果樹研究所

一押し旬の話題

2014年12月19日

黄色い手

左:ミカンをたくさん食べる人の手 右:ミカンをあまり食べない人の手
左:ミカンをたくさん食べる人の手
右:ミカンをあまり食べない人の手

最近は、冬に、手がうっすらと黄色くなった子供を見かけることがあまりなくなった。昔は、手の黄色がかった子がそこそこいたのに・・・。

ウンシュウミカン(以下、ミカン)には、蜜柑色(みかんいろ)の色素であるβ-クリプトキサンチンが多く含まれている。β-クリプトキサンチンは、体内でビタミンAに変わるカロテノイドの一つであり、脂溶性のため油(脂)に溶けやすく体内に蓄積される。
従って、ミカンを多く食べると、皮膚が黄色くなる。しかし、単に色素が蓄積されただけで、病気ではないので、心配することはない。

今では、ほとんど見かけることがなくなった「こたつでミカン」。
エアコンが普及する前は、冬の暖房といえばストーブとこたつだった(今の若い人は、炬燵(こたつ)を知らない人が多いと思うが)。夕食後は、こたつにあたりながら(足を入れながら)、1台しかないテレビを家族みんなで見たもんだ。その当時は、ミカンは箱買いで、こたつの上にはミカンが常に置いてあった。そうすると、テレビを見ながらついついミカンに手が伸びて、ミカンを何個も食べてしまい、それが毎日続くと手が黄色くなってくる。
これが、オレンジならそうはいかない。今のように、ビデオがなくて映像を途中で止めることができない時代、目線がテレビに釘付け状態のままでは、ナイフが必要なオレンジは食べられない。手で皮がむけるミカンだからこそ、目線はテレビのまま手元を見なくても食べることができる。そうして、日本人はミカンを多く食べていた(現在形で言えないところが、もどかしい)。

血中β-クリプトキサンチン濃度が高い人ほど生活習慣病のリスクが低い
血中β-クリプトキサンチン濃度が高い人ほど
生活習慣病のリスクが低い

ミカンが持つ健康機能性については、農研機構果樹研所のカンキツ研究興津拠点の研究者が、浜松市北区三ヶ日町の住民の皆さんを対象に10年以上研究を続けており(三ヶ日町研究)、様々なことがわかってきている。
ミカンを多く食べる人は、β-クリプトキサンチンの血中濃度が高いこと。β-クリプトキサンチンの血中濃度が高い人は、生活習慣病(肝機能障害、動脈硬化、インスリン抵抗性、骨密度低下およびメタボリックシンドローム等)のリスクが低いこと。冬にミカンを多く食べた人は、夏でもそれなりに血中濃度が高いこと(体内にβ-クリプトキサンチンが蓄積されているため)。つまり、ミカンを多く食べる人は、健康を維持できるということだ。

「カキが赤くなれば、医者が青くなる」や「一日一個のリンゴで、医者いらず」というような諺(ことわざ)が示すように、昔の人は、科学的な裏付けはないものの、果物が健康に良いことを経験的に感じ取っていた。

一日ミカン3個で、メタボ予防
一日ミカン3個で、メタボ予防

そこに、三ヶ日研究という科学的根拠に基づいた、「一日ミカン3個で、メタボ予防」という言葉を、新たに付け加えるよう提唱したい。朝食、昼食、夕食後に1個ずつでもいいし、まとめて3個でもいい。とにかく、ミカンを食べて皆さんの健康維持を図ってもらいたい。健康に過ごす人が増えるということは、ひいてはそれが国民全体の医療費削減につながることなのだから。
ちなみに、三ヶ日研究でわかったことの一つに、日本人の血中β-クリプトキサンチン濃度は欧米人に比べて高い、ということがある。それは、β-クリプトキサンチンの含量が特異的に高いミカンを食べることによるものだと思われる(オレンジは、含量が一桁低い)。それが、日本人の平均寿命の高さにある程度寄与しているかも・・・。

農研機構果樹研究所では、β-クリプトキサンチンをより多く含むカンキツの品種改良も行っており、ミカンよりβ-クリプトキサンチンを多く含む「西南のひかり」(2009年品種登録)を育成している。「西南のひかり」は、年内収穫ができ、糖度は露地栽培で約13%と高く減酸が早い品種である。

皆さん、毎日、ミカンを3個食べて、健康を維持しましょう。ただし、ミカンが体にいいからといって、ミカンだけを沢山食べていれば、健康になると思うのは間違いです。いろいろな食べ物を、バランスよく食べることが健康になる前提であり、その中にミカン3個も位置づけましょう。そして、医療費を減らし、家計負担や国家負担の減額に貢献しましょう。
なお、ミカン3個を食べても、その合計カロリーは、普通サイズのお茶碗ご飯1杯の約半分です。

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