プレスリリース
「ニンニク周年供給のための収穫後処理マニュアル」を公表

情報公開日:2013年3月27日 (水曜日)

ポイント

  • ニンニクを周年供給するために重要な3つの収穫後処理技術(乾燥、貯蔵、出庫後の発根・萌芽(ほうが)1)を抑制する高温処理)について、具体的な方法を説明するとともに、これらの処理条件と品質との関係を解説したマニュアルを作成しました。
  • 本マニュアルは、ニンニクの生産・流通において、高品質な国産品の周年安定供給に役立つことが期待されます。

概要

  • 農研機構 東北農業研究センターは、地方独立行政法人 青森県産業技術センターと共同で、ニンニクを周年供給するために重要な3つの収穫後処理技術(乾燥、貯蔵、出庫後の発根・萌芽を抑制する高温処理)について、品質保持に最適な条件を明らかにし、マニュアルとしてとりまとめました。
  • 本マニュアルでは、3つの収穫後処理技術について具体的な方法を説明するとともに、これらの処理条件と品質との関係をわかりやすく解説しています。

マニュアルの入手方法:
東北農研のホームページからダウンロードしてご利用ください。
http://www.naro.affrc.go.jp/tarc/contents/publication/index.html
なお、冊子体をご希望の方は情報広報課へFaxまたはE-mailでお申し込みください。
Fax:019-643-3588 E-mail:東北農研プレス用メール

関連情報

予算:
新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「高品質国産ニンニクの周年安定供給を実現する収穫後処理技術の開発」(平成21~23年度)
青森県重点事業「にんにく産地力強化推進事業」(平成21~22年度)
全国農業協同組合連合会青森県本部営農対策費(平成21~23年度)


詳細情報

社会的背景と研究の経緯

国産ニンニクは1990年代に中国からの輸入の急増によって生産量が半減しましたが、その後は輸入品との差別化が進み、一定の生産量を維持しています。

ニンニクの収穫は年1回で短期間に限定されるため、収穫物を貯蔵し、これを計画的に出荷することにより、周年供給が可能となります(図1)。また、収穫したニンニクをそのまま貯蔵すると腐敗するため、貯蔵前には乾燥が行われます(図1)。このように、ニンニクの周年供給には、貯蔵性を高める乾燥技術と品質を1年近く保存できる貯蔵技術が必要です。

ニンニクの周年供給において、貯蔵中の発根・萌芽の抑制に利用されていた植物成長調整剤2)の使用が平成14年に禁止されたため、主産県である青森県におけるニンニクの貯蔵は、常温条件から氷点下条件へと大きく変化しました。しかし、氷点下貯蔵の導入により、「くぼみ症」(写真1)と呼ばれる障害が発生し、問題となっています。

農研機構 東北農業研究センターは、青森県産業技術センターと高品質な国産ニンニクを周年安定供給することを目的として、「乾燥」、「貯蔵」、「出庫後の発根・萌芽を抑制する高温処理」の3つの収穫後処理技術の開発に取り組みました。

研究の内容・意義

  • 貯蔵中の根・芽の伸長停止には--1℃以下での貯蔵が必要であること、くぼみ症などの障害発生の抑制には--2℃以上での貯蔵が必要であることなどから、ニンニクの品質を長期間維持するには、--2℃での貯蔵が最適であることを明らかにしました(表1)。
  • くぼみ症などの障害の抑制には、貯蔵条件とともに乾燥条件が重要であることを明らかにし(表1、図2)、--2℃貯蔵に対応した乾燥法として「テンパリング乾燥」3)を開発しました。テンパリング乾燥は従来法4)に比べて、--2℃貯蔵後の障害発生が少なく、乾燥コストが安いなどの利点があります(表2)。
  • 出庫後の流通・販売過程における根、芽の伸長を抑制するために必要な高温処理法について、処理温度と高温障害および伸長抑制効果との関係を明らかにしました(図2)。高温処理の効果は処理時期によって変動するため、時期別に最適な処理条件を選定し、マニュアルに示しました。
  • 本マニュアルは、高品質な国産ニンニクの周年安定供給に役立つことが期待されます。

今後の予定

本マニュアルを活用して、青森県をはじめとしたニンニク生産地と連携し、研究成果を生産現場へ普及・啓発する活動を実施していく予定です。

用語の解説

1)萌芽
樹木や球根などの芽がでること。

2)植物成長調整剤
植物の成長と発育に対して調節作用を持つ薬剤。PGR(Plant Growth Regulator)、植物生育調節剤などとも呼ばれる。

3)テンパリング乾燥
「テンパリング(tempering)」とは、温度調整作業のことを示す。農業分野では「テンパリング乾燥」という表現が使われており、乾燥を促進する高温条件とこれより低い温度条件を組み合わせた乾燥である。
ニンニクの場合、テンパリング乾燥とは、昼間は約35℃加温・通風、夜間は無加温(または昼間より低い加温温度)・通風条件での乾燥をいう。やませなどの影響で乾燥中の外気温が低い場合、夜間は20℃加温とする。

4)従来法
基本的には、約35℃・通風条件での乾燥。

写真1 ニンニクのくぼみ症

表1 ニンニクの品質と貯蔵温度との関係

表2 テンパリング乾燥と従来法との比較

図1 ニンニクの収穫から出荷までの過程

図2 乾燥条件が-2℃貯蔵後のくぼみ症の発生に及ぼす影響

図3 高温処理温度と高温障害および伸長抑制効果との関係