広報活動報告詳細

2013年度 第3回農研機構産学官連携交流セミナー報告

情報公開日:2014年4月18日 (金曜日)

開催チラシ[PDF:385KB]

日時

平成26年3月12日(水曜日)

会場

東京国際フォーラム 地下2階 展示ホール セミナー室

需要のフロンティア拡大へ 農研機構発おすすめ新品種

農研機構主催の2013年度第3回農研機構産学官連携交流セミナーは、JAグループが行う第8回JAグループ国産農畜産物商談会と併せて開催し、 「需要のフロンティア拡大へ 農研機構発おすすめ新品種」と題して、農研機構が近年育成した新品種をご紹介いたしました。当日は、生産団体、小売業、食品加工メーカー、農業資材メーカー、新聞社、行政関係などから、のべ84名のご参加をいただきました。

発表内容

そのまま食べてはもったいないトマト「すずこま」

東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 由比進

naro_seminar_report20140312_09缶詰トマトの輸入量はここ20年で4倍に増加しており、調理用トマトの需要は確実に伸びていると言えます。FAOの統計から日本人のトマトの消費量は決して多くはなく、まだ伸びる余地があります。日本のトマトは、生食用(大玉~ミニ)と加工用(ジュース、ケチャップ、ピューレ)の2つに分類されていましたが、今回紹介する「すずこま」は加熱調理用(クッキング)トマトで、生で流通させて厨房や台所で加熱調理することを目的に育成された「第三のトマト」です。

加熱調理の普及によってトマトの生産消費が大きく伸びる可能性があります。
「すずこま」は短い期間で栽培出来るよう、また多様な作期・作型に対応出来るよう、早生化、小型化を育種目標としました。心止まり性、へたが果実に残らないジョイントレス性という特性を併せ持ち、低段・密植・養液栽培により年間3~4作が可能となり、また雨よけハウス・露地栽培等多様な作期・栽培法にも対応できます。果実の大きさは鶏卵程度、甘くなく、酸味が強い。色調は赤身が強く、抗酸化作用を持つリコペンが多いことを意味しています。

 

一年中おいしいイチゴがたべられる? -品種・栽培技術で周年生産を目指す-

東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 山崎浩道

naro_seminar_report20140312_09我が国のイチゴ生産の主体となる冬春期の促成栽培での多様なニーズに応えるため、農研機構ではビタミンC含量が収穫期を通じて安定して高く、平均的な大きさの果実約7粒で1日分のビタミンCが摂取可能な「おいCベリー」、モモに似た香りをもち、見た目も個性的で差別化が出来る「桃薫」などの品種を育成してきました。しかし、これらは冬春期がメインの品種であり、生産量が落ち込み高単価が期待できる夏秋栽培技術・品種の開発が望まれています。

イチゴが夏場に取れない原因として、高温条件下では花芽が形成されない、奇形果が多い、果実が小さいうちに着色してしまう、果実が軟弱で日持ちしない、等があげられます。この対策として「なつあかり」「豊雪姫」「夏の輝」など夏秋どり用品種の育成、株元を局所的に冷却して果実肥大を促進するクラウン温度制御技術、日長処理による花芽形成の促進等の栽培技術の開発を進めています。
これらの品種・技術を、夏期冷涼でイチゴ栽培に適した東北地域等に適用して生産拡大につなげていきたいと考えています。

 

カボチャの新品種~ホクホクおいしい「TC2A」と、大人気!タネを食べる「ストライプペポ」

北海道農業研究センター 水田作研究領域 嘉見大助

naro_seminar_report20140312_09カボチャの栽培で手間のかかる作業の一つに蔓の誘引・整枝作業があります。この作業が必要ない「短節間品種」は省力栽培に適していますが、食味が不十分で した。そこで、蔓は伸びるが食味に優れた「マサカリ」と交配して育成した「北海1号」に、さらに収量性のよい「BHA」を交配してセイヨウカボチャ 「TC2A」を育成しました。 「TC2A」は株元に着果しやすい特性をもち、「えびす」と比較して厚い果肉・高糖度・乾物率が高く、また果肉の色が濃く、マッシュ・ペースト等の加工 用にも適しています。

ペポカボチャには種に厚い殻がない系統があり、食用種子用として利用できます。この系統の中から、種子が多く付き蔓が伸びる「豊平1号」と、株元に着果する性質をもつが種子の収量が不安定な「豊平2号」をそれぞれ育成し、これを交配して既存の品種と比較して2倍以上の種子を収穫できる「ストライプペポ」を開発しました。おつまみやお菓子のトッピングとして利用されています。

 

変わりつつあるカンショでん粉:新品種「こなみずき」のでん粉の魅力

九州沖縄農業研究センター 畑作研究領域 高畑康浩

naro_seminar_report20140312_09カンショでん粉は、5万トン程度の生産量がありますが、粒子・粘度・透明度などの特性が、他の穀類・豆類のでん粉と比較して目立った特徴がないことから、主に糖化製品の原料に用いられ、用途が限られていました。そこで、特徴がある高品質なでん粉をもつ品種を育成し、用途の拡大、でん粉の高付加価値化を進めたいと考えていました。
でん粉が従来品種よりも20℃前後低い約50℃で糊化する形質が偶然発見され、このでん粉形質を受け継いだ青果用品種「クイックスイート」が育成されました。約50℃の糊化温度は、バレイショでん粉よりも低いものです。

ただしでん粉原料としての「クイックスイート」は、赤皮のためでん粉が着色しやすく、また青果用品種のため収量が低いという問題がありました。これらを改善したのが「こなみずき」です。
「こなみずき」のでん粉は、その糊化でん粉を冷蔵保存してもゲルの離水が少なく、保水性と柔らかさを維持できます。その優れた耐老化性を活かして、わらび餅などの和菓子の原料としての用途の他、水産練り製品など多くの食品にもっちり感やのどごしの良さを付加でき、「こなみずき」のでん粉で新たな付加価値の高い商品開発が可能となります。

 

パンや菓子に適した小麦の新品種

近畿中国四国農業研究センター 水田作研究領域 高田兼則

naro_seminar_report20140312_09温暖地向けパン用小麦新品種「せときらら」は、うどん用小麦品種「ふくほのか」をベースとして、製パン性向上に必要な種子の硬さ・グルテンの強度・伸びを改善した品種です。「ニシノカオリ」よりも3割「ミナミノカオリ」よりも2割多収になります。実需者の評価として、現行品と比べて色、味、香り、ミキシング、焼き伸び、成形のしやすさ等概して高評価が得られ、中華麺としても高評価をいただいているので、今後積極的に普及を進めていきたいと考えています。
超強力小麦品種「ゆめちから」は、中力粉とのブレンドにより強力粉のような特性を出す事が出来ることが一番の特徴になっていますが、その際、蛋白含量の多い品種とブレンドすることが必要です。アミロースの含量が低いので、もちもちした食感が特徴で、中華麺用としての適性や、パスタにも適性があり商品化が進められています。

寒冷地向けの菓子用小麦「ゆきはるか」は、菓子向け品質にターゲットを絞って育成された日本初の菓子用小麦品種で、従来の品種と比較して1割多収で、やや早生であり、80日までの根雪に耐え東北北陸での栽培に適します。蛋白含量が低く生地の力が弱く、色味の点からも菓子類の製造に適した品種です。
暖地向けの「ちくごまる」は、うどんのほか製菓用にも利用できる汎用性が高い西日本向けの品種です。農林61号で問題となっていた耐倒伏性が改善され、赤かび病、穂発芽、コムギ縞萎縮病に強くなっているので農林61号代替として西日本で普及していきたいと考えています。

 

美味しい米粉麺や菓子が製造できる高アミロース米「北瑞穂」・「越のかおり」

北海道農業研究センター 寒地作物研究領域 横上晴郁

naro_seminar_report20140312_09米のデンプンには直鎖状のアミロースと房状構造アミロペクチンの2種が有り、あわせると米重量のうち約74%を占めます。デンプンの中のアミロースの割合が低いほど粘りが強い特性を備え、0%だともち米になります。逆にアミロース含量が高いとパサパサになります。農研機構で育成した高アミロース米水稲品種「北瑞穂」と「越のかおり」はアミロース含有率が約30%を目標に育成した品種であり粘りが少なく、炊飯米には適しませんが、米粉クッキー、ライスパスタ、米粉麺といった米粉加工製品に向いています。

「北瑞穂」は米粉クッキーへの適性を調査した結果、サクサクして美味しいという評価が得られ、商品化されています。今後もリゾット等の粒食への利用、さらには高アミロース性による難消化性等の特性を活かした新たな商品開発が期待されています。
「北瑞穂」ライスパスタ(ショートパスタ)は「ゆきひかり」と比較して製麺時の作業性が良く、官能評価ではやや硬く食感が良いという評価を受けました。「越のかおり」の製麺特性は「コシヒカリ」と比較して、ベタつきが少なく高い評価が得られました。日本国内では米の麺は決してポピュラーなものではありませんが、東南アジアではごく一般的に食べられています。「北瑞穂」や「越のかおり」の米粉麺普及を通じて日本でも米粉麺の食文化が広まるきっかけになることを願っています。

 

低コスト生産に適した業務用米品種

作物研究所 稲研究領域 石井卓朗

naro_seminar_report20140312_09国民の食生活の変化により米の家庭内の消費量が減少している一方、中食・外食向け業務用米の需要は非常に高まっており、全消費量の3分の1程度を占めることから、農研機構でも品種育成に力を入れています。
業務用品種には3タイプあり、「コシヒカリ」に近い食味を備え1~2割多収(タイプI)、「日本晴」級の食味で3~4割多収(タイプII)、食味が著しく劣るが極めて多収(タイプIII)に分けることが出来ます。このうち今回は食用に用いられるタイプI・IIの品種を紹介します。
タイプIの品種として紹介するのが「あきだわら」で、「コシヒカリ」よりも倒れにくく3割程度多収になり安価で良質な品種として業務用米等の用途が期待できます。「ほしじるし」もタイプIの品種で、縞葉枯病抵抗性をもち、直播栽培にも適しています。

東北向けのタイプIとしては「萌えみのり」が挙げられます。倒伏しにくい特性があり、直播栽培でも減収しにくく、育苗が不要になる分、低コスト生産が可能になります。九州向けには「たちはるか」が挙げられ、「ヒノヒカリ」よりも20%多収になります。茎が太く、いもち病・縞葉枯病に強いことから農薬をまかなくても済むことで低コスト化につながります。
「やまだわら」はタイプIIの品種で、米飯食味は「日本晴」並みですが、多肥栽培では反収800kg以上の高収量が期待できます。
農研機構では業務用品種の開発を通じて日本の水田農業の活性化・活力を維持していきたいと考えております。

法人番号 7050005005207