ポイント
農研機構農村工学研究部門は、農業水路の「魚の棲みやすさ」を点数(スコア)化する「魚の棲みやすさ評価プログラム」を開発しました。この手順と、魚にとって棲みやすい水路を作るための簡便な改善方法をまとめた評価マニュアルを作成しました。本成果は、多面的機能支払交付金1)などを利用して行われる農業水路周辺の生態系・環境保全活動に役立ちます。
概要
水田への灌漑や排水を目的として、人が整備・管理してきた農業水路は、魚類など水辺の生きものたちの貴重な生息場所となっています。2001年に改正された土地改良法では、このような生態系を含む環境への配慮が求められることになり、農業水路の豊かな生物相を保全するために、さまざまな活動が各地で行われています。しかし、対象の水路が魚にとって棲みやすいかどうかを判断する目安や、改善方法などははっきりと示されていませんでした。
そこで農研機構は、魚の生息環境を、「流速」「水深」「植生」などの指標と、魚類の「種数」と「総個体数」から簡単・自動的に評価する「魚の棲みやすさ評価プログラム」を開発し、「魚の棲みやすさ」を5段階のスコアで「見える化」しました。
さらに、評価したスコアから、魚類の生息環境を改善するためのステップを示し、その具体的な手法や工法についても事例をまとめ、「魚が棲みやすい農業水路を目指して~農業水路の魚類調査・評価マニュアル~」を作成しました。水路に施工された生態系配慮区間の評価やモニタリングに活用できます。「魚の棲みやすさ評価プログラム」や本マニュアルは、以下の農研機構のウェブページから入手可能です。
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/079440.html
<関連情報>
予算:農林水産省委託プロジェクト研究「生物多様性を活用した安定的農業生産技術の開発」
プログラム登録:魚の棲みやすさ評価プログラム