プレスリリース
(研究成果) 縞萎縮病に強い小麦新品種「タマイズミR」

- 「タマイズミ」の長所はそのまま、欠点改良で生産拡大 -

情報公開日:2017年5月18日 (木曜日)

ポイント

  • 多収で中華麺適性の優れた小麦品種「タマイズミ」を、半数体育種法1)DNAマーカー選抜法2)利用により効率的に改良し、コムギ縞萎縮病3)に強くした新品種「タマイズミR」を育成しました。
  • 「タマイズミR」はコムギ縞萎縮病が発生している畑で「タマイズミ」より多収で、その他の栽培特性や中華麺への適性は「タマイズミ」とほぼ同等です。
  • 平成31年から三重県で一般栽培が開始される予定です。

概要

  1. 農研機構次世代作物開発研究センターは、多収で中華麺適性の優れた小麦品種「タマイズミ」を改良し、コムギ縞萎縮病に強くした新品種「タマイズミR」を育成しました。関東・東海などの温暖地での栽培に適しています。
  2. 「タマイズミR」のコムギ縞萎縮病への抵抗性は「強」で、タマイズミの「やや弱」に比べて明らかに強く、コムギ縞萎縮病の発生している畑で「タマイズミ」より多収となります。
  3. その他の栽培特性、および中華麺への適性は「タマイズミ」とほぼ同じです。
  4. 平成31年から三重県にて一般栽培が開始される予定で、1,000ha程度の普及が見込まれています。

予算

農林水産省 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「硬質小麦タマイズミの縞萎縮病と穂発芽抵抗性を強化した「スーパータマイズミ」の開発」

品種登録出願番号

第31563号(平成28年11月10日出願、平成29年2月23日出願公表)

新品種育成の背景と経緯

小麦は品種によって小麦粉中のタンパク質(グルテン4))の量と性質に違いがあり、それに応じて適する用途(パン、中華麺、うどん、菓子等)も異なります。「タマイズミ」は多収で栽培特性が優れた小麦品種で、中華麺に適した品質をもつことから需要が増加しているにもかかわらず、コムギ縞萎縮病に弱いという欠点のために、栽培出来る地域が限られ生産量を増やせない状況となっていました。
そこで、農研機構では「タマイズミ」のもつ長所を受け継ぎ、かつコムギ縞萎縮病に強い品種の育成に取り組みました。

成果の内容・意義

「タマイズミ」を半数体育種法とDNAマーカー選抜法の利用により効率的に改良し、コムギ縞萎縮病に強くした新品種「タマイズミR」を育成しました。

    <新品種「タマイズミR」の特徴>
  1. パン用小麦「ゆめちから」由来のコムギ縞萎縮病に強い遺伝子を持ちます。コムギ縞萎縮病への抵抗性は「強」で「タマイズミ」の「やや弱」に比べて明らかに強く、通常の畑では「タマイズミ」と同程度の収量ですが、コムギ縞萎縮病の発生している畑では「タマイズミ」より多収となります(表1表3写真1)。
  2. 従来品種「タマイズミ」に比べて、稈長がやや短いですが、その他の栽培特性はほぼ同じです(表1写真2)。また栽培適地は関東・東海などの温暖地です。
  3. 「タマイズミ」に比べて、製粉歩留、粉のタンパク質含量及び灰分含量は同程度です。ペーストにした粉の色(明るさ、赤み、黄色み)も同程度です(表2)。
  4. 中華麺適性試験の総合評価は、中華麺適性の高い「タマイズミ」と同等です(表4)。

品種の名前の由来

「タマイズミ」を改良してコムギ縞萎縮病に抵抗性(resistance)を持たせた品種であることから、「タマイズミR」と命名しました。

今後の予定・期待

平成31年から三重県にて一般栽培が開始される予定で、1,000ha程度の普及が見込まれています。現在「タマイズミ」を栽培している他県での普及も期待されます。

用語の解説

1)半数体育種法
小麦の花の雌しべにトウモロコシの花粉をかけると、受精して幼胚ができますが、やがてトウモロコシの染色体だけが消失してしまいます。この時点で幼胚を取り出して培養すると、通常の半分の染色体だけをもつ、すなわち半数体の小麦に育ちます。この半数体の小麦をコルヒチンという薬品で処理すると、染色体が倍加して通常の小麦と同じ染色体数になります。この仕組みを育種に利用するのが半数体育種法で、育種の初期世代(交雑第1代など)で用いることで、通常は何年もかかる遺伝的固定が短期間で行えます。

2)DNAマーカー選抜
目的とする遺伝子(病気に強くなる遺伝子など)と密接に連鎖したDNAの配列を目印に、遺伝子型を選抜することをDNAマーカー選抜といいます。「タマイズミR」の場合は、「タマイズミ」と「ゆめちから」の交配後代から「ゆめちから」のもつコムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子と密に連鎖した3つのDNAマーカーを目印に、その全てが「ゆめちから」と同じタイプのものを選抜しています。

3)コムギ縞萎縮病
土壌伝染性のウイルス病で、コムギ縞萎縮ウイルスが感染して発病します。典型的な症状は、2月~3月頃に葉にかすり状の黄化がみられることで、発病がひどい場合は、株が萎縮し収量が大きく減少します。

4)グルテン
小麦粉に水を加えて捏ねると、グルテニンとグリアジンという2種類のタンパク質が結びついて、小麦粉特有の弾力性と粘着性を持った、「グルテン」が形成されます。このグルテンの量と力の強さにより小麦粉の適する用途が決まります。グルテンの量が多く力も強い小麦粉はパンに適し、大まかには、パン>中華麺>うどん>菓子 の順で、適するグルテンの量は少なく力も弱くなっていきます。

参考図

写真1
写真1.コムギ縞萎縮病常発地帯での発病の様子(三重県内にて2016年3月撮影)
*タマイズミはコムギ縞萎縮病に罹って葉が黄色くなっているが、タマイズミRの葉は緑色のままである。

写真2
写真2.草姿(左:タマイズミR  右:タマイズミ)

表1.「タマイズミR」の栽培特性
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表2.「タマイズミR」の品質特性
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表3. コムギ縞萎縮病常発地帯での収量性
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表4. 中華麺適性評価試験
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お問い合わせ

研究推進責任者
農研機構次世代作物開発研究センター 所長矢野 昌裕

研究担当者
農研機構次世代作物開発研究センター 麦研究領域乙部千雅子

広報担当者
農研機構次世代作物開発研究センター 企画連携室長斎藤 浩二
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法人番号 7050005005207