プレスリリース
多収で直播栽培向きの良食味水稲新品種「ちほみのり」を育成

- 良食味品種で690kg/10aの高収量を達成 -

情報公開日:2014年10月23日 (木曜日)

ポイント

  • 「あきたこまち」より約1~3割多収です。
  • 倒れにくく、直播栽培に適し、「あきたこまち」と同等の良食味です。
  • 低価格で質の良い米の生産・流通に貢献できます。

概要

  • 農研機構は、早生で多収・良質・良食味の水稲新品種「ちほみのり」を育成しました。
  • 育成地における標肥移植栽培1)では、「ちほみのり」の収量は693kg/10aで、「あきたこまち」より約1割多収です。
  • 倒れにくく、直播栽培に適します。
  • 「あきたこまち」と同等の玄米品質で、炊飯米は「あきたこまち」と同等の良食味です。
  • 現在、秋田県の一部産地で500haの作付けが計画されています。今後、低価格で質の良い米として普及することが期待されます。

関連情報

予算:運営費交付金
品種登録出願番号:第29143号


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

   今後、我が国の稲作経営において、一層の経営規模拡大や所得向上を図るためには、一定水準の食味・品質を有し収量性が向上した品種であることに加え、栽培の省力・低コスト化に対応できるよう直播に適した品種であることが必要です。そこで、農研機構では、中生で直播栽培に適した多収・良食味系統「奥羽382号(のちの「萌えみのり」)」を母、早生で多収・良食味系統「青系157号」を父として交配を行い、耐倒伏性に優れ、多収で良質・良食味の特性を有し、直播栽培に適した水稲新品種「ちほみのり」を育成しました。

「ちほみのり」の特徴

  • 育成地における移植栽培(標肥、多肥)、直播栽培(標肥、多肥)の精玄米重は、いずれも「あきたこまち」より多収です(図1)。標肥移植栽培では693kg/10aで約1割、多肥移植栽培では808kg/10aで約3割多収となりました。
  • 直播栽培の倒伏程度は、「あきたこまち」より少なく、直播栽培に適します(図1、図2)。
  • 玄米の外観品質は「あきたこまち」と同等です。炊飯米の光沢、粘りは「あきたこまち」と同等で、「あきたこまち」並の良食味です(図3、表1)。
  • 出穂期、成熟期とも「あきたこまち」より早く、稈長は「あきたこまち」より短く、穂数は「あきたこまち」より多い品種です。いもち病には「あきたこまち」より強い品種です(表1、図2)。
  • 耐冷性は「あきたこまち」と同等のため、冷害常発地帯での栽培は避けてください。

品種の名前の由来

   穂数が多く(ちほ:千穂)、おいしい米を多く実らせる様子にちなんで「ちほみのり」と命名されました。

今後の予定・期待

   秋田県の一部産地で500haの作付けが計画されています。今後、低価格で質の良い米の生産・流通に貢献することが期待されます。

種子の入手に関するお問い合わせ先

農研機構東北農業研究センター 企画管理部 業務推進室 運営チーム
Tel:019-643-3443 Fax:019-641-7794

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax:029-838-8905

用語の解説

1) 標肥栽培・多肥栽培
   肥料を多く施用すると、地上部全体が大きくなり、玄米の収量が多くなりますが、草丈が長く(稈長が長く)なるために倒れやすくなります。「あきたこまち」は肥料を多く施用すると倒れやすくなるため、倒れない程度の標準的な量を施用(標肥栽培)します。「ちほみのり」は倒れにくいため、標準的な量より多い肥料を施用(多肥栽培)することが可能です。一方、肥料を多く施用すると、炊飯米の食味が悪くなることが知られています。今後、多肥栽培において、「ちほみのり」の食味がどの程度悪くなるのか検討する必要があります。

図1 栽培方法ごとの倒伏程度と玄米収量 図2 標肥直播栽培における「ちほみのり」の草姿 図3 「ちほみのり」の玄米 表1 「ちほみのり」の栽培特性(2009年~2013年、標肥移植栽培)