プレスリリース
かいよう病に強く、大果で酸味がまろやかな レモン新品種「璃の香(りのか)」

- 国産レモンの生産拡大に新品種「璃の香」開発 -

情報公開日:2014年5月23日 (金曜日)

ポイント

  • かいよう病に強く、豊産性のレモン品種を育成しました。

  • 従来のレモン品種より果実が大きく酸味がまろやかなうえ、搾汁率が高く果汁製品など幅広い加工用途が期待できます。

概要

  • レモンはカンキツの中でもかいよう病1)に弱く、国内の生産地を制限する要因の一つとなっています。そこで、農研機構は、かいよう病に強く、豊産性のレモン新品種「璃の香(りのか)」を育成しました。
  • 「璃の香」の果実は従来のレモン品種に比べ、200g程度と大きく、約1ヶ月早い11月下旬頃から成熟果実が収穫できます。また、果皮が薄く、まろやかな酸味が特徴です。
  • 果肉の割合や搾汁率2)が高く、加工適性に優れ、まろやかな酸味を生かした多様な加工製品の開発と、国産レモンの生産拡大が期待されます。

予算:運営費交付金
品種登録出願番号:第 28741 号


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

安全・安心を求める消費者のニーズが高まり、国産レモンの生産量が拡大しています。しかし、レモンはかいよう病に弱いため、かいよう病発生の危険性が少ない瀬戸内地方など温暖で降水量の少ない地域に生産が限られています。レモン生産拡大のためには、かいよう病に強い品種が必要です。また、「果汁の多さ」、「酸味のまろやかさ」や「種がない」などの加工適性の改良も求められています。そこで、かいよう病抵抗性で加工適性に優れた新たなレモン品種として「璃の香」を育成しました。

新品種「璃の香」の特徴

  • 育成地(果樹研究所カンキツ研究興津拠点:静岡市)および全国のカンキツ生産地での試作試験における通常の防除のもとでは、一般のレモンに比較して、かいよう病の発生程度は明らかに低く、強い抵抗性を示します(図1)。
  • 樹勢は強く、枝は直立性で、トゲの発生は少ない品種です。そうか病3)の発生もほとんど見られません。着花数は多く、隔年結果性4)が低く、豊産性で安定した生産が期待されます。成熟果実の収穫期は11月下旬であり、既存品種のリスボンレモン5)やマイヤーレモン6)より1ヶ月程度早く熟します(表1、表2)。
  • 果皮色は緑黄~橙黄で、果面は滑らかです(表3、図2)。剥皮のしやすさは、リスボンレモンより優れており、手で剥くことができます。果皮の厚さは3mmとリスボンレモンやマイヤーレモンより薄く、香りはやや少ない品種です。果実の大きさは200g程度と既存の品種より一回り大果です。また、果肉歩合は79%、搾汁率は50%とともに高く、既存の品種より歩留まりが高く、加工適性に優れると考えられます。果汁の糖度は9.2%で、酸含量は5.6%程度と、リスボンレモンと比べてまろやかな酸味が特徴です。種子はリスボンレモンやマイヤーレモンに比べ少なく、種なし果も結実します(図3)。


育成地および全国カンキツ生産地24か所の試験研究機関で試験栽培した「璃の香」のかいよう病発生程度
図1 育成地および全国カンキツ生産地24か所の試験研究機関で試験栽培した
「璃の香」のかいよう病発生程度(2011~2012年)


表1 「璃の香」の樹性、病害抵抗性、結実性および成熟期
「璃の香」の樹性、病害抵抗性、結実性および成熟期
(果樹研究所カンキツ研究興津拠点、2010~2012年)

表2 「璃の香」の収量性
「璃の香」の収量性
(果樹研究所カンキツ研究興津拠点)
璃の香:高接ぎ7)樹(2013年度で高接ぎ6年目および7年目)2樹の平均
リスボンレモン:カラタチ台(2013年度で19年生)2樹の平均


表3 「璃の果」の果実特性
「璃の果」の果皮特性
「璃の果」の果実特性
(果樹研究所カンキツ研究興津拠点、2010~2012年)
-:未調査
「璃の香」は11月20日、マイヤーレモン、リスボンレモンは12月20日に調査分析した
 


「璃の香」の果実
図2 「璃の香」の結実の状況

「璃の香」の果実
図3 「璃の香」の果実

 

 

栽培上の留意点

樹体には寒害の発生は認められませんが、果実は既存品種と比べ果皮が薄いため、一部の試験地では寒さによる果皮障害の発生が認められています。そのため、適期収穫に努める必要があります。また、豊産性ですが、果実を成らせすぎると樹勢の低下を引き起こすので注意が必要です。

今後の予定・期待

「璃の香」は、試作試験において神奈川、三重、和歌山、広島、香川、長崎、宮崎、鹿児島の各県で有望と評価されており、全国的に普及が進むと見込まれます。

品種の名前の由来

「璃」は「宝」あるいは「ガラス」「水晶」という意味で、「璃の香」はこの品種のもつ透明感やすっきり感のある香りを表している。

種苗の配布と取り扱い

平成26年5月15日に品種登録出願公表されました。苗木は平成27年秋季より販売される見込みです。
お問い合わせ先:農研機構果樹研究所 企画管理部 運営チームTel 029-838-6443

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
  Tel029-838-7390          Fax 029-838-8905

用語の解説

1)かいよう病
細菌により引き起こされるカンキツの最重要病害です。とげ等による傷口から感染し、かさぶた状の病斑をつくり、ひどい場合は落葉します。現在のところ効果的な薬剤がないため発生の予防対策に努めることが重要となります。

2)搾汁率
搾った果汁量(重量)の全果実重に対する割合のことといいます。この割合が高いほど、果汁原料としての効率がよいと言えます。

3)そうか病
糸状菌(カビ)により引き起こされるカンキツの重要病害の1つです。果実表面にかさぶた状の病斑が出て、果実品質を大きく損ないます。春先からの殺菌剤による防除で発生を抑えることができます。

4)隔年結果性
成り年(表年)と不成り年(裏年)を交互に繰り返す特性のことをいいます。生産量の年次変動を大きくする要因で価格に大きな影響を与えるため、隔年結果性は低い方が望ましいです。

5)リスボンレモン
レモンの主要品種の1つで、樹勢が強く豊産性です。またレモンの中では耐寒性が強く、我が国に最も適したレモンです。

6)マイヤーレモン
レモンとオレンジもしくはマンダリンとの自然交雑種と考えられています。一般のレモンに比べ果皮は滑らかで、橙色が濃く、香りはやや弱く、酸味がやや少ない特徴があります。

7)高接ぎ

接ぎ木する位置に基づいて分類された接ぎ木法の一つで、ある程度成長した樹の主枝、側枝などに接ぎ木する方法のことをいいます。結実開始が早く、早期からの収量確保が見込めるため主に品種更新などの目的で行なわれます。

8)インライン搾汁

果実をそのまま1個ずつカップに入れ、果実の下に穴を開けて、上部から同型のカップで圧搾し、果汁を得る全果搾汁方式です。全果搾汁方式なので剥皮工程が不要なため搾汁効率が極めて優れています。

法人番号 7050005005207