「旬」の話題

大麦で食物繊維を

今、農作物の健康機能性が話題です。農作物は様々な生体調整成分を含んでおり、その含有量が多い品種も育成されてきました。それらを活用した地域農業の振興と健康的な食生活の構築が期待されています。今回は、機能性成分を多く含む農作物の一つ、大麦新品種「ビューファイバー」と農業の6次産業化の例をご紹介します。

 

五十野代表

自社開発の「ビューファイバーのシフォンケーキ」を手にする五十野代表

「大麦ブームが来そうな気がする。美味しく食べられて健康に良い。美しい春の麦畑の風景も次世代に伝えたい。」と語るのは農業生産法人(有)くらぶコア代表の五十野 節雄さん。茨城県行方市にある農場では、露地15ha、施設1万m2で20品目以上の野菜などが生産されています。農産物直売所やレストランも経営する同社が最近力を入れているのが、大麦新品種「ビューファイバー」を使ったシフォンケーキやクッキーです。


 

「ビューファイバー」は農研機構作物研究所が育成しました。大麦の食物繊維の主成分βグルカンを従来品種の2~3倍多く含む新品種です。大麦粉にして、パン、お菓子、麺などにブレンドすることで、食感や食味を損ねることなく食物繊維を付加できます。

シフォンケーキ

もっちり、ふわふわの食感で女性に人気というシフォンケーキ。1皿に約2gの食物繊維。

「ビューファイバー」のクッキー

「ビューファイバー」のクッキー。1袋(36g)で約3.6gの食物繊維。


 

 

もともと大麦には食物繊維を豊富に含むという特徴があります。食物繊維は血中コレステロール低減などの生理機能を持っています。健康維持に必要な1日当たりの食物繊維摂取量は18g以上とされていますが、現状の摂取量は平均15g程度であり、少なくとも3g不足しているのです。大麦(押麦)は、可食部100g当たりの食物繊維量が9~10gもあり、これは米(玄米)、サツマイモ、キャベツなどの3倍以上です。大麦は日常の食生活で不足しがちな食物繊維を容易に補うことができる健康食材なのです。そんな大麦ですが、主としてビール、麦茶、味噌等の原料としての利用が中心で、押麦(おしむぎ)を米に混ぜて炊く麦ごはんはあるものの、食物繊維の多さを活かした食べ方は多くはなかったのです。「ビューファイバー」の登場によって、大麦を粉にして使うことで食物繊維の多い新しい大麦加工食品が期待されています。

「ビューファイバー」の粉は豊橋糧食(株)から市販されており、「ビューファイバー」のシフォンケーキやスイーツは、他にも鹿島セントラルホテルや(株)大麦工房ロアから販売されています。

麦(小麦、大麦等)はかつて全国各地で広く栽培されていました。代表的な冬作物であり、人々に食糧を供給するだけでなく、表面の土が強い北風にとばされるのを防ぐことで田畑を守り、冬から初夏にかけての美しい農村景観を形成していました。大部分の需要が輸入品に置きかわり、国内生産が大幅に減少したことは大変残念なことです。新しい技術と生産体制で麦生産が増加し、五十野さんの言葉のように次世代に美しい農村を伝えられることを願います。

 

春の農村景観

麦畑と菜の花畑が作る春の農村景観(農研機構 東北農業研究センター)

収穫間近の麦畑

初夏、収穫間近の麦畑(農研機構 作物研究所)


 

「ビューファイバー」に関する報道機関での紹介
テレビ朝日「モーニングバード」(平成25年6月6日放映)
(「機能性農作物って何だ」のテーマの中でビューファイバーを紹介)