プレスリリース
さわやかな風味をもつカンキツ新品種「はるひ」

- 「日向夏」に先駆け2月から食べられる品種を育成 -

情報公開日:2010年2月22日 (月曜日)

ポイント

  • 「日向夏」に似たさわやかな風味のカンキツ新品種「はるひ」を育成しました。「日向夏」より早く収穫でき、糖度も高く、食味に優れた中生品種です。

概要

農研機構果樹研究所【所長 福元將志】は、さわやかな風味を持ったカンキツ新品種「はるひ」を育成しました。

「はるひ」は露地で2月頃に成熟期を迎える中生品種です。果実は150g程度で、果皮は橙黄色で剥きやすいのが特徴です。「日向夏」に似たさっぱりとした透明感のある香りが特徴的で、糖度も高く食味に優れており、今後の普及が期待されます。


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

カンキツの果皮色には黄色、橙色、赤橙色などがあり、香りにもオレンジ様、レモン様、ユズ様などの多くの種類があり、それぞれの品種の特徴となっています。例えば、「日向夏」は、黄色の果皮色と他の品種にはないさわやかな風味が特徴となっています。しかし、成熟期が3月中旬以降と極めて晩生であることや、じょうのうの硬さなど改良すべき点がありました。そこで、「日向夏」由来のさわやかな風味を持ち、「日向夏」より早熟で、剥皮性のよい良食味品種の育成を目指し、食味が優れるオレンジタイプの「カンキツ興津46号」を種子親に、「日向夏」に由来するさわやかな芳香・風味を持つ「阿波オレンジ」を花粉親として交雑を行いました。

新品種「はるひ」の特徴

  • 樹勢は中位で、樹姿は開張となります。枝梢は太く、長く、枝梢の密度は中程度からやや粗い傾向があります(表1)。
  • 果実の形は扁球形から球形で、果実重は150g程度になり、「日向夏」と同等です。果皮は橙黄色で剥きやすいのが特徴です(表1、図1、図2)。
  • 「日向夏」よりも果皮の着色や減酸が早く、2月頃に成熟し、果肉は柔軟多汁です。日向夏に似た芳香があり、糖度は13%程度と高く、食味は 良好です。隔年結果性は中程度で、結実性は良好です(表1)。
  • かいよう病およびそうか病には抵抗性があります。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生程度は中程度です。
  • 2月頃に成熟するため、冬季温暖な地域での栽培が適しています。
  • 施設栽培では、種なし果実を生産できることがわかっています。今後、安定した種なし果実生産技術の開発が期待されます。

はるひの果実
図1 「はるひ」の結実状況

図2 はるひの栽培状況
図2 「はるひ」の果実

表1 「はるひ」の樹性および果実特性

品種の名前の由来

春の日の光のように優しい橙黄色で、甘くさわやかな食味をイメージしています。

また「日向夏」に似ていますが、それより早熟で初春より美味しく食べられるという点の「ハルヒュウガナツ」から「はるひ」と命名しました

種苗の配布と取り扱い

平成21年10月13日に品種登録出願(品種登録出願番号:第24210号)を行い、平成21年12月24日に品種登録出願公表されました。

お問い合わせ先

果樹研究所 企画管理部 運営チーム Tel 029-838-6438

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係 Tel 029-838-7390 Fax 029-838-8905

用語の解説

日向夏
1820年頃、現在の宮崎県で発見された品種で、晩生で独特の爽快な風味を持ちます。ユズと近縁であると考えられています。

阿波オレンジ
徳島県が「日向夏」に「トロビタ」オレンジを交雑して育成し、1985年に品種登録した晩生の品種です。「日向夏」に似た風味を持ちます。

ステムピッティング
幹(ステム)の木質部に発生するくぼみ(ピッティング)のことで、カンキツトリステザウイルスに感染することで発症します。

じょうのう
カンキツの果肉(さじょう)を包んだ三日月型の袋のことです。

隔年結果性
たくさん果実のなる表年(おもてどし)と結実の少ない裏年(うらどし)を交互に繰り返す現象のことです。カンキツではほぼ全樹でみられ、その程度や強弱が問題となります。

そうか病
糸状菌(かび)の一種によって引き起こされる病害で、葉や果実の表面に、イボ状に隆起する「イボ型」やかさぶた状の「そうか型」の病斑ができます。発芽期から4月中旬ごろまでに降雨が多く、日照不足となると発生が多くなります。

かいよう病
細菌の一種によって引き起こされる病害で、葉や果実に発生します。水浸状の病斑ができ、中央部の表皮が破れコルク化し、その周囲が黄色くなり、発病が激しいと落葉します。果実に発生すると、外観が悪くなるため、商品価値が著しく低下します。