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9.津軽(青森)

岩木山の見える米とリンゴの里

 <1984年6月4日観測画像>

写真は,青森県津軽地方の衛星画像である。岩木川の沖積作用による広い津軽平野と秋田県境(下部)から岩木山麓にかけて広がる出羽山地の延長,そして右上の青森平野が撮し出されている。この津軽地方は,奥羽山脈によって二分された太平洋側の南部地方とは自然環境や農業環境も対象的である。

本州の北端にあるため,両地方とも冷涼型の気候であり,冬が長く夏が短い。しかし津軽地方の気候は,冬は積雪量が多く曇天の日が続くのに対して,夏は気温も上昇して稲作も安定している。太平洋側のように「ヤマセ」に悩まされることは少ない。農業では,南部地方は台地を主に米,畜産,野菜が生産されているのに対して,津軽地方は米とリンゴが基幹をなし,沖積低地に米作,傾斜地や岩木川の自然堤防上にはリンゴが栽培されている。

「自然堤防」は,沖積平野を蛇行する岩木川が洪水のたびに川からあふれた水が川岸に土砂を堆積することによってできてきた。自然堤防は,水面より2〜3メートル高く浸水の恐れが少ないため,集落やリンゴ園として利用されている。自然堤防の背後は湿地が多いので,ほとんどが水田に利用されている。

米とリンゴは,わが国の食糧供給の主要地域としての地位を確保している青森県農業の基幹でもある。農産物の自由化や生産者価格の低迷の中で,築いた地位を維持するためさまざまな努力を行っている。

米は,減反政策のため水稲作付面積は減っているが,約67万ヘクタールで全国10位にある。青森県米作は,10アール当りの単収水準が高く,これまで7回全国一になっている。とくにこの画像の昭和59年には621キログラムでこれまでの全国最高単収となっている。品種は,昭和63年まで7割を占めていた「アキヒカリ」が激減し,良食味品種の「つがるおとめ」,「むつほまれ」などが増えて,売れる米作りへと急速に進んでいる。

青森リンゴの栽培面積は平成2年度で25.2千ヘクタール,生産量は501千トンと全国のほぼ半分を占めており,依然として津軽は日本一のリンゴ生産地である。春,桜の散った後には,リンゴ園が白い花で埋まる。花々の間を行き来して受粉を助けるマメコバチの姿がどの園地でも見られるようになった。花の落ちた後には,うす緑色の幼芽が鈴生りになり,摘果から始まる手作業が秋まで続く。季節とともに日毎に大きくなっていくリンゴの実は何よりも農作業の励みとなる。

平成3年9月末に最大瞬間風速54メートル/秒の風台風19号が津軽を襲った。収穫間近であったリンゴをはじめ,農作物,農業施設の被害は甚大であった。壊滅的な被害を受けたリンゴ園地もあり,生産力の回復には数年を要するであろう。しかし,全国から届いた青森リンゴ支援の声に答えるべく,園地の復旧さらに整備・充実を進めて「リンゴ王国青森」を守ろうと努力が続けられている。

福原道一(農業環境技術研究所)
大川郁子(青森県りんご試験場)

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