プレスリリース
栽培しやすく、大果で中生のカキ新品種「太月(たいげつ)」を育成

情報公開日:2007年10月 3日 (水曜日)

要約

果樹研究所では、カキの生産・消費の拡大に向けて、栽培しやすく、大果で中生のカキ新品種「太月」を育成しました。本品種は、東北地方南部以南のカキ生産地で栽培が可能で、現在の主力カキ品種の「富有」より多収です。渋ガキですが、渋を抜いたのち、甘ガキと同様に流通することが可能です。

本品種により、中生の時期におけるカキ生産が進むことが期待されます。


詳細情報

背景とねらい

栽培されている主要なカキの品種は、「富有」、「次郎」、「平核無」およびそれらの枝変わり品種であり、カキ品種には広い多様性があるにもかかわらず、消費されているカキは少数の品種に限られています。近年、「富有」や「平核無」などの生産・消費は減少しつつあり、より多様なカキの品種が望まれています。また、市場では大果のカキの評価が高くなっています。

そこで、栽培しやすく、大果のカキの新品種を育成しました。

成果の内容・特徴

  • 「太月」は、「平核無」と同時期またはやや遅い時期に成熟する中生の渋ガキ品種です。果形はやや扁平であり、果実重は著しく大きく「平核無」の約1.7倍で、育成地では平均447gになります(表1)。果皮色は橙黄色です。
  • 糖度は14.6%程度で、「平核無」と同程度です。適熟果の肉質はやや粗いが軟らかく、多汁です。
  • 炭酸ガス脱渋(CTSD脱渋:炭酸ガス100%・26°Cで1日、その後、26°Cの空気中で2日)により脱渋します。日持ち性は長くない品種です。果頂裂果・へたすきはほとんど発生しません。条紋が発生しやすい特性があります。条紋が著しく発生した果実は軟化しやすく、脱渋に適しません。
  • 樹勢は強く、樹姿は開張します。雌花の着生は多く、雌花の開花期は「平核無」より11日程度遅い時期です。雄花はごくわずかに着生することがあります。単為結果力が強く、受粉樹は不要で、結実は安定しているなど栽培しやすい品種です。収量性が高く、10aあたり3t以上の生産が可能と見込まれます。
  • 東北地方南部以南のカキ生産地で栽培が可能です。

品種の名前の由来

大きい円形の果実のカキの意。

図1 「太月」の果実1 図1 「太月」の果実2
図1 「太月」の果実(育成地:安芸津、2006年11月)

表1

用語解説

単為結果力
種なし果実が結実する力

受粉樹
結実を良くするために植える、雄花が多く着く別品種の樹

へたすき
へたと接している部位の裂果

条紋
果皮に生じるすじ