プレスリリース
散布ムラの少ない温室内の無人防除を実現

- 静電散布とエアアシストを組み合わせた防除機を開発 -

情報公開日:2015年11月10日 (火曜日)

ポイント

  • 静電気と風の力を利用した散布装置により、手散布と同程度の散布ムラの少ない防除作業が可能

概要

農研機構、株式会社やまびこ、みのる産業株式会社は、農業機械等緊急開発事業(以下、緊プロ事業)において、温室内における農薬散布作業を無人で行い、散布ムラが少なく、防除効果の高い防除機を開発しました。

開発機は、農薬の噴霧粒子に静電気の力を付加して作物体への付着性能を向上させる静電散布と、噴霧方向に風を送るエアアシストの技術とを組合せた構造となっており、作物列の間(以下、畦間)を自動的に往復散布できます。このため、農薬被曝量や労働負担を大幅に低減するとともに、手散布と同等に散布ムラの少ない防除作業が行えます。

これまでに、埼玉県農業技術研究センター、静岡県農林技術研究所、千葉県農林総合研究センター、宮崎大学の協力の下、キュウリ、メロン、トマト栽培における防除試験を行った結果、開発機は慣行の手散布並みの防除効果を得ることができ、また、面積あたりの散布量の削減の見通しも得ました。

現在、開発機を用いた実証試験を通じて実用化に向けた最終の課題抽出を行っており、来年度以降の市販化を予定しています。

 

関連情報

予算 : 運営費交付金

特許 : 特願2013-70741

 

詳細情報

開発の背景と経

園芸施設では、近年、大規模化が進んでいること、さらに閉鎖された高湿度下の空間内ということもあって露地栽培よりも病害虫の大量発生を招きやすいこと等により、農薬散布作業が頻繁に行われています。慣行作業の多くは、作業者が自ら噴霧ノズル等を持って歩行しながらの手散布が行われており、栽培面積の拡大とともに労働負担の大きい作業の一つです。一般に防除作業は、農薬被曝を避けるため、カッパ、手袋、マスク、ゴーグルなどを装着して行うことが多く、高温・多湿となる真夏のような環境下ではさらに厳しい作業となります。

そこで、農研機構生研センターでは、1)静電気の力で対象作物に薬液を効率よく付着させる、2)作物の群落内部にも薬液が届き、散布ムラをより少なくして防除効果を高めるエアアシストを行う、さらに、3)重量バランス等を考慮した台車で作業者の農薬被爆を軽減するため自動走行させる、といった3つの技術を組み合わせたエアアシスト式静電防除機の開発に取り組んできました。2年間の基礎研究を経て、平成24年度から緊プロ事業として開発を進めています。

 

開発機の概要および性能

  • 開発した無人防除機(以下、開発機)は、自動走行台車、静電噴口部、およびエアアシスト部から構成されます(図1)。
  • 自動走行台車は、全長130cm、全幅45cm、質量135kgであり、バッテリ(24V)駆動により畦間を畦に追従しながら0.2~0.8m/sの作業速度で自走します。往路、復路とも畦間を自動散布し、散布が終われば作業者が枕地で手動操作により次の畦間に移動させます。
  • 静電噴口部は、噴霧粒子に静電気を付加する機構を有した静電噴口を片側5頭口ずつ支柱に装備しており、自動走行台車に搭載して、機体両側から作物に向けて薬液を散布します。散布の高さは、対象作物の地上高に応じて支柱の長さを可変できます。
  • エアアシスト部には、各静電噴口の間にエアアシストノズルを配置しており、自動走行台車に搭載したエアポンプからの圧縮空気を噴出します。その圧縮空気の流れによって、静電噴口から噴霧された薬液が作物の群落内部へ到達する力をアシストします。
  • 慣行の手散布に対する開発機の防除効果を知るため、ウドンコ病※1を対象とした防除試験を行い防除価※2を比較しました(表)。キュウリ栽培試験区では、開発機の防除価は、手散布の防除価とほぼ同等の値でした。また、メロン栽培試験区では、手散布での防除価が低かった栽培条件を対照区にして行いましたが、開発機の防除価は手散布と同等以上の値を示しました。さらに、トマト栽培試験区では、慣行散布量において開発機の防除価は手散布と同程度であり、10a当りの散布量を20%削減しても開発機の防除価は高い値を維持しました。

以上の試験結果から、開発機は手散布と同程度の防除効果であることが確認され、開発機は手散布と同等に散布ムラの少ない防除作業が可能であると判断されました。

 

今後の予定・期待

園芸施設においては開発したエアアシスト式静電防除機を用いることで、慣行の手散布並みの防除効果を維持しつつ、無人で防除作業が可能となります。このため、手散布では難しい農薬被曝の回避や軽労化につながります。また、条件によっては、散布量の大幅削減につながると期待されます。

現在、福島、千葉、広島等の園芸施設の栽培現場において、開発機の実用性を検証する実証試験を行っています。今後は、それらの実証試験を経て、開発機の取扱い性や耐久性等の問題点を整理・改良し、早期の実用化を図っていく予定です。

なお、アグリビジネス創出フェア2015(平成27年11月18日~20日、東京ビッグサイト)において、パネルと動画で概要をご紹介します。詳しくは、下記のウェッブサイトの開催案内をご覧下さい。

アグリビジネス創出フェア2015ホームページ:

http://agribiz-fair.jp/detail.php?id=1895

 

用語の解説

※1 ウドンコ病
名前の通り、うどんの粉のような白い粉が葉や茎に発生する病気です。気温が高く乾燥気味の状態で増え、進行すると光合成を阻害するので、生育が抑制されてしまいます。

※2 防除価
ある病気に対して、実際にどの程度、薬の効果があったかを表す指標です。0が全く効果の無かった場合、100が完全に病気を抑えられた場合です。100が最も良い数値を示します。

 


図1 開発したエアアシスト式静電防除機


図2 キュウリ栽培におけるエアアシスト式静電防除

図3 トマト栽培におけるエアアシスト式静電防除

表 防除効果の例