広報活動報告詳細

2013年度 第2回農研機構産学官連携交流セミナー報告

情報公開日:2013年9月18日 (水曜日)

開催チラシ[PDF:253.2KB]

開催日時・会場

日時:2013年8月6日(火曜日) 13時30分~16時30分

会場:日本教育会館(東京千代田区) 707号会議室

野菜ビジネスの新展開 国産野菜を効率的に安定供給するための新技術

今回のセミナーでは、現在、政府が検討している「攻めの農林水産業」の展開に即し、農研機構の最近の研究成果の中から、業務用野菜への国産率拡大を目指し、効率的に安定供給するための技術をご紹介いたしました。当日は、流通・小売り関係、食品メーカー、農業機械メーカー、種苗メーカー、行政、新聞・出版関係などから44 名のご参加をいただきました。

セミナーの様子1 セミナーの様子2
セミナーの様子3セミナーの様子

講演内容

生育モデルとモニタリングによるレタス出荷量予測システム

野菜茶業研究所 野菜生産技術研究領域 岡田 邦彦

他の加工・業務用野菜と同様に、カット用レタス生産でも定時定量出荷が求められていますが、収穫適期が夏季では高冷地でも1~2 日と非常に短く、ちょっとした気象変動で短期での出荷変動が大きくなってしまい、安定供給の障 壁となっています。しかしながら、低コスト生産が求められる中、生育環境を制御して生産そのものを安定化するこ とは困難です。そこで、出荷あるいは調達コーディネータ役を担っている団体・会社が、余裕を持って調整が行える だけのリードタイムを稼ぐために、生育モデルシミュレーションと生育モニタリングによる生育量推定を組み合わせ た出荷量予測システムを開発しました。
気象条件データはAMeDAS より日平均気温、日日射量を利用し、これに圃場ごとの栽培品種や定植日、生育モニタリ ングによって予測精度を上げ、生育モデルシミュレーションを行い生育を予測・推定します。葉齢(出葉枚数)と積 算温度との間には、栽培環境条件が異なってもほぼ一定の関係があり、また、作期を問わず、結球を開始する葉齢も 品種により、ほぼ定まっています。温度で生育の進み具合(結球葉数)は推定出来ますが、生育量(結球重)は日射 量も考慮すると精度は高まります。生育モニタリングで投影面積、さらには、生育量などを推定して、その時点から シミュレーションを再度実施してやると、その時点までの誤差がいわばキャンセルされて、予測精度が向上します。 本出荷量予測システムの使用により、より正確な出荷推計が可能となり、余裕作付け分の合理化が期待できます。 また、産地側からの早期の情報提供により実需者側も対応が可能となるので、より安定的な契約取引が可能になると 考えられます
現在、生育モデルパラメーターが得られている品種は限られていますが、対応品種の拡大を予定しています。また モニタリング画像の解析により、歩留まりを推定する手法を研究中です。

レタスの生育予測に基づく週別出荷数量推計アプリケーションレタスの生育予測に基づく週別出荷数量推計アプリケーション
関連情報
レタスの生育予測に基づく週別出荷数量推計アプリケーション

 

加工用に適した長球タマネギと果肉の厚い大果カボチャ

北海道農業研究センター 水田作研究領域 杉山 慶太

タマネギは国内生産量の25%にあたる約30 万トンが主に加工用として輸入されていますが、加工業者からは国内 産のタマネギを望む声も多くあります。そこで、タマネギの加工歩留まりについて調査し、歩留まりの良さは球の縦 長にあることを明らかにしました。この特徴をもち、大球性で、収量性のよいタマネギ「北交1号」を開発しました。 タマネギ加工時の上下カットでは長いタマネギは取り扱い易く、「北交1号」のL球以上の規格において剥皮作業時間 を16%削減できました。
これまで北海道で栽培されていたかぼちゃは、蔓が長く伸びて整枝や誘引、収穫などに手間がかかることから、カ ボチャ栽培における整枝・誘引・収穫作業の省力・軽作業化を目標に、蔓が伸びにくく、株元に果実が着生しやすい 短節間性の形質を導入した品種を育成してきました。また、加工・業務用のカボチャの需要が増えてきていることか ら、果実が大きく、厚い果肉で、濃い黄肉色等の品質を有する品種が求められています。そこで、加工・業務用とし て「北渡交1号」、加工用としても適している「TC2A」(ほっとけ栗たん)、冬春期(12~5月)の国産品端境期にむ けて貯蔵性の良い「北渡交3号」を開発しました。

タマネギ・カボチャの新品種タマネギ・カボチャの新品種
関連情報
剥きタマネギ加工には球高の値が大きいタマネギが適する
省力栽培向きの良食味カボチャ新品種「TC2A」
TC2A

 

収穫労力を半減するキャベツ収穫機

生物系特定産業技術研究支援センター 園芸工学研究部 青木 循

近年、キャベツの加工・業務用途の出荷割合が全体の50%を占め、キャベツ作の新規導入や規模拡大を進める産地 では、労働時間の過半を占める収穫・調製・出荷作業の機械化による労力削減とモーダルシフトによる出荷経費の削 減技術が求められています。
そこで、主に大規模加工・業務用キャベツ産地に導入できる機械収穫技術の開発に取り組み、このほど収穫機の荷 台上で刈り取ったキャベツを選別・調製し、大型コンテナへ収納して、そのまま、搬出・出荷できる高能率なキャベ ツ収穫機を開発しました。
刈取部は切断刃による刈取精度は切断高さの調整により9 割以上の作業精度が得られます。作業能率は2~3a/時 間、およそ1 日あたり20a/日となり、慣行の作業と比較すると、投下労働時間が4 割以上低減となるデータが出てい ます。作業時間のうちコンテナ交換にかかる時間が2~3割を要しているので、この部分を効率化することでより作 業能力が向上します。また、畝の長い圃場でコンテナ交換回数を減らすため、コンテナを2機搭載できる大型機の開 発も行っています。

キャベツ収穫機の概要キャベツ収穫機の概要
キャベツ収穫機による省力・効率化効果キャベツ収穫機による省力・効率化効果
関連情報
機上選別・調製で大型コンテナ収容を行う高能率キャベツ収穫機

 

大規模畑輪作生産システムを活用した業務加工用野菜生産

九州沖縄農業研究センター 畑作研究領域 石井 孝典

近年、南九州地域においては農業法人を中心とした大規模化が進展しつつあり、温暖な気候を利用した業務加工用 野菜生産を基盤とする経営が増えています。こうした大規模畑作・野菜作法人のなかでも20~30ha 規模の経営を対象 に、九州沖縄農研畑作研究領域では地域の生産者と連携した現地実証試験を行いながらカンショの新たな栽培体系や 露地野菜機械化栽培技術等の開発による総生産費の2 割削減を目標とした低コスト・省力畑輪作システムの構築を行 っています。ここでは、開発を行っている畑輪作システムの考え方や方向性、導入しようとしている開発技術の一端 を紹介します。

機械作業体系の確立

加工用ホウレンソウでは手取り収穫を行った場合、作業時間37.6h/10a 全作業の60%を占めています(九沖農研調 査)。生産コストの大部分を収穫のための人件費が占めていることから、大型収穫機の導入により作業時間を大幅に短 縮することが可能になります。そのため、栽植様式など収穫機械導入に向けた試験を行っています。その他、乗用管 理機を利用した播種、除草、防除、追肥などの機械作業体系の検討を行っています。

ホウレンソウ2回刈り栽培の検討

南九州の気候でも加工用ホウレンソウの厳冬期の収穫は困難である一方、実需者からは収穫の平準化が求められて います。機械刈り収穫では収穫後に残る株から植物体が再生するので,1 番草に加え再生草を利用する多回刈り栽培 体系を採用することで、より省力多収が可能になり、特に端境期である厳冬期の原料供給が容易になると考えられま す。

パリセードグラスの導入による線虫防除と耕畜連携

南九州の畑作では線虫被害が大きな問題となっています。毎作ごとに土壌消毒が行われるため、高コストや環境負 荷を招いています。そこで有害線虫を防除し、永年性牧草として、栄養価、採食性、耐病性が優れているパリセード グラスを夏作一年生 輪作作物として利用する技術の開発を行っています。緑肥としての減農薬効果だけでなく、畜産 農家への飼料としての売却などにより収益性を見込むことができます。

モデル輸作体系

関連情報
パリセードグラスは南九州地域の重要有害線虫2 種の増殖を抑制する

 

コミュニケーションタイム

セミナー終了後には、研究成果を紹介したパネル、映像・実物展示などをご覧頂きながら、参加者の皆さまと個別に質疑応答・意見交換を行いました。参加者の皆様と研究者との貴重な交流ができ、有意義なコミュニケーションタイムとなりました。

コミュニケーションタイム1 コミュニケーションタイ2
コミュニケーションタイム3 コミュニケーションタイム4

農研機構では、今後とも皆様との連携強化を目指し、様々なテーマでセミナーを開催して参ります。



農研機構では、新たなアグリビジネス創出を目指している産業界、農業関係者などの方々からネットワーク会員を募集しております。会員の皆様には、農研機構のセミナーやイベント等の開催案内、最新の研究成果(新品種・新技術等の知的財産)や最新の話題をメールマガジンでお届けしています。入会費や年会費はありません。どうぞ、これを機会に「農研機構 産学官連携ネットワーク」にご加入ください。

法人番号 7050005005207