応用し、輸送中の損傷を大幅に軽減できることを確認しました。今後、さらに輸送コストも考えながら容器の形状等の改良を進める予定です。

イチゴやオウトウを長距離輸送できる包装技術
イチゴやオウトウを長距離輸送できる包装技術
関連情報
輸送中の物理的傷害を75%軽減できるイチゴ包装容器

 

イチゴのおいしさ長~くキープ!!
八分着色イチゴ果実のMA包装と低温貯蔵を組み合わせた鮮度保持技術

九州沖縄農業研究センター 水田作・園芸研究領域 上席研究員 曽根一純

日本の‘あまおう’等の大果系統や良食味系統の品種は、市場評価も高く、東南アジアの富裕層を中心に市場ができつつありますが、大きく発展させるためには遠距離流通時の鮮度保持が重要となります。

東南アジア等への輸出も視野に入れ、日本の高品質なイチゴを安定的に供給することをねらいに、これまで長期貯蔵が難しかった完熟果に近い八分着色イチゴ果実を対象に、MA包装と低温貯蔵を組み合わせた鮮度保持技術を開発しました。MA包装は、大規模な設備を必要とせず、フィルム内の大気を低酸素・高二酸化炭素に保つことで鮮度を保持できる、低コストで簡便な包装技術です。氷温高湿度条件(0~‐2°C、湿度90%以上)下で八分着色したイチゴ果実をMA包装することにより、3週間程度の鮮度保持が可能であることを確認しました。また、貯蔵温度に関係なく、MA包装内の酸素濃度が10~13%、炭酸ガス濃度が約10%の条件下での果実外観・品質の鮮度保持効果が高いことが分かりました。

イチゴ用のMA包装資材は商品化されています。本技術を用いることで、冷蔵コンテナでの高品質なイチゴ果実の長距離海上輸送が可能となり、輸出拡大に寄与することが期待されます。また、生産者や流通業者には、MA包装を用いることで収穫ピークの分散化・出荷量の平準化が図られ、安定出荷が可能になるというメリットもあり、今後、このような利用方法も提案したいと考えています。

イチゴ用MA包装資材の例
イチゴ用MA包装資材の例
関連情報
八分着色イチゴ果実のMA包装と低温貯蔵を組み合わせた鮮度保持技術

 

エチレン作用阻害剤「1-MCP」を利用したリンゴの鮮度保持技術

果樹研究所 栽培・流通利用研究領域 主任研究員 立木美保

植物ホルモンであるエチレンは収穫後増加し、果実の成熟・老化を促進します。そのため、貯蔵、流通等に伴う鮮度低下を抑制するにはエチレンの作用を阻害することが重要です。

1-メチルシクロプロペン(1-MCP)は、エチレン受容体に結合してエチレンの作用を阻害することで、果実の老化を抑制します。我が国ではリンゴ、ナシ、カキを対象に2010年11月に農薬登録されました。また、2011年度産のリンゴから一部の産地において1-MCP処理リンゴの販売が開始されています。

1-MCPは、リンゴ、ニホンナシ、カキにおいて、果実の軟化、減酸、貯蔵障害を抑制し、高い鮮度保持効果を示します。1-MCP処理後、20°Cで1ヶ月貯蔵したリンゴ「ジョナゴールド」では、油上がり(熟した果実が自らの表面を保護するためにロウ物質等を分泌する現象)を抑制できました。しかし、果実が未熟または過熟である、収穫から処理までの時間が長い等、条件によってはその効果が得られないこともあることから、完熟で収穫し速やかに1-MCPを処理することを推奨します。また、収穫後に多量のエチレンを生成する品種では、収穫後低温貯蔵し1-MCP処理を行うことで、鮮度保持効果は向上します。

本技術を利用することで、生産者に対しては貯蔵期間の延長と貯蔵障害の軽減、流通業者に対しては出荷調整や輸出等の長距離輸送が可能となること、省エネ(貯蔵温度を上方設定)などのメリットがあると考えています。

「1-MCP」処理でリンゴの鮮度保持
「1-MCP」処理でリンゴの鮮度保持
関連情報
リンゴ「つがる」では予冷することで1-MCP処理による鮮度保持効果が高まる

 

日持ち保証に対応した切り花の品質管理技術

花き研究所 花き研究領域 主任研究員 湯本弘子

切り花の日持ち保証販売は欧米で広く行われており、切り花の消費拡大に貢献していることが知られています。また、我が国でも、消費者に対する各種アンケート調査の結果から、消費者が日持ちを重視していることが明らかになっています。このようなことから、国内の切り花生産を振興する方策の一つとして、日持ち保証販売の重要性が認識されてきています。

日本国内で日持ち保証販売を進めるには、夏季の高温に対応した技術開発が必要です。また、カラーやチューリップなど、これまで有効な品質保持技術がなかった切り花においても、日持ち保証を行うため新たな品質管理技術の開発が必要です。そこで、主要切り花30品目において、日本国内での日持ち保証に対応した品質管理技術を開発しました。その結果、切り花30品目中全品目において常温で5日間、22品目において7日間、また16品目において高温(30°C)で5日間の日持ち保証が可能であることを示しました。例えば、生け水の汚れにより日持ちが短縮しやすいバラでは、消費者が糖質と抗菌剤を活用することにより品質保持期間が延長し、日持ち保証が可能になります。

今後、本成果が日持ち保証販売の普及に役立つことが期待されます。

主要切り花30品目一覧,切り花品質管理法の概要

関連情報
  • 主要切り花の品質管理全般については、「日持ち保証に対応した切り花品質管理マニュアル」(農研機構花き研究所ホームページ内の下記URLよりダウンロード可能)を参照してください。
    http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/files/cb160bab2b4d663b9ba036741ffc9904.pdf
  • 日持ち保証販売の導入を検討したい方は、「日持ち保証販売導入マニュアル(小売店用)」を参照してください。MPSジャパン株式会社ホームページよりダウンロード可能です。
  • 日持ち調査を依頼したい方は、財団法人日本花普及センターホームページにて「切り花日持ち試験認定事業」を参照してください。

 

コミュニケーションタイム

セミナー終了後には、研究成果を紹介したパネル、実物展示などをご覧頂きながら、参加者の皆さまと個別に質疑応答・意見交換を行いました。参加者の皆様と研究者との貴重な交流ができ、有意義なコミュニケーションタイムとなりました。

コミュニケーションタイム1

コミュニケーションタイム2

農研機構では、今後とも皆様との連携強化を目指し、様々なテーマでセミナーを開催して参ります。

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