ベタシアニン(左)とベタキサンチン(右)の構造
ベタレインは窒素を含む化合物で、フラボノイドと同様に糖類と結合することで安定で水に溶けやすくなり、細胞中では液胞に含まれています。大きくベ タシアニンとベタキサンチンに分類されます。ベタシアニンは赤紫色を発色し、ベタキサンチンは黄色を発色します。また、ベタシアニンとベタキサンチンが混在することで、赤や橙色が発色します。
ベタレインを含む植物群はナデシコ科、イソマツ科、ザクロソウ科を除くナデシコ目(ツルムラサキ科・スベリヒユ科・ヒユ科・アカザ科・サボテン科・ オシロイバナ科・ヤマゴボウ科、ツルナ科など)に限られています。代表的なものとして、オシロイバナ、ケイトウ、マツバボタン、ブーゲンビレア、サボテンの仲間などがあげられます。
ベタレインを含む花
上段左:オシロイバナ 上段右:ブーゲンビレア
中段左:ケイトウ 中段右:サボテン「金洋丸」
下段左:マツバボタン
ベタレインの生合成経路の簡略図 <拡大表示>
ベタレイン生合成の出発物質はアミノ酸の1種のチロシンです。チロシンは、チロシン水酸化酵素の働きでDOPAに変換され、さらにDOPA二酸化酵素の働きでベタラミン酸が合成されます。ベタラミン酸にアミノ酸やアミンが結合してベタキサンチンが合成されます。一方、ベタラミン酸にサイクロDOPAが結合すると、ベタシアニンが合成されます。
ベタレインは細胞質で合成され液胞に貯蔵されます。また、アントシアニンと同様、糖が付くことで安定します。アントシアニンの場合はアントシアニジンが合成されてから、最終段階で糖がつきますが、ベタレインの場合は、中間産物のサイクロDOPAの段階で糖がつきます。
4大色素の中で、クロロフィルや、アントシアニン、カロテノイドは、生合成に関わる酵素のほとんどが遺伝子レベルで明らかにされています。しかし、ベタレインは最も研究が遅れており、生合成経路や生合成に関わる酵素の多くはわからないことがたくさん残されています。