プレスリリース
穀物乾燥機の省エネルギー性能評価試験方法を確立

- 「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の性能評価に採用 -

情報公開日:2014年4月15日 (火曜日)

ポイント

  • 穀物乾燥機のエネルギー消費量を型式間で公平に比較可能な試験方法を確立しました。
  • 乾燥開始時のもみ水分の違い、乾燥試験中の雰囲気温湿度の違いがあっても、本評価試験方法に従って試験データを補正することで、再現性の高いエネルギー消費量を求めることができます。
  • 型式間の比較試験データはユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い機械の普及に繋がります。

概要

農研機構は、穀物乾燥機の省エネルギー性能を評価する試験方法を確立しました。

本評価試験方法は、コンバインで収穫したもみを実際に乾燥し、得られる結果を基にエネルギー消費量を算出します。穀物乾燥機の消費エネルギーに大きく影響を及ぼすと考えられる乾燥開始時のもみ水分や雰囲気温湿度は条件を揃え乾燥試験を行うことは困難であり、乾燥試験で消費されるエネルギーをそのまま型式間の比較データとして用いることはできません。本評価試験方法では、乾燥開始時のもみ水分の違いには消費エネルギーの評価区間を設定することにより、雰囲気温湿度の違いには基準となる温湿度を設定し、試験時との差に基づいて補正することにより、再現性の高いエネルギー消費量を求めることができます。型式間の比較が可能なエネルギー消費量を算出することにより、ユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い穀物乾燥機の普及に繋がります。

平成25年度から一般社団法人日本農業機械化協会が開始した「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の評価試験方法として採用されています。

関連情報

予算:運営費交付金


詳細情報

開発の背景と経緯

温室効果ガスによる地球温暖化や化石燃料の有限性といった社会的な問題や、化石燃料、電気代の値上がりといった問題等から、様々な分野で省エネルギー化の要望は高まっています。自動車や家電製品では、それぞれ定められた評価試験方法にしたがって測定が行われ、〇〇km/L、〇〇kWh/年といった省エネルギー性能の目安となる数値が表示され、ユーザーが購入する際の有益な情報となっています。

一方、農業機械においては、近年までこうした省エネルギー性能の目安となる数値を測定・表示できる評価試験方法は確立されていませんでした。こうした中、平成21~22年度に農林水産省補助事業として「農業機械省エネルギー性能評価方法確立事業」が実施され、機関出力22~29kW(30~40PS※1)の乗用型トラクターと10t以下の穀物乾燥機が省エネ性能評価試験の対象となりました。

生研センターは、この事業の中で省エネルギー性能の目安となる数値が得られる評価試験方法の作成を担当し、平成23年度から生研センターの研究課題として評価試験方法の確立に取り組んできました。

評価試験方法の概要

  • コンバイン収穫したもみ(24~26%w.b.※2程度)を実際に乾燥して消費されるエネルギーを測定し、それを雰囲気(乾燥機の空気取入口付近)温湿度に基づいて補正し、もみに含まれる水1kgを蒸発させるために必要なエネルギー(MJ/kg)(エネルギー消費量)を算出する方法です。
  • 測定項目は、時々刻々変化するもみ質量、灯油消費量、雰囲気の温湿度、電力消費量、および乾燥開始時と終了時のもみ水分です。
  • もみ水分が22%w.b.から15%w.b.まで乾燥する間を消費エネルギーの評価区間としました。22%w.b.、15%w.b.となる時刻は、乾燥終了時のもみ質量ともみ水分から絶乾質量を算出することで、各もみ水分時のもみ質量を推定でき、もみ質量変化の時系列データから求めます。
  • 乾燥試験における実際のエネルギー消費量は、灯油消費量と真発熱量から求める熱エネルギー(P)、消費電力量から求める電気エネルギー(Q)およびもみ質量変化から求める蒸発水量(R)から求められます(図1)。試験時の雰囲気条件に基づく補正エネルギー量は、基準となる雰囲気温湿度(20°C-65%)を設定し、それに対する試験時の温湿度の差から求められ(図2のS)、補正を行ったエネルギー消費量は(P+Q+S)/Rにより求められます。
  • 3型式を供試した例では、乾燥開始時のもみ水分や雰囲気温湿度など条件が異なった場合には同一型式でも14~19%とエネルギー消費量は大きなばらつきが生じますが、本試験方法によって推定したエネルギー消費量では2~3%程度に留まり、推定結果は良好でした(表)。

今後の予定・期待

  • 平成25年度から一般社団法人日本農業機械化協会が実施した「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の評価試験方法として提案し、採用されました。
  • 型式間の比較が可能となることで、ユーザーが購入する際の有益な情報となり、省エネルギー性能の高い穀物乾燥機の普及に繋がります。

用語の解説

※1 PS:馬力を表す単位で、1馬力は約0.735キロワット(1PS=0.735kW)。日本では内燃機関などに限り使用が認められ、記号PSを用いる。
※2 %w.b.:穀物等の材料水分の程度を表す一般的な表し方で、湿量基準の水分率を表す。固体全重量(乾燥固体+水分)に対する固体中にある水分重量の割合。

 

各測定項目の経時変化とエネルギー消費量の求め方試験時の雰囲気温湿度に基づく補正エネルギー(S)乾燥試験と消費エネルギー補正実施の結果