背景
計画的避難区域に指定された福島県飯舘村の畑圃場で栽培したヒマワリ種子について、搾油および精製の工程における生成物ごとの放射能を測定して、種子中の放射性セシウムの移行動態を明らかにするとともに、バイオディーゼル燃料製造原料としての利用の可能性を検討する。
結果の内容
搾油工程における放射性セシウムの移行動態
福島県飯館村二枚橋の畑圃場で収穫したヒマワリ種子の放射性セシウムの濃度は81.4Bq/kgでした。
エクスペラーによる圧搾法によって、8.9kgのヒマワリ種子から1.3kgの圧搾油と、7.6kgの搾油滓が得られました。放射性セシウムの濃度は、圧搾油の2.58Bq/kgに対して、搾油滓では117Bq/kgであり、搾油滓にほとんどの放射性セシウムが残留していることが明らかになりました。
圧搾油を静置し固形分を沈殿させ上澄みをろ過処理した油(1.2kg)における放射性セシウム濃度は、検出限界(1.1Bq/kg)を上回りませんでした。このことから、ろ過処理工程において夾雑物とともに放射性セシウムが除去され、ろ過処理した油の放射性セシウム濃度が低減した(不検出)と考えられます。
バイオディーゼル燃料の製造工程の検討
アルカリ触媒法と、中央農研で開発したSTING法により、上記の試験で得られたろ過処理した油を原料としたバイオディーゼル燃料製造工程の検討を行いました。製油1kgから、アルカリ触媒法では0.86kgのバイオディーゼル燃料とともに0.14kgのグリセリンが生成されますが、STING法ではほぼグリセリン等の副産物を生成せずに0.95kgのバイオディーゼル燃料製造が可能でした。

今後の予定
ナタネなど油糧作物種子による搾油及びバイオディーゼル燃料製造試験を継続して実施し、燃料への放射性セシウムの移行動態を検討します。
用語の解説
STING法
動植物油脂をメタノールと混合し、高温・高圧で短時間処理することで、重油・軽油代替燃料に変換する技術。触媒を必要としない、副産物のグリセリンがほとんど生成されない、水や遊離脂肪酸などが混入しても収率が低下しにくいなどの利点がある。一方で、反応に高温・高圧を要するため製造装置がやや高額となる。
エクスペラー
孔の空いた円筒型のプレスケージ内でウォームシャフトが回転し<、油糧種子がスクリューで押し進められるに従い圧力が加わり、油が絞り出される装置。
圧搾法
油糧種子に物理的に圧力をかけて油を絞り出す搾油方法で、連続して搾油するエクスペラー法と、種子を油圧プレスで押し潰して油を絞り出すケージプレス法がある。
圧搾油
機械的圧力により絞り出された油。種子の微粉などの固形物を含む。
ろ過処理した油
圧搾油を静置し固形物を沈殿させた後、上澄みをフィルターなどを利用してろ過し固形分を除去した油。
アルカリ触媒法
動植物油脂からバイオディーゼル燃料を製造する技術で、触媒としてアルカリ性の水酸化カリウムなどを用いる。低温・低圧で反応できるため、比較的安価に製造できる利点があり、世界中で最も広く利用されている。しかしながら、水や遊離脂肪酸などの不純物の混入で収率が悪化しやすいこと、製造時に副産物として生成されるグリセリンの処理などが問題となることがある。