プレスリリース
初期伸長性に優れ株出安定多収な「NiTn18」(さとうきび農林18号)

- 九州沖縄農業研究センター育成品種の紹介 -

情報公開日:2004年9月30日 (木曜日)

育成のねらい

鹿児島県熊毛地域では、冬春期の低温、農家の高齢化や大規模化による肥培管理不足(収穫後のマルチ処理ができないこと等)、機械収穫面積の増加による株の傷害や引き抜き、圃場の鎮圧等の影響によって単位収量の低下が問題になっている。そこで、普及品種が少収となる条件下でも、安定して株出多収性を発現する品種を育成し、熊毛地域のさとうきび生産の安定を図ろうとした。

来歴の概要

葉の主要病害に強く、茎揃いが良好な九州沖縄農業研究センター育成系統「KF81-39」が母親、台湾で育成された萌芽性に優れる高糖品種「ROC11」が父親である。交配採種は、台湾糖業研究所に依頼し、種子を導入した。1992年以降九州沖縄農業研究センター(種子島)の試験圃場で選抜を行った。1996年度に「KF92-93」の系統名を付与し、それ以降、地域適応性の検定、黒穂病、葉焼病の抵抗性検定、育成地、普及見込み地域における生産力を評価した。また、普及品種「NiF8」が少収になる育成地内の圃場を利用して、マルチ、無マルチ株出栽培での生産力を評価した。

命名の由来

さとうきび命名の国際的慣例に従い、日本で育成したことを示す「Ni」に、台湾で交配した種子を用いたことを示す「Tn(台湾糖業研究所の所在地台南を表す)」、日本で命名登録した18番目の育成品種であることを示す「18」を続けて、「NiTn18」とした。

新品種の特徴

  • 初期伸長が良好で茎が長く、茎数が多い。
  • 「NiF8」よりも春植、株出栽培で原料茎重、可製糖量が多い。
  • 低温下での萌芽性に優れ、無マルチで株出栽培を行った場合でも、「NiF8」よりも多収となる。
  • 繊維分が高いために可製糖率は「NiF8」よりも低い。
  • 黒穂病抵抗性は「極弱」で、「NiF8」よりも弱い。
  • 「NiF8」が多収となる圃場では、伸びすぎて乱倒伏することがある。

今後の展開(普及の見通し)

鹿児島県熊毛地域において、管理・収穫作業、圃場条件等の理由から「NiF8」が少収になる圃場を中心に、約200haの普及を見込んでいる。

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写真1.「NiTn18」の立毛状況
左から「NCo310」、「NiTn18」、「NiF8」
平成15年10月:九州沖縄農業研究センター

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写真2.「NiTn18」の原料茎
左から「NCo310」、「NiTn18」、「NiF8」
平成16年1月:九州沖縄農業研究センター