プレスリリース
疫病、青枯病、モザイク病(PMMoV)複合抵抗性の 台木用トウガラシ新品種「台パワー」を開発

情報公開日:2008年10月31日 (金曜日)

農研機構 野菜茶業研究所では、疫病、青枯病およびモザイク病(PMMoV)に対して強度の抵抗性を有する台木用トウガラシ品種「台パワー」を育成しました。

ピーマンをはじめとするトウガラシ類の栽培では、疫病、青枯病およびモザイク病(PMMoV)といった土壌病害の発生が問題となっています。これら病害の防除に有効な土壌消毒剤である臭化メチルの使用は2005年に原則禁止されており、2013年には例外的な使用も禁止される見込みです。本品種を台木として用いることで、臭化メチルを使用せずに、ピーマン等を栽培することが可能です。

本品種は、農林水産省プロジェクト研究「新鮮でおいしい『ブランド・ニッポン』農産物提供のための総合研究 6系 野菜」(ブラニチ6系)で得られた成果です。


詳細情報

【参考】

背景とねらい

ピーマンをはじめとするトウガラシ類の栽培では、疫病、青枯病およびモザイク病(PMMoV)といった土壌病害の発生が問題となっています。産地では、抵抗性の台木用品種の導入が進んでいますが、これら3種類の病害に対して強度の抵抗性を示す台木用品種はありませんでした。また、これら病害の防除に有効な土壌消毒剤である臭化メチルの使用が2005年には原則禁止され、2013年には例外的な使用も禁止される見込みです。このため、臭化メチル使用禁止以降もピーマン等の栽培ができるよう、これら3種類の病害に強度の抵抗性を示す台木用品種の育成に取り組みました。

成果の内容・特徴

  • 既存台木用品種の「ベルマサリ」よりも疫病および青枯病に対して強度の抵抗性を示し、モザイク病(PMMoV(P1.2))に抵抗性を示すL3遺伝子を有します(表1)。
  • ピーマンおよびトウガラシ類用の台木用品種です(図1)。

既存台木用品種の「ベルマサリ」よりも疫病および青枯病に対して強度の抵抗性を示し、モザイク病(PMMoV(P1.2))に抵抗性を示すL3遺伝子を有します(表1)。ピーマンおよびトウガラシ類用の台木用品種です(図1)。

品種名称を「台パワー」として、品種登録出願を平成20年5月29日に行い、8月5日に出願公表されました(品種登録出願番号:第22585号)。今後、民間種苗会社を通じて販売する予定です。

品種の名前の由来

複数の病害に対して抵抗性を示すことを「パワー」で、台木用品種であることを「台」で表現しました。

用語解説

疫病

湿度の高い時期に発生しやすい、糸状菌による土壌伝染性の病害です。地際部が褐色の水浸状となり、やがて枯死します。

青枯病

高温の時期に発生しやすい、細菌による土壌伝染性の病害です。急激に萎(い)凋(ちよう)するのが特徴で、やがて枯死します。一度発生すると、長年にわたり発生するため、防除が困難な病害です。

モザイク病(PMMoV)

PMMoV(トウガラシマイルドモットルウイルス)による土壌伝染性の病害です。葉にモザイク状の症状が生じ、果実にも奇形が生じますので、収穫が皆無となります。国内には複数の系統(ストレイン)が発生しており、「台パワー」はPMMoV(P1.2)に対して抵抗性を示しますが、他の系統(PMMoV(P1.2.3)およびPMMoV(P1.2.3.4))に対しては抵抗性を示しませんので、栽培する際には注意する必要があります。

台木

トマトやメロン等の果菜類の栽培では土壌病害の回避を目的に、接ぎ木をして栽培することが広く行われております。接ぎ木の下の部分を台木と呼び、上の部分を穂木と呼びます。
「台パワー」を台木として用いる場合に、PMMoVおよびToMV(トマトモザイクウイルス)が発生している地域では、穂木に「台パワー」と同じL3遺伝子を有する品種を用いる必要があります。

臭化メチル

土壌消毒や検疫用として、非常に有効な薬剤であり、世界的に使用されていますが、オゾン層を破壊する物質に指定されたため、2005年には先進国において土壌消毒用途の使用が原則として禁止されました。現在は、防除が困難な病害に対してのみ、不可欠用途申請により、使用が可能です。