プレスリリース
カンショ葉に機能性成分ルテインを発見

- 野菜の中でも最高クラス -

情報公開日:2005年3月14日 (月曜日)

カンショの葉は、ビタミンやミネラル、ポリフェノールが多量に含まれている高栄養・機能性食材です。今回、眼病予防成分と言われているルテインがカンショの葉に豊富に含まれていることを明らかにしました。


詳細情報

背景とねらい

九州沖縄農業研究センターでは、カンショの葉を野菜として利用できる品種「すいおう」を育成し、カンショの茎葉に含まれるポリフェノールの機能性研究を進めてきました。これまでに、「すいおう」を利用した加工品の血糖値上昇抑制効果や血圧低下作用などを動物実験において明らかにしています。新たなる機能性成分として、濃緑色野菜に多く含まれ、眼病予防成分とされるルテインに着目しました。

成果の内容

「すいおう」の葉には生鮮物100g当たり約20mgのルテインが含まれています。葉柄や茎の部分では2mg程度含まれます。これまでホウレンソウや野菜ジュース原料としてよく使用されているケールなどにルテインが多く含まれていることは知られていましたが、カンショの葉に含まれる量はホウレンソウより多く、ケールと同じ位です(図1)。日本でも患者数が増加している眼病の加齢黄斑変性症の予防には、ハーバード大学による研究で1日当たり6mgのルテインを摂取することが推奨されていますが、「すいおう」の生葉では約30gに相当します(ホウレンソウでは約60g)。また、ルテインが多く含まれている葉にはβ-カロテンも多く含まれています(図2)。β-カロテンも眼の網膜の機能に重要な役割を果たしますので、ルテインとの相乗効果が期待されます(図3)。

今後の展望

茎葉利用品種の葉を野菜として食べることで加齢黄斑変性症や白内障の予防効果が期待されます。また、苗床や圃場で廃棄されていたカンショの葉からルテインを抽出し利用することも考えられます。カンショの葉を用いたルテインとβ-カロテンを豊富に含むサプリメントなどの開発も期待できます。

用語解説

すいおう(翠王)

九州沖縄農業研究センターにおいて育成された茎葉部を利用するためのカンショ品種(写真1)。茎葉部の収量性に優れ、葉柄部と葉身部の食味が良い。鉄、カルシウム、ビタミンE、ビタミンK1、食物繊維およびポリフェノールが豊富に含まれる。野菜のほか、青汁、茶、佃煮、粉末などの加工品としても利用できる。平成13年に品種登録出願。

ルテイン

カロテノイドの一種で、トウモロコシなどに含まれる黄色の色素成分。人の眼の組織では網膜黄斑部や水晶体などに存在しており、加齢とともにルテインが減ってくると、加齢黄斑変性症や白内障などの眼病に罹りやすくなる。野菜などからルテインを摂取することが眼病予防のために有効である。

加齢黄斑変性症

網膜の黄斑部が損傷を受け、中心視の損失につながる眼病。加齢につれて黄斑変性症が増加する。欧米では失明の主因となっており、日本での患者数も急増している。

白内障

眼球の水晶体が濁り、透過する光の量が減少するため、物体がぼやけたり歪んで見える障害。水晶体内のクリスタリン蛋白質の変性が原因と言われている。白内障で最も多いのは加齢に伴う老人性白内障で、加齢につれて白内障による視力低下が認められる。

カンショポリフェノール

カンショに含まれるポリフェノール成分で、分子内にカフェ酸を含有するカフェ酸誘導体といわれるもの。カンショ葉には、カフェ酸、クロロゲン酸、ジカフェオイルキナ酸、トリカフェオイルキナ酸が存在する。

ロドプシン

網膜視細胞に存在する色素蛋白質。光が当たることによりロドプシンが分解し、視神経に情報が伝達される。ロドプシンの合成には、ビタミンA(β-カロテンにより作られる)が必要。

図1 ルテイン含量はカンショ葉とケールに多い

図1 ルテイン含量はカンショ葉とケールに多い
カンショ品種:すいおう。野菜のデータは、A.R.Mangels, et al.1993.Journal of the American Dietetic Assoc. Vol.93: 284-296 より引用

図2 「すいおう」の葉ではルテインとβ-カロテンが他のカンショ品種よりも多い

図2 「すいおう」の葉ではルテインとβ-カロテンが他のカンショ品種よりも多い

図3 ルテインの化学構造と眼における存在部位

図3 ルテインの化学構造と眼における存在部位

写真1 茎葉利用カンショ品種「すいおう」

写真1 茎葉利用カンショ品種「すいおう」

写真2 「すいおう」の加工品

写真2 「すいおう」の加工品