育成のねらい
九州地域では豆腐原料用大豆品種の栽培が多いが、全国的に大豆の作付面積が増加する中で「売れる大豆づくり」のための取り組みが重視されてきており、特色のある大豆品種に対する関心が高くなっている。これまで、特色ある大豆品種として育成してきた暖地向きの納豆用小粒品種「すずおとめ」や青大豆品種「キヨミドリ」も契約栽培などで活用されいる。しかし、暖地向きに開発された黒大豆品種はこれまでになかったため、丹波黒系黒大豆や在来の黒大豆品種が利用されている。丹波黒系黒大豆は全国的に流通していることから地域の特色を出すことが難しく、また、在来の黒大豆品種は明確な品種として確立していないため安定供給に難があり、生産者および実需者の双方から地域の特色を出せる黒大豆新品種が要望されている。 そこで地域の特色を出せるような暖地向きの黒大豆新品種を育成し、「売れる大豆づくり」に活用できるようにする。
来歴の概要
早生・大粒の黄色大豆「坂上2号」を母に、晩生・大粒の黒大豆「新丹波黒」を父として1988年に人工交配した。1989年に圃場でF1を養成し、1992年のF4世代で個体選抜を実施し、1993年のF5世代以降は系統育種法により選抜、固定を進めてきた。 1996年(F8世代)に「九系228」の系統名を付し、生産力検定試験、系統適応性試験に供試し、1998年(F10世代)に「九州134号」の地方系統名で、公立農業試験研究機関などで試験栽培が行われてきた。2004年はF16世代である。
命名の由来
水田転換畑で栽培される黒い丸大豆であることを意味する。漢字表記は“黒田丸”。
新品種の特徴
- 暖地向けの煮豆用黒大豆品種でアントシアニン含有量が高い。
- 粒色は黒で丹波黒系大豆より光沢が強い。
- 粒の形は扁球で「新丹波黒」よりやや小さい。
- 煮豆の製品歩留まりが高く、外観も良好で食感はやや弾力性がある。
- 成熟期は「新丹波黒」と同じ極晩生で、収量性は「新丹波黒」並かやや多収である。
- 「新丹波黒」より倒伏抵抗性がやや強く、裂莢しにくい。
今後の展開
栽培適地は九州地域であるが、当面は「クロダマル」で製品開発を計画している企業との契約栽培および「道の駅」などでの地域特産品としての利用を計画している福岡県で5ha程度の普及が見込まれている。他の地域でも試作試験などが行われており地域特産品としての利用が期待されている。
草姿
左:フクユタカ、中央:クロダマル、右:新丹波黒
子実
左:フクユタカ、中央:クロダマル、右:新丹波黒