背景・ねらい
ネコブセンチュウは、野菜作を含む畑作地帯における主要病害虫の一つで、農作物の収量だけでなく品質を著しく低下させます。現在、線虫を防除する際には、主として殺線虫剤が使用されていますが、環境への悪影響、コストの増加などの問題があり、減農薬を目指した線虫防除技術の開発が求められています。作物の中には線虫密度を低下させる働きを持つ線虫対抗植物があることが知られており、これまでにも線虫害の防止を目的として、マリ-ゴ-ルド、ラッカセイなどが作付体系に導入されてきました。しかしながら、緑肥としてのすき込み時の作業性、その作物の収益性などに課題があり、使用される場面が限られているのが現状です。当センターでは、緑肥としての作業性の面から矮性のクロタラリア、収益性の面から線虫抵抗性カンショ品種ジェイレッドを新たな線虫対抗植物として見出しました。
成果の内容・特徴
- 矮性のクロタラリアは、対抗植物のラッカセイと同程度に、暖地に多いサツマイモネコブセンチュウとミナミネグサレセンチュウの密度を低減することができます(図1)。
- 矮性のクロタラリアとカンショ品種ジェイレッドは、青果用カンショの主力品種高系14号に比べて、収穫期(植付5か月後)までサツマイモネコブセンチュウの密度を低く抑えます(図2)。
- ネコブの着生程度は、矮性のクロタラリア、ジェイレッドともに、高系14号や裸地に比べて明らかに低くなります(写真1、図3)。
- 矮性のクロタラリアの地上部重は従来の長大型とほぼ同じですが、草丈が低く茎に柔軟性があるためすき込み時の作業性に優れ(写真2)、堆肥無施用の場合にはすき込み量が多いほど後作ダイコンの収量が増加し、緑肥としてのすき込み効果が認められます(図4)。
- ジェイレッドは、カンショジュースの原材料として、現在約20ヘクタールが宮崎県と鹿児島県で栽培されています。
今後の展開
今後は、線虫密度低減のメカニズムや線虫のレースに対する反応を究明するとともに、線虫密度低減に適した対抗植物の栽培条件を明らかにすることが重要です。現在、現地圃場における適用性を明らかにするために、自治体として国内初の有機農業認定機関となった宮崎県東諸県郡綾町において現地試験を実施しています(写真3)。