プレスリリース
農研機構が育成した大麦新品種 「ゆきみ六条」を活用した商品開発が進展

情報公開日:2016年7月29日 (金曜日)

農研機構
新潟薬科大学
金升酒造株式会社
親和福祉会
新潟市農業活性化研究センター

ポイント

  • 農研機構が育成した大麦新品種「ゆきみ六条」を加工した麦焼酎1)が商品化されました。
  • 新潟市では、生産者・障がい者福祉施設・食品メーカー・大学・行政が参加した「農業・福祉・食品ビジネス連携」によって、「ゆきみ六条」の特性を活かしたクッキーやケーキなども商品化しています。

概要

  • 農研機構が育成した大麦新品種「ゆきみ六条」を原料に使った麦焼酎や大麦粉食品の市販が始まっています。
  • 「ゆきみ六条」は、麦焼酎に加工すると香りが強い特徴があり、また、穀粒は製粉しやすい特徴があり、大麦粉食品への加工に適するなど幅広い用途に応用が可能です。
  • 新潟市では「ゆきみ六条」を利用して、生産者・障がい者福祉施設・食品メーカー・大学・行政が参加した「農業・福祉・食品ビジネス連携」が始まっています。

詳細情報

1.大麦品種「ゆきみ六条」の開発

大麦新品種「ゆきみ六条」の開発及び普及・新規需要の拡大促進

  • 品種出願番号 第29879号 (平成27年8月24日品種登録出願公表)
  • 予算:本品種の開発及び普及・新規需要の開拓は『農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(課題番号26084C「新たな実需ニーズに応える寒冷地・多雪地向け新需要大麦品種等の育成と普及」)』及び『オンデマンド品種情報提供事業』を受託して行ったものです。

開発関係者

研究推進責任者:農研機構 中央農業研究センター

所長 梅本 雅

研究担当者:農研機構 中央農業研究センター

作物開発研究領域 グループ長 長嶺 敬
上級研究員 関 昌子

背景と経緯

北陸地域が主産の六条大麦2)は多くが麦飯用に利用されており、新規用途の開拓が求められていました。一方、国内自給率が20%程度の焼酎用大麦のほとんどは二条大麦で、六条大麦の焼酎利用は少なく、また、六条大麦品種での焼酎醸造は難しいと考えられてきました。

そのような中、新潟薬科大学との麦焼酎開発に関わる共同研究において、「ゆきみ六条(当時の試験系統名:北陸皮50号)」が六条大麦であるにもかかわらず、焼酎醸造適性に優れていることがわかりました。そこで金升酒造株式会社がプロジェクトメンバーに加わり焼酎製造の現場実証試験を開始し、商品化することができました。 また、「ゆきみ六条」の多用途利用を図るなかで製粉加工特性にも着目し、障がい者福祉施設親和福祉会での大麦粉食品(クッキー、ケーキなど)への利用も始まりました。

  • 平成15年 :農研機構中央農業総合研究センター北陸研究センター(現 農研機構中央農業研究センター北陸研究拠点)において、「東北皮37号×東山皮101号(後のシルキースノウ)」の雑種第一代と「横綱×Carre26」の雑種第一代を交配して、育成を開始。
  • 平成27年 :「ゆきみ六条」として品種登録出願。

研究の内容・意義

  • 「ゆきみ六条」は軟質粒であるために、他の六条大麦品種に比べて吸水が早く、アルコールの素になるデンプン価も高い特徴があります(表1)。また、もろみの純アルコール収得量は他品種と同等以上で、エキス分が多い特徴を持ちます。
  • 「ゆきみ六条」を用いた麦焼酎は官能検査において香りが強く、味、総合評価とも優れると評価されました。個性的な「地産地消型」焼酎としての差別性に優れています(写真1)。
  • 「ゆきみ六条」は雪国・寒冷地向けの品種で、既往の六条大麦品種である「ミノリムギ」に比べて、穂が出る時期(出穂)が早く、穂数が多い特徴があります(表2、写真1)。収量性は優れますが、千粒重がやや小さく小粒です(写真2)。雪国での大麦の重要病害である雲形病に対する抵抗性をもち、耐穂発芽性も優れています。また、「ゆきみ六条」は「ミノリムギ」に比べて硬質粒の割合(硝子率)が低めの軟質品種で、精麦白度が高く、麦ごはんの色も明るい特徴があるため、普及が見込まれます。
  • 「ゆきみ六条」の大麦粉は平均粒径が小さく、ケーキなどへの加工に適しています(表3)。

今後の予定・期待

「ゆきみ六条」は平成27年から新潟県新潟市、福島県喜多方市での農家栽培が始まっています。各地での栽培拡大、大麦商品開発への利用が期待できます。

参考図

narchokuriku_20160729_f01.png

narchokuriku_20160729_f02.png
表3.「ゆきみ六条」大麦粉の平均粒径とβ-グルカン含量
表3 ゆきみ六条大麦粉の平均粒径とβ-グルカン含量

narchokuriku_20160729_f04.png

写真1 ゆきみ六条の草姿
左:ゆきみ六条 右:ミノリムギ

narchokuriku_20160729_press_f05.png

写真2 「ゆきみ六条」の穂と穀粒
左:ゆきみ六条 右:ミノリムギ

2.産学官連携による「ゆきみ六条」の商品開発

越後麦焼酎六条[金ラベル、銀ラベル、銅ラベル]の開発
ゆきみ六条を原材料としたクッキー、ケーキ、ランチの開発

新潟農福連携大麦プロジェクトの関係者

  • プロジェクト推進責任者 新潟薬科大学 応用生命科学部長 田中宥司
  • プロジェクトメンバー
    ・新潟薬科大学 石黒正路・伊藤満敏・髙久洋暁
    ・農研機構 中央農業研究センター 長嶺 敬
    ・金升酒造株式会社 高橋 巌
    ・親和福祉会 竹内 卓・大野睦子
    ・新潟市農業活性化研究センター 小俣俊明・中村晴彦

背景・経緯

元来、北陸地方は六条大麦の産地でしたが、年々生産量は減り、特に新潟県においては、平成元年に比べ、約20分の1の生産量となっていました。大麦の用途としては、麦茶、味噌・醤油、押し麦が主で、用途開発が望まれていました。
平成25年から農研機構と新潟薬科大学との麦焼酎開発に関わる共同研究において、「ゆきみ六条(当時の試験系統名:北陸皮50号)」は焼酎醸造適性が優れることがわかってきました。新潟薬科大学では焼酎に適した酵母の探索により、発酵能力、風味の優れた天然酵母を取得し、また、江戸時代から培った発酵技術を持つ金升酒造株式会社との連携が始まりました。試作品の評価を得て、吟醸香を持つ銀ラベル、樫樽で半年間熟成させた金ラベルの2品目を「地産地消型の麦焼酎」として市販することになりました。今年から、新潟市の名産品である藤五郎梅を使用した梅酒も作製中です。
また、「ゆきみ六条」の多用途利用を図る中で、「ゆきみ六条」は粒径の細かい大麦粉を作りやすいことに着目し、大麦粉食品(クッキー、ケーキなど)を障がい者福祉施設親和福祉会での利用も始まりました。大麦食品の拡大と障がい者の雇用拡大に繋げたいと考えています。商品は新潟薬科大学の新津駅東キャンパスで販売中です。
大麦がもつ食物繊維β-グルカンの健康機能性(冠状動脈心疾患のリスク低減、コレステロールの低下作用、食後血糖値の上昇抑制や排便促進の効果が論文発表されています)が注目され、各種の大麦食品の販売が伸びるなかで、「ゆきみ六条」大麦粉を活用した各種商品開発がすすめられています。

内容・意義

耕作放棄地の拡大などを背景として、新潟市においては土地利用型作物の新たな展開が求められていました。加工特性が特徴的な六条大麦新品種「ゆきみ六条」を活用した大麦の生産(白銀カルチャー)、搗精・製粉・製菓・レストランでの利用(親和福祉会、写真3)、焼酎加工(金升酒造株式会社、写真4)などのネットワークが行政・大学・研究機関の支援をうけて拡がり、土地利用型作物であえる六条大麦をキーとする新たな「農業・福祉・食品ビジネス連携」が生まれました。

今後の予定・期待

新潟市農業活性化研究センターを中心とするコーディネート活動により、生産者のほか、搗精・製粉を担当する障がい者福祉施設や食品メーカーなどの「農業-福祉―産業」連携が広がりつつあります。「ゆきみ六条」を原料とする麦焼酎のほか、地元産野菜、乳畜産物と組み合わせたクッキーやケーキ、パンなどの大麦粉食品、イタリアンレストランでの大麦リゾットなど、商品ラインナップをさらに拡充し、首都圏をはじめとする域外への販路拡大の試みも進めています。

参考図表

ゆきみ六条を原料に用いた「大麦クッキー」「越後麦焼酎六条」は4月に新潟で開かれたG7農相会議のコーヒーブレイク茶菓・レセプション飲料に採用されました。

narchokuriku_20160729_press_f06.png
narchokuriku_20160729_press_f07.png

写真4.「ゆきみ六条」を使った麦焼酎
左:銅ラベル(試作中梅酒)、中央:金ラベル、右:銀ラベル
(金升酒造株式会社・新潟薬科大学)

用語の解説

  • 麦焼酎:大麦を主原料とする焼酎。各種焼酎のうち、芋焼酎についで生産量が多く、「すっきりしていて飲みやすい」特徴をもつ。大手焼酎メーカーは九州地区に多いが、独特の製法などをもつ個性的な麦焼酎をもつメーカーが日本各地にある。
  • 六条大麦と二条大麦:写真のように穂の形が違う。六条大麦は主に麦ごはん、麦茶用に使われ、二条大麦はビール用に使われている。

narchokuriku_20160729_press_f08.png  narchokuriku_20160729_press_f09.png

      六条大麦                     二条大麦

法人番号 7050005005207