広報活動報告詳細

2014年度 第1回農研機構産学官連携交流セミナー報告

情報公開日:2014年6月24日 (火曜日)

開催チラシ[PDF:385KB]

日時

平成26年5月27日(火曜日) 13時30分~16時30分

会場

日本教育会館(東京千代田区)8階第二会議室

 

とっておきの食品素材と加工技術 -試してみませんか 農研機構の新技術-

今回のセミナーでは、農研機構の最新の研究成果の中から、新しい食品素材及び食品加工技術を紹介しました。いずれも、「攻めの農林水産業」の展開に向けて、需要のフロンティア拡大や6次産業化の進展につながると期待される技術です。当日は、食品メーカーや県等の公立試験場、新聞・出版関係などから71名が参加されました。

 

 

発表内容

高アミロース米による新規食品素材「米ゲル」とその応用

杉山純一(食品総合研究所 食品工学研究領域)

炊飯米(ご飯)の消費が減少する中、米の需要拡大に向けて米粉が注目されています。しかし、従来の米粉には品質(日持ち、おいしさ)や生産・粉砕コストなどの面で課題があり、新しい加工技術や食品の開発が急務となっていました。
そこで、高アミロース米を原料としたゲル状の新規食品素材「米ゲル」を開発しました。「米ゲル」は、高アミロース米を製粉せずに粒のまま水を加えて炊飯・糊化させ、温度制御と高速撹拌等の操作でゲル状に加工します。製粉する工程がないため、低コストでの製造が可能です。また、水分量等の調整により、ゆるめのゼリーからゴムのような高弾性のものまで、幅広く物性を制御できます。そのためプリン、ムース、クリーム、パイ、コシのある麵、餅様食品など多様な食品の製造が可能で、アレルギー対策として小麦粉やゼラチンの代替として使用したり、卵・油脂等の使用量を減らした低カロリー食品に使用するなど、多様な用途が想定されます。さらに、経時変化(老化)が少なく、日にちが経過しても同じ質感を維持できるのも特徴です。

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GABA高含有チーズとチーズホエー飲料

野村 将(畜産草地研究所 畜産物研究領域)

牛乳生産者が自ら乳加工・販売までを行う6次産業化の動きが強まっていますが、それには特色のある乳製品による製品差別化が必要です。そこで、GABA高含有チーズとチーズホエーを用いた飲料の製造技術を開発しました。
GABA(γ-アミノ酪酸)は血圧降下作用などが報告されている機能性成分ですが、一般的なチーズにはほとんど含まれていません。新たに発見したGABA生成乳酸菌01-7株からは、100gあたり約200mgのGABAを含むチーズが製造できます。また、このGABA生成乳酸菌を配合したチーズスターターは、継代を繰り返しても菌株比率が維持されるため、GABA含量が高いチーズを安定して製造することが可能です。
チーズホエーはチーズ製造時に残る水分で、タンパク質やミネラルなどの栄養分が含まれていますが、捨てられてしまうこともあるのが現状です。そのため、チーズホエーの飲料化に向けて、ヨーグルト風飲料に加工することでホエー独特の匂いを抑えたり、口中の被膜形成感の要因となるβ-ラクトグロブリンを加熱除去するなどの工夫を行いました。本技術により製造したチーズホエー飲料は、さらりとした質感で深い味わいとコクがあり、脂肪分は通常のヨーグルトの約半分と低カロリーです。また、一般的な牛乳加工場にある設備で製造できるため、新たな設備投資も不要です。

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酵素による果実類の皮剥き加工

野口真己(果樹研究所 栽培・流通利用研究領域)

これまで果実類の皮剥き加工には、手剥きやナイフ剥皮、薬剤(酸アルカリ)剥皮などの方法が用いられてきましたが、作業性や剥皮果肉の外観・フレーバーなどに問題がありました。そこで、酵素処理による果実類の剥皮技術の開発を進めてきました。
カンキツの果皮に酵素液をしみこませると、果皮と果肉を容易に分離できるようになります。このとき15°Cの低温で処理することで、生の果実の風味や食感が維持されます。カキについては、酵素処理の前に食品用乳化剤処理と弱アルカリ沸騰水での加熱処理の工程を加え、様々な形状のカキを効率的に剥皮できるようにしました。刃物を使わないので剥皮面の細胞の破断、損傷が少なく、褐変やドリップ、栄養成分劣化を抑制できます。今後は、カットフルーツや果肉入りゼリー、ドライフルーツ、介護食などでの利用が期待されます。
本技術で剥皮した残渣についても様々な用途が考えられます。たとえばカンキツの外皮からは精油や香料、カロテノイド色素を抽出することができます。また、カキの剥皮残渣から得られる果皮細胞には、β-クリプトキサンチンが豊富に含まれており、機能性成分・栄養成分を強化する食品素材として利用可能です。

 

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交流高電界による果汁の高品質殺菌技術

植村邦彦(食品総合研究所 食品工学研究領域)

果汁製品の製造にあたっては、混入の可能性のある有害な微生物を死滅させて製品の安全性、保存性を向上させるとともに、原料に含まれる香気成分や有用な栄養成分の保持も必要となります。そこで、これらを同時に可能にする殺菌技術を開発しました。
交流高電界殺菌技術とは、陰極と陽極の距離1cmにつき1kV以上の電圧をかけた電極間に、液体食品を連続的に流すと、食品自体が瞬間的に発熱することに加えて、電気的な殺菌作用が生じ、食品中に混入した微生物が迅速に殺菌されることを活用したものです。
大腸菌などの栄養細胞に対しては、出口温度70°C程度の交流高電界処理により殺菌が可能です。一方、耐熱性を有する芽胞に対しては、出口温度が100°C以上になるよう交流高電界処理をした上で、1~2秒程度温度を保持すると失活させることができます。当技術と同程度の殺菌効果を有する従来の加熱殺菌法に比べると、材料が100°C以上となる時間が10分の1程度に短縮され、熱に弱いビタミンCやβカロテンなどの損失が少なくなります。
今後は、果汁以外の液体食品(お茶、牛乳、豆乳等)や粉体を除く固形食品(レトルト食品、真空パック食品)への応用の他、酵素の失活にも優れた性能を発揮することを生かした幅広い応用が期待されます。

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コミュニケーションタイム

発表の後には、約1時間のコミュニケーションタイムを設定しました。研究成果を紹介したパネルや実物展示を前に、発表者と参加者が名刺交換や質疑応答を行い、活発な意見交換の場となりました。

法人番号 7050005005207