プレスリリース
山羊関節炎・脳脊髄炎の検査法が国内で確立

- 検査によりウイルス感染山羊の早期清浄化に貢献 -

情報公開日:2005年6月10日 (金曜日)

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所では、日本国内における山羊関節炎・脳脊髄炎(以下CAE)の検査法を確立しました。CAEは、エイズウイルスと同じ属に分類されるCAEウイルスが山羊に感染して関節炎、脳脊髄炎、肺炎や乳房炎を起こす病気で、羊・山羊産業の盛んな欧米では、数多く発生が報告されています。日本では2002年8月に初めて発生が確認されたことから、CAEの感染状況を把握し清浄化を進めるため、当研究所では研究に取り組み、検査法を確立しました。

確立した検査法

  • CAEウイルス抗体を検出する寒天ゲル内沈降試験(AGID):この方法は、血液中にウイルス抗原に対する抗体が存在するか否かを調べるためのもので、ウイルスの抗原と抗体が結合すると寒天中で沈降線が形成されることを利用しています。濃縮ウイルスを検査抗原に使用し、血液中のウイルス抗体を検出することに成功しました。
  • CAEウイルス遺伝子を検出するPCR法:山羊血液中のリンパ系細胞からDNAを抽出し、PCR法を用いることによってCAEウイルス遺伝子を検出することに成功しました。
  • CAEウイルスを検出するシンシチウムアッセイ法:山羊の関節液や組織から作製した乳剤を、山羊および羊の細胞に接種し、一定期間培養した後に細胞を染めて、合胞体細胞(多核巨細胞、シンシチウム)の有無を確認する方法です。ウイルスが存在する場合は細胞の合胞体が見られます。
  • CAEウイルスを検出する間接蛍光抗体法(IFA):ウイルスに感染した細胞を検出する方法です。CAEウイルス感染山羊から得られた血清と検査材料とを反応させ、そこに蛍光物質が標識された抗体を反応させると、ウイルスに感染した細胞は蛍光を発します。

本成果の意義

本検査法によって、国内においてCAEウイルスに感染している山羊を調べることが可能となりました。特に、血清を用いてウイルス抗体の検査ができるAGID法や、血液中の白血球DNAを利用したPCR法は比較的方法が簡単であるため、本法は多検体数の検査時や定期検査に適しています。
また、CAEは主に乳汁を介した母子感染によって伝播するため、子山羊が感染するのを防ぐためには、出産直後の親子分離飼育や初乳をそのまま与えずに代用乳で飼育するという方法が重要です。当研究所では本検査法による定期的な検査と子山羊に対する感染予防のための方策を組み合わせた方法を全国の家畜保健衛生所に推奨しております。今後、全国規模で本検査法が用いられることにより、国内から早期にCAEが清浄化されるものと期待されます。


詳細情報

図表

図1 AGIDによるCAEウイルス抗体検出
図2 PCRによるCAEウイルス検出
図3 羊胎児肺細胞を用いて分離されたウイルスの同定