プレスリリース
人工知能とデータ連携基盤を統合した農業情報研究センターを開設

- 農業・食品産業分野のスマート化を推進 -

情報公開日:2018年9月27日 (木曜日)

ポイント

農研機構は10月1日の組織改革で農業情報研究センターを開設します。同センターでは、外部からの人材も登用し、人工知能(AI)やビッグデータを活用して、スマート農業等を実現するための研究を行います。研究を通じて、農業・食品産業分野でのスマート化とAI人材の育成を推進します。

概要

  1. 農研機構(理事長:久間和生)は、政府が掲げる超スマート社会「Society 5.01)」の農業・食品分野での実現に向け、農業情報研究センター(担当理事:寺島一男、センター長:本島邦明総括調整役)を開設します。同センターの目的は次の3点です。
    (1)最新のAI技術、農業データ連携基盤2)として整備されつつあるビッグデータを活用し、農研機構独自の知見に立脚した、徹底的なアプリケーション指向の農業AI研究を推進する。
    (2)農業データ連携基盤の長期安定運用を目指した研究並びに運営体制を構築する。
    (3)農業が抱える様々な課題解決のため3)、AIを中心としたICT人材を育成する。
  2. 同センターは、理事長直属の研究センターとして設置します。発足時の職員数は約30名(うち研究職23名)、場所は農研機構本部地区(つくば市観音台3-1-1)です。2つの研究テーマである農業AI研究と農業データ連携基盤研究の研究推進責任者は、外部より第一人者の専門家を招聘します。同センターの人員は、平成31年度中に50名程度に拡大します。近い将来は民間企業等の研究者も受入れる予定です。また、産業技術総合研究所や主要な大学との連携を推進します。
  3. 同センターは、育種から生産、加工・流通、消費まで、農業・食品分野での「Society5.0」の形態であるスマートフードチェーンにおいて、各過程の戦略的課題にAI技術を以って取り組みます。外部登用のAI研究専門家が、農研機構内から集結したAI研究要員をOJTにより教育すると共に、課題解決を図ります。また、スキルアップしたAI研究要員が農研機構内の各研究センターに研究成果を持ち帰ると共に、AI研究を実施し、AI技術の普及を図ります。これにより、農研機構内の研究者の約10%(200人)が高いITリテラシーを保有することを目指します。また、公設試、技術普及員等と連携し、政府目標の「2025年までにほぼ全ての担い手がデータを活用できること」を達成すべく活動して行きます。
  4. 同センターは、スマートフードチェーンにおいて特に重要な約30課題を重点AI研究課題に位置付け、それらの課題解決を通じてスマートフードチェーン全体の生産性向上、無駄の排除、トータルコストの削減、農作物・食品の高付加価値化、ニーズとシーズのマッチング等を実現して行きます。これらの農業AI研究の成果を、農業データ連携基盤を通して産業界、農業界に広範かつ迅速に提供し、「Society 5.0」の農業・食品分野での早期の実現に貢献して行きます。

用語等解説

1)Society 5.0
第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日 閣議決定)において、我が国が目指すべきと提唱された未来社会の姿。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会であり、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5の社会。

2)農業データ連携基盤(通称:WAGRI)
農業に活用できる様々なデータの連携・共有・提供機能を有する情報基盤。農林水産省が、農業分野でのICT推進に向け、内閣府の第1期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を活用し構築を進め、平成31年4月に本格稼働の予定。参画機関の拡大のため、農業データ連携基盤協議会(会長:神成淳司(しんじょう あつし)慶應義塾大学環境情報学部 教授)が設立されている。

3)農業が抱える様々な課題解決のため
我が国では超高齢化と人口減少が進み、農業では人手不足と営農者の高齢化対策、生産性の向上と生産コストの削減等が必要となっている。一方、世界人口の増加により、世界の食料市場は大幅に拡大すると予測されている。こうした状況の中、飛躍的に進展しつつあるAI技術等を活用して、ロボットによる省力生産、高品質農作物の輸出拡大等を実現し、農業を成長産業とすることが重要な課題となっている。

組織図

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