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農機具資料館が機械遺産に

農研機構 生物系特定産業技術研究支援センターの農機具資料館が2014年度の「機械遺産」(Mechanical Engineering Heritage)第63号として認定されました。「機械遺産」は(一社)日本機械学会が認定しているもので、歴史的に意義のある機械技術を文化的遺産と定め次世代に伝えることを目的にしています。

農機具資料館は1968年( 昭和43年)に作られました。日本の農業の機械化を担った旧農林省の農事試験場(鴻巣試験地)が、農機具の開発改良に役立てるために諸外国から輸入し研究したもの、日本で製造され性能等の比較研究をしたものなど約250点の農機具を保存・展示しています。

農機具資料館の外観と内部

明治に入り欧米諸国から新しい機械技術が導入されましたが、我が国の農業の機械化のためには、畑作(畑地)と稲作(水田)の違い、小規模な農地区画など多くの克服すべき課題がありました。これらの困難をのりこえ、狭い区画や水田に適した中型・小型のトラクター、水を張った水田の中で複雑な移植作業を行う田植機、稲の刈り取り・脱穀を同時に行う自脱コンバインをはじめとする様々な農業機械が開発され、農作業の省力化・軽労化が実現されてきました。これらの開発の経緯をみると、官民の先人達の努力や創意工夫が感じられ、また、古い農用具の原理が現在の機械にも生かされていることがわかります。
農機具資料館では、このような農業機械発達の過程の一端、特に黎明期の機械を見ることができます。展示物としては、農用原動機、耕耘機、トラクター、播種機、田植機、刈取機、脱穀機、籾摺機、唐箕、精米機、製粉機、製縄機等の農業機械と鍬・鎌などの農具があります。代表的な展示物を以下に幾つかご紹介します。

 

螺旋(らせん)水車

持ち運びできる螺旋型の水車。1935年(昭和10年)頃まで富山県などで使用された。流水によって螺旋羽根が回転する。農業用水などの小さな落差で使用でき、回転動力をロープなどで伝達して脱穀機や籾すり機を動かした。

 

揮発油発動機(アンドロー式竪型)

パリのシトロエン工場製の発動機。1928年(昭和3年)頃、農林省農産課が国産石油発動機改良上の参考品として購入。特殊なリンク機構を持ち、当時のものとしては熱効率が極めて高かった。

 

国産初の乗用型トラクター(1952年製)

1951年(昭和26年)、石川島芝浦機械が開発・生産した国産初の乗用型トラクター。リヤエンジンの三輪タイプ。特に水田車輪装着による高速代掻き作業、プラウによる往復耕耘作業に威力を発揮した。

 

田植機(二反田式)

二反田春三(広島県)の考案した田植機で、1955(昭和30)年ころの田植機開発の先駆的試作品。成苗用2条植で、把手を押せば中央にある径60cmの走行車輪が回転して前進し、この車輪軸に付いている苗送り機が運動して、成苗が前方に出てくるとともに、車輪軸に付いている植付爪が動いて成苗を植えつける。

農機具資料館の見学について

所在地

埼玉県さいたま市北区日進町1丁目40番地2

開館時間

平日 9時30分~16時30分
(土曜日、日曜日、祝日、年末年始は休館)
※見学は事前申込が必要です。