プレスリリース
(研究成果) 水田のあぜ道で使えるリモコン式草刈機を開発

- 一定条件下では自動走行も可能、作業環境を大きく改善 -

情報公開日:2017年3月 3日 (金曜日)

ポイント

  • 遠隔操作により、水田のあぜ道や路肩の斜面の草刈り作業が行えます。
  • 障害物がない、比較的平坦など一定条件を満たすあぜ道では、自動走行が可能
    です。
  • 作業の大幅な軽労化、および安全性の向上が期待できます。

概要

農研機構と株式会社ササキコーポレーションは共同で、水田のあぜ道などで使える、リモコン式の電動式草刈機を開発しました。

水田のあぜ道などにおける除草作業は、エンジン式の刈払い機(肩掛け式・背負い式)や、エンジン式の草刈機(自走式)を人が直接操作して行うことが一般的ですが、雑草の生育が旺盛な夏季の高温期に繰り返し行わなければならないことから、作業者の労働負担が大きく、軽労化が求められています。

開発した電動式草刈機(以下、開発機)は、排ガスを出さずに、水田においてあぜ道や、路肩などの整備された斜面での草刈り作業を、無線リモコンによる遠隔操作によって行えます。さらに、一定条件下のあぜ道*では、あぜ道に沿った自動走行**が可能です。

自動走行による草刈り

*途中に障害物が無く、比較的平坦で直線的、十分な強度を持つあぜ道。
**スタート、ストップの指示は行う必要があります。

現在使用されている刈払い機・草刈機と比較して、作業の大幅な軽労化、および飛び石や作業機の反発等の危険回避による、安全性の向上が期待できます。

今後、稼働時間の拡大や耐久性など量産化に向けた検討を行い、平成30年度に市販化する予定です。

関連情報

予算 : 農業機械等緊急開発事業
運営費交付金
特許 : 特許出願済

詳細情報

背景と経緯

田のあぜ道などにおける除草作業は、エンジン式の刈払い機(肩掛け式・背負い式)や、エンジン式の草刈機(自走式)を人が直接操作して行うことが一般的ですが(写真1右)、雑草の生育が旺盛な夏季の高温期などに数日間連続して繰り返し行わなければならないことから、作業者の労働負担が大きく、軽労化が求められてきました。また、刈払い機や自走式草刈機には、高速回転する刈刃が使われているため、飛び石や作業機の反発等による危険が伴い、作業者はエンジンの振動を直接受けることや排ガス、作業時に発生する土埃等にも曝されることから、作業環境の改善も必要となっていました。

そこで農研機構では、株式会社ササキコーポレーションと共同で、リモコンによる遠隔操作で水田のあぜ道や路肩の斜面の草刈り作業が行える、電動式草刈機を開発しました。また、現地実証試験については、岩手県の協力を得て実施しました。

内容

  • 水田や転換畑において、あぜ道や、路肩などの整備された斜面での草刈り作業を、無線リモコンによる遠隔操作によって行える電動式草刈機を開発しました(写真1左、表1)。あぜ道(上面幅50cm以上)および斜面(傾斜角32°以下)における草刈り作業が可能です。
  • さらに、途中に障害物(石、溝、杭、廃棄物等)が無く、比較的平坦で直線的かつ十分な強度を持つあぜ道(上面幅50cm以上、高さ30cm以上、斜面部分の傾斜角60°程度)では、あぜ道に沿った自動走行(写真2;ただしスタート、ストップの指示は必要)が可能です。
  • 開発機は、現在一般的に使用されている草刈機と比較し、刈取精度、作業速度は同等です。また、作業者は遠隔操作(無線リモコン)により機体から離れて作業できるため、飛び石や作業機の反発等を受ける危険性が減少します。さらに、岩手県における実証試験において、遠隔操作での作業の際、市販機よりも作業者に与える騒音・排ガス・振動の影響が小さいことを確認しました(表2)。

今後の予定・期待

開発機は、遠隔操作や自動走行機能を備えていることから、草刈り作業における作業負担の軽減や作業環境の改善(安全性の向上)が期待できます。

また、平成30年度に市販化予定です。なお、実用性の向上を目的として、市販機の稼働時間を拡大するため、バッテリ等の改良を検討する予定です。

写真1 開発機を用いた遠隔操作による作業の様子

写真2 自動走行による草刈り, 表1 開発機の主要諸元

表2 開発機による草刈り試験結果