平成13年4月2日付け(13農会第9号)で、農林水産大臣から独立行政法人農業環境技術研究所理事長あてに、「独立行政法人農業環境技術研究所の中期目標を達成するための計画(中期計画)の認可について:独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第30条第1項の規定に基づき、平成13年4月1日付け農環研企第1号で申請のあった独立行政法人農業環境技術研究所中期計画は、申請のとおり認可する。」旨の連絡が入った。中期計画の内容を以下に示す。
T 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置
運営費交付金で行う事業については、中期目標の期間中、毎年度平均で、少なくとも前年度比1%の経費節減を行う。
1 評価・点検の実施
(1)外部専門家・有識者等を活用し、毎年度の報告に先立ち、自ら点検を行う。
(2)主要な研究については、研究の推進方策・計画及び進捗状況の点検を行うとともに、外部専門家・有識者等の意見を聞いて成果の評価を行い、その結果は研究資源の配分に反映させるとともに公表する。
(3)評価項目、評価基準を定める等公正さを確保しつつ、研究職員の業績評価を行い、その結果は処遇、研究資源の配分に反映させる。
2 研究資源の効率的利用
(1)中期目標達成に有効な競争的資金には積極的に応募し、研究資源の充実を図る。
(2)研究資源の効率的・重点的な配分を行う。
(3)施設・機械の有効利用を図るため、共同利用に努めるとともに、共用等が可能な機械については、その情報をインターネットを介して広く公開する等、有効かつ効率的利用に努める。
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
(1)特許等の知的所有権の取得・移転に係る支援態勢を強化する。
(2)農林水産省研究ネットワーク等を活用して、研究情報収集・提供業務の効率化、充実・強化を図る。
(3)施設、機械等の保守管理については、業務の性格に応じて外部委託に努める。
4 連携、協力の促進
(1)他の独立行政法人との連携、協力
他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人事交流を含めた連携、協力を積極的に行う。また、独立行政法人農業技術研究機構が行う多様な専門知識を融合した総合研究に必要に応じて協力する。
(2)産学官の連携、協力
(1) 国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究及び研究者の交流等を積極的に推進する。
(2) 研究を効率的に推進するため、行政との連携を図る。
(3) 科学技術協力に関する政府間協定等を活用し、先進国等との共同研究を推進する。
(4) 国の助成により公立機関等が実施する研究等への協力を行う。
(5) 毎年定期的に、関係独立行政法人、行政部局、都道府県等の参加を求めて、研究推進のための会議を開催し、相互の連携・協力のあり方等につき意見交換等を行う。
5 管理事務業務の効率化
事務の簡素化と迅速化を図るため、LAN等を有効に利用するとともに、会計処理、発注業務の電子化を進め、事務処理に係わる新たなソフトウエア等の導入を行う。
光熱水の節約等により、管理経費の節減を図る。
6 職員の資質向上
(1) 業務上必要な各種の研修に職員を積極的に参加させるほか、必要な研修を実施し、職員の資質向上に努める。また、業務上必要な資格取得を支援する。
(2) 各種制度を積極的に活用し、職員の在外研究の機会の増加に努める。
(3) 博士号の取得を奨励し、適切な指導を行う。
U 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置
1 試験及び研究並びに調査
A 農業生態系の持つ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保
1)環境負荷物質の動態解明と制御技術の開発
(1)ダイオキシン類のイネ等による吸収、移行及び特定集水域水田土壌から農業排水系への流出実態の解明
イネ等へのダイオキシン類の汚染経路を解明し汚染軽減を図るため、土壌、大気等の農業環境及び作物体から検出されるダイオキシン類の異性体パターンを解析する。また、各種異性体の物理化学的特性に基づいてイネ等による吸収、体内移行、蓄積性との関係を解明する。さらに、土壌粒子や水生・湿性植物によるダイオキシン類の保持及び分解等の特性に基づいて、ダイオキシン類の水田から農業排水系への流出実態を解明する。
(2)カドミウム等微量元素の土壌集積経路及びイネ・ダイズ子実への移行過程の解明
(3)土壌・水系における硝酸性窒素等の動態解明と流出予測モデルの開発
硝酸性窒素等の流出を予測するため、土層内及び地下水中の移動過程を解明するとともに、硝酸性窒素の中規模流域におけるモニタリング手法を開発する。また、農業生態系における硝酸性窒素の脱窒機能等を評価し、負荷軽減技術を開発する。さらに、硝酸性窒素の負荷流出予測を中規模流域に対しても適用可能にするため、総合的な予測モデルを開発する。
(4)難分解性有機化合物分解微生物の分解能解析技術の開発及び汚染環境中への分解菌接種技術の開発
微生物のもつ農薬等の有機化合物分解能を利用した汚染環境修復技術等を開発するため、芳香族塩素化合物分解菌等を対象に、分解能、分解経路、分解酵素と分解関連遺伝子の構造と機能等を解析するための技術を開発する。また、トリアジン系除草剤等を対象に、分解菌の集積・単離技術の開発、分解経路や分解能の解析と評価、汚染環境への分解菌接種技術の開発、及び分解菌の環境中での動態解析技術の開発を行う。
(5)農薬の水生生物等に対する影響評価法の開発
農薬による環境負荷の軽減を図るため、水田に施用された水田用除草剤の動態解明の一環として、農耕地周辺水系への拡散移行経路の解明とその流出量の評価法の開発、水生生物における濃縮過程の解明及び水生生物に対する影響評価法の開発を行う。また、生態系で重要な位置を占める微生物や昆虫等に与える含窒素農薬の影響を解明する。
2)人為的インパクトが生態系の生物相に及ぼす影響の評価
(1)遺伝子組換え生物による生態系かく乱機構の解明と影響評価手法の開発
導入された遺伝子組換え作物が近縁の作物や野生植物との交雑等によって生態系に及ぼす影響を評価する。また、組換え作物が産生するBtトキシンの環境への影響の評価手法を開発する。さらに、開放系利用が可能となった組換え農作物(ナタネ、ダイズ)の長期栽培モニタリングを実施する。遺伝子組換え微生物については、導入遺伝子の伝達と再編成及び環境中における遺伝子拡散の遺伝学的解析手法及び組換え体の安全性評価手法を開発する。
(2)導入寄生蜂等による生態系かく乱の実態とかく乱機構の解明
3)農業生態系の構造と機能の解明
(1)環境要因が微生物の増殖、個体群変動に及ぼす影響の解明
(2)昆虫の個体群動態に及ぼす餌資源、昆虫放出物の影響の解明
ハムシ等の昆虫個体群動態と餌資源の質・量・空間的配置との相互作用を解明する。また、昆虫が放出し、昆虫個体群や群集の移動・繁殖行動に影響を及ぼす化学物質の構成及び構造を決定するとともに、これら化学物質に対する成虫の反応性を解明する。
(3)農業生産活動が農業生態系の生物群集の構造と多様性に及ぼす影響の評価
スルホニルウレア系水田除草剤の連用による除草剤抵抗性植物の出現、他感作用をもつ植物の導入及び耕作放棄に伴う水田生態系の植生空間分布の変化等、農業生産活動が農業生態系及びその周辺生態系に生息する生物群集に及ぼす影響の実態を調査する。また、農業生産活動が生物群集の構造と遺伝子の多様性に及ぼす影響を生理・生態的、生化学的特性に基づき解明、評価する。
(4)畑地及びその周辺に生息する線虫の動態解明
B 地球規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明
1)地球規模の環境変動が農業生態系に及ぼす影響解明
(1)地球規模の環境変動に伴うコメ生産地域の生産力変動予測手法の開発
(2)気候変化、二酸化炭素の濃度上昇に伴う農業生産への影響の解明
(3)気候変化が生態系のフラックス変動に及ぼす影響の解明
2)農業が地球環境に及ぼす影響解明と対策技術の開発
(1)農業活動が温室効果ガスへ及ぼす影響解明と対策技術の開発
(2)農業生態系における炭化水素、花粉、ダスト等大気質の放出・拡散過程の解明
(3)人間活動に伴う環境変動が農業生態系における物質循環及び空間構造の特性に及ぼす影響の解明
人間活動に伴う物質の動き及び土地利用変化が農業生態系における物質循環及び空間構造の特性に与える影響を定量的に評価する。このため、農業由来の窒素負荷物質、土地資源、生物種の広域的な移動等を指標としながら、システムダイナミクス等の観点からの解析手法を開発する。また、地域バイオマスエネルギー生産システムのLCA等の環境影響評価手法を確立する。
C 生態学・環境科学研究に係る基礎的・基盤的研究
1)環境負荷物質の分析技術の高度化
(1)農業環境中におけるダイオキシン類等化学物質の超微量分析法の高度化
農作物、土壌の試料について、分析精度の向上のため、分析用試料の調製方法、抽出・精製方法を検討するとともに、高分解能GC/MS等の高感度機器を利用した高精度分析法を開発する。また、カドミウム、ホウ素等による環境負荷の拡大防止に資するため、これらの元素の土壌中の形態別定量法を開発する。
(2)作物・農耕地土壌における137Cs等放射性同位元素のモニタリング
2)環境資源情報の計測・解析技術の高度化
農業生態系の広域的計測手法及び多変量解析手法の高度化
人工衛星等多様なリモートセンシング計測によって、植物・土壌等環境資源の量的変動や広域的分布を高精度で評価する方法を開発する。また、農業環境資源から計測されたデータを、インベントリー等に蓄積・利用するため、データを分類・検証するための新たなコンピュータ多用型解析手法や多変量解析手法を開発する。
3)農業環境資源情報の集積
(1)農業環境資源の分類・同定及び機能の解明に基づくインベントリーフレームの構築
(2)昆虫・微生物の収集・特性評価とジーンバンク登録
独立行政法人農業生物資源研究所が実施するジーンバンク事業に参画し、サブバンクとしてセンターバンク(独立行政法人農業生物資源研究所)と連携しつつ当該生物の収集・評価及び保存を行う。また、適当と認められた遺伝資源については、随時、センターバンクに移管する。
4)公立試験研究機関等との研究協力
2 専門研究分野を活かした社会貢献
(1)分析、鑑定
(2)講習、研修等の開催
(1) 講習会、講演会等を積極的に開催するとともに、国や団体等が主催する講習会等に積極的に協力する。
(2) 他の独立行政法人、大学、国公立機関、民間等の研修生を積極的に受け入れ、人材育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図る。また、海外からの研修生を積極的に受け入れる。
(3) 外部に対する技術相談窓口を設置し対応する。
(3)行政、国際機関、学会等への協力
わが国を代表する農業環境研究に関わる研究機関として、行政、国際機関、学会等の委員会・会議等に職員を派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力・交流に協力する。特に、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等の国際会議に積極的に職員を派遣する。また、行政等の要請に応じて、技術情報を適切に提供する。
3 成果の公表、普及の促進
(1)成果の利活用の促進
(1) 研究成果の中で生産現場等に利活用できる(普及に移しうる)成果を外部の評価により、中期目標の期間内に10件以上を選定し、普及を図る。
(2) 行政、生産者等が利用可能な各種のマニュアル、データベース等の作成、農林水産省研究ネットワーク等の活用、研究成果の他独立行政法人や行政機関等への移転等を通じて、成果の普及、利活用の促進に努める。
(2)成果の公表と広報
(1) 研究成果は国内外の学会、シンポジウム等で発表するとともに、中期目標の期間内に810報以上の論文を学術雑誌、機関誌等に公表する。
(2) 研究成果については、その内容をインターネットや「つくばリサーチギャラリー」、「土壌モノリス館」、「昆虫展示室」の展示等を通じて公開に努めるとともに、重要な成果に関しては、適宜マスコミに情報を提供する。また、パブリックアクセプタンスの確保に努める。
(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
(1) 知的所有権の取得に努め、中期目標の期間内に10件以上の国内特許等を出願する。また、海外で利用される可能性、我が国の農林水産業等への影響を配慮して、特許等の外国出願を行う。
(2) 補償金の充実等により、知的所有権取得のインセンティブを与える。
(3) 取得した知的所有権に係る情報提供はインターネットを通じて行うとともに、研究成果移転促進事業等を活用し、知的所有権の利活用を促進する。この場合、知的所有権の実施の許諾等については、我が国の農林水産業等の振興に支障を来すことのないよう考慮の上、決定する。
V 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
1 予算
区 分 |
金 額 |
収入
運営費交付金
施設整備費補助金
受託収入
諸収入
版権及特許権等収入
その他の収入
計 |
17,434
426
4,569
12
9
3
22,441 |
支出
業務経費
施設整備費
受託経費
試験研究費
管理諸費
一般管理費
研究管理費
管理諸費
人件費
計
|
2,247
426
4,569
4,076
493
4,618
526
4,092
10,581
22,441
|
[人件費の見積り] |
|
期間中総額8,506百万円を支出する。 |
|
但し、上記の額は、役員報酬並びに職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当、休職者給与及び国際機関派遣職員給与に相当する範囲の費用である。 |
[運営費交付金算定のルール] |
|
1.平成13年度については、積み上げ方式とする。 |
|
2.平成14年度以降については、次の算定ルールを用いる。 |
|
運営費交付金=
|
(業務経費+一般管理費)×α×β+人件費−諸収入±γ |
|
|
α:消費者物価指数 |
|
|
β:効率化係数 |
|
|
γ:各年度の業務の状況に応じて増減する経費 |
|
人件費=
|
基本給等+退職手当+休職者・派遣者給与+公務災害補償費+児童手当拠出金+共済組合負担金 |
|
基本給等=
|
前年度の(基本給+諸手当+超過勤務手当)×(1+給与改定率) |
|
(注)1.
|
運営費交付金額には、中期目標の期間中の常勤職員数の効率化減員分を反映させる。 |
|
2.
|
消費者物価指数及び給与改定率については、運営状況等を勘案した伸び率とする。
ただし、運営状況等によっては、措置を行わないことも排除されない。 |
[注記]前提条件 |
|
1. |
期間中の効率化係数を年99%と推定 |
|
2.
|
給与改定率及び消費者物価指数についての伸び率を、ともに0%と推定 |
2 収支計画
平成13年度〜平成17年度収支計画 |
(単位:百万円) |
区 分 |
金 額 |
費用の部
経常費用
人件費
業務経費
受託経費
一般管理費
減価償却費
財務費用
臨時損失
収益の部
運営費交付金収益
諸収入
受託収入
資産見返運営費交付金戻入
資産見返物品受贈額戻入
臨時利益
純利益
目的積立金取崩額
総利益
|
22,281
22,281
10,581
1,764
4,569
4,618
749
0
0
22,281
16,951
12
4,569
315
434
0
0
0
0
|
[注記] |
|
1. |
収支計画は予算ベースで作成した。 |
2.
|
当法人における退職手当については、役員退職手当支給基準及び国家公務員退職手当法に基づいて支給することとなるが、その全額について、運営費交付金を財源とするものと想定している。 |
3.
|
「受託収入」は、農林水産省及び他省庁の委託プロジェクト費を計上した。 |
3 資金計画
平成13年度〜平成17年度資金計画 |
(単位:百万円) |
区 分 |
金 額 |
資金支出
業務活動による支出
投資活動による支出
財務活動による支出
次期中期目標の期間への繰越金
資金収入
業務活動による収入
運営費交付金による収入
受託収入
その他の収入
投資活動による収入
施設整備費補助金による収入
その他の収入
財務活動による収入
|
22,441
21,532
909
0
0
22,441
22,015
17,434
4,569
12
426
426
0
0
|
[注記] |
|
1. |
資金計画は予算ベースで作成した。 |
2.
|
「受託収入」は、農林水産省及び他省庁の委託プロジェクト費を計上した。 |
3.
|
「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を記載した。 |
W 短期借入金の限度額
中期目標の期間中の各年度の短期借入金は4億円を限度とする。
想定される理由:運営費交付金の受け入れの遅延
X 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画
計画なし。
Y 剰余金の使途
農業環境インベントリー研究の強化のため、標本収集とデータベース構築の加速を目的として、研究用機器の更新・購入等に使用する。
Z その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項
1 施設及び設備に関する計画
業務の適切かつ効率的な実施の確保のため、業務実施上の必要性及び既存の施設、設備の老朽化等に伴う施設及び設備の整備改修等を計画的に行う。
平成13年度〜平成17年度施設、設備に関する計画 |
(単位:百万円) |
施設・設備の内容 |
予定額 |
財 源 |
実験棟排水処理施設改修
侵入昆虫・導入天敵隔離飼育室新築
農業生態系ガス動態解析実験室改修
温室効果ガス発生制御施設増改修
|
|
施設整備費補助金
〃
〃
〃 |
合 計
|
426±δ
|
|
(注)δ:各年度増減する施設、設備の整備等に要する経費 |
2 人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)
1)人員計画
(1)方針
(2)人員に係る指標
期末の常勤職員数は期初を上回らないものとする。
(参考:移行職員相当数198名、期末の常勤職員数193名)
(参考:中期目標の期間中の人件費総額見込み8、506百万円
但し、上記の額は、役員報酬並びに職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当、休職者給与及び国際機関派遣職員給与に相当する範囲の費用である。)
2)人材の確保
(1) 職員の新規採用については、国家公務員採用試験の活用及び選考採用により行う。研究職員については任期付任用の拡大を図る。また、中期目標達成に必要な人材を確保するため、ポストドクター等の派遣制度を活用する。
(2) 広く人材を求めるため、研究を行う職については公募の導入を図る。
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