プレスリリース
(研究成果) 高速高精度汎用播種機を開発中

- 1台で稲、麦、大豆、そば、トウモロコシ、牧草など様々な作物に対応 -

情報公開日:2017年9月 8日 (金曜日)

ポイント

作業速度5～10km/hでの高速播種が可能です
これまでは困難だった稲乾田直播での高速点播が可能です
稲、麦、大豆、そば、トウモロコシ、牧草など様々な作物の播種に適応可能で、不耕起栽培¹⁾にも対応できます。さらに、牧草の簡易更新²⁾にも利用できます

概要

農研機構とアグリテクノ矢崎株式会社は、高速高精度汎用播種機を共同で開発しています。
開発中の播種機は、トラクタ搭載型の作業機で、従来の播種機では困難であった稲乾田直播での複数粒の高速点播が可能です。稲の他に麦、大豆、トウモロコシ、ソルガム等幅広い作物の播種も可能であることに加え、不耕起栽培でも使用できます。作業速度は、稲、麦、そばでは従来のディスク式不耕起播種機の約2倍となる5～10km/hでの高速播種が可能です。

本開発機を利用することで作業コストの低減が図られ、規模拡大や複合経営に貢献できます。平成29年10月26日に現地検討会を開催し、生産者や関係する皆さまと意見交換の場を持つこととしています。

平成31年の実用化を目指しています。

詳細情報

背景と経緯

担い手への農地の集積が進む中、生産現場では一層の作業の高速化や省力化、高精度化が求められています。平成26年、農林水産省が行った「新たに開発してほしい担い手向けの農業機械に関する調査」では、「速度を現行国産機の2倍に」、「稲乾田直播で点播が可能に」、「不耕起栽培に対応」など播種機開発への要望が多数寄せられました。
そこで農研機構では、稲、麦、大豆等の多様な作物に適応するとともに、作業速度が速く、点播が可能で、不耕起栽培にも適応可能な播種機の開発に着手しました。平成27年度から、緊プロ事業としてアグリテクノ矢崎株式会社と共同で進めています。最終年度となる今年度は、現地試験を岩手県、宮城県、群馬県、茨城県、静岡県、三重県、大分県で実施し、多様な土壌、栽植条件における適応性を確認したうえで、実用化に向けた課題の抽出、改良を行っています。

内容

開発機(図1、表1)はトラクタ搭載型の6条用高速高精度汎用播種機であり、播種溝を切るコールター³⁾、播種ユニット、車速連動施肥ユニット⁴⁾(オプション対応予定)、鎮圧輪から構成されています。播種ユニットには、農研機構が開発した高速種子繰出装置(ダブルプレート式)が搭載されています。
稲、麦、大豆、そば、トウモロコシ、ソルガム等、幅広い作物の播種に適応できます。
開発機は、稲では約5～10km/h、麦類では約7～9km/h、大豆では約5～7km/hの高速で播種することが可能です。また、施肥ユニットを追加することで、播種と同時にほ場の表面及び播種溝への施肥を行うことができます。
稲の乾田直播で点播が可能です(図2)。三重県農業研究所による開発機の試験では、表2に示すように、5～8km/hで点播形状になること、速度が5km/h程度のときに点播精度が高まることを確認しました。
前作の残さや石が少ないなどの条件下で、不耕起栽培にも適応できます。麦では、飼料イネ収穫跡の耕起区と不耕起区ともに出芽率は良好なこと、大豆では、出芽後の株間のばらつきが従来機よりも小さく播種精度が高いこと、そばでは、従来機の約2倍の速度(約9km)でも出芽率に問題ないこと、トウモロコシでは、海外製のけん引式不耕起播種機と同じ作業速度(7km/h)で播種が可能であることを確認しました(表3-6)。
牧草の簡易更新にも利用できます。