農業環境技術研究所 > データベース・画像 > 宇宙から見た日本の農業

59.宮崎平野・都城盆地(宮崎)

水田・施設園芸地帯と畑作地帯

 <1984年10月22日観測画像>

宮崎県は年平均気温が17.0℃,年降水量が2,435ミリと温暖多雨地帯に属している。日射量も豊富であり,特に冬季の豊かさはわが国有数である。このため,二期作,三期作が行われており,耕地利用率は129%に達している。また地形にも恵まれており,耕地は平野部から1000メートルに近いところまで及ぶ。降水の偏りによる干ばつや台風などの気象災害が問題とはなるが,宮崎県はこのように恵まれた自然特性を活かした農業生産が活発に営まれてきた。その中心となるのが,宮崎平野と都城盆地である。

画像の右側上半分には宮崎平野南部が撮し出されている。太平洋に注ぐ大きな河川が大淀川であり,河口近くに宮崎市街地が広がっている。宮崎市から滑らかな海岸線を南下し,それが途切れる辺りに小さな島がみられる。これは波状岩や亜熱帯性植物群落で有名な青島である。その南に続く入り組んだ海岸線はやはり観光地となっている日南海岸である。

宮崎平野では水稲,野菜を中心として多様な作物が栽培されている。宮崎市や佐土原町付近ではハウス栽培が盛んでキュウリ,ピーマンなどが生産されており,高い生産量を誇っている。ハウス群はくすんだ紫色として示されているが,画像では市街地との区別が難しい。河川に沿う淡い緑色は水田地帯である。宮崎東部は早期水稲の産地として有名である。収穫は7月下旬〜8月上旬になされるが,早期栽培は8〜9月にかけて襲来頻度が高い台風の回避手段にもなっている。

画像の左下,楕円状に開けた地域が都城盆地であり,都城市はその中心を占めている。市を二分して流れる川が大淀川である。幾本もの支流が本流に注いでおり,川と川との間に標高差数十メートルの台地が舌状に延びているのがこの盆地の特徴である。

南九州で火山活動が活発であった時代に多量の火山噴出物が堆積した。これが長年の間に侵食を受け,現在のような台地が出来上がったといわれている。したがって,この地方の畑地は数種類の火山灰が層をなしており,表層は黒ボクと呼ばれる腐植に富む黒色の火山灰でおおわれている。収穫後裸地になっている黒ボクの畑が画像で赤い斑として点在して見られる。なお,宮崎平野低地には灰色低地土が分布する。宮崎市周辺の裸地はピンク色の点として示されており,土壌の違いを示している。

都城盆地の台地上では畑作が営まれており,画像には一部しか見えないが北西方向にある小林盆地にかけては南九州を代表する畑作地帯となっている。また都城盆地は全国有数の和牛生産地であり,約3万頭が飼育されている。このため畑地の半分は飼料作物で占められている。台地に分布する黄緑色は作物の存在を示している。時期から判断して,イタリアンライグラスやソルガムなどで,収穫前のサツマイモも含まれている。夏季にはサツマイモやトウモロコシ,サトイモなどが畑を覆う。台地と台地の間の低地には水田地帯が広がっている。

都城市街地の西方にやや大きい赤斑がみられるが,九州農業試験場畑地利用部の圃場である。この左方の白っぽい部分がゴルフ場である。ゴルフ場はリゾート地となっている沿岸部にも点在しているのがわかる。

桜谷哲夫(農業研究センター)

目次ページへ 前のページヘ 次のページへ