プレスリリース
ばれいしょ新品種「紫月(しづき)」

- 紫皮・淡黄肉色の青果用ばれいしょ新品種 -

情報公開日:2013年2月 8日 (金曜日)

ポイント

  • 紫皮・淡黄肉色の青果用ばれいしょの新品種を育成しました。
  • 「男爵薯」で発生することがある中心空洞1)褐色心腐2)などの発生がほとんどありません。
  • 煮くずれが少なく、調理後の変色も少ないため煮物料理に適しています。

概要

農研機構 北海道農業研究センターは紫皮で黄肉色の青果用(以下、一般調理用)ばれいしょ新品種「紫月」を開発しました。この品種は皮の色が紫色で、球形のいもができる特徴のある品種です。肉色は淡黄色で、切断面が満月をイメージさせるため「紫月」と名前をつけました。「男爵薯」で発生する中心空洞や褐色心腐などの生理障害の発生がほとんどなく、家庭菜園でも栽培し易い品種です。また、煮くずれが少なく、調理後の変色も少ないため家庭での調理に適しています。本品種は、ばれいしょ消費拡大と北海道での生産振興へ貢献することが期待されます。

予算:運営費交付金(平成12~22年度)
品種登録出願番号:第27124号

本資料は、道政記者クラブ、札幌市政記者クラブ及び農業技術クラブに配付しています。


詳細情報

「紫月」開発の経緯

近年、農産物直売所では、定番の「男爵薯」や「メークイン」と共に、カラフルポテト、赤皮など特徴のある品種が人気を集めています。また、家庭菜園用の種いもの販売が増加しています。こうした状況のなか、種いもを販売する種苗会社からは、多様な特徴を持つ品種のラインアップを増やしたいとの要望が寄せられていました。
そこで、外観に特徴を持たせつつ、栽培しやすさ、特に生理障害の発生が少ないことに留意して選抜・育成を進めてきました。

ばれいしょ「紫月」の特性

栽培上の特性

  • いもの形は球形で表皮は紫、肉色は淡黄色です(表1、写真)。(表1、写真)
  • 褐色心腐、中心空洞、二次生長3)などの生理障害が非常に少ないです(表1)
  • 枯ちょう期4)や規格内いも重5)などは「男爵薯」並です(表1)

調理形質

  • 調理後の黒変は「男爵薯」より少なく、肉質はやや粘質で、舌触りが滑らかで、食味は「男爵薯」並に優れます(表2)

品種の名前の由来

いもの形状が球形で切断面が円形になり、肉色が淡黄色であることから満月をイメージし、皮色が紫であることから紫をつけ、紫月と名付けました。

今後の予定・期待

平成25年に農林水産省による品種登録出願公表が行われました。現在、独立行政法人 種苗管理センター6)において種いもを増殖中で、平成27年度から本格的な一般栽培が始まる予定です。
収穫してうれしい、見て楽しい、食べておいしい「紫月」が、ばれいしょの新たな消費需要を掘り起こすことを期待しています。

用語の解説

中心空洞
いもの中心部に裂けたような空洞ができる生理障害。いもの急激な肥大や地温が高い時の水分不足などにより発生する。

褐色心腐
いもの中心部や周辺部に褐色や淡褐色の斑点が見られる生理障害。いもが肥大する時期に高温や乾燥にあうことで発生する。

二次生長
いもが大きくなる時期の温度や土壌水分の急激な変化により、いもの形が変形する症状。

枯ちょう期
茎葉がほとんど枯れた日。

規格内いも重
60g以上260g未満のいもの重量。青果用として用いられるM~2Lサイズに相当し、この範囲内のいもの収量が青果用品種として重要視される。

独立行政法人 種苗管理センター
品種登録出願された品種が新品種であるかどうかを判定するための栽培試験、品種保護対策、優良種苗の生産と配布を行う機関で、ばれいしょについては、原原種(種いもの元となるいも)の生産を行っている。この原原種が種苗生産組合などで栽培され一般販売される種いもとなる。

上いも平均重
Sサイズ(20g)以上のいもの1個平均重量。

規格内標準比
「男爵薯」を100とした比率。

でん粉価
いもに含まれるでん粉の割合(%)。比重により算出。加工用やでん粉原料用のいもでは重要視される項目で、取引価格に反映される。

表1 「紫月」の農業特性(芽室町:平成17~22年)

表2 「紫月」の調理形質(芽室町:平成17~22年)

写真  「紫月」の地上部(左)と塊茎(右)