プレスリリース
水稲の多収新品種「ミズホチカラ」を開発

- 米粉や飼料用米として多くの用途に利用可能 -

情報公開日:2009年4月28日 (火曜日)

ポイント

  • 「ミズホチカラ」は玄米収量が一般主食用米より約20%多くとれる多収品種です。
  • 暖地では「中生の晩」熟期で、倒伏に強く低コスト栽培に適します。
  • 米粉原料用や飼料用など多用途に利用できます。 

概要

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センターでは、米粉原料用や飼料用など多用途に利用できるイネ品種「ミズホチカラ」の開発に成功しました。福岡県では、飼料用米用途として21年度から作付けが始まるほか、熊本県で米粉パン等の用途向けにも普及が見込まれます。

    <関連情報>
    予算:農林水産省委託プロジェクト
    品種登録出願:出願番号「第23525号」


詳細情報

開発の社会的背景と研究の経緯

国際的な穀物高騰の影響を受けて、小麦粉の代替としての米粉や国産飼料作物へのニーズが高まっており、生産調整水田や耕作放棄田において米粉原料や飼料用米としての米生産が期待されています。これらの用途のために、低コスト生産が可能な多収穫米品種の育成を目指してきました。育成された系統については、JA全農ふくれんにより飼料用米としての適性試験を、また、熊本製粉(株)との共同研究により米粉利用への適性試験を行ってきました。

品種育成の内容・意義

  • 「ミズホチカラ」は「奥羽326号」と「86SH283長」の交配組み合わせ後代から育成されました(図1)。「奥羽326号」は韓国の多収インディカ品種「密陽23号」と日本の多収品種「アキヒカリ」の交配後代に由来する系統で、「86SH283長」は韓国の多収インディカ品種「水原258号」、台湾の多収ジャポニカ品種「台農67号」の交配後代に由来する系統です。
  • 1本の穂にたくさんの籾(もみ)を付け(写真1、2)、籾重および粗玄米重は暖地の多収品種「ニシホマレ」より約20%多収です(表1)。これまでの試作栽培試験では最大1t/10aの粗玄米収量が得られています(表3)。
  • 玄米の見かけの品質は白未熟粒が多いため不良で、米飯の食味も良くないため通常の主食用には適しません。しかし、農林水産省委託プロジェクト研究の「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発(加工プロ)」ではパンのふくらみが良く、腰折れ(焼成後変形)が少ないなど優れた特性を示しました(写真3)。
  • 普通期栽培での出穂期は「ニシホマレ」並かやや早い“中生の晩”です。背丈が低く茎が太く硬いので、耐倒伏性は「ニシホマレ」より強い“極強”で、直播栽培による低コスト生産も可能です(表1、表2)。
  • 2009年3月に品種登録を出願しました。命名の由来は、水田で力を発揮する多収品種の意味です。 

今後の予定・期待

多収性、強稈性を生かした低コスト生産に適すると考えられ、飼料用米として利用可能です。また、米粉の原料米としても有望視されています。栽培適地は暖地(九州)の平坦部の普通期作(6月植え)地帯および温暖地(関東以西)の平坦部の早植え(5月植え)地帯です。
福岡県においてJA全農ふくれん等が飼料用米として平成21年度から作付けを計画しています。また、熊本製粉(株)との共同研究の結果、米粉用として適性が認められたので、平成21年以降熊本県内において米粉原料用の生産を計画しています。

「ミズホチカラ」の米粉用としての加工特性評価

  • 「ミズホチカラ」は米飯用の「あきまさり」と比較し、蛋白値が低い傾向がみられ、また、損傷澱粉が「あきまさり」より低い傾向にありました(表4・5)。
  • 二次加工結果では、米粉を使用した場合の特徴である“もちもち感”、“しっとり感”、“甘味”などに「ミズホチカラ」と「あきまさり」で差はみられず、菓子の“ソフトさ”や“きめ立ち”において「あきまさり」よりやや優れる結果になりました(図2)。加えて、パンを作る上で重要なポイントとなる比容積(ボリューム)において「ミズホチカラ」は「あきまさり」より明らかに優れていました(図3)。また、横折れの確認や、パンケースから大きく出ているかどうかを判断する指標となる、官能評価の“型”の項目でも「ミズホチカラ」は好評価となり、生地伸びがいいことが分りました。

注)あきまさり:晩生の良食味品種。倒れにくく、ヒノヒカリ等より10%近く多収で、熊本県で作付けが奨励されている。

 

参考データ

図1.ミズホチカラの系譜図

 

表1.「ミズホチカラ」の生育特性((1991年から2008年;普通期栽培)

 

表2.「ミズホチカラ」の主要特性

 

表3.試作試験栽培における多収事例

 

写真1.現地圃場における草姿 写真2.稲株の比較

写真1.現地圃場における草姿

写真2.稲株の比較
左:ニシホマレ 中:ミズホチカラ 右:ニシアオバ

写真3.試作した米粉パン(S社製;加工プロ4系における試験成績)


(左:ミズホチカラ 右:コシヒカリ)

 

 

角型食パン

写真.角型食パン(左:ミズホチカラ、右:コシヒカリ)

 

 

山型食パン

写真.山型食パン(左:ミズホチカラ、右:コシヒカリ)

角型食パンの形状では「コシヒカリ」に比べ「ミズホチカラ」の方が明らかに腰折れ変形が少なく、
また山型食パンのふくらみ(比容積)もより大きい。

 

熊本製粉(株)における試験成績
表4 米粉(パン用)の分析データ
表4 米粉(パン用)の分析データ

 

表5 米粉(菓子用)の分析データ
表5 米粉(菓子用)の分析データ

 

図2 菓子二次加工結果
図2 菓子二次加工結果
菓子ではソフトさ、きめ立ちにおいて「あきまさり」より評価が高い。

 

図3 パン二次加工結果

図3 パン二次加工結果
「ミズホチカラ」は比容積が「あきまさり」より高く、ボリュームがでる。

 

用語解説

粗玄米重
籾摺(もみすり)を行った後の屑米を含む総玄米重。
草型
草型は、収量に影響する要因として、穂数によるか穂の大きさによるかを示す。
穂数型-偏穂数型-中間型-偏穂重型-穂重型に区分する。
損傷澱粉
米粉を製造するときの米澱粉の傷つき具合を言い、数値が高いほど損傷が高く多くなっていることを表します。損傷が多いと一般的に吸水性が高くなりますが、時間経過とともに一度吸収した水を吐き出してしまい、生地がべたつく原因となります。
比容積
体積/重量で表される数値です。ボリュームをみる為に算出しています。
二次加工
米を米粉に製粉することを一次加工と考え、一次加工により製造された米粉を使用し食品を作る製品加工のことをさします。